日本や欧米に追い付け追い越せと、積極的にIT化への取り組みを進めてきた中国は、キャッシュレス先進国でもある。その中国の最新キャッシュレス事情だが、コロナを経て、少し変化が出てきている。コロナは中国のキャッシュレス経済をどのように変化させたのだろうか。

目次

  1. 実はキャッシュレス先進国な中国
  2. 実はキャッシュレス先進国の中国、その要因は?
    1. 現金への信頼度が低い
    2. プレイヤーが強力で少ない
    3. QR決済という簡単な決済方法
  3. 中国のキャッシュレス決済はコロナ禍でも順調に成長
  4. コロナがさらに追い風になった理由とは?
  5. 中国はコロナでますます「モバイル社会」へと変容を遂げた

実はキャッシュレス先進国な中国

コロナで中国のキャッシュレス化が加速?最新中国キャッシュレス事情とは?
(画像=Blanscape/stock.adobe.com)

中国といえば、ひと昔前は、まだ発展途上国のイメージが強かったかもしれない。しかし、ここ10年でもはやそのイメージは払拭されたといってよいだろう。アリババやテンセントに代表されるような、大きなテクノロジー企業が育っていることに加え、ユニコーンと呼ばれる巨大未上場テック企業の数はアメリカに次いで世界2位だ。

そんな中、キャッシュレスの部分でも、中国は先進国だといえるだろう。一般社団法人「キャッシュレス推進協議会」が2020年6月に発表した資料によれば、中国のキャッシュレス決済の割合は、2017年時点で70%を超えており、世界でも韓国についで2位となっている。日本がまだキャッシュレス決済が同年で20%台であることを考えると、中国は日本に比べてもキャッシュレス化が進んでいるといえるだろう。

実はキャッシュレス先進国の中国、その要因は?

中国はなぜ、キャッシュレス先進国になりえたのだろうか。その要因を探っていこう。

現金への信頼度が低い

まず、日本と中国の異なる点として、現金への信頼度が低いということが挙げられる。中国の場合、偽札などが多いため、国民の現金に対する信頼度が低い。そのため、キャッシュレス決済に意向したほうが、資産を守るという観点では有効だと考えられている。

プレイヤーが強力で少ない

日本の場合、キャッシュレス決済の事業者が乱立している。PayPay、Suica、Edy、iD、au PAY、楽天ペイ…と、数えきれないほど多い。そして、店舗によって使えるキャッシュレス決済が異なる。そのため、どこでも使える現金で決済するほうが利便性は高い。

一方、中国では、アリババとテンセントという巨大なプレイヤーが、キャッシュレス決済業界をほぼ寡占している。2020年第一四半期時点で、両方のシェアを足すと9割を超えている。つまり、利用者はこの2つの決済手段さえ持っていればよく、管理も簡単だ。これもキャッシュレス化を促進した理由の一つといえるだろう。

QR決済という簡単な決済方法

また、加盟店においても、キャッシュレス決済にするメリットは大きい。中国のキャッシュレスの多くはQR決済で、加盟店は初期投資を必要とせず、QRコードさえ置いておけばよい。そのため、多くの店舗でキャッシュレス決済の対応が可能になったのだ。インドでもこういった形でQR決済が浸透しており、新興国であってもキャッシュレス決済が増えている背景の1つとなっている。

中国のキャッシュレス決済はコロナ禍でも順調に成長

新型コロナウイルスの状況下において、中国のキャッシュレス決済はどうなっているのだろうか。

アリババは、2020年4-6月期の決算で、売上高前年同期比34%増と強い決算を出した。クラウドコンピューティング事業に加え、中国のコアコマース事業が34%増と成長を牽引した形だ。一方、テンセントも、2020年4-6月期の売上高は前年同期比29%増、そのうちフィンテック部門の収益は30%増と、いずれも高い成長を見せている。

キャッシュレス決済の比率等はまだ出ていないものの、2社の決算を見ると、おおむね順調に推移しているといえるだろう。

コロナがさらに追い風になった理由とは?

コロナが追い風となった理由は、もう1つある。それは、中国の「健康コード」だ。中国では街中のあらゆる場所にあるQRコードを読み取ることで、思った以上に多くのビックデータが集まっている。

さらに、個人の健康状態などを入力することで、コロナへの感染リスクがどの程度あるかがわかるシステムが登場したのも重要なポイントだ。これを活用したことで、中国はコロナの封じ込めに一定の成果を出したといわれている。一方で、これがないと公共交通機関や商業施設の利用ができない可能性も指摘されている。

このように社会システムが発達すると、「モバイルを持つこと」「QR決済を利用すること」のベネフィットが高まっていく。その結果、ますますキャッシュレス化やモバイル化が進んでいく。こういったサイクルがコロナによって生まれつつあるのだ。プライバシーの問題等はあるものの、キャッシュレス決済にとっては間違いなく追い風に働いたといえるだろう。

中国はコロナでますます「モバイル社会」へと変容を遂げた

これまでも中国はキャッシュレス先進国であった。背景には、アリババとテンセントという巨大プレイヤーの存在や、中国における現金に対する信用度の低さなどがある。

そしてこの新型コロナウイルスを機に、「健康コード」などの新しい仕組みが生まれるなど、もはや中国はキャッシュレスだけでなく、生きるためにモバイルが必要な「モバイル社会」に変容を遂げつつある。今後、中国はモバイル社会の名のもとに、ますますモバイルサービスで存在感を増していく可能性がありそうだ。

文・BUSINESS OWNER LOUNGE編集部