起業の際には形態に応じた手続きが必要であり、さまざまな準備をしなければならない。効率的に手続きを済ませるには、事前に済ませておく準備と、起業の基本的な流れを事前にチェックしておくことが重要だ。

そこで今回は、起業手続きの前に知っておきたいポイントや準備、手続きの流れなどをまとめた。スムーズに事業を始められるように、本記事を参考にしながらスケジュールを立てていこう。

目次

  1. 法人と個人事業主の違いとは?
  2. 起業手続きの前に…欠かせない3つの準備
    1. 1.起業資金の準備
    2. 2.事業計画書の策定
    3. 3.起業時に必要なものをそろえる
  3. 起業手続きの基本的な流れ
    1. 【STEP1】定款の認証と資本金の払い込み
    2. 【STEP2】法務局での登記申請
    3. 【STEP3】書類の取得・税務署への各種届出
    4. 【STEP4】社会保険の加入手続き
  4. 起業時にかかるコストはどれくらい?法人設立で発生する費用のまとめ
  5. 書類の準備はもちろん、「資金」の準備も忘れずに

法人と個人事業主の違いとは?

起業の手続き完全ガイド!欠かせない3つの事前準備と、基本的な流れや費用のまとめ
(画像=REDPIXEL/Adobe Stock)

起業の前準備として、まずはビジネスに適した「起業形態」を選ばなくてはならない。起業形態には大きく分けて「法人・個人事業主」の2つがあり、どちらを選ぶのかによって起業の手間やコスト、経営の進め方などが変わってくるため、起業形態は慎重に選ぶことが重要だ。

法人・個人事業主にはさまざまな違いがあるが、特に押さえておきたいものを以下で確認しておこう。


主な違い
法人 個人事業主
起業時のコスト 最低で約25万円 0円
起業にかかる手間 定款作成や登記が必要になる 開業届を提出するだけで起業できる
社会的な信用性 個人事業主に比べると高い 低い
会計・経理の進め方 法人決算書を作成し、税務申告をする必要がある 個人の確定申告だけで済ませられる
税金・経費 経費として認められる範囲は広いものの、赤字経営でも「法人税の均等割(約7万円)」が毎年かかる 経費として認められる範囲が狭い
社会保険の負担 従業員1人につき、給与の約15%~16%の負担が必要 従業員5人未満の場合は負担なし

上の表を見てわかる通り、起業時にかかる手間やコストの面では個人事業主のほうが有利といえる。その一方で、法人は税制面・信用力の面でメリットが大きく、一定の所得金額を超える場合(※一般的には700万円~800万円と言われる)には法人のほうが有利とされている。

また、起業形態によって社会的な信用性が異なる点も、軽視できないポイントだ。信用性が低いと融資を受けることが難しくなるほか、集客の面でもハードルが高くなってしまうため、将来的に上場などを目指す場合は法人が望ましい選択肢になるだろう。

適した起業形態を選ぶにはさまざまなシミュレーションが必要になるが、ビジネスの成功を左右する可能性もあるため、上記の違いを見比べたうえで慎重に検討をしておきたい。

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起業手続きの前に…欠かせない3つの準備

起業形態を決めた後には、手続きに向けた準備を整えていく流れが一般的だ。ここで万全の準備を整えておかないと、スムーズに事業を始めることが難しくなるため、事前準備を軽視してはいけない。

必要な準備は業種ごとにやや異なるが、以下ではどの業種にも欠かせない3つの準備を紹介していこう。

1.起業資金の準備

法人はもちろん、個人事業主を選んだ場合であっても、起業資金はしっかりと用意しておく必要がある。起業コストに加えて、ある程度の設備資金や運転資金がなければ、スムーズに事業を始められないためだ。

資金の準備方法はいくつかあるが、特に決まっていない場合は「銀行預金」を検討しておきたい。たとえば、地域の金融機関の口座に貯めておけば、それが実績として認められて将来的に融資を受けやすくなる可能性がある。

また、法人の場合は事前に「資本金」を決めておき、場合によっては出資者を探す必要があるため、早めに動き出すことを意識しておこう。

2.事業計画書の策定

これは当然の準備とも言えるが、ビジネスを始める際に「事業計画書の策定」は欠かせない。事業計画書がなくても起業は可能だが、具体的なプランなしでは経営方針が曖昧になったりブレが生じたりするため、できるだけ綿密な事業計画書を作成しておくべきだ。

事業計画書の作り方がわからない場合は、税理士や中小企業診断士などの専門家への相談を検討したい。また、地域によっては公的機関(商工会や商工会議所など)が相談窓口を設けているので、第三者の力も借りながら事業計画書をブラッシュアップしていこう。

3.起業時に必要なものをそろえる

資金と事業計画書だけでは、スムーズに事業を始めることはできない。たとえば以下で挙げるものは、どのような業種でも事前に用意しておく必要があるだろう。

  • 会社のロゴマークや名刺
  • 料金やサービスなどをまとめた営業関連資料
  • 本店にする事務所や店舗
  • 会社と代表者の印鑑
  • 会社用のホームページ
  • 会社用のクレジットカード(法人クレジットカード)

ホームページは必須と言えるものではないが、現代ではインターネットからビジネスチャンスが舞い込んでくるケースが多く見受けられる。独自のウェブサイトを用意しておくことで、ターゲット層からの信用性が高まる可能性もあるため、ホームページはできるだけ事前に用意しておくべきだ。

ほかにも、業種によってはさまざまな設備などが必要になるため、事業計画書の内容を確認しながら、起業に向けて万全の準備を整えておこう。

起業手続きの基本的な流れ

個人事業主の場合は、税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出すれば簡単に起業できる。個人情報や事業内容をはじめ、さまざまな情報を記載する必要はあるが、法人に比べると手間もコストもかからない。

その一方で、法人が起業をする場合にはいくつかのステップを踏む必要がある。必要な工程が漏れないように、大まかな流れを以下でしっかりと確認しておこう。

【STEP1】定款の認証と資本金の払い込み

定款とは、商号や事業の目的、機関設計をはじめとした、会社の基本的規則をまとめたもの。法人を設立する際にはこの定款を作成し、公証人役場(※本店所在地を管轄する役場)で認証を受けなくてはならない。

定款の提出時には3通の定款に加えて、以下のものも用意する必要がある。

  • すべての発起人の印鑑証明書
  • 手数料と収入印紙代(約92,000円)
  • 代理人が手続きを行う場合は委任状

定款の認証が終わったら、発起人個人の銀行口座を開設し、その口座にあらかじめ決めておいた資本金を支払っておこう。なお、資本金についてはすべての発起人が支払う必要があり、後の手続きのために「払込証明書」を受け取っておくことが重要だ。

【STEP2】法務局での登記申請

【STEP1】が終わったら、法人の設立登記へと移っていく。手続き自体は法務局で簡単に済ませられるが、以下のように必要書類の数が多いため要注意だ。

登記申請の必要書類 概要
・定款 【STEP1】で認証を受けた定款を用意する。
・払込証明書 【STEP1】で用意した、資本金の払込証明書のこと。
・発起人の決定書 発起人の同意によって「本店所在地」が決まったことを示す書類のこと。
・設立登記申請書 登記申請をする際の申請書。法務局のホームページ上で、基本的な様式が公開されている。
・登録免許税貼付用台紙 登録免許税を納めるための台紙。
・登記内容を保存した書類等 紙面に登記内容を保存したもの。CD-Rやフロッピーディスクでの保存も可能。
・就任承諾書 役員になる人物の承諾書。
・印鑑証明書 役員全員の印鑑証明書を用意する。

不備がない状態で登記申請を済ませれば、提出してから1週間ほどで受領される。なお、登記申請は法務局へ足を運ぶほか、インターネット上や郵送でも済ませることが可能であるため、都合の良い方法を選ぶようにしよう。

【STEP3】書類の取得・税務署への各種届出

登記申請が終わっても、法人はそのまま経営をスタートできるわけではない。登記の後に「登記事項証明書」や「印鑑証明書」などの書類を受け取ったら、次は各種届出を済ませる必要がある。

必要になる届出は業種ごとにやや異なるが、以下はほとんどの法人が提出しなくてはならないので、漏れがないようにしっかりとチェックしておきたい。

  • 法人設立届出書
  • 青色申告の承認申告書
  • 給与支払事務所等の開設届出書
  • 源泉徴収の納期の特例の承認に関する申請書
  • 減価償却資産の償却方法の届出書
  • 棚卸資産の評価方法の届出書
  • 法人設立届出(※自治体へ提出するもの)

上記の届出は、管轄の税務署が提出先となる。届出の準備に時間がかかる場合は、司法書士などの専門家に相談することも検討しておこう。

【STEP4】社会保険の加入手続き

従業員を雇う場合には、社会保険への加入手続きを済ませなくてはならない。社会保険の種類によって、手続きの場所や必要書類、期日などが異なるため、以下で手続きの概要をしっかりとチェックしておこう。


〇労働保険の手続き
労働基準監督署に出向き、以下の2つの書類を提出する。
・労働保険 保険関係成立届…保険関係が成立した日から10日以内に提出
・労働保険 概算保険料申告書…保険関係が成立した日から500日以内に提出

〇雇用保険の手続き
ハローワークに出向き、以下の2つの書類を提出する。
・雇用保険 適用事業所設置届…法人を設立した日から10日以内に提出
・雇用保険 被保険者資格取得届…資格取得の事実があった日の翌月10日までに提出

〇その他の社会保険の手続き
会社を設立した日から5日以内に、以下の3つの書類を年金事務所へ提出する。
・健康保険・厚生年金保険新規適用届
・健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
・健康保険被扶養者(異動)届

社会保険の加入手続きは提出書類が多く、内容的にも複雑なものが多いため、迷った場合は各種届出と同じく専門家に相談することを検討しておきたい。

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起業時にかかるコストはどれくらい?法人設立で発生する費用のまとめ

起業時には提出書類をそろえるだけではなく、手数料などを支払うための「資金」も準備しておくことが重要だ。業種によってはさまざまなコストが発生するが、以下では最低限必要になる費用をまとめた。


起業時に発生する費用
金額
定款の収入印紙代 4万円(※電子定款では不要)
定款の認証にかかる手数料 5万円
登記申請にかかる定款の謄本手数料 1ページにつき250円(約2,000円)
登録免許税 資本金の額×0.7%(最低金額15万円)

上記を見てわかる通り、法人を設立する場合は最低でも25万円ほどの費用が発生する。資本金や設備資金に加えて、この設立費用も用意しなくてはならないので、資金計画は早めに立てて動き出すことが大切だ。

書類の準備はもちろん、「資金」の準備も忘れずに

起業手続きと聞くと、多くの方は「書類の準備に時間がかかる」と感じるかもしれない。しかし、今回紹介したように起業にはさまざまなコストが発生するため、資金の準備にも力を入れることが重要だ。

資金調達は決して簡単ではないが、昨今ではVCからの出資やクラウドファンディングなど、資金をねん出するための手段が増えてきている。これらの方法も検討しながら、起業に向けた準備を効率的に進めていこう。

文・片山雄平(フリーライター・編集者)