一般的に法人は消費税を毎年支払うことが多いが、例外的に輸出を行う企業については還付されることもある。これは輸出取引の場合、消費税は免税されるためだ。輸出が多い場合は消費税課税対象となる売上の額よりも課税対象となる経費の額が多くなるためであり、支払うべき消費税がマイナスとなるために還付が発生するためである。

では、輸出が多い事業者が免税を受けるためにはどのような手続きを踏めばいいのか、また会計処理をする場合はどのようにすればいいのかについて説明する。

中川 崇
中川 崇(なかがわ・たかし)
田園調布坂上事務所代表。広島県出身。大学院博士前期課程修了後、ソフトウェア開発会社入社。退職後、公認会計士試験を受験して2006年合格。2010年公認会計士登録、2016年税理士登録。監査法人2社、金融機関などを経て2018年4月大田区に会計事務所である田園調布坂上事務所を設立。現在、クラウド会計に強みを持つ会計事務所として、ITを駆使した会計を武器に、東京都内を中心に活動を行っている。

目次

  1. 輸出取引に関する消費税とは
    1. 消費税の基本
    2. 輸出する商品は消費税が免税
    3. 消費税が免税となる輸出取引に該当するもの
    4. 輸出のために仕入れた商品にかかる消費税は還付される
  2. 輸出の際の消費税免税および還付の手続き
    1. 輸出を行う業者が消費税の還付を受けるには最低でも消費税課税業者となるべき
    2. 消費税免税事業者はどうなる?
    3. 消費税が免税となるために必要な書類は?
    4. 消費税還付の手続きはいつまでに行えばいい?
  3. 輸出に関する消費税が還付されたときの会計処理
    1. 消費税抜き方式を採用している場合
    2. 消費税込方式を採用している場合
  4. 国外取引での売り上げは消費税免税に。消費税課税業者が対象となることがポイント

輸出取引に関する消費税とは

輸出品に対する消費税はどうなる?免税となるための条件と税金の還付
(画像=Mongkolchon/stock.adobe.com)

まずは、消費税の基本や免税となる取引について解説しよう。

消費税の基本

消費税が課される条件は以下のとおりである。

  1. 日本国内で発生した取引
  2. 事業者が事業として行った取引
  3. 対価を得て行われる取引
  4. 物品の販売やサービスの提供

消費税は消費者が負担するものであるが、実際に納付するのは物品の販売やサービスを提供する事業者であり、税金を負担する者と実際の納付をする者が異なる性質がある。

消費税の計算の方法は、基本的には以下の通りとなる。   消費税の支払額 = 課税売上にかかる消費税 - 課税仕入にかかる消費税   すなわち、売上にかかった消費税と仕入や経費にかかった消費税をさし引いた金額を納税することになる。

輸出する商品は消費税が免税

では、輸出する商品には消費税はかかるのであろうか。結論から言えばかからない。なぜならば、消費税の課税は原則として国内で行われる商品の販売やサービスの提供に対して行われるためだ。国外との取引である輸出に対して消費税を課税するのは、適当ではない。商品を輸出する場合、その売上にかかる消費税については免税となる。

消費税が免税となる輸出取引に該当するもの

消費税が免税となる輸出取引にはどのようなものがあるのであろうか。一般企業において免税となる取引は2通りに分けることができ、(1)通常の輸出、(2)免税店における販売がある。それらについて説明する。

(1)通常の輸出

消費税が免税となる輸出取引の例は以下のような取引である。

  • 国内からの輸出として行われる資産の譲渡または貸し付け
  • 非居住者に対する特許権、商標権、著作権などの無体財産権の譲渡または貸し付け
  • 非居住者に対する役務の提供

ここで非居住者とは、基本的に日本国内で住所や住んでいる場所を持たない人を指す。すなわち、輸出取引は、日本国内にある商品などを外国人や外国の会社等外国にいる人に提供する取引のことだ。ただし、相手が外国人などであっても商品の引き渡しや役務の提供などが国内で行われるものについては免税とはならない。

(2)免税店での販売

直接輸出の手続きなどをとらない場合でも、免税店で非居住者に対して、免税対象物品を一定の方法で販売した場合は、消費税が免税される。免税対象物品とは通常の生活に使われる物品であって、同じ非居住者に対して同じ免税店が一日に、消耗品(食料品、化粧品など)については5,000円以上50万円以下、それ以外の商品(家電製品、バッグなど)については5,000円以上販売したものを指す。

輸出のために仕入れた商品にかかる消費税は還付される

では改めて、輸出された商品に関して、それを仕入れるために商品代金と一緒に支払った消費税はどうなるかについて説明する。結論から先に述べると、輸出する商品を仕入れるために支払った消費税は還付される。

例えば、税抜で1万円する商品(消費税1,000円)を輸出した場合を考える。支払った消費税は1,000円であるが、輸出取引のため売上にかかる消費税はない。この取引に関して納付すべき消費税の金額は、

 0(円) - 1,000(円) = △1,000(円)

となり、1,000円支払うのではなく、還付されることとなる。

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輸出の際の消費税免税および還付の手続き

輸出を行う会社について、消費税は還付される場合があることは先程述べた。では、輸出を行った際の消費税を免税にする手続きや消費税の還付を受けるために事前、事後に行うべき手続きにはどのようなものがあるのか。また、そのためにはどのような条件が必要となるのか。

