CBインサイツが発表した調査データによれば、AI(人工知能)スタートアップは2019年に266億ドル(日本円で約2.9兆円)を調達、世界中で2,200件以上の取引を行ったという。

残念ながら新型コロナウィルスの世界的パンデミックが発生してから鈍化を余儀なくされているものの、中長期的に展望すれば大幅な伸びが期待できそうだ。

また、米国以外のAIスタートアップが健闘しているのも特徴的である。今回はその中から、英国のAI界をリードする新進気鋭のスタートアップを紹介しよう。

目次

  1. 1. JamieAi  AIによる機械学習で優秀なIT人材を発掘
  2. 2. Kwiziq 「AI外国語講師」から効率よく言語を学ぶ
  3. 3. Verv  AIが賢い節電を助言して電気代を2割節約
  4. 4. Cleo  自分だけのAIファイナンシャル・アドバイザー
  5. 5. IntelligentX  AIがビールを作る時代が到来?
  6. 6. Onfido  機械学習による顔認証で雇用者の身元確認
  7. 7. Tractable 事故や災害の損害査定をAIの深層学習で自動化
  8. 8. Digital Genius  AIと人間の連携による高付加価値カスタマーサービス
  9. 9. Echobox  世界初のAIオンライン・メディア
  10. 10. