経営の成功確率を高めるためには「時流」を捉えることが重要だ。それを知る手段として企業の時価総額ランキングが役立つ。バブル崩壊前の1989年と現在のランキングを比較して、どの分野の企業が躍進しているか考察する。

目次

  1. 商品やサービスが「時代遅れ」にならないように
  2. 1989年末の時価総額ランキング
  3. 最新の時価総額ランキング:10社中8社が入れ替わっている状況
    1. 中国などの台頭で多くの製造業企業はランキング落ち
    2. 1位トヨタ:自動運転などの分野でさらに注目度高まる
    3. 2位ソフトバンクグループ:世界に注目される日本の「投資会社」
    4. 3位ソニー:1993年に参入した「ゲーム事業」が売上の柱に
  4. 企業の時価総額ランキングの定期的にチェックをして世の中の流れを把握する

商品やサービスが「時代遅れ」にならないように

企業の時価総額ランキングの過去と現在の推移を考察して時流を読む
(画像=Syda Productions/stock.adobe.com)

経営者には、時代の流れに合わせてビジネスの方向性を微調整しながら進めていく柔軟性が求められる。そのためには世の流れを読み解く必要があり、いまどのような商品やサービスを展開している企業や業界が成長しているのかを知ることが重要なのだ。そこで日本経済の状況を考察する上で容易で有効な手段として時価総額ランキングを活用する方法がある。特に現在と過去を比較することで様々な情報を手に入れることができるので、是非実践してみてほしい。

1989年末の時価総額ランキング

参考として1989年末の時価総額ランキングと2021年現在の時価総額ランキングを比較していく。まず時価総額は「株価×発行済株式数」で計算されることは知っておきたい。

株価は投資家の期待度などが反映するため、業績の良さや経営の健全性だけでは時価総額ランキングの上位に入らないこともある。時価総額ランキングの上位企業は、業績もよく、なおかつ投資家の期待度も高い企業だと理解しておこう。

1989年末の時価総額ランキングを紹介していこう。

順位 1989年末
企業名 時価総額
1位 NTT 22.9兆円
2位 東京電力 8.1兆円
3位 トヨタ自動車 7.7兆円
4位 新日鉄 5.3兆円
5位 松下電器 4.8兆円
6位 関西電力 4.8兆円
7位 日立製作所 4.6兆円
8位 東芝 4.0兆円
9位 三菱重工業 3.8兆円
10位 日産自動車 3.7兆円

※出典:Astra Manager

1989年末の時価総額ランキングでは、自動車メーカーや電機メーカーを含む製造業の企業が多く含まれている。3位にトヨタ自動車、5位に松下電器(現パナソニック)、7位に日立製作所、8位に東芝、10位に日産自動車がそれぞれランクインしている。

当時、日本製品は他国の製品よりも緻密で壊れにくいとして、「Made in Japan」ブランドを確固たるものとしていた。こうしたことを背景に海外事業で各社が売上を伸ばし、時価総額ランキングでも製造業の企業が上位にずらりと並ぶ結果となっている。

最新の時価総額ランキング:10社中8社が入れ替わっている状況

続いて2021年3月5日時点(記事執筆時点)のデータを紹介しよう。1989年末の時価総額ランキングで登場していなかった企業は、灰色で示した。実に10社中8社が入れ替わっている。特に鮮明なのが、投資会社やゲーム事業を手掛ける企業が躍進している点だ。

順位 2021年3月5日時点
企業名 時価総額
1位 トヨタ自動車 25.4兆円
2位 ソフトバンクグループ 20.4兆円
3位 ソニー 13.7兆円
4位 キーエンス 12.1兆円
5位 NTT 10.6兆円
6位 ファーストリテイリング 9.9兆円
7位 リクルート 8.3兆円
8位 任天堂 7.9兆円
9位 日本電産 7.7兆円
10位 三菱UFJフィナンシャル・グループ 7.6兆円

※出典:日本経済新聞公式サイト・時価総額ランキング

中国などの台頭で多くの製造業企業はランキング落ち

企業の時価総額ランキングの過去と現在の推移を考察して時流を読む
(画像=Syda Productions/stock.adobe.com)

過去ランクインした製造業が姿を消した理由が、「製造業」が時代遅れのビジネスだからではないことは理解しておきたい。現在も製造業は日本に大きな利益をもたらす柱であり、実際に数多くの会社がランキング入りをしている。ただ取り扱う製品によっては、中国や台湾などの企業の台頭で日本企業の世界シェアが当時よりも落ち、業績に以前のような勢いがないことも事実だ。

1位トヨタ:自動運転などの分野でさらに注目度高まる

多くの製造業企業がランキングから姿を消す中でもトヨタは健在だ。しかも時価総額を25兆4,000億円まで高め、3位から1位に踊り出た。トヨタは最近では自動運転技術の開発やコネクテッドシティの事業に力を入れ、投資家からの注目度は急速に高まっている。

2位ソフトバンクグループ:世界に注目される日本の「投資会社」

ソフトバンクグループが2位にランクインしていることも特筆すべき点だ。孫正義会長は自社を「投資会社」と位置付け、世界の有力ベンチャー企業への出資を成功させながら、時価総額を高めてきた。海外からも注目される投資会社は、かつての日本にはなかった。

3位ソニー:1993年に参入した「ゲーム事業」が売上の柱に

3位のソニーは1993年にゲーム事業に参入し、同事業はソニーの稼ぎ頭となった。最近では「プレイステーション」関連の売上が大きく伸びていることが投資家に好感されている。ちなみにゲームの開発、製造、販売の大手である任天堂も8位にランクインしている。

企業の時価総額ランキングの定期的にチェックをして世の中の流れを把握する

2021年2月15日に日経平均が30年ぶりに3万円を突破した。まだ日経平均は1989年の過去最高値(3万8,915円87銭)を更新できていないが、その一方で時価総額を大きく伸ばした企業も多い。

経営者であれば、企業の時価総額ランキングがどう変化しているのかを定期的にチェックし、いまホットな事業ドメインがどんなものなのかをしっかりと把握するよう努めたい。それを実践することで、自社ビジネスの舵取りに大いに役立つはずだ。