源泉徴収をする所得税はどのような場合か、所得税との違いを述べ、税金の計算方法を簡単に示す。

目次

  1. 源泉所得税と所得税の違い
    1. 所得税とは
    2. 源泉所得税とは
    3. 源泉所得税と所得税の2つの大きな相違点
    4. 源泉徴収義務のあるものとは
  2. 源泉所得税の対象と計算方法
    1. 源泉所得税の対象となる所得とは
    2. 従業員に給与・賞与を支給するときの源泉所得税の計算
    3. 従業員に対する年末調整
    4. 雇用契約以外の業務契約での報酬、料金と税率
  3. 所得税の対象と計算方法
    1. 課税の対象となる所得
    2. 所得から控除されるものと税額から控除されるもの
    3. 非課税となるもの
    4. 所得税の税率
    5. 復興特別所得税も徴収
  4. 源泉所得税と所得税の違いを理解しよう

源泉所得税と所得税の違い

源泉所得税の計算方法を知っておこう!課税対象や税率についても解説
(画像=wutzkoh /Adobe Stock)

まずは、源泉所得税と所得税の税金の違いを理解することが重要であることから以下で説明していく。

所得税とは

所得税とは、個人の所得に対して課せられる税金である。所得税の計算は1年間(暦年:1月1日から12月31日まで)の全ての所得から所得控除を差し引いた残りの課税所得に税率を適用し税額を計算する。これを申告納税制度といい、所得税においては建前となる。

ここで所得税を計算するうえでの基礎となる所得の種類は全部で10種類ある。具体的な所得の種類については、所得税の計算と税率の中で説明するためここでは割愛する。

源泉所得税とは

源泉所得税とは、特定の所得に対して支払者が所得税を徴収して支払者が納付することをいい、源泉徴収制度という。

源泉所得税と所得税の2つの大きな相違点

源泉所得税と所得税についての大きな違いは、2つある。1つ目は、税金計算の対象となる所得という点である。所得税は、全ての所得を対象に税金の計算を行うのに対し、源泉所得税は特定の所得を対象に税金計算を行うという点である。

2つ目は、誰が税金計算を行って税務署に申告・納付するかという点である。所得税は、所得者自身が税金計算を行い自らが税務署に申告・支払を行うのに対し、源泉所得税は企業などといった所得の支払者が代わりに税金計算を行ったうえで所得の支払いの際に税金を徴収し、代わりに支払うものである。

両者がどのような位置づけかというと、所得税という大枠の中に源泉所得税が位置付けられているため、所得税法の中の話であることについては頭の片隅に入れておいてほしい。

源泉徴収義務のあるものとは

源泉徴収に係る所得税および復興特別所得税を徴収し、国に納付する義務のあるもののことを源泉徴収義務者という。イメージしやすい源泉徴収義務者は、一般的には従業員を雇用している会社が源泉徴収義務者となる。

会社は、従業員に対してまたは役員に対して給与または役員報酬を支払う際に、源泉所得税を差し引いたうえで従業員または役員に支払っている。そこで会社は従業員や役員から徴収した源泉所得税を税務署に申告・納付を行っている。

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源泉所得税の対象と計算方法

源泉所得税の対象となる所得と源泉所得税の計算方法について、以下で具体的に説明していく。

源泉所得税の対象となる所得とは

源泉所得税の対象となる所得は支払を受けるものによって多少変わってくる。一般的である所得を受けるものは個人であるため、ここでは個人を前提に主なものを説明していく。

身近なものでいえば、従業員として会社に勤めている人は、毎月の給与の支払いにおいて源泉所得税が差し引かれているであろう。給与明細を見ると必ず差し引かれているためイメージしやすいだろう。いわゆる給与所得である。企業を退職した際に支払われる退職金についても、源泉所得税の対象となり当所得を退職所得という。

このほか、上場株式を売買した際の売却益である譲渡所得、株式や投資信託などを保有している場合に出る配当所得、銀行にお金を預けた際の利子所得や雇用契約でない一般的な契約の下で支払う報酬や料金(具体例としては、弁護士や税理士に対する支払い)も源泉所得税の課税対象となる。

以上が、源泉所得税を課される所得の一般的な主なものである。他にも課される所得はあるが細かいものとなるため割愛する。詳細を把握したい場合には国税庁のホームページから所得税を検索すると出てくるため参考に見ていただければと思う。

従業員に給与・賞与を支給するときの源泉所得税の計算

一般的である従業員に対する給与及び賞与に対する源泉所得税の計算について説明していく。給与も賞与も税額表を使用して求めることとなる。この税額表は、給与と賞与とそれぞれ設定されている。

給与については、社会保険料等を控除した後の給与金額および扶養親族の人数を基に税額表に当てはめ、適用される源泉所得税を算出する。税額表に源泉所得税の金額が規定されているのでそれを使えばよい。

これに対して、賞与は前月の社会保険料等を控除した給与金額と扶養親族の人数を基に賞与の金額に乗ずる税率を算定し、当該税率を基に賞与に対する源泉所得税を算出する。賞与の場合は、給与と異なり源泉所得税の金額は定められておらず、税率が定められている。税額表より割り出した税率を基に賞与の源泉所得税を計算する点が給与と異なるので留意してほしい。

従業員に対する年末調整

年末調整とは、給与等の支払者がその年最後に給与等の支払をする際、所得税の精算をすることだ。

月次や賞与の支払時に徴収している源泉所得税はあくまでも見積計算の下で都度徴収されている。年間の確定した給与所得を基に源泉所得税が計算されて、年間の源泉所得税が確定する。この確定した源泉所得税と、月次や賞与の支払時に徴収している源泉所得税とを比較して過不足金額を算定し、最終的な源泉所得税を納付または還付する。

いわゆる年末調整は、給与等の支払を受ける大部分の人にとっては確定申告に代わる役目を果たす重要な手続である。

雇用契約以外の業務契約での報酬、料金と税率

ここでは、雇用契約ではなく一般的な契約関係である業務契約の下で支払われる報酬や料金について解説する。具体例としては、弁護士や税理士並びに公認会計士など士業に対する業務に対する報酬・料金を取り上げる。

源泉所得税の計算は、支払われる報酬・料金に対して10.21%を乗じた金額が源泉所得税の金額となる。しかしながら同一人に対する1回の支払い100万円を超える場合においては超過した部分については20.42%を乗じた金額を源泉所得税に上乗せされる点に留意してほしい。

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所得税の対象と計算方法

具体的に所得税の対象となる所得と所得税の計算方法について、以下で具体的に説明していく。

課税の対象となる所得

所得税の対象となる所得は10種類ある。具体的には、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得である。具体的な所得について、上記の源泉所得税の中でも触れているものも含めここで説明する。

  • 利子所得

預貯金や公社債の利子並びに合同運用信託、公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託の収益の分配に係る所得をいう。ここでの留意点は、公社債投資信託および公募公社債等運用投資信託の収益の分配は、配当所得ではなく、利子所得である点である。

  • 配当所得

株主や出資者が法人から受ける配当や、投資信託(及び特定受益証券発行信託の収益の分配などに係る所得をいう。

  • 不動産所得

土地や建物などの不動産、借地権など不動産の上に存する権利、船舶や航空機の貸付けによる所得をいう。ここでの留意点は、不動産を事業として扱っておりそこで得ている所得は不動産所得ではなく事業所得となりまた、不動産を売却した場合には譲渡所得となるといった2点である。

事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業から生ずる所得をいう。

  • 給与所得

勤務先から受ける給料、賞与などの所得をいい、退職所得とは、退職により勤務先から受ける退職手当や厚生年金基金等の加入員の退職に基因して支払われる厚生年金保険法に基づく一時金などの所得をいう。

  • 山林所得

山林を伐採して譲渡したり、立木のままで譲渡することによって生ずる所得をいう。留意点としては、山林を取得してから5年以内に伐採又は譲渡した場合には、山林所得ではなく、事業所得又は雑所得になる。

  • 譲渡所得

土地、建物、ゴルフ会員権などの資産を譲渡することによって生ずる所得及び、建物などの所有を目的とする地上権などの設定による所得で一定のものをいう。

  • 一時所得

上記のいずれの所得にも該当しないもので、営利目的で継続的行為から生じた所得以外のもの(=事業所得でない)であって、労務その他の役務の対価(=給与所得でない)としての性質や資産の譲渡による対価(=譲渡所得でない)としての性質を有しない一時の所得をいう。具体的な例としては、生命保険や損害保険の返戻金や競馬や競輪の払戻が該当する。

  • 雑所得

上記どの所得のいずれにも該当しない所得をいう。具体的には公的年金などが挙げられる。

所得から控除されるものと税額から控除されるもの

所得税を計算するうえで、所得から控除される所得控除と課税所得から計算された税金から直接控除する税額控除の2つがある。

まず、所得税を計算する際に、所得から控除することによって納税者の個人的事情を加味することを背景に所得控除制度が設けられている。

所得控除の種類は、14種類ある。具体的には、雑損控除、医療費控除、社会保険料控除、 小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、 地震保険料控除、寄附金控除、障害者控除、寡婦(寡夫)控除、勤労学生控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、基礎控除である。主要な所得控除は、医療費控除、社会保険料控除、生命保険料控除、寄付金控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、基礎控除である。

次に、税額控除について説明する。課税所得から所得控除が行われた後の課税所得金額に税率を乗じたものが所得税額となるが、当該所得税額から直接一定の金額を控除することができるのが所得控除という。この税額控除は全部で20項目ある。主要な所得控除は、住宅借入金等特別控除(いわゆる住宅ローン控除)である。

非課税となるもの

所得税において非課税の対象となる所得もある。事業で発生した所得は、それに応じて所得を社会に配分しようという背景があるためだ。この点、社会政策やその他の見解から「所得(=儲け)」として見なされない所得に対しては非課税の対象としている。

主なものとしては、通勤手当のうち、一定金額以下のものや、転勤や出張などのための旅費のうち、通常必要と認められるもの、交通事故などの治療費、慰謝料、損害賠償金などが挙げられる。

所得税の税率

所得税の税率は分離課税に対するもの等を除くと、5%から45%の7段階に区分されている。 具体的には、課税される所得金額(千円未満の端数金額切捨後金額)に対する所得税の金額は、国税庁のホームページに公表している速算表を使用すると簡単に求められるので参照いただきたい。

復興特別所得税も徴収

復興特別所得税とは、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法として施行されている。この復興特別所得税は、全ての所得ではなく利子所得、配当所得、給与所得、退職所得や公的年金等、報酬・料金等を対象として課される。

この復興特別所得税の算定方法は、支払金額等×合計税率(%)(=所得税額×102.1%)=源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額となる。

源泉所得税と所得税の違いを理解しよう

源泉所得税と所得税との違いやそれぞれの対象となる所得及び計算方法などについて説明してきた。まずは両社の税金の違いについてしっかりと理解していただきたい。そのうえでそれぞれの計算対象となる所得と計算方法を理解することで、両社の全体理解が確実にできる。

所得税においても源泉所得税においても、一番重要なのは、両社の税金計算対象となる所得の区分を明確に行えるかであるので、慎重に検討・算定いただきたい。

文・Business Owner Lounge編集部