資産運用
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運用益が非課税になるNISAは、一定投資額の範囲内であれば資金の小さい個人投資家の味方といえる制度です。しかし、複数のNISA口座を持つことは残念ながらできません。「間違って同時に複数、開設したときはどうすればいい?」「一度開設したら別の口座に変更はできない?」など、疑問点を解消していきましょう。

目次

  1. NISA口座は1人1口座のみ
    1. NISAとは
    2. 1口座しか開設できない
    3. 銀行のNISA口座では株式投資ができない
    4. 口座開設申し込みが重複した場合は?
    5. NISAと「つみたてNISA」との併用は?
  2. NISA口座の金融機関変更。その制限と変更方法
    1. 変更可能期間
    2. 変更手順
    3. 変更のデメリット
  3. NISA口座を新規開設するときのポイント
    1. 口座開設の手順
    2. 取引手数料で選ぶ
    3. IPO投資に強い証券会社は?
    4. 外国株式に特徴を持つ証券会社は?
  4. 複数のNISA口座を持つことはできない。投資目的やスタイルから慎重な口座開設が吉

NISA口座は1人1口座のみ

NISAとは2014年1月に導入された「少額投資非課税制度」で、一般NISAと呼ばれる「NISA」のほか、「つみたてNISA」、未成年者を対象とした「未成年者少額投資非課税制度」、通称「ジュニアNISA」の3つの制度があります。しかし、すべての制度を利用できるわけではなく、NISA口座は、1人につき1つの金融機関で1つの口座しか開設できません。

NISAとは

NISAとは少額投資向けの非課税制度です。通常、株式や投資信託を購入した場合、その売却益や分配金などの運用益には約20%が課税されます。しかしNISAを用いて投資した場合は、取得額基準で年間120万円までの金融商品による運用益が非課税となります。

非課税期間は最大5年間で、120万円×5年=最大600万円までが非課税優遇枠となります。NISAの対象となるのは、金融庁の定めた基準をクリアした上場株式や投資信託などです。

1口座しか開設できない

NISA口座は一部の例外を除いて、1口座しか開設できません。NISAを利用して投資する場合、通常の証券口座とは別に新規でNISA口座を開く必要があります。開設にあたっては、非課税適用確認の交付申請書や住民票の写しなどの書類が必要となります。

銀行のNISA口座では株式投資ができない

NISA口座は大手メガバンクなどの銀行でも開設できますが、投資対象は各銀行が指定した株式投資信託のみに限られます。株式投資をしたい場合は証券会社でNISA口座を開設する必要があります。

口座開設申し込みが重複した場合は?

NISA口座の開設手続きをすると、申し込み先の金融機関は税務署に対し「非課税適用確認書」の交付申請を行います。別のNISA口座を持っていたり、二重で開設手続きを行ってしまったりした場合はこの段階で判明します。

「非課税適用確認書の交付申請書及び非課税口座開設届出書」で申し込んだ場合は後発の申し込みが無効となり、「非課税口座簡易開設届出書」で開設された口座は先後を問わず無効となります。

「非課税適用確認書の交付申請書」による申請では、申請が後発になった金融機関の口座が無効になります。

また「簡易開設届」でNISA口座を開設し、商品を購入した後で二重開設が発生した場合は、現在のNISA口座で保有している商品が課税口座で取引したものとみなされ、課税される可能性もあります。売却益については自ら確定申告を行い納税することとなります。

申し込みの重複はデメリットが大きく、避けたほうが賢明といえるでしょう。

NISAと「つみたてNISA」との併用は?

「つみたてNISA」はNISA開始から4年後に始まった制度で、非課税優遇枠は年間40万円とNISAよりも小さいものの、非課税期間が20年と、より長いスパンでの資産形成促進を目的としています。投資対象は投資信託と一部のETFのみで、毎月自動で買い付けるなど、定期的な買付を想定しています。

両者を組み合わせればより有利に運用が行えそうですが、残念ながら従来のNISAとつみたてNISAの併用は不可能です。NISAからつみたてNISAへ、またはつみたてNISAからNISAへの切り替えはできますが、以下で説明する口座変更と同じような利用における制限を受けます。

NISA口座の金融機関変更。その制限と変更方法

NISA口座の変更は1年に1度まで認められています。メインバンクでNISA口座を開設したものの、株式投資への挑戦や、異なる商品を扱う証券会社に興味が湧くなど、当初は想定していなかった変更理由が生じたら、口座変更を検討する時期かもしれません。

変更可能期間

金融機関の変更はいつでもできるわけではなく、期間内に所定の手続きを行う必要があります。

変更したい年の前年10月1日から、変更したい年の9月30日までが変更可能期間です。仮に10月1日に手続きをすると、実際に金融機関が変更されるのは翌年からとなります。

また、変更したい年に1度でも商品の買付があった場合は、その年での変更はできません。自動積立や分配金再投資機能などを利用している場合は、前年中に解除しておく必要があります。

変更手順

どの金融機関でも、変更手順は大筋では変わりません。

・変更手順1:現在取引を行っている金融機関に「金融商品取引業者等変更届出書」を提出、「勘定廃止通知書」の交付を受けます。

・変更手順2:変更先の金融機関に「非課税口座開設届出書」と、変更手順1の「勘定廃止通知書」を提出します。新規開設の際に提出した「非課税適用確認書」や、住民票の写しは必要ありません。

変更前の金融機関にあるNISA口座では新たな買付はできませんが、保有している商品は買付年の1月1日から最長5年間、非課税の適用を受けられます。ただし下記の通り、非課税扱いのまま変更後の金融機関に商品を移すことはできません。

変更のデメリット

NISA制度の大きな強みの1つは「ロールオーバー」です。NISAの非課税期間は5年間ですが、期間終了までに新たなNISA口座を開設しそこに株式や投資信託を移管させれば、新たに5年間非課税で保有できます。この非課税枠の移管をロールオーバーといい、仮に取得時は120万円以下の価額だったものが移管時に120万円を超えていたとしても、そのまま引き継ぐことができます。ただし移管された分だけ非課税枠を使ったことになるので、120万円の移管があれば新たな買付はできません。

このロールオーバーが、金融機関の変更には適用されません。現在の口座で運用している商品を新口座に移すことはできないため、商品は売却するか、通常の課税口座に移管することになります。課税口座に移管する場合は、商品の取得額は移管時点での価格となるため、含み損を抱えた状態で移管した場合は損失もなかったことになってしまいます。

たとえば、NISA口座で購入した100万円の株式が、5年後に80万円まで下落したとします。これを課税口座に移管すると、取得価額は80万円に更新されます。その後90万円まで持ち直してから売却しても、10万円の損失ではなく「10万円の利益」として課税対象になるのです。

金融機関の変更は、現在の金融機関への不満が別の金融機関で解決され、それが上記のデメリットを上回る場合の選択肢といえそうです。また変更に際しては、保有資産が含み損を抱えたまま「塩漬け」にならないよういったん整理するなど、損失回避を図ることが大切です。

NISA口座を新規開設するときのポイント

NISA口座の金融機関を変更にともなうデメリットは小さくないため、新規口座を開設する際には、慎重に金融機関を選ぶことが重要です。

口座開設の手順

新規NISA口座の開設は、以下のような手続きが必要となります。

・口座開設の手順1:NISA口座を開設したい金融機関から、NISAに関する約款の交付と説明を受けたうえで、「非課税適用確認書の交付申請書および非課税口座開設届出書」もしくは「非課税口座簡易開設届出書」を提出します。

