人事労務管理は人材に関わる重要な業務だ。仕事は多岐にわたり、定型業務が多く時間と労力がかかるという特徴がある。一方で、最適な人事労務管理の実現は生産性を上げ、企業経営を向上させる。今回は、人事労務管理の企業経営における重要性と働き方改革を推進する取り組みについて解説する。

目次

  1. 人事労務管理とは?
  2. 人事労務管理の6つの業務
    1. 1:人材の採用
    2. 2:人材の配置
    3. 3:人材育成
    4. 4:報酬管理
    5. 5:福利厚生
    6. 6:コンプライアンス
  3. 企業経営で求められる人事労務管理3つの対応
    1. 1:人材不足への対応
    2. 2:デジタル化への対応
    3. 3:グローバル化への対応
  4. 変わりつつある人事労務管理
    1. 日本の高度経済成長を支えた人事労務管理
    2. 従前の人事労務管理では時代の変化に対応できない
    3. 年功序列ではなく成果や貢献度によって評価する
  5. 人事労務管理が働き方改革を推進する上で見直すべき3つのポイント
    1. 1:長時間労働の是正
    2. 2:環境整備
    3. 3:ダイバーシティ
  6. 人事労務管理業務を見直してより働きやすい環境に

人事労務管理とは?

企業経営に不可欠な人事労務管理の6つの業務と求められる対応
(画像=bnenin/Adobe Stock)

人事労務管理とは、企業経営のための重要な経営資源である「人(ヒト)・物(モノ)・金(カネ)」のうち、人に関わる管理業務だ。現在から将来に向けて企業が継続的に成長するために必要な人材を確保し、一人一人の能力を最大限に活かして、生産性を向上させることが目標である。人事労務管理は、人事管理と労務管理を合わせた仕事だ。

人事労務管理は、「人事管理」と「労務管理」の2つに分けられ、いずれも企業経営には欠かせない存在である。具体的には、人事管理は採用や配置の管理、人材育成など、社内の人材を直接管理するための仕事である。一方の労務管理は勤怠管理、給与計算、福利厚生、労働安全衛生、労使関連、労働組合対応などを行う仕事である。

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人事労務管理の6つの業務

人事労務管理の仕事は人に関わる管理業務全般に渡るため、非常に範囲が広い。代表的な業務は次に挙げる6つとなる。

1:人材の採用

現在から将来に向け企業が継続的に業務を遂行していくためには、採用は最重要課題となる。

採用業務は、企業が必要な人材を必要な数、必要な時期に整えることが求められる。ただ優秀な人材を見つければよいというわけではなく、時代の変化に合わせて、企業が真に必要とする新しい経験とスキルをもった人材を掘り当てる必要がある。

近年の採用難による人手不足は、中小企業経営者にとって悩みの種だ。新卒採用では必要な人材を補えないことも多いため、中小企業の多くは中途採用に力を入れているが、大企業ほど知名度がない中小企業は中途採用でも苦戦を強いられている。

人事労務管理の仕事の中でも、採用は他社と差別化したアイデアや取り組みが重要となる業務である。

2:人材の配置

現在保有している人材を有効に活用していくためには、適材適所の配置が求められる。人材配置のために必要なのは社員の情報である。社員情報は人事部門だけでなく、社員が所属する部門など点在する。

データが一元管理され膨大な量の情報が蓄積されていていれば、人材の発見や精度の高い配置が可能となる。人材データの管理はシステムを導入すると効果的だ。費用対効果を考え最適なプランを見つけるのも一つの方法である。

3:人材育成

社員の育成や教育は、スキルアップやキャリアアップによる、生産性の向上や社員のモチベーションアップのために重要である。中小企業の人手不足を解決する手段のひとつとして、多能工化や兼任化が進んでいるが、実現のためには計画的な育成や教育が必要だ。

4:報酬管理

報酬に関わる管理業務は、勤怠管理や給与計算、年末調整など、人事労務管理の仕事の中でも定型的な事務作業が多く、しかも時間と労力がかかる点が特徴だ。一方で、報酬に関わる制度は、明確かつ公正で時代に合っている必要がある。

これから将来に向けて最適な制度や取り組みを考えていきたいものだが、日々の定型業務に追われて時間が取れない状況が考えられる。

解決策としては、前提として業務フローの見直しが挙げられるが、効果的な具体策としてはシステムの導入とアウトソーシングが考えられるだろう。

5:福利厚生

福利厚生は、企業によって独自の工夫が見られる業務だ。最近では社員の健康管理を企業経営の戦略として位置付ける健康経営を念頭に置いた福利厚生施策を取り入れる企業も増えている。

6:コンプライアンス

コンプライアンスは企業の規模を問わず、企業を継続して発展していくためには欠かしてはならない取り組みである。労働基準法や労働安全衛生法、育児・介護休業法など、人事労務管理の業務では遵守しなければならない法律が数多く存在する。新たな法律の施行や改正への対応も発生する。

コンプライアンスの遵守は法律の遵守だと思われがちだが、守るべきは法律に限らず、企業倫理や社会規範にまで及ぶ。いくら法律を守っていても、企業倫理や社会的良識を問われるような行動は企業のイメージや経営に影響しかねないため、社則やマニュアルでは幅広い範囲をカバーする必要がある。

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企業経営で求められる人事労務管理3つの対応

人事労務管理の業務は、採用、配置、育成、報酬、福利厚生、コンプライアンスなど、企業の人に関わる業務のほぼすべてに関わる。それぞれの業務すべてが、現在から将来に向けて企業経営を存続していくために重要である。

人事労務管理の企業経営における重要性は、生産性の向上を推進する点にある。企業を取り巻く社会環境は急激に変化してきている。少子高齢化による人材不足やデジタル化、グローバル化など、厳しさが増す環境下で、生産性を向上させながら企業が勝ち残っていくためには、人に関わる人事労務管理業務も時代に対応できるように変革していくことが求められるのだ。

1:人材不足への対応

人材不足は中小企業の経営にとって非常に深刻である。人事労務管理に関わる人材配置や報酬制度などの制度、育成に関わる教育制度、福利厚生、コンプライアンスなどの改善は、新たな人材の採用や社員の退職を防止することにつながり、人材不足の解決策になる。

中小企業は、採用、配置、育成、報酬、福利厚生といった職場環境において、大企業と比較すると一般的には引けを取るのが現実だ。しかしながら、働きやすさなどの職場環境の質を高める工夫をすることで、優秀な人材を確保している企業も存在する。

中小企業では、新卒採用で確保できない人材は、中途採用で補う傾向が強くなっている。さらに、女性やシニア層の雇用者層が増加しており、雇用の対象を広げる対応が進んでいる。

2:デジタル化への対応

デジタル化はシステムに対応できる人材の確保や、社員の教育・育成の強化が求められる。人事労務管理業務自体もシステムを採用することで業務が大幅に改善し、生産性の向上が期待できる。

3:グローバル化への対応

グローバル化は、大企業だけでなく中小企業でも進んでいる。中小企業庁の「2019年版中小企業白書」によると、海外子会社を持つ中小企業の割合は14.2%となり増加傾向にある。人事労務管理は、グローバル人材の採用や育成、海外拠点の配置、報酬や福利厚生の調整、コンプライアンスなどの対応が求められる。

例えば、日本国内で外国人を雇用するためにはハローワークへの届け出が法律で定められており、雇用管理の改善は努力義務とされている。

変わりつつある人事労務管理

人材は企業にとって非常に重要な資産であり、それを管理する人事労務管理業務は企業経営には欠かせない。

人事労務管理業務を最適に遂行することは、従業員のモチベーションを高め生産性を向上させ、これから働く企業を選ぶ採用候補者の目にも魅力的に映る企業の姿を実現していくために必要だ。

人事労務管理業務の進め方は、企業独自の方法で考えられる。企業経営者が人事労務管理業務を考えるときに知っておきたいのが日本における人事労務管理の変遷である。

日本の高度経済成長を支えた人事労務管理

日本の高度経済成長を支えた人労務管理には「年功序列」「終身雇用」「労働組合」という3つの大きな柱がある。

いずれも経済が大きく成長し、企業が継続的に人材を必要としていた時代に、企業が人材を引き留めておくために最適な要素だった。経済が順調に上昇していくことで企業は大きく成長し、社員に入社から退職まで十分な報酬を支払うことが可能であり、企業への帰属意識が高い社員は猛烈に働き、企業の業績アップに貢献したのだ。

日本の高度経済成長の元では、「年功序列」「終身雇用」「労働組合」という3つの大きな柱を持つ人事労務管理は、企業と社員ともにWIN-WINの関係を保ちながら、最適な人事労務管理として世界に崇められたのである。

従前の人事労務管理では時代の変化に対応できない

現在から将来に向けて自社に最適な人事労務管理を考える経営者にとって、これまでの「年功序列」「終身雇用」「労働組合」をベースとした人事労務管理は採用すべきだろうか。

少子高齢化による人材不足や、デジタル化、グローバル化など、厳しさが増す環境下では、過去の人事労務管理では時代の変化に対応できないのが現状だ。

年功序列ではなく成果や貢献度によって評価する

新たに事業を立ち上げたベンチャー企業の多くは、時代に適応した独自の人事制度を持っている企業が多いが、事業承継した経営者は従前の人事制度を引き継いでいるかもしれない。現在から将来に向け企業を発展させるためには、人事労務管理の見直しをしなければならないだろう。

企業にはイノベーションとアイデアが必要であり、報酬は年功序列ではなく、企業によって決められた人事評価制度によって成果や貢献度で公平に評価され、配置や報酬が支払われることが望ましい。

人事労務管理が働き方改革を推進する上で見直すべき3つのポイント

政府が推進する働き方改革は、少子高齢化に伴う人材不足や従業員の多様な働き方のニーズが高まる中で、社員のモチベーションを上げながら生産性の上がる職場環境を実現することを課題としている。

人事労務管理を最適化することは、同時に働き方改革の課題を解決していくことになる。

1:長時間労働の是正

長時間労働の是正は、働き方改革の大きな柱である。社員の勤怠管理も人事労務管理の実務の大きな割合を占める。労働基準法で定められた基準を順守し、長時間労働が発生していないか見ていく必要がある。

社員の勤怠管理については、多くのシステムプランが提案されている。人事労務管理の中では効率化がしやすい業務なので、導入や新たなプランの見直しを検討するのもよいだろう。

2:環境整備

社員が働きやすい環境整備も人事労務管理の最適化によって実現に近づく。採用や配置、人材育成、報酬などは、取り組み方や制度の見直し、改善によって最適化できる。テレワークの普及なども、リスク管理も含め重要な取り組みになる。

3:ダイバーシティ

社員の多様な働き方のニーズに対応した視点も、人事労務管理の最適化には重要である。具体的には、女性が活躍できる企業、子育てや介護と両立できる企業などが挙げられる。

人事労務管理業務を見直してより働きやすい環境に

人事労務管理は企業の要となる人材やそれを取り巻く環境を整える重要な役割を果たしており、企業経営には欠かせない存在だ。昨今の人材不足やデジタル化、グローバル化など、厳しさが増す環境の中で生産性を向上させて生き残っていくためには、人事労務管理業務も時代に対応できるように変革していく必要がある。

人事労務管理を最適化することは、同時に働き方改革の課題を解決していくことになる。見直すべき点がないか、一度検討してほしい。

文・小塚信夫(ビジネスライター)

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