決算書にならんだ数字を見ていても、いまいち要点が見えてこない。そう感じる経営者も多いのではないだろうか。経営状況を数字で読み解くためには、勘定科目の理解が欠かせない。経営に活かすための勘定科目の知識を解説する。

目次

  1. 勘定科目を知れば、経営状況が見えてくる
    1. 勘定科目は大きく5種類に分けられる
  2. 貸借対照表は決算日現時点の財務状況を表す
    1. 貸借対照表の役割
    2. 貸借対照表の勘定科目
  3. 損益計算書は1年間の事業活動の結果を表す
    1. 損益計算書の役割
    2. 損益計算書の勘定科目
  4. 個人事業主の勘定科目「事業主貸/借」とは?
  5. 独自の勘定科目を設定して、自社の経営判断に活かす
  6. 数字というエビデンスに基づき、経営状況を読み解く
木崎 涼
木崎 涼(きざき・りょう)
FP・簿記・M&Aシニアエキスパート。大手税理士法人で多数の資産家の財務コンサルティングを経験。多数の資格を持ちながら、執筆業を中心に幅広く活動している。

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勘定科目を知れば、経営状況が見えてくる

まずは勘定科目の理解から。決算書の数字から経営状況を読み解く
(画像=Natee Meepian/stock.adobe.com)

決算書は、税務申告上必要だから作成している。そんな経営者もいるだろう。しかし、決算書は本来、経営判断に必要な指標が詰まった宝だ。「どこに着目すればいいかわからない」という理由で決算書を眺める程度にしか見ないのは、実にもったいないことである。経営者として勘定科目への理解を深め、決算書の数字から経営状況を読み解けるようにしておきたい。

勘定科目とは、もともと日々の取引を帳簿に記載する時の分類項目のことである。たとえば「預金」「借入金」「売上」「給与」などがある。勘定科目を用いて日々の取引を記載しておくことで、月次・年次で数字を集計し、経営状況を把握することができる。

勘定科目は大きく5種類に分けられる

経理担当者は、個別の勘定科目について理解を深め、日々の取引を間違いなく分類して記載する必要がある。しかし、経営者に必要な勘定科目の知識は異なる。経営者に大切なのは、バランス感覚だ。勘定科目の分類を知るより、「勘定科目同士のバランスを見る」という大きな視野を持つべきなのである。

そのためには、まず勘定科目の大枠を押さえておくことが重要だ。勘定科目には次の5つの種類がある。

1:資産
プラスの財産のこと。
例)現金、預金、売掛金、商品、建物

2:負債
マイナスの財産のこと。
例)借入金、買掛金、未払金

3:純資産
資産から負債を差し引いた金額。出資金とこれまでの利益の累積額。
例)資本金、利益剰余金

4:収益
事業活動等で得られた収入。
例)売上、固定資産売却益

5:費用
事業活動等に必要とした経費。
例)材料費、給与、減価償却費

続いて、「勘定科目同士のバランスを見る」ことが大切な理由を事例から考察する。なお、数字はあくまで事例であり、業種業態・経営状況によって判断が異なることは留意してほしい。

「現預金1,000万円」
この数字を見て、どう感じるだろうか。「1,000万円もある」と感じる人もいれば「1,000万円しかない」と感じる人もいる。これだけでは、何の経営判断もできない。

「現預金1,000万円、機械装置200万円」
この情報が加わるとどうだろう。もしかすると、設備投資が不足し、資産を効率的に運用できていない可能性がある。必要な設備投資をし、現預金の割合を下げ、機械装置の割合を上げた方が効率的に収益を得られるかもしれない。

「現預金1,000万円、機械装置200万円、借入金1,500万円」
さらに、この情報が加わるとどうだろう。借入金の負担が重い状況では、設備投資より借入金の返済を優先した方がいいかもしれない。

このように、勘定科目のバランスを見ることで経営判断のヒントを得ることができる。

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貸借対照表は決算日現時点の財務状況を表す

決算書には、貸借対照表と損益計算書がある。まず、貸借対照表の役割を解説し、その勘定科目の意味を紹介する。

貸借対照表の役割

貸借対照表は、決算日時点での財務状況を表す。貸借対照表に記載される勘定科目の種類は、「資産」「負債」「純資産」である。

まずは勘定科目の理解から。決算書の数字から経営状況を読み解く
(画像=image)

貸借対照表を見れば、どうやってお金を調達し、何にお金を使ったかがひと目で理解できる。

貸借対照表は、「右から左」に見るとわかりやすい。右側にあるのは、負債と純資産。負債の中心は、借入金など外部から調達したお金だ。純資産とは、資本金とこれまで積み上げてきた利益だ。そして、左側にあるのは、現預金や建物、機械設備などの資産。

つまり、右側の「外部からのお金 + これまで積み上げたお金」が左側の「資産」に姿を変えているという見方ができる。

貸借対照表の勘定科目

続いて、代表的な貸借対照表の勘定科目を紹介する。貸借対照表を見るうえで参考にしてほしい。

<資産>
現金:手元にある現金など
預金:普通預金、当座預金など
売掛金:商品・サービスの販売代金で入金予定のもの
商品:商品在庫
土地:事業用の土地
建物:事業用の建物
車両運搬具:事業用の車両
機械装置:事業用の機械
器具備品:パソコンなど事業用の備品で10万円以上のもの

<負債>
借入金:銀行など外部からの借入金。経営者本人や親族からの借入金も含む
買掛金:商品・サービスの代金で後日支払い予定のもの。特に材料代など営業活動にかかわるもの
未払金:商品・サービスの代金で後日支払い予定のもの。特に広告制作費など直接営業活動にかかわらないもの

<純資産>
資本金:会社設立時に出資した金額。増資した時の金額も含む
利益剰余金:これまで積み上げてきた利益の合計

たとえば、貸借対照表の勘定科目ごとのバランスを見る時の視点には、次の4つがある。

  1. 現預金を効率的に設備投資に回せているか?
  2. 借入金の返済は順調に進んでいるか?
  3. 純資産は順調に積み上がっているか?外部から調達したお金に頼りすぎていないか?
  4. 売掛金や買掛金がふくらみすぎていないか?増えている場合、原因を把握しているか?