また、証券口座を持っていない場合は個人番号カードを提示するなど、番号の告知が必要です。すでに口座を持っている場合でも、金融機関により告知が必要なこともあります。

・口座開設の手順2:税務署でNISA口座の開設重複がないことを確認されれば「非課税適用確認書」が交付され、金融機関がNISA口座を開設します。

取引手数料で選ぶ

NISA対象となる商品は、すべて金融庁の定める条件をクリアしているため、傾向はおのずと似通ってきます。そのため、取引コストの大小が運用益に反映されやすく、取引手数料の安さも重要なポイントです。

NISA口座で国内株式を取引する場合、SBI証券、楽天証券、松井証券、マネックス証券、auカブコム証券は売買手数料が無料です。さらにSBI証券と楽天証券、マネックス証券は海外ETFの買付手数料も無料で、auカブコム証券もETF100銘柄の売買手数料が無料です。

IPO投資に強い証券会社は?

IPO(新規上場株式)投資は、新規上場する企業の株を公募価格で購入し、初値で売ることでその値上がり益を狙う投資方法です。2017~19年のIPO株の約9割で初値が公募価格を上回っており、個人投資家の人気も高まっていますが、抽選で当選した人しか購入できず、証券会社により扱う銘柄数や割当株数が異なります。

企業の新規上場では、証券数社が幹事会社となり上場をサポートしますが、特に中心となってサポートする主幹事会社には、8割近くの株が割り当てられるため、当選率も高くなります。

主幹事は歴史と実績に優る大手総合証券になることが多く、最大手の野村證券は2019年の日本株式IPO発行額1位、大和証券は主幹事を務めた回数が1位となっています。またSMBC日興証券は主幹事の回数は少ないものの、取扱本数では引けを取らず、2019年実績では90本中64本を取扱っています。SMBC日興証券では預かり資産残高などに応じた「ステージ別抽選制度」を導入しており、条件を満たすことで別枠での抽選を受けることもできます。

ネット証券ではSBI証券のIPO取扱い本数が群を抜いて高く、2019年は約80本と他のネット証券の2倍以上の本数でした。

外国株式に特徴を持つ証券会社は?

IPO同様に、外国株式も証券会社ごとに規模やサービス内容が異なります。特に海外投資に力を入れているネット証券3社のサービス内容を紹介します。

・SBI証券

ネット証券口座開設数1位のSBI証券は、海外株式における取扱い国数も9ヵ国と最多です。投資についての情報サービスでは、ロイター社提供による海外マーケットニュースやデータベースなどを多数提供しており、国外の情報がいち早く入手できるようになっています。

また提携銀行である住信SBIネット銀行の口座と連携することで、為替手数料が1ドルあたり4銭と、外貨調達コストが低い分、投資に回すことができます。

・マネックス証券

外国株式の買付手数料キャッシュバックキャンペーンを展開するマネックス証券は、取扱い銘柄数でも米国株式は約3,300、中国株式では約2,200と、SBI証券や楽天証券のおよそ倍となる規模を誇ります。香港のBOOM証券、米国のトレード証券を買収するなど海外市場の開拓を進めており、今後もさらなる発展が期待できそうです。

複数のNISA口座を持つことはできない。投資目的やスタイルから慎重な口座開設が吉

NISA口座は複数持つことができませんし、口座の移管にもさまざまな制限があるため、新規の口座開設時点で、慎重に金融機関を選ぶことが重要です。幅広い商品に投資するなら証券会社を選択することになりますが、証券会社によって、金融商品の取扱数や手数料はかなり異なりますので、よく確認する必要があります。ご自身の投資の目的や許容できるリスクの大きさをよく考えてから、金融機関を選ぶことで思わぬ失敗を回避できるかも知れません。

文・雲山 陸
フリーランスライター。これまでに税、不動産、投資情報を中心に数多く執筆。また教科書等海外出版物の英日翻訳や、音楽等芸術分野の知識を活かしコンサートパンフレット・エンターテインメント記事の執筆など幅広く手掛けている。