経営者にとっての経営課題のひとつに「コストカット」がある。売上は経済環境や取引先といった不確定要素が多いが、経費はある程度は自社でコントロールできる。とはいえ、無理矢理コストを削減しようとすると、生産性を下げる可能性もあり、適切なコストカットというのは意外と難しい。やっていいコストカット、やってはいけないコストカットを解説する。

目次

  1. コスト削減をする上で知っておきたい基本的なこと
    1. そもそも「コスト」とは何か?
    2. コストカットのキモは経費を正しく管理するということ
    3. 経費が正しく使われているかを知るための視点、3M(ムダ・ムラ・ムリ)とは?
  2. コストカットでやるべき具体的な5つのこと
    1. サービスそのものの見直し
    2. 業務フローの見直し
    3. 人件費の見直し
    4. 不動産費の見直し
    5. 一般経費の見直し
    6. 社内へコストカットを浸透させるためには?
  3. 削減余地が大きいコストカットは?
    1. 電気代・出張代などは削りやすい?
    2. コストカットできるのは「お金」だけではない
  4. やると失敗するコストカット例とは?
    1. 原材料費の削減
    2. 人件費を削る
    3. 負のスパイラルに陥る
  5. 効率的なコストカットで企業体質を強くしよう

コスト削減をする上で知っておきたい基本的なこと

「コストカット」のやり方は?経営者が頭を悩ませるカットしてよいもの・悪いもの
(画像=pogpnici/stock.adobe.com)

コストカットを考える上で、知っておきたい基本的なことを理解しよう。

そもそも「コスト」とは何か?

損益計算書を見ると、売上収益の下に原価、販売費および一般管理費、営業利益が続く。この「原価、販売費、一般管理費」の項目が広義の上ではコストとなる。

コストカットのキモは経費を正しく管理するということ

上記で説明したように、コストの種類は営業活動で発生する費用すべてであり、その範囲は広い。なんでもかんでもカットすれば、営業活動に支障が出てくるというのは簡単に理解できる。

コストカットをする上では経費の正しい管理が重要となる。つまり、本来不要な経費が使われていないか、前期(前月)と比べて急増した項目は何か、その項目の支出は本当に必要かといったことを随時確認することが重要となる。

コストカットの対象は全部門、すべての項目が対象になり得る。経営者が陣頭指揮をとって、会社として取り組むことである。また一時的なものではなく、継続的な活動だ。

経費が正しく使われているかを知るための視点、3M(ムダ・ムラ・ムリ)とは?

経費が正しく使われているかをモニタリングする上では可視化が必要となる。そのための視点として持ちたいのが、3M(ムダ・ムラ・ムリ)だ。

ムダは、過剰な在庫や物流費、使っていない会議室に使用する光熱費などが該当する。ムラは、生産性や稼働率が安定しないことを意味する。ムリというのは、能力以上に負荷がかかっている状態で、機械の故障の原因だったり、従業員であれば不満が募り離職の原因になったりするものだ。

理想的な状態は、能力・キャパシティと業務負荷が均衡している状態を指す。能力が余っていてはムダだし、負荷が多ければムリになる。また、バラツキが多い状態はムラと言えるだろう。この視点を常に持つことが、経費を正しく使うことに繋がるのだ。

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コストカットでやるべき具体的な5つのこと

では、実際に、コストカットを行う上で、具体的にどのように進めればいいのだろうか。

サービスそのものの見直し

効果が高いのがサービスそのものの見直しだ。長年赤字が続いている事業や使われていないサービスなどを徹底して洗い出し、不要なサービスについては、できるだけなくす方向に努めるのだ。

よくあるケースとして、商品の販売自体は黒字であっても、付き合いではじめたアフターサービスが過剰で結果として事業自体が赤字になってしまうことなどが挙げられる。この場合、アフターサービスを終了することで利益率が改善する。顧客との関係性もあるため、期限を設けて数ヶ月後に簡素化、有料化することをアナウンスするといった取り組みも有効だ。本当に必要なサービスなのかどうなのか、一つひとつ見極めることが重要だろう。

業務フローの見直し

次に行うのが、業務フローの見直しだ。全社の業務を洗い出し、どの業務にどのくらいのコスト(ヒト・モノ・カネ)が掛かっているのかを探る。

ここでのポイントは、「改善」ではなく「見直し」をすること。よくあるアプローチが、「検品工程で、1時間あたり100個検品していたものを、効率化して120個にする」という発想。確かにこれも効率化に間違いない。しかし、100個のものを120個にするのは、個々人の努力によることが大きく、仕組み化されていない。

たとえば、想定リスクを洗い出し検品数を10分の1にするくらいの抜本的な見直しが求められる。善意ではなく、「仕組み」でうまくいくように業務フローを再設計することが効率化において重要だ。仮にシステム等への投資が必要になったとしても、トータルコストが抑えられるのであれば、積極的に投資していくべきだろう。

人件費の見直し

単純に人件費を減らすのは、モチベーションの観点からも良策ではない。

業務効率化によって、正社員がやっていた仕事をアルバイトやパートにまわし残業代を減らす、業務そのものを外注して外注費として変動費化するといった取り組みが考えられる。モチベーションを下げずに、人件費を下げていくことが理想だろう。

