米国には、世界をリードするIT企業が多い。その多くがユダヤ人によって経営または創業されている。ユダヤ人が世界のIT業界をリードしている理由はなんなのだろうか。頭脳明晰と言われる彼らのビジネスに学べるものはないのか、考えていこう。

目次

  1. ユダヤ人経営者(創業者)が多い世界的IT企業
  2. ユダヤ人はなぜ科学技術分野に強いのか
  3. 日本企業の課題とされる独創的なビジネスモデルの構築
  4. ユダヤ人に学ぶことは数多くある

ユダヤ人経営者(創業者)が多い世界的IT企業

ユダヤ人が世界のIT業界をリードしている理由は独自の思考法にあった
(画像=Sergey Nivens/stock.adobe.com)

ユダヤ人が経営しているIT企業は多数あるが、以下にいくつか例を挙げてみよう。

企業名 ユダヤ人の経営者名
Oracle(データベース開発大手) ラリー・エリソンとサフラ・キャズが創業。2人ともユダヤ人。キャズはイスラエル生まれ
Dell(パソコン製造大手) 創業者マイケル・デルがユダヤ人
Compaq(パソコン製造大手) 創業者ベン・ローゼンがユダヤ人
Microsoft(ソフトウェア開発大手) 長らくCEOを務めたスティーブ・バルマーがユダヤ人
Intel(半導体製造大手) 創業者アンドリュー・グローブがユダヤ人
Salesforce.com(CRMシステム開発) 創業者マーク・ベニオフがユダヤ人
Google(検索エンジン開発大手) 創業者セルゲイ・ブリン、ラリー・ペイジがいずれもユダヤ人
PayPal(オンライン決済システム開発) 共同創業者マックス・レヴチンがウクライナ生まれのユダヤ人
Facebook(SNS) 創業者マーク・ザッカーバーグがユダヤ人
LinkedIn(SNS) CEOジェフ・ワイナーがユダヤ人

枚挙にいとまがないが、他にもユダヤ人が経営する大手IT企業は数えきれないくらい存在する。現在の米国をリードしているIT企業グループGAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)のうち3社が「ユダヤ人が創業したか、経営していた企業」ということになる。2018年時点での米国のIT企業の時価総額ランキング(ブルームバーク調べ)では、Microsoft、Google、Facebook、Intel、Oracleの5社がトップ10入りしている。

「ユダヤ人」とは、「ユダヤ教の信者か」「ユダヤ人の母から生まれた他宗教の信者ではない者」を指す。日本で生まれ育った日本人でもユダヤ教に改宗すればユダヤ人となることは可能だ。逆にユダヤ人の母から生まれてもキリスト教に改宗すればユダヤ人ではなくなってしまうのだ。

ドナルド・トランプ前米国大統領の長女イヴァンカ・トランプもユダヤ人の夫ジャレッド・クシュナーと結婚する際にユダヤ教に改宗しユダヤ人となっている。

ユダヤ人はなぜ科学技術分野に強いのか

ユダヤ人が頭脳優秀な理由については諸説ある。他宗教の信者との結婚が少なく血族的に守られたからと考えられる遺伝説。高度な知識が要求されるユダヤ教の信者として、紙がない時代に培われた記憶力や聖書編纂以来の識字率なども影響すると考えられる学習中心説だ。また、中世には差別が原因となり、金融などの知的職業へ就くことが理由になったこと考える職業選択説なども挙げられる。

いずれの説もあくまで推測の域に過ぎないが、衰亡と離散を繰り返してきたユダヤ人の苛烈な歴史が、生存のための必要条件として頭脳の優秀さをユダヤ人に植え付けたのかもしれない。ディアスポラで民族が世界中に離散し、異国の地で生き残るには頭脳を鍛えるしかない。子どもたちに教育を施し生きるための知識を与えれば、戦争や迫害などの困難が起きても生き残る可能性を高められる。

多様かつ過酷な環境で生きてきたユダヤ人にとっては「知識」が収奪されない唯一の「財産」であったのかもしれない。

日本企業の課題とされる独創的なビジネスモデルの構築

最近、世界の企業時価総額ランキングを見ても、日本企業はトヨタ自動車が何とか50位以内に推移しているくらいだ。日本のIT企業は、米国のIT企業に比べて、時価総額は大きく見劣りしている。将来の日本経済にとって、日本も米国のIT大手のような企業を輩出することが望ましい。そのためには、以下について掘り下げることが必要となっていくだろう。

・米国のIT企業はなぜ強いのか
・なぜ米国の巨大IT企業の多くはユダヤ人が経営しているのか

基本的な問題として「ユダヤ人に優秀な人材が多いのはなぜか」について宗教的な側面や教育文化的側面から研究する必要がある。一般にユダヤ人は、教育熱心であるとされているが、そもそもどのような教育をどの程度施しているかを知ることが必要だろう。

ユダヤ人に学ぶことは数多くある

著書「ユダヤ人の頭のなか」で知られるアンドリュー・J・サター氏はユダヤ人特有の思考法について下記のように述べている。

・リスク管理を徹底し、「損切り」せよ
・顧客第一主義を通す
・他人の言語や文化に慣れ親しむ
・分からないことを放置しない徹底した議論
・論理的思考と文書化スキルを身に付ける

様々な分野で結果を出し続けるそのメソッドは、日本人も学ぶことが多いだろう。日本人がユダヤ人と同じようにすることは難しいかもしれないが、事実上IT業界をリードしているユダヤ人にわずかでも近づく道はある。今、最も日本の企業にとって必要なのは世界的IT企業に見るような、独創的ビジネスモデルの構築であることは間違いないだろう。

文・前田 健二