損益計算書は1年間の事業活動の結果を表す

続いて、損益計算書の役割を解説し、その勘定科目の意味を紹介する。

損益計算書の役割

損益計算書には、1年間の事業活動の結果が表れている。そのため、損益計算書は「通知表」のようなものだと表現されることもある。1年間の収益と費用、そして収益から費用を差し引いた利益が記載される。

まずは勘定科目の理解から。決算書の数字から経営状況を読み解く
(画像=image)

損益計算書は、単年ではなく前年との比較で見ることが大切だ。収益は増加したのか、減少したのか。収益に対してどのくらい利益が残っているのか。収益に対する費用の割合に変化はないか。費用の増えた項目、減った項目にはどのようなものがあるか。前年と比較して見ることで、1年間の事業の振り返りができる。

損益計算書と貸借対照表は、まったく別個のものではなく実はつながっている。損益計算書に記載された利益は、貸借対照表の純資産にある利益余剰金として積み上がっていく。つまり、損益計算書で計算された1年間の利益が、財務状況を表す貸借対照表に反映されるのだ。損益計算書を見る時は、その点も押さえておきたい。

まずは勘定科目の理解から。決算書の数字から経営状況を読み解く
(画像=image)

損益計算書の勘定科目

続いて、代表的な損益計算書の勘定科目を紹介する。損益計算書を見るうえで参考にしてほしい。

<収益>
売上:商品やサービスの提供で得た収益
雑収入:事業活動以外で得た収益。補助金収入など
受取利息:預金利息、貸付金利息など
固定資産売却益:固定資産を売却した時の売却益
有価証券評価益:投資活動で得た評価益

<費用>
仕入高:材料の仕入にかかる費用
給与:従業員に支払う給与
役員報酬:役員に支払う報酬
地代家賃:事務所の賃料や地代など
広告宣伝費:広告宣伝にかかる費用
消耗品費:主に10万円未満の備品などにかかる費用
外注費:ホームページ制作費など外部業者に外注した費用
交際費:取引先との会食代など、事業にまつわる交際にかかった費用
福利厚生費:従業員への差し入れ代や慶弔費、社員旅行など福利厚生にかかった費用
通信費:固定電話や社用携帯、インターネット通信にかかる費用
光熱費:水道代、電気代、ガス代など

たとえば、損益計算書の勘定科目ごとのバランスを見る時の視点には、次の4つがある。

  1. 売上に対して、材料費や給与の割合はどうか?
  2. 役員報酬の設定は適切か?
  3. 費用の中に削減できる項目はないか?
  4. 利益アップにつながる費用にきちんとお金を使えているか?

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個人事業主の勘定科目「事業主貸/借」とは?

個人事業主の場合、「事業主貸/借」という勘定科目を用いる。意味は次の通りである。

事業主貸:事業所からみて、事業主に貸しているお金。事業用通帳から個人の支払をした場合など
事業主借:事業所からみて、事業主から借りているお金。個人通帳から事業用通帳に入金した場合など

個人事業主の場合、事業とプライベートを完全に切り分けることは難しく、必要に応じて「事業主貸/借」の勘定科目を使用する必要がある。しかし、「事業主貸/借」が多すぎると、通帳残高と経営の実態がかけ離れてしまうこともあり、経営状況が判断しにくくなる。

できるだけ事業用とプライベートの支払は分け、経営状況を正しく把握することが望ましい。

独自の勘定科目を設定して、自社の経営判断に活かす

勘定科目というと、会計のルールで厳密に定められていると考える人もいるだろう。しかし、実は勘定科目は自由に設定できる。「この費用を把握したい」という項目があるなら、新たな勘定科目を作ることで自動的に月次・年次で集計できる。そうすれば、独自の月次推移を見たり、対前年比を見たり、自社の経営の参考にできる。

勘定科目の追加はほとんどの会計ソフトで可能なので、必要に応じて設定したり、経理担当者に追加を頼んだりするといいだろう。

もともと、会計は税務申告を目的とするのではなく、会社の事業状況を正しく数字で表し、経営判断に活かすことを目的としている。勘定科目について知り、必要に応じて新たな勘定科目を設定することで、経営判断に活かすヒントが得られるだろう。

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数字というエビデンスに基づき、経営状況を読み解く

「数字を見なくても、経営状況は頭に入っている」経営者なら、そう感じることもあるだろう。しかし、実際に数字を見てみると、自分自身の体感と数字との間に乖離が生じているケースもある。数字は、経営者が把握しにくい部分まですべてを明るみに出す。経営のすみずみまで目を行き渡らせるには、数字が参考になる。

体感と数字との間に乖離がなかったとしても、直観的に感じ取っていたことが数字に明確に表れていると知ることで、より確信を持って経営判断ができるだろう。数字の裏付けが、経営判断のスピードを速めたり、行動を後押ししたりすることは多々ある。

数字を知ることで、よりスピーディに適切な経営判断ができる可能性が高まるだろう。経営をよりよい方向へ導くためにも、勘定科目を通して数字を読み解く能力を高めることも大切である。

文・木崎涼