不動産費の見直し

不動産費や、設備費等の見直しはできないと思っていないだろうか。工夫次第では十分に見直しが可能だ。

たとえば、フリーアドレス制にして座席数を減らす、在宅勤務制度を導入するなどを通じて、コンパクトなオフィスが実現できるため賃料削減が可能となる。

さらには、不動産や設備を、「持つ」ことが正しいかどうかを考えた方がいいかもしれない。不動産は賃貸の方が安くつくかもしれないし、設備もリースという選択肢があり得る。コストカットをする上では、できるだけ柔軟な発想をとることが重要だ。

一般経費の見直し

最後に一般的な経費の見直しだ。たとえば交通費や出張費、光熱費、通信費などの細かい経費がこれにあたるだろう。こういった経費は、とくに大きな工夫がなくても、従業員の細かい配慮や注意で、削減することが可能になる。ムダな契約をしていないかを改めるとともに、従業員一人一人の継続した努力が重要になるだろう。

社内へコストカットを浸透させるためには?

先ほども述べたが、基本的に、コストカットは、特定の人がやるものではない。経営者を筆頭に、従業員全員で行うものだ。そのため、「どのように浸透させるか」が重要になる。

そのため重要なのが、「仕組み化」だ。ただ、「コストカットを頑張りましょう」と伝えても、長続きはしない。たとえば、業務フローを変えてコスト削減に成功した人に褒賞を出す、日々の出張費や交通費の経費の削減の一部を従業員に還元するといった従業員のモチベーションを高めながら、コストカットに取り組める環境を作るのが経営者の役割だと言ってもよいだろう。ポイントは、「仕組み化」と「還元」だ。

削減余地が大きいコストカットは?

コストカットをするにあたり、具体的な手順を説明した。しかし、コストカットにも、効率の良いコストカットと、やってはいけないコストカットがある。では、効率の良いコストカットとは、いったいどのようなものだろうか。

電気代・出張代などは削りやすい?

比較的コストカットの効果が出やすく、取り組みやすいのは、電気代や通信費、出張費や交通費だろう。たとえば、使っていない部屋の電気を切る、温度設定を1度変える、などは、明日からでもできることだ。また、出張の頻度を落とすことや、交通費を削るのも、そんなに難しいことではない。

ただここで注意したいのは、やはり社員のモチベーションだ。暑すぎたり寒すぎたり、暗すぎたりする環境では効率も落ちるし、出張を削って営業機会の損失があっては本末転倒だ。出張をWebミーティングで代替するなど、社員に負担のかからない方法を探しながら行うのが良いだろう。

コストカットできるのは「お金」だけではない

直接費用を削るのは、どの経営者も考えており、新しいアイデアが出てきづらいかもしれない。しかし、実は削れるのはお金だけではないのだ。

たとえば、書類の決裁承認を紙からWebに移行することで「紙で回覧する時間」の削減につながる。あるいは、出張を削減することで、「移動時間」の削減につながる。

また、支払いを電子化するというのも、お金以外のコストカットに繋がっている。たとえば、これまで、請求書が発行されてから、それを確認し、銀行窓口まで支払いにいく。この業務は、手数料に加え、人件費、作業時間を含めると、目に見えないコストがかかることになる。一方で、法人カードで支払いをすれば、こういったチェックの時間などが短縮される。実際、法人カードは、経費精算の効率アップの点などから、年々導入が増えているようだ。

このように、「時間」や「労力」の削減も、長期的にはコストカットに繋がってくることが多い。お金という視点だけでなく、「時間」など、様々な視点からムダ・ムラ・ムリを探すとよいだろう。

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やると失敗するコストカット例とは?

逆に、良くないコストカットはどのようなものか、解説する。

原材料費の削減

1つ目は、原材料費の削減だ。もちろん原材料の見積もりをしっかりとって、品質が変わらないうえで削減するのはよいことだ。しかし、削減が先に来るあまり、質を落とすというのは、本末転倒だろう。原材料の質というのは、製品の競争力に直接影響を与える。短期的な利益を得るために、長期的な利益を犠牲にしてはいけない。

人件費を削る

人件費の削減も、慎重にしたほうがよい。なぜなら、社員の給与というのは、モチベーションに密接に関わっており、モチベーションが下がると、結果的に生産性が下がることが多いからだ。業務プロセスを見直し、残業代を減らすことや、外注して採用を抑えることはもちろん積極的に行うべきだが、人件費を削る上で、社員の給料を下げることを検討する際は、慎重に行ったほうがよいだろう。

負のスパイラルに陥る

最後に注意したいのが、「コストカット→売り上げ減少」の負のスパイラルに陥ることだ。コスト削減を優先するために、売上を犠牲にしたとする。そうすると、生み出せる利益がさらに小さくなり、さらなるコストカットが必要となる。そしてコストカットの結果さらに売上が減少……というスパイラルに陥る例も珍しくない。

一度失った売上を取り戻すのは難しいし、企業の土台を支えているのは売上だ。コストカットを刷る際は、こういったスパイラルに陥らないよう、注意して行いたい。

効率的なコストカットで企業体質を強くしよう

コストカットは、経営者にとって、常に考えなければいけないものだ。しかしながら、過剰なコストカットは、モチベーションの低下や売上の減少を招きかねない。また、コストカットは、一朝一夕にできるものではない。常に「ムダ・ムラ・ムリ」が発生していないか気を配り、新しい仕組みを作ることでコストを削減するアプローチができることで強い企業体質になっていくだろう。

文・Business Owner Lounge編集部