米ガードナーが提唱する「ハイプ・サイクル」はビジネスにおける先進技術の普及時期を示すトレンドグラフだ。このグラフで今が黎明期とされる技術に「汎用人工知能」があり、実用化されれば社会に大変革を起こすと言われる技術を解説する。

目次

  1. ハイプ・サイクルとは?先進技術の普及時期を分析・予想
  2. 汎用人工知能は「人の脳の働きを模したAI」
    1. 汎用人工知能とは?
    2. 汎用人工知能で何が実現できる?
    3. 企業経営ではどのように生かせるのか?
  3. 社会実装に向けた研究開発が着実に前進

ハイプ・サイクルとは?先進技術の普及時期を分析・予想

未来の経営を変革する「汎用人工知能」。人の知能を持つAIで省人化
(画像=metamorworks/stock.adobe.com)

調査会社のガードナーが毎年公開している「ハイプ・サイクル」では、ビジネスに重要なインパクトをもたらす先進技術の普及時期を分析・予想している。最新版である2020年版で新たに「汎用人工知能」が分析の対象に含まれた。

ハイプ・サイクルは、横軸に「時間」、縦軸に「期待度」をとり、期待度が「黎明期」「『過度な期待』のピーク期」「幻滅期」「啓発期」「生産性の安定期」においてどう変化するかを示しつつ、それぞれの先端技術が今どの段階にあるのかを分析されており、把握できるようになっている。

例えば2020年版においては、黎明期の先進技術としては「エッジAI」なども紹介されており、啓発期の先端技術としては「フィンテック」が挙げられている。

ちなみに2009年版では、3Dプリンティングや拡張現実が「黎明期」と「『過度な期待』のピーク期」の中間に位置付けられており、それから10年以上が経った現在において同技術が実用化されていることを考えると、黎明期に位置付けられている先端技術は「10年後の未来」を想像させるものと言えそうだ。

汎用人工知能は「人の脳の働きを模したAI」

それでは、2020年版で新たに分析の対象に含まれた「汎用人工知能」とは、どのような先進技術で、実用化されるとビジネスに対してどのようなインパクトを与えるのだろうか。

汎用人工知能とは?

まず汎用人工知能は「Artificial General Intelligence」(AGI)を日本語に訳した言葉で、「人の知能を再現したAI」「人の脳の働きを模したAI」などとして紹介されることが多い。

一般的にAIは「強いAI」と「弱いAI」に分けられ、人間の脳のようにさまざまな状況に対応できる汎用人工知能は「強いAI」に分類される。一方で、自動運転やデータ分析などの特定用途で導入されるAIは「弱いAI」に相当し、「特化型AI」といった側面を持つ。

現在盛んに開発が進められている多くのAIがこの「弱いAI」で、すでに無人走行のためのAIを搭載した自動運転タクシーが海外では商用サービスとして展開されている。

一方で汎用人工知能は実現難易度が「弱いAI」より高く、商用利用などはまだ先の話だ。ただし、汎用人工知能が実現した際に社会やビジネスに与えるインパクトは、「弱いAI」よりもはるかに大きく、国内外で近年研究がより活発に行われるようになってきた。

汎用人工知能で何が実現できる?

汎用人工知能によって、特定の作業ではなく、人が脳をフル回転させて行うようなさまざまな作業をAIに任せることができるようになる。

例えば、人型ロボットに汎用人工知能を搭載させれば、看護師や介護士などとして活躍させることも可能であると考えられる。人間が知性を働かせながら創作する小説や映画も、汎用人工知能であれば人間のように生み出すことができると言われている。

SF映画の「ターミネーター」(1984年)や「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」(2015年)など、知性を持った人型ロボットが登場するSF映画は数多くあるが、こうしたロボットに搭載されているのが汎用人工知能だとイメージすれば分かりやすい。

企業経営ではどのように生かせるのか?

汎用人工知能の実用化は、ビジネスの在り方を大きく変えると言われている。経営者にとっては、汎用人工知能が代替できる業務が増えれば、結果として省人化によって人件費を抑えることができる。

もちろん、汎用人工知能が低価格で導入できるようにならなければ、当面は従業員に業務を担当させた方がコストは少なく済むが、汎用人工知能が広く普及する時期に入れば、導入コストも徐々に下がっていくはずだ。

事業拡大の際には、店舗や工場の経営・管理を汎用人工知能に任せることができるようになるかもしれない。人間の脳を模したAIであれば、人間のように採用活動や人材マネジメントも行えるはずだ。

こうしたことから、特に少子高齢化による人手不足が加速すると言われている日本では、経営者にとって汎用人工知能が実用化されるメリットは大きい。

社会実装に向けた研究開発が着実に前進

ガートナーのハイプ・サイクルに新たに登場した「汎用人工知能」だ。いますぐの実用化は期待できないが、社会実装に向けた研究開発は日々着実に進んでいる。

ハイプ・サイクルでは汎用人工知能のほか、さまざまな先端技術が紹介されている。2020年版のほか、毎年発表されるハイプ・サイクルがどのような内容になっているか、経営者としてその進歩をしっかりウオッチするようにしてはいかがだろう。ビジネスの種となるものが見つかるかもしれない。