モバイル決済が日本でも普及し始め、日常的に利用する人が増加している。しかし、まだまだ中国の勢いには敵わない。中国人民銀行のデータによると、2018年の時点で中国のモバイル決済金額は約4,709兆円で、2013年からの5年間で約27倍に拡大している。しかも、2020年は第二四半期だけで約1,640兆円にも上ったという。中国のモバイル決済普及率86%に対し、日本は半分以下の29.6%と大きく水をあけられているのが実情だ。

中国でモバイル決済の爆発的普及はなぜ起きたのか。そして、現在のモバイル決済の中国大手はどの企業なのか。「中国×モバイル決済」の最前線に迫る。

目次

  1. モバイル決済の中国大手は?
    1. 支付宝(Alipay):中国国内で最大シェアを誇るモバイル決済サービス
    2. 微信支付(WeChat Pay):Alipayに次ぐ中国二番手のモバイル決済サービス
  2. なぜ中国でモバイル決済が普及した?
  3. 「デジタル人民元」も一気に浸透していく?
  4. 欧米諸国や日本をも圧倒するスピード感

モバイル決済の中国大手は?

中国で爆発的普及が起きた「モバイル決済」の最前線を追う
(画像=zhu difeng/stock.adobe.com)

中国におけるモバイル決済の大手といえば、「支付宝(アリペイ/Alipay)」と「微信支付(ウィーチャットペイ/WeChat Pay)」だ。両サービスにおける決済規模は年々右肩上がりで伸びており、ほかのモバイル決済サービスと比べて抜きんでている。

まずはこのAlipayとWeChat Payについて解説しておこう。

支付宝(Alipay):中国国内で最大シェアを誇るモバイル決済サービス

Alipayは、アリババの金融子会社アント・グループが展開しているモバイル決済サービスだ。

「中国消費者に最も使われている決済アプリ」を謳っており、ユーザー数が10億人を突破したことが2019年1月に発表された。その後、2019年6月時点で12億人を超えたことも明らかにされており、勢いはとどまるところを知らない。

中国の調査会社「Analysys易観」が2019年3月に公表したデータによると、2018年の中国におけるモバイル決済金額は約4,709兆円で、そのうち54%がAlipayによる決済だったという。

日本を含め中国人が旅行で多く訪問する国でも、Alipayの導入が加速している。インバウンド消費を取り込むため、レストランなどが導入に積極的なのだ。新型コロナウイルス感染症の影響で導入スピードはいったん収まりを見せているが、コロナ収束後は再び導入が進むとみられる。

微信支付(WeChat Pay):Alipayに次ぐ中国二番手のモバイル決済サービス

サービスの名称からも分かるように、WeChat Payは中国のインスタントメッセンジャーアプリ「WeChat」のブランド下で提供されているモバイル決済サービスだ。運営しているのは中国のITサービス大手テンセントとなっている。

WeChat Payのユーザー数も10億人を超えているとされており、決済金額ベースではAlipayに次ぐモバイル決済サービスとなっている。WeChat Payは少額決済で使用されるシーンが多く、50元(約800円)までのモバイル決済ではAlipayよりも高頻度で使用されている。

なぜ中国でモバイル決済が普及した?

中国でAlipayとWeChat Payが爆発的に普及したのはなぜなのだろうか。その主な理由としては2点考えられる。スマートフォンの普及が早かったこと、そしてクレジットカードの普及が先進国に比べて遅れていたことだ。

中国では高価なパソコンよりも安価なスマートフォンの普及が先行して始まった。スマートフォンを所有していればモバイル決済サービスを簡単に利用することができることから、モバイル決済サービスの利用が一気に広がったとされる。

また、先進国では広くクレジットカードが普及しているが、中国ではまだ本格的に普及が始まっていなかったことも理由として挙げられる。日本ではクレジットカードの牙城を崩すような形でモバイル決済の導入が進んでいるが、中国では事情が違う。

このような背景もあり、中国でモバイル決済が爆発的に普及したといえる。

「デジタル人民元」も一気に浸透していく?

モバイル決済はキャッシュレス決済の1つに数えられるが、中国ではこのキャッシュレス決済にさらなる革新がもたらされようとしている。「デジタル人民元」の導入だ。

このデジタル人民元は政府主導で進められている中国の国家プロジェクトで、中国の中国人民銀行(中央銀行)が後ろ盾となって発行されるデジタル通貨のことだ。すでに試験運用が中国の主要都市などで始まっている。

デジタル人民元を法定通貨として認めるための法律の準備も進められており、2022年2月に開催される北京冬季オリンピックまでには発行されるという見方が強い。中国政府側には、デジタル通貨を国が管理することで、国民や企業の資金の流れを把握できるようにする狙いがあるとされている。

デジタル人民元が広く使用されるようになれば、モバイル決済の爆発的な普及に続く中国における金融イノベーションとなる。そしてそれはすでに現実味を帯びた話なのだ。

欧米諸国や日本をも圧倒するスピード感

中国は「世界の工場」と呼ばれ、労働力が国としての武器だった。ただ近年はテクノロジーを武器にその存在感を高めつつある。フィンテックの導入・普及を国が強力に推進していることもあり、欧米諸国や日本を圧倒するスピード感となっている。

モバイル決済はすでに中国では当たり前のものとなったが、次はデジタル通貨の導入・普及が爆発的なスピードで進むのか、注目だ。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)