ほとんどの会社は役員にも従業員にも給与を支払う。しかし、従業員に賞与を支給する会社は多くあるが、役員に賞与を支給する会社は多くない。これは原則として役員に対する賞与は損金算入、つまり税金上の経費扱いされないためである。

しかし、役員に対する「賞与」が税務上認められる場合がある。ここでは、損金算入できる賞与と損金算入できない賞与について説明する。

中川 崇
中川 崇(なかがわ・たかし)
田園調布坂上事務所代表。広島県出身。大学院博士前期課程修了後、ソフトウェア開発会社入社。退職後、公認会計士試験を受験して2006年合格。2010年公認会計士登録、2016年税理士登録。監査法人2社、金融機関などを経て2018年4月大田区に会計事務所である田園調布坂上事務所を設立。現在、クラウド会計に強みを持つ会計事務所として、ITを駆使した会計を武器に、東京都内を中心に活動を行っている。

目次

  1. 役員賞与を支給したらどうなる
    1. 役員に相当するのは?
    2. 役員賞与とは
    3. 役員報酬と役員賞与の違い
    4. 役員賞与には税金が課税される
  2. 役員賞与を損金(経費)として扱うには?
    1. 定期同額給与であること
    2. 事前確定届出給与とする
    3. 利益連動給与とする
    4. 役員を使用人兼務役員とする
    5. 不相当に高額な場合は損金算入されない
  3. 役員賞与を損金扱いにする際の注意点
    1. 役員の賞与や報酬を決めるときは株主総会の決議が必要
    2. 役員の賞与や報酬の決定・変更には期限あり
    3. 決めた報酬額を増額、減額、支給日が異なると損金算入できない
  4. 役員賞与を損金算入するのは可能だが、制約がある

役員賞与を支給したらどうなる

役員賞与を支給すると税金が課税される?経費として計上する方法と注意点
(画像=fizkes/Adobe Stock)

ここでは役員に賞与を支給した場合、税務上どのような扱いを受けるかについて説明する。

役員に相当するのは?

役員に賞与を支給した場合、従業員とは異なる扱いを受けるが、この場合の役員はどのような人を指すのか、という問題がある。法人税法上では以下のようになっている。

 (1) 法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事及び清算人

(2) (1)以外で、法人の使用人ではなく、その法人の経営に従事している者。例えば、
a.合名会社、合資会社及び合同会社の業務執行社員
b.理事や取締役でない総裁、会長、理事長等
c.人格のない社団等の代表者又は管理人
d.法定役員ではないが、法人が定款等において役員として定めている者
e.相談役、顧問などで他の役員同様に実質的に役員と同様に実質的に法人の経営を行っている人

(3) 同族会社の使用人のうち、次の条件すべてを満たす者

  • 株主グループ(株主とその親族などを足したグループ)のうち、第1順位から第3順位まで順に足していき50%となったとき、その時点で、足す対象となった株主グループのいずれかに属していること
  • その使用人の属する株主グループの所有割合が10%を超えていること
  • その使用人(その配偶者ならびにこれらの者の所有割合が50%超である他の会社を含む)の所有割合が5%を超えていること
  • その会社の経営に従事していること

役員賞与とは

役員賞与とは一般的に、役員などに支払われる報酬であるが、毎月定期的、定額で支払われているもの以外のものを指す。例えば、文字通りの賞与、渡し切りの交際費などがそれに該当するものとされている。

役員報酬と役員賞与の違い

役員報酬と役員賞与はどちらも、役員などに支払われる報酬であることには違いない。通常、役員報酬は毎月定額的に支給されるものであることが多い。一方で、役員賞与は臨時的に支払われるものである。

役員賞与には税金が課税される

役員賞与はその性質上、法人税法では損金不算入、つまり、税金を計算する上では経費とみなすことはできない。そのため、役員賞与として支払った部分については税金が課されることとなる。

>>会員登録して限定記事・イベントを確認する

役員賞与を損金(経費)として扱うには?

役員賞与が損金として扱えなくても、役員に対して賞与や賞与に相当するものを支払いたい場合がある。法人税法では、限定列挙であるが、賞与として支払うものについて損金算入できるとしているものがある。ここではそれがどのようなものか、どのようにすれば損金として認められるのかについて説明する。

定期同額給与であること

法人税法上、定期同額給与して支払うものであれば損金算入として認められる。役員報酬はたいてい、定期的に支給する形式をとっているため損金算入ができる。では、どのようなものが定期同額給与とされるのか。

まず、その支給時期が1ヵ月以下で一定の期間ごとに支給する給与や、その事業年度の毎回の支払額が同額であるものを指す。おおむね月給として同額を支払う給与であれば問題ない。支払額は円建てて同額である必要はなく、外貨建てで一定であってもよい。例えば、月額何ドル支給するという形式でもさしつかえない。

そのほか、継続的に供与される経済的利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるものも定期同額給与として含まれる。例えば、役員の自宅の家賃を会社が負担しているケースがそれに当たる。

次に、定期同額給与の支給を行うにはどのような手続きを踏めばいいのか。

定期同額給与を支給するには、会社内での決定で済み、税務署に届け出る必要はない。ただし、その決定方法には制約がある。原則として定期同額給与の金額の決定は、会計期間開始の日から3ヵ月以内に行われなければならない。ただし何らかの事情があり、会計期間開始の日から3ヵ月過ぎた後に決定されても認められる場合がある。

例外として2つのケースおいて期中の変更を認めている。一つは、その役員の職階など立場が変わった場合である。例えば、平の取締役から常務に昇格した場合がある。もう一つは、期中において会社の経営状況が著しく悪化したために支給額を減額する場合である。

