法人税の確定申告は複雑なため、基本的には税理士へ依頼される方が大半だろう。しかし会社の状態を把握する上では全てを他人任せにするのではなく、経営者自身が確定申告に関する最低限の知識は把握しておこう。ここでは法人税の確定申告書の見るべきポイントと注意点について紹介する。

目次

  1. 法人がするべき確定申告は2つ!法人税と消費税
    1. 法人税の確定申告
    2. 消費税の確定申告
  2. 法人の確定申告の手順と注意点
    1. STEP 1.会計上の当期純利益を確定する
    2. STEP 2.税務上の調整すべき項目を確認する
    3. STEP3.納税額を確定する
  3. 法人が確定申告しないと受けるペナルティとは?
    1. ペナルティが課される場合
    2. 課されるペナルティは?
  4. 法人の決算は複雑な作業だが会社の状態も把握できる

法人がするべき確定申告は2つ!法人税と消費税

経営者が知っておきたい「法人の確定申告」の手順と注意点!
(画像=PIXTA)

法人の主な確定申告は2つ、「法人税の確定申告」と「消費税の確定申告」だ。以下で詳細を解説していこう。

法人税の確定申告

法人の確定申告における主な様式等について説明する。

法人税の確定申告書の1枚1枚に専門的な呼び名がある。それが別表と呼ばれる様式である。

・別表四 所得の金額の計算に関する明細書
法人税法において、この別表四は会計上の所得と税務上の所得を調整する大事な役割を担っている。

この明細書は、損益計算書に掲げた当期純利益の額又は当期純損失の額を基として、いわゆる申告調整により税務計算上の所得金額若しくは欠損金額を計算するために使用する。

別表四を簡単に説明すると、当期純利益又は当期純損失から始まり、加算項目(交際費等の損金不算入額等)、減算項目(受取配当等の益金不算入額)による足し引きをすることにより会計から税務の仮の所得金額を導き出している。

・別表一 普通法人の申告書
別表一は、税務上の所得を導き出した別表四の所得金額を基に、具体的な納税額を導き出す表である。また、法人税における税額控除(試験研究費の特別控除等)を受けた場合には、ここに控除銀額が記載される。

・別表二 同族会社等の判定に関する明細書
別表二は、法人の支配関係を把握する表であり、税務上における会社の種類を判定する。

この明細書は、会社が同族企業に該当するかを判定する場合に記載する。同族企業とは、基本的には創業者一族が経営する企業がイメージしやすいだろう。専門的に言えば、会社の株主等の3人以下、並びにこれらと特殊な関係のある個人及び法人がその会社の発行済株式総数の50%超の株式を保有している会社を指す。

・別表十四(ニ) 寄付金の損金算入に関する明細書
法人が支出した寄付金については、この別表十四(ニ)で寄付金の種類に応じて税務上の損金に算入できる金額を算出する表である。

法人が国、公立学校、五輪(オリンピック)の開催、日本赤十字社などの種類を分けて、それぞれの区分ごとに税務上の損金算入額を算出する。

・別表十五 交際費等の損金算入に関する明細書
別表十五は、法人が支出する交際費のうち税務上損金の額に算入することができる金額を算出する表である。資本金1億円以下の法人が支出する交際費は800万円まで損金算入できることをご存知だろう。この別表十五を使用する。

・別表七(一) 欠損金の損金算入等に関する明細書
別表七(一)は、法人の税務上の所得金額がマイナスの場合に翌年以降へそのマイナスを繰り越すための表となる。

実務上、この別表七(一)欠損金の損金算入等に関する明細書は赤字の会社においては、必ず使用する表だ。経済状況によっては、一時的に赤字転落してしまう法人もあるため、そのような時に、この欠損金の繰越控除の適用により青色申告書を提出して一定の要件を満たせば10年間繰越して控除することができる。

・別表十六(六) 繰延資産の償却額の計算に関する明細書
別表十六(六)は、法人が支出する費用のうち支出の効果が翌年以降に及ぶもので、一定のものに該当するときは、法人税法上の繰延資産に該当する。そのような繰延資産を損金の額に算入するために会計上の償却額と税務上の償却限度額を記載して、当期の損金算入額を算出するものである。

実務上、開業時の創立費、開業費が必ずこの表に記載されるため、どの経営者も一度は目にする明細書である。

・別表十六(七) 少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例に関する明細書
別表十六(七)は、青色申告書を提出する中小企業者が取得する固定資産のうち、その取得価額が30万円未満であるものについては、その取得年に費用として一括で損金額に算入することができる。

実務上、何か固定資産を取得し、取得価額が30万円未満であるパソコン、事務机等々を購入した際によく使用する。なお、留意したい点としては、この特典を使用できる限度額が決まっている。その事業年度で適用できる金額は年300万円までである。

消費税の確定申告

消費税の確定申告は、法人税の確定申告のように別表の種類が複数あるのではなく、シンプルにまとめられているため、ここでは簡単に申告書を紹介する。消費税の確定申告は法人税と同様に会計上の取引を基に作成するため、大前提として会計上の取引の内容が整理されていることが大切となる。

・第二表 課税標準額等の内訳書
消費税の算出の基となる課税標準額を記載する内訳書となる。また、その課税標準額を算出するために付表1-2及び付表1-1(消費税額集計表)を合わせて作成する。内容としては、課税売上高の合計額を計算し、税込金額を税抜金額にすることにより課税標準額を算出する。

・控除対象仕入税額を計算する
仕入等の金額から課税仕入れにならないものを除いて、課税仕入高を算出する。このタイミングで課税売上割合を計算し、課税仕入れに係る消費税額を計算する。

・第一表 消費税及び地方消費税の申告書
実際に課税売上高及び控除対象仕入税額を算出すれば、その差引によりこの申告書で納付すべき消費税額が算出される。

消費税で抑えるべき重要な点は、何が課税売上又は課税仕入れに該当するかを認識することである。消費税の納税額は多額となることが多いため、税負担を軽減するためにも課税仕入れを増加させる際に課税なのか非課税なのかを抑える必要がある。例えば、機械、車両の購入は課税仕入れに該当するが、土地、商品券の購入は非課税取引に該当する。税負担を軽減するつもりで決算月の直前に商品券を大量に購入して得意先へ贈答等をしても税効果は得られない。

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法人の確定申告の手順と注意点

ここでは、法人の確定申告を実際に進める上での手順と注意点を簡潔に紹介する。法人税の確定申告のゴールは、当期の税額を確定することにある。確定すべき項目を以下で説明しよう。

STEP 1.会計上の当期純利益を確定する

納税額は会計上の数値に基づいて確定する。売上、仕入、経費が確定していなければ、税務上も確定することができないのである。

STEP 2.税務上の調整すべき項目を確認する

会計の数字を確定させた後、法人税法に照らし合わせて、会計上の収益及び費用が法人税法上の益金及び損金に算入されることが妥当かどうかを判断する。

もっとも、会計の決算を締める段階において法人税法の妥当性を考慮することが多いため、中小企業の確定申告では、この税務調整はほとんど特別な処理をしないように決算を締めている。

大きな会社だと、基本的に会計と税務はズレが生じる。それは、会計の決算は株主等の第三者へ見せるため良い数字を見せるが、法人税法は、税金の計算を目的としているため、会計と税法にズレが生じ、これを調整する作業が前述した別表を使用して調整をする。

STEP3.納税額を確定する

上記の1、2が確定すれば、残りは納税額を確定するだけである。その様式が別表一である。

おおまかな法人税の確定申告の手順を説明したが、実際の作業となると細かい部分の確認、記入など専門的なことが多いいため、しっかりと確定申告を進めるには税理士へ依頼したい。

法人が確定申告しないと受けるペナルティとは?

法人税の確定申告をしないとペナルティが課される。ペナルティが課されないようにするために、ペナルティが課される場合と課されるペナルティの内容について、理解を深めておくとよいだろう。

ペナルティが課される場合

・期限後申告
期限内申告ができずに、期限後に申告することを通称として期限後申告と言われる。

・無申告
名前の通り、確定申告をしていない場合である。

課されるペナルティは?

1.延滞税
延滞税は、法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じた延滞税を納付する必要がある。

2.原則的な延滞税
納期限の翌日から2ヵ月を経過する日までの場合 原則として年7.3%

納期限の翌日から2ヵ月を経過した日以後の場合 原則として年14.6%

3.特例基準割合
原則的な延滞税と比較してどちらか低い割合をとることとなる。

納期限の翌日から2ヵ月を経過する日までの場合 特例基準割合+1%

納期限の翌日から2ヵ月を経過した日以後の場合 特例基準割合+7.3%

なお、特例基準割合は各年の銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合となるため、各年の割合は国税庁のホームページを参照する必要がある。

4.無申告加算税
無申告加算税は、期限後申告、所得金額の決定をうけると納税金額と合わせて納付が必要となる。

原則
50万円までは15%
50万円を超える部分は20%

5.重加算税
重加算税は、相当な悪事であると認められる場合に適用されるものである。税額の仮装・隠ぺいに基づいて期限内申告書の提出をせず又は期限後申告書を提出したときは、無申告加算税の基礎となる税額の40%に相当する加算税が課される。

なお、相当な悪事とは、二重帳簿、帳簿書類の破棄又は隠匿等が該当する。脱税という言葉に該当する事実がある場合に課される相当なペナルティである。

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法人の決算は複雑な作業だが会社の状態も把握できる

原則として、法人の決算は複雑な作業になるため、事前に税理士へしっかりと依頼した方が安心だ。しかし自分の会社の経営状態を把握する上で、確定申告書に何が書かれているのかを読み解くスキルは最低限備えておきたい。特に融資を受ける際、過去の決算申告書を金融機関に提示するとともに説明も求められるはず。経営者が会社の「健康状態」を一番に把握しているのは当然のことだろう。

文・関伸也(税理士)