輸出を行う業者が消費税の還付を受けるには最低でも消費税課税業者となるべき

輸出をする業者が消費税の還付を受けるなど、消費税法上有利な扱いを受けるためにはどうすればいいのか。基本的には以下の2つの条件を満たす必要がある。

  • 消費税課税業者となる
  • 消費税の課税方式が本則課税(売上と仕入・経費の両方から消費税額を計算すること)であること

消費税課税業者、すなわち消費税の申告を行う業者でないと、消費税の還付を受けることができない。また、消費税の課税方式が本則課税ではない簡易課税の場合、売上のみからでしか消費税の計算が行われないため、仮に仕入・経費に係る消費税が売上に係る消費税を超えたとしても仕入・経費に係る消費税を反映することができないため、やはり消費税の還付を受けることができない。

それらの適用を受ける場合の手続きはどのようにすればいいか。

まず、消費税課税業者となる方法について説明する。消費税課税業者となるのは(ア)2期前の課税売上高(消費税の対象となる売上高)が1,000万円以上であるか、(イ)2期前の課税売上高が1,000万円未満や設立間もない場合であっても消費税課税業者となる手続きしている場合である。

(ア)の条件を満たしている場合は、すでに提出している場合を除き、消費税の課税業者となったことを税務署に伝えるため、消費税課税事業者届出書を税務署に提出する。(イ)の場合は、消費税課税事業者選択届出書を提出することによって、任意で消費税課税業者となる。ただし、この場合、適用開始してから最低2年間は適用をやめることはできない。

次に、課税方式の条件を満たすためにはどうすればいいのか説明する。消費税の課税方式が本則課税にするには、基本的には何もする必要はない。

しかし、消費税簡易課税制度選択届出書を出して、消費税の課税方法を簡易課税としている場合は、消費税簡易課税制度選択不適用届出書を提出して簡易課税の適用をやめる必要がある。ただし、一度簡易課税制度を適用した場合、2年間やめることはできないことになっている。

以上に挙げた手続きは適用する、あるいは適用をやめる会計期間が始まる前までに行う必要がある。

消費税免税事業者はどうなる?

中には現在、消費税の申告義務がない、消費税免税業者で輸出を行おうと考えている事業者もいると思われる。その者はどうすればいいか。

消費税免税業者であるうちは消費税の申告ができないため、還付が受けられる取引があったとしても還付を受けることができない。消費税の還付を受けるためには消費税課税事業者選択届出書を提出して、消費税申告ができるようにしなければならない。また、簡易課税ではなく本則課税の適用を行うことが必要となるが、消費税簡易課税制度選択届出書を提出して、簡易課税の適用を受けていなければ何もする必要はない。

消費税が免税となるために必要な書類は?

消費税が免税となるためには、免税であることを示す書類が必要だ。単純に輸出や役務の提供などで免税とする場合に必要な書類は以下のとおりである。

  • 物品の輸出の場合は輸出許可書、それが発行されない場合は帳簿または書類
  • 役務の提供、無体財産の場合は契約書(取引する者の住所氏名、日付、対価の額が書かれている必要がある)その他書類

また、免税店において販売したときは、購入記録情報を作成し、その記録を7年間保存しなければならない。

消費税還付の手続きはいつまでに行えばいい?

消費税還付の手続きは、通常の消費税を納税するときの手続きと同じく、決算後2ヵ月以内に消費税の申告書の提出をもって申告する。なお、その際、通常の申告書に加え、還付申告明細書を作成する必要がある。これは、消費税が還付となる場合、輸出によって還付となる場合はその旨や、主な輸出先の名称、住所、取引金額などを記載して提出する。

消費税は還付となるので、申告書の記載の際は還付する税金の振込先となる口座に関する情報も記載する必要がある。

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輸出に関する消費税が還付されたときの会計処理

輸出を行った会社が、消費税の還付金額の確定から還付に至るまで会計処理を行う場合どのような仕訳を切ることとなるのかについて説明する。

消費税抜き方式を採用している場合

経理を税抜方式で行っている場合の仕訳の切り方は以下のとおりである。

(1)消費税の還付金額の確定時
   仮受消費税 xxxx / 仮払消費税 xxxx
   未収金  xxxx / 雑収入   xxxx

仕訳の切り方は次の通りとなる。まず、仮受消費税と仮払消費税を消し、消費税申告書の作成で求めた還付金額を未収金に計上する。最後に貸借の差額について雑収入勘定に計上する。

(2)還付金が入金された時
   現金預金 xxxx / 未収金   xxxx
還付金が入ったときは、未収金を現金預金に振り替える仕訳を切る。   

消費税込方式を採用している場合

経理を税込方式で行っている場合の仕訳の切り方は、以下のとおりである。

(1)消費税の還付金額の確定時
   未収金  xxxx / 雑収入   xxxx

税抜方式の場合と異なり、仮受消費税、仮払消費税勘定がないため、単純に還付される金額を雑収入として上げるのみである。

(2)還付金が入金された時
   現金預金 xxxx / 未収金   xxxx

消費税税抜方式と同じく、還付金が入ったときは未収金を現金預金に振り替える仕訳を切る。

国外取引での売り上げは消費税免税に。消費税課税業者が対象となることがポイント

消費税は納付するばかりではなく、場合によっては還付されることもあることもある。輸出する場合がその一つの例であるが、具体的に何をすればいいのかについての情報はあまりなかったかと思われる。そこで本稿では、消費税についての基本的な説明から始め、手続き、書類の整備、経理方式まで、輸出で免税する場合について説明した。参考になれば幸いである。

文・中川崇(公認会計士・税理士)