企業規模が大きくなると、消費税の納税額も大きくなる。消費税といえども、経営者としてはできるだけキャッシュアウトを減らしたいだろう。

人件費を給与ではなく「外注費」として支払うと、納付する消費税額が減る。外注費で消費税を減らす仕組みや条件を解説する。

目次

  1. 消費税の基礎!消費税の納付義務は事業者にある
  2. 給与では消費税を抑えられない理由
    1. 同額のキャッシュアウトなら課税仕入が有利
    2. 給与の支払は課税仕入に該当しない
  3. 給与の支払い方で消費税を抑える仕組み
    1. 給与ではなく「外注費」にすると仕入税額控除の対象に
    2. 新たな負担なく消費税の納付額を減らせる
    3. 給与を外注費とする主な条件(労働者性の有無が焦点)
    4. 既存従業員の外注への変更は労基法などの制約がある
  4. 仕入税額控除をフル活用する条件 課税売上高5億円以下かつ課税売上割合95%
    1. 条件満たせない場合の仕入税額控除の計算
    2. 個別対応方式が有利になりやすいが事務コストが課題
  5. 給与を外注費とすれば消費税の節税ができる

消費税の基礎!消費税の納付義務は事業者にある

給与で消費税を抑えるテクニック!ポイントは「外注費」での計上
(画像=DOC RABE Media/stock.adobe.com)

消費税の納付義務は、消費者ではなく事業者にある。事業者は取引相手(顧客)が支払った消費税を預かり、消費者に代わって納付する。

納付期限は、事業年度末から2ヵ月以内だ。3月末決算なら、5月末までに納付することになる(確定申告納付)。なお、直前の事業年度で48万円以上消費税を納めた実績がある場合、事業年度の途中で一定の消費税を納めなければならない(中間申告納付)。

・創業3期以上、売上1,000万円超の事業者に納付義務


課税売上高
消費税の課税対象になる売上
基準期間 前々事業年度。
この期間に課税売上高が1,000万円超だと納税義務がある。
特定期間 前事業年度の前半6ヵ月。
基準期間の判定で消費納税義務がなくても、特定期間で課税売上高が1,000万円超だと納税義務者になる。
例)2021年3月期に納税義務があるかどうか判断する場合
事業年度:2021年3月期(2020年4月~2021年3月末)
基準期間:2019年3月期(2018年4月~2019年3月末)
特定期間:2020年3月期第2四半期(2019年4月~9月末)

すべての事業者に納付義務があるわけではない。消費税の納税義務者は、原則として「基準期間」あるいは「特定期間」の課税売上高が1,000万円を超える事業者だ。

課税売上高とは、消費税の課税対象となる売上のことだ。土地の譲渡のように、消費税が掛からない取引は含めない。

創業から2期を経過していない新法人の場合は、基準期間が存在しないため納税義務が免除される。これは、中小事業者の税務負担に配慮したものだ。ただし、特定の事由に該当すると免除されない特例もある。

・売上の消費税-仕入の消費税=納付額


 
消費税(10%)
課税売上高:200億円 20億円
課税仕入額:150億円 15億円
(=仕入税額控除)
納付する消費税額: 5億円 

納める消費税は、原則的に顧客から支払いを受けた消費税額から、仕入で支払った消費税額を引いた金額だ。

消費税の税率は10%と軽減税率の8%があり、どちらを適用するかは取引ごとに判断する。よって取引ごとの記録と管理が大切で、特に新税率が始まった2019年10月1日を含む事業年度では注意したい。

>>会員登録して限定記事・イベントを確認する

給与では消費税を抑えられない理由

納付する消費税額を計算する際に、顧客が支払った消費税額から差し引く金額を「仕入税額控除」という。

仕入税額控除が大きいほど、納付する消費税額が少なくなる。納付する消費税額を抑えたいなら、できるだけ仕入税額控除を大きくする必要がある。

同額のキャッシュアウトなら課税仕入が有利

仕入税額控除を大きくするには、支払の多くが課税仕入であることが望ましい。同じ金額を支払うなら、できるだけ課税仕入として支払うと納付する消費税を抑えられる。

厳密に言えば、仕入税額控除は仕入で支払った消費税と同額になるわけではなく、「課税売上割合(課税売上高÷総売上高)」や「みなし仕入れ率」などによって算出されるので、実際の運用では注意してほしい。

仕入税額控除の計算は、後述する。

給与の支払は課税仕入に該当しない


主な不課税取引
主な非課税取引
〇給与、賞与等 〇土地の譲渡、貸付
〇寄付金、補助金等 〇住宅の貸付
〇損害賠償金等 〇有価証券の譲渡

給与の支払は、仕入税額控除の対象にならない。

消費税の課税対象は「事業で行う資産の譲渡」であり、該当しない取引を「不課税取引」、該当するが課税対象としない取引を「非課税取引」という。給与の支払は不課税取引に該当するため、どれだけ多く支払っても納める消費税は減らない。

給与が不課税取引であることが、消費税を抑えられない理由だ。他の不課税取引や非課税取引による仕入も、同じ理由で消費税の節税効果はない。

>>会員登録して限定記事・イベントを確認する

給与の支払い方で消費税を抑える仕組み

給与の支払い方法で消費税を抑える方法もある。

給与ではなく「外注費」にすると仕入税額控除の対象に

給与は仕入税額控除の対象にならないが、「外注費」は対象になる。人件費を給与として支払うのではなく、外注費として計上することで消費税の節税効果が期待できる。

新たな負担なく消費税の納付額を減らせる

会社の支払い 労務提供者の収入 消費税の節税効果
給与 20万円 20万円 0
外注費 20万円※外注費  18.2万円消費税  1.8万円 20万円※年収が1,000万円未満なら消費税の納税義務なし 約1.8万円(10%)
給与:労務提供者と「雇用契約」を結ぶ(労務提供者=従業員)外注費:労務提供者と「委託契約」を結ぶ(労務提供者=個人事業主)

人件費を給与として支払う場合と、外注費として支払う場合を比較してみる。「外注費として支払う」とは、従業員を雇用(派遣労働も含む)するのではなく、請負業者に外部委託して報酬を支払うことだ。

わかりやすくするため、会社の支払い(外注費+消費税)を給与と同額に設定する。すると新たな負担なく、外注費にかかる消費税が仕入税額控除となる。また、雇用しないので社会保険料の会社負担もなくなる。

労務提供者側の収入は、変わらない。受け取る消費税も、労務提供者の課税売上高(年収)が1,000万円以下なら免税になる。

給与を外注費とする主な条件(労働者性の有無が焦点)


業務諾否の自由がある
会社が依頼する業務を受けるかどうかの判断を、労務提供者側が自由にできる。
業務上の指揮監督がない 業務の具体的な指示、また予定されていない業務外についての指示を、労務提供者が会社から受けていない。
拘束性がない 労働の場所や時間について、会社からの指示がない。
代替性がある 労務の提供が委託契約者本人に限定されていない、また労務提供者の判断で補助者を使うことが認められている。
報酬額が事業者として妥当 委託契約の報酬(外注費)の額が、会社従業員の時間給相当ではなく、労務提供者が事業者として負う責任に見合った金額である。
労務提供者に事業者性がある 労務提供者が、労務に必要な機器などを自身で所有し費用を負担している。また労務提供者が独自の商号を持っている。
専属性がない 労務提供者が、他社の業務に従事することができる。

外注費としての支払いが認められるためには、労務提供者に「労働者性」がなく、会社と労務提供者が対等な立場で契約し、業務を遂行している必要がある。

労働者性とは、労働基準法などが定めるいわゆる労働者に該当するかどうかの判断であり、労働者性が認められると外注費と認めらない。労働者性は上記のような条件で、実態に則して判断される。

既存従業員の外注への変更は労基法などの制約がある

既存従業員を委託契約へ切り替える場合、コンプライアンス面で注意が必要だ。

労務提供者側からすると、消費税を含む報酬額が給与と変わらないとしても、社会保険料の負担や雇用保険から外れるなどのデメリットがある。また労働基準法などの保護から外れ、事業者としてのリスクを負うことになる。

従業員の同意のない契約の切り替えは、コンプライアンス上のハードルが高い。既存の従業員を外部委託に切り替えるには、双方の納得が不可欠だ。

仕入税額控除をフル活用する条件 課税売上高5億円以下かつ課税売上割合95%

仕入税額控除は仕入で支払った消費税をもとに計算するが、無条件で全額を算入できるわけではない。全額を算入するためには、課税売上高が5億円未満で、かつ「課税売上割合」が95%以上である必要がある。

課税売上割合は、「課税売上高 ÷ 総売上高」で計算される。これは総売上に占める課税売上高の比率を示すもので、非課税の売上が大きいと課税売上割合が小さくなってしまう。

条件満たせない場合の仕入税額控除の計算


 
仕入税額控除の計算
個別対応方式 [1]+ ([3] ×
課税売上割合 )
一括比例配分方式 ( [1]+ [2] + [3]
) × 課税売上割合

仕入で支払った消費税の額を以下の3つに分割する
[1]課税売上のみに要する仕入で支払った消費税
[2]非課税売上のみに要する仕入で支払った消費税
[3]課税売上と非課税売上に共通して要する仕入で支払った消費税

仕入で支払った消費税を仕入税額控除に全額算入する条件が満たせない場合、「個別対応方式」か「一括比例配分方式」のどちらかで仕入税額控除を計算する。

個別対応方式が有利になりやすいが事務コストが課題


A社の条件
15億円
[2]0
[3]0
課税売上割合:95%

B社の条件
[1]10億円
[2]0
[3]5億円
課税売上割合:95%

C社の条件
[1]5億円
[2]5億円
[3]5億円
課税売上割合:95%

仕入税額控除の額
個別対応  :  15億円
一括比例配分:14.25億円
仕入税額控除の額
個別対応  :14.75億円
一括比例配分:14.25億円
仕入税額控除の額
個別対応  : 9.75億円
一括比例配分:14.25億円

課税売上のための仕入が多い事業者は、個別対応方式を選ぶと仕入税額控除の金額が大きくなり、納付する消費税額を抑えやすい。

事業者の商材の多くは、消費税の課税対象だ。よって課税売上に要する仕入も大きくなりやすいため、個別対応方式が有利になるだろう。

ただし個別対応方式では、仕入で支払った消費税を3区分に分ける必要がある。一括比例配分方式と比較すると、事務コストが大きくなりやすい。

一方、非課税売上に要する仕入が多い事業者は、比例配分方式が有利になりやすい。仕入で支払った消費税額を3区分に分ける必要もない。しかし比例配分方式は、一度選択すると2年間変更できないので注意してほしい。

給与を外注費とすれば消費税の節税ができる

給与の支払いでは納付する消費税を抑えられないが、外注費として支払えば抑えられる。社会保険料などの負担もなくなるため、会社の負担が減る。

ただし外注費として認められるには条件があり、労務提供者が会社に従属しない独立した事業者である必要がある。実質的な従業員を外注として扱うことはできない。

外注費を仕入税額控除に算入する場合は、慎重に検討してほしい。

文・若山卓也(ファイナンシャルプランナー)