AI技術の進歩はとどまるところを知らず、私たちの生活を大きく変えようとしている。AIによって、私たちはこれから、金銭的にも精神的にも豊かになれるのだろうか。AIによって社会はどのように変わるのか。そして、どのような企業がAI を使って変革をもたらそうとしているのか。AI社会の未来を考えたい。

目次

  1. 資産運用の世界にもAI化の波
  2. AI投信が続々と誕生
    1. 米国のSNSファンド、AI運用ヘッジファンド
  3. ファンドマネージャーは失業の危機は本当なのか

資産運用の世界にもAI化の波

今話題のAI投信。AIで投資スタイルはどう変化する?
(画像= tuastock/stock.adobe.com)

AI(人工知能)は、自動運転などの次世代先端分野のほかに、医療・介護、教育といった生活分野、品質管理・工場自動化といった産業分野などさまざまな分野で実用化が進んでいる。また、金融業界でもみずほ銀行や三菱UFJ信託銀行、楽天証券などが、ウェブサイトでAIを使ったロボ・アドバイザーが投資家のプロファイルに適したETFの推奨などの運用アドバイスを行うサービスを始めた。AIやビッグデータを使った投信は米国が先に設定してから、日本の投資運用の世界においても、AI活用型での運用が開始されている。

AI投信が続々と誕生

運用の世界でもAIを利用して企業業績や株価の推移といった膨大なデータを読み込み、多角的に分析することで有望銘柄の発掘に役立てようという動きが広がりつつある。実際には、AI投信とはどのようなものなのだろうか。今後、ファンドマネージャーは職を失い、私たちはこれからAI の分析に頼って投資をしていくようになっていくのか。

日本よりAI投信が先行している米国の例などを見ながら予想してみよう。

米国のSNSファンド、AI運用ヘッジファンド

米国では「SNS連動型ETF」など各種のAI運用のファンドがすでに上場している。株式投資をしたことがある人ならツイッターなどのSNSで情報収集をしたことがあるだろう。「SNS連動型ETF」は、そうしたSNSのビッグデータをAIで分析し銘柄をピックアップして運用するファンドだ。

「SNS連動型ETF」で代表的なものとしては、2016年4月に設定された「SprottBuzzSocialMediaInsightsETF」がある。ティッカーは「BUZ」。BUZというのは、「BUZZ(バズ)ってる」というネット用語があるようにSNSで頻繁に話題に上がっていることを指す言葉だ。このファンドはSNS上でバズっている銘柄をAIで分析して、ネット上のニュースやSNSでツイートされた件数から、そのコメントがポジティブなのかネガティブかなども読み取り25銘柄を選定する仕組みとなっている。

ヘッジファンドでもAIの導入が加速化し始めている。クオンツ系ヘッジファンド大手の2シグマ社、ブリッジウォーター社、ルネッサンス・テクノロジー社などはAIトレードを積極的に進めている。

なかでも運用資産が20兆円と言われる世界最大のヘッジファンドであるブリッジウォーター社は、米IBMのAIコンピュータ「ワトソン」の技術者チームを引き抜き、AIトレードの開発に当たらせていることで有名だ。AIで、金融商品の相場変動、世界各国の政治・経済状況、各国中央銀行の動向や市場センチメントなどといったマクロの情報から、企業業績などミクロの情報まで多くのデータを収集して、分析して投資銘柄を決定しているようだ。

ファンドマネージャーは失業の危機は本当なのか

まだAI投信は始まったばかりで、その実力のほどを見極めるにはまだ早い。ただ、どんなに優れたファンドマネージャーでも、すべての銘柄やすべてのデータを分析し、24時間市場を監視することはできない。また、得意とするセクターの偏りや、投資に対する振れが生じる可能性がある。

一方、情報収集やデータ分析と言った投資分析はコンピュータやAIの得意とするところだ。そういったデータと株価の相関関係の分析では、ファンドマネージャーを上回る側面を持っていることは間違いない。こうした面では、AIの方が上回っているといえるだろう。

しかし、ビッグデータを分析するだけでは、今のところアナリストを補完することはできない。機械は投資判断の中で、情報それぞれの重要性を判断することは、かなりの難度といわれている。やはり、重要なパラメータを判断するのは、ファンドマネージャーの重要な役割になるのだろう。

AIでは、ビッグデータの分析なのでどちらかというと市場のコンセンサスに近くなり、順張りになる傾向が強くなりそうだ。実際、アルゴリズムによるシステム運用が普及したことで順張り投資家が増えた。

また、AIでは企業の大きなターンラウンドや新製品や新サービスで企業が大きく変化することを嗅ぎ取るといった作業は現時点ではまだ苦手だろう。そう考えると、ファンドマネージャーは司令官との役割を果たしながら、AIと共存していくことになるのだろう。

AI任せにしておけば「自然に資産が膨らんでいくという……」そんな世界は、まだしばらくの先のことのようだ。