新しい資金調達「クラウドファンディング」が活況だ。インターネット上で不特定多数から資金調達をする仕組みで、2017年度の市場規模は約1,700億円と推計されている(※日本政策金融公庫 「調査月報12 2019」No.135より)。

企業にとって、資金繰りは生命線だ。資金調達の選択肢が増えるのは、企業にとっては朗報だろう。

クラウドファンディングは新しい資金調達法なので、仕組みが十分周知されていないかもしれない。そこで、クラウドファンディングの仕組みについて解説する。

目次

  1. クラウドファンディングの仕組みは?
    1. 支援者には商品やサービス、利息などの見返りを用意する
    2. クラウドファンディング事業者が支援者と起案者を仲介する
  2. クラウドファンディング5タイプの仕組み
    1. 非投資型では公益性、投資型では事業性が求められる
    2. 1.寄付型
    3. 2.購入型
    4. 3.融資型
    5. 4.ファンド投資型
    6. 5.株式投資型
  3. クラウドファンディングで資金を調達する方法
    1. 事業内容や計画などの審査
    2. 数ヵ月の審査後、インターネット上で募集開始
    3. 募集終了後は対価の支払いや活動報告を行う
  4. クラウドファンディングによる資金調達の注意2点
    1. 1.調達に対する税金やクラウドファンディング事業者への手数料も考慮する
    2. 2.時間的余裕を持つ
  5. 主に投資型が新しい資金調達の手段に

クラウドファンディングの仕組みは?

新しい資金調達方法「クラウドファンディング」の仕組みとは?
(画像=fizkes/Adobe Stock)

クラウドファンディングは、「クラウド(Crowd)=群集」と「ファンディング(Funding)=資金調達」から成る造語だ。新しい資金調達法として、近年注目されている。

金融庁によると、クラウドファンディングとは「新規・成長企業等と資金提供者をインターネット経由で結びつけ、多数の資金提供者から少額ずつ資金を集める仕組み」のことだ。

クラウドファンディングは金融機関からの資金調達と違い、インターネットを通じて多数の個人から資金を集めることが特徴だ。

支援者には商品やサービス、利息などの見返りを用意する

クラウドファンディングでは、資金を調達する者を「起案者」、資金を提供する者を「支援者」と呼ぶ。

起案者は原則、資金提供の見返りを支援者に用意する。詳細は後述するが、自社の商品・サービスを提供したり、金銭的な対価を支払ったりすることもある。

支援者の多くは個人であり、資金提供に応じる理由はさまざまだ。中には事業に共感したため、資金提供の対価を求めない支援者もいる。

クラウドファンディングでは、支援の対価を用意することも大切だが、事業への共感性も求められるのだ。

クラウドファンディング事業者が支援者と起案者を仲介する

クラウドファンディングによる資金調達を行う際は、クラウドファンディング事業者を利用するのが一般的だ。

クラウドファンディング事業者は起案者の審査や案件の掲載を行い、ホームページなどで支援者を募る。つまり、起案者と支援者を仲介する存在だ。

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クラウドファンディング5タイプの仕組み

クラウドファンディングには5つのタイプがあるが、その目的はいずれも支援である。いかに事業性や収益性に優れた案件でも、支援者の理解が得られなければ資金調達は難しい。

支援者から見た
資金の性質


タイプ
支援者に用意する見返り
非投資型 寄付型 原則なし
購入型 事業で提供する商品やサービス
投資型
融資型 融資額に応じた利息
ファンド投資型 業績に応じた分配金
株式投資型 出資額に応じた株式

非投資型では公益性、投資型では事業性が求められる

非投資型クラウドファンディングでは、支援者にとって金銭的な対価はない。よって資金を集めるためには、高い公共性が求められるだろう。

投資型クラウドファンディングでは、支援者が対価として金銭を受け取る。投資性が強いため、その分問われる公益性は相対的に低くなる。しかし、クラウドファンディング自体に支援の要素があるので、一定の公共性は必要だろう。

1.寄付型

寄付型クラウドファンディングのイメージは、募金だ。支援者は原則見返りを求めることなく資金を提供する。「ふるさと納税」のように、支援者が「寄付金控除」を利用できる可能性がある。

基本的に資金提供の見返りがないので、支援者の理解が必要になるだろう。社会福祉や文化的活動など、一定の公益性がある事業が理解を得やすいと思われる。事業資金を寄付型で調達するのは、ミスマッチかもしれない。

2.購入型

購入型クラウドファンディングは、新しい商品やサービスの開発資金の調達に適している。また、マーケティングに活用することもできる。

購入型の仕組みは、支援者が起案者に資金を提供し、起案者は集めた資金で当該商品やサービスを開発し支援者に提供する、というものだ。

支援者にとって、提供される商品やサービスは出資の対価だ。すでに市場にあるようなものだと訴求力に乏しく、十分な資金調達ができないかもしれない。革新性のある商品やサービスの開発が問われるだろう。

購入型には支援の要素もあるが、実質的には支援者がお金を出して商品やサービスを買っている。したがって、事前販売という意味合いもある。本格的な開発・生産前に市場の反応を知ることができるので、マーケティングに活用することができるのだ。

3.融資型

融資型クラウドファンディングでは、銀行融資のように一定期間の貸付を受ける。銀行以外の借入先を持ちたい事業者が選択するタイプだ。

融資型の場合、支援者は利息を見返りに資金を貸し付ける。ソーシャルレンディングとも呼ばれ、起案者は利息の支払いと元本の返済を条件に資金を調達する。

銀行などで融資を受けられない事業者でも、融資を受けられる可能性はある。ただし、クラウドファンディング業者の審査に通過しなければならない。どのクラウドファンディングでも、無条件で起案者になれるわけではないのだ。

4.ファンド投資型

ファンド投資型クラウドファンディングは、将来の売上などの一部を支援者に「分配金」として支払うことを約束し、資金調達を行う。支援者にとっては投資の意味合いが強くなり、起案者にとっては自己資本の要素が強くなる。

ファンド投資型も融資型と同様に金銭的な対価を支援者に支払うが、金額が変動する点がポイントだ。ファンド投資型で支払う分配金の額は、その事業の売上に応じて計算されるためだ。

ファンド投資型の起案者は、業績に応じた財務フローを構築できる。募集条件にもよるが、業績が低下した際の財務キャッシュアウトを減らせるだろう。

ファンド投資型の支援者は、企業そのものではなく事業に対して出資する。起案者は事業の収益性や健全性(または公益性等)を訴求し、資金調達を図る。

5.株式投資型

株式投資型の場合、支援者への見返りは自社株式だ。株式の譲渡後、基本的に金銭的な対価は支払わない(剰余金の配当は除く)。起案者にとって、投資型クラウドファンディングの中では最も自己資本の要素が強い。

支援者は対価として株式を受け取り、一般的には将来の現金化を目指す。ベンチャーキャピタル(未上場企業への投資を行う投資会社)などの新たな買い手に売却するか、将来上場すれば取引所で売却することもできる。

株式投資型の注意点は、株主が増えることだ。総会運営のコスト増や経営への影響が考えられる。

会社法に定める「株主総会の決議の省略」などの特例は、株主全員の同意が条件だ。簡易的な方法で済ませていた株主総会も、新たな株主の同意が得られなければ行うことができない。

また、「執行役の行為差止め請求」や「株主代表訴訟」などの株主の権利に注意を払わなければならない。株主投資型のクラウドファンディングでは、株主の管理に留意したい。

なお、株式投資型では資金調達額に法的な上限が設けられており、1年間に1億円以上の資金募集はできない。

クラウドファンディングで資金を調達する方法

クラウドファンディングによる資金調達では、一般的にクラウドファンディング事業者を利用する。事業者によって提供するタイプが違うので注意したい。利用したいクラウドファンディングのタイプによって、事業者を選定することになる。

事業内容や計画などの審査

クラウドファンディング事業者は、起案者の審査を行う。事業者ごとに応募や審査の条件は異なるが、概ね事業の実態や公益性・共感性などが審査される。

投資型クラウドファンディング事業者は金融商品取引業に登録しており、金融庁の監督の下コンプライアンスの遵守が求められる。投資者保護を掲げる金融庁の監督を受けることから、審査基準は非投資型より厳しいと考えられる。

審査では、直近の決算書や法人の履歴事項全部証明書などの提出が求められることになるだろう。

数ヵ月の審査後、インターネット上で募集開始

クラウドファンディング事業者の審査は、事業者や募集条件によって変わるが、数ヵ月かかることが多い。審査に通れば、インターネット上で募集が開始される。

募集終了後は対価の支払いや活動報告を行う

起案者が資金提供を受けた後は、対価の支払いや事業の活動報告など、クラウドファンディングのタイプや募集条件に応じて対応する。

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クラウドファンディングによる資金調達の注意2点

クラウドファンディングで目標額に到達しなかった場合の対応には、「All in 方式」と「All or Nothing 方式」がある。



目標額に未達の場合
支援者への対価の用意

All in
(オール・イン)

集まった金額を調達
集まった金額で事業を開始


必要

All or Nothing
(オール・オア・ナッシング)
集まった金額は支援者へ返還
事業は開始しない
不要

事業に必要な資金が明確な場合は、「All or Nothing 方式」が適している。「All in 方式」では、調達資金が不足していても事業を開始しなければならないからだ。

1.調達に対する税金やクラウドファンディング事業者への手数料も考慮する

クラウドファンディングで調達した資金は、法人税や消費税などの対象になる可能性がある。なお、クラウドファンディング事業者へ支払う手数料は、募集金額から差し引かれる。

クラウドファンディングでの資金調達は、税金や手数料も考慮して計画するのが望ましい。

2.時間的余裕を持つ

前述のとおり、クラウドファンディングではクラウドファンディング事業者による審査に時間がかかる。加えて、事業内容を支援者に訴求するためには、募集画面のデザインなども考慮する必要があるだろう。

クラウドファンディングでは、資金を得るまでにある程度時間がかかる。資金調達は、時間に余裕を持って臨みたい。

主に投資型が新しい資金調達の手段に

クラウドファンディングは新しい資金調達法であり、多数の個人から資金を集めることを特徴とする。銀行からの借入とは違い、資金提供の判断は事業性だけではない点に注意したい。

経営者にとっての有力候補は、投資型クラウドファンディングだろう。支援者にとっての対価がわかりやすく、事業性を評価しやすいからだ。事業内容によっては、非投資型も選択肢に入るだろう。

これまで資金調達の手段が銀行借入だけだった事業者にとって、クラウドファンディングは有力な資金調達の手段になるだろう。有効活用して、事業に役立ててほしい。

文・若山卓也(ファイナンシャルプランナー)