原則的な方法で決定した場合も、例外が発生して期中で変更した場合も、定期同額給与を決定したことについて文書を残すのが望ましい。役員賞与など追加の支払いを行いたい場合で、かつ外部手続き無しで実行したいときには、その役員賞与を毎月の役員報酬に加える方法をとることとなる。

事前確定届出給与とする

定期同額給与を支給する場合は、毎月同額の支給を行う必要があると前述した。

これに対して、資金繰りなどの関係上で特定の時期にのみ支給する報酬は、事前確定届出給与という。あらかじめ届け出ることを要件に、特定の時期に決まった金額の金銭の支給を行うことができる。なお、届け出る際には、その役員に対する事前確定届出給与のみならず、定期同額給与についても記載が必要となる。

利益連動給与とする

通常、役員に賞与を与えたい場合とは、従業員に賞与を支給するのと同様、会社や個々人の業績に応じて決定された金額を支給したいときであると思われる。法人税上では、そのような要求に応えられる利益連動給与という制度が用意されている。

これは、有価証券報告書に記載されている数値を基本とするものであり、すべての企業について利用できるものではない。とはいえ、基本的に給付が損金として認められていない役員賞与において、業績に応じた賞与の給付が可能となるので、有価証券報告書を提出している会社については利用を考慮するのも手である。

役員を使用人兼務役員とする

通常、役員となっている者はこれまでに挙げた給与や賞与の制限を受けることになる。しかし、役員になっている者のうち、従業員と一緒と認められる者については使用人兼務役員とすることができる。そうなれば、給与を役員部分と従業員部分とに分けることができ、従業員部分については上記のような制約を受けずに済む。

では、どのような者が使用人兼務役員になることができるのか。例えば、取締役工場長や取締役支店長のように取締役の地位にあるものの、業務内容は使用人の立場にある者を指す。

しかし一方で、使用人兼務役員になることができない者もいる。まず、代表取締役、代表理事、業務執行社員、副社長、専務、常務などの一定の地位にある者は使用人兼務役員になることができない。また、会社を監査する立場にある監査役、監事、委員会設置会社の取締役もなることができない。また、同族会社の使用人のうち、税務上みなし役員とされる者(「役員に相当するのは?」参照)についてもなることができない。

不相当に高額な場合は損金算入されない

基本的に役員に対する報酬をいくらにするかは、その会社の内部で決めることであって、自由に決められるものである。しかし、法人税法上では不相当に高額な報酬は認められないと定められている。これは過大な報酬を設定することによって不当に法人税などの金額を低く抑えることを防ぐためのものと思われる。

では、いくらから不相当に高額な報酬となるのかについて詳細な決まりはない。ただし、実例を見ると、少なくとも以下の2点は考慮すべきである。

一つ目は職務の内容等に照らし、相当かどうかである。例えば、月に1日しか出勤しない役員に対して支払った報酬が、他の毎日出勤する役員と同額である場合は不相当に高額な報酬であると判断されうる。

二つ目は事業規模が同程度の類似企業の支給金額を参考にするものである。これは平均報酬を参考にする場合もあれば、最高報酬を参考にする場合もある。

>>会員登録して限定記事・イベントを確認する

役員賞与を損金扱いにする際の注意点

役員賞与を支払う場合は原則損金算入できないものの、場合によっては損金算入できる場合があると述べた。しかし、条件を満たしていても役員賞与を支払う場合に注意すべき点はある。ここではそれらについて説明する。

役員の賞与や報酬を決めるときは株主総会の決議が必要

役員に報酬を支払う際は定款で定めるか、株主総会で決定することが必要となる。なお、定めた額を超えてしまった場合は、無効となることもありうる。

実務上は、株主総会では取締役は総額いくら、監査役は総額いくらと大枠のみ決めておき(取締役と監査役は別々に決めないとならない)、取締役会で決定するケースが多い。さらに取締役会での決定では、代表取締役に一任して代表取締役が単独で決定することが多い。

役員の賞与や報酬の決定・変更には期限あり

役員の賞与や報酬についてはいつ決めてもいいというものではなく、決定するには期限がある。まず、定期同額給与については会計期間開始から3ヵ月以内に決定しなければならないと定められている。

また、事前確定届出給与を実行するには、株主総会などで支給することを決定して、その決議から1ヵ月以内または、会計期間開始の日から4ヵ月以内に届け出を出さないとならないと定められている。変更する場合であっても、変更する理由となった事象が発生した日から1ヵ月以内に変更の届け出をする必要がある。

そして、業績連動報酬については、原則会計期間開始の日から3ヵ月以内にその算定方式を決定するなどを行う必要がある。以上のように、役員に賞与ばかりではなく通常の報酬を支払う場合、決定する時期が予め決められている。

決めた報酬額を増額、減額、支給日が異なると損金算入できない

ほかに、注意すべき事項として挙げられるのは、決められた報酬額や支給日は厳守しなければならないことである。それを守れなかった場合、どのような結果となるのか説明する。

定期同額給与の場合、一番低い金額からみてそれを超えた金額が損金不算入となる。事前確定届出給与の場合、金額や支給日の変更があった場合、全体が損金不算入となる。そのため、一度決定したことは変更しないようにすべきである。

役員賞与を損金算入するのは可能だが、制約がある

役員に通常の報酬とは異なる、賞与などの報酬を与える場合、様々な方法があることを説明した。損金として算入できる方法もあるが、その一方で制約もあり、それを厳守しなければならないこともある。これらや資金繰りなどの状況を踏まえて、お役に立てたら幸いである。

文・中川崇(公認会計士・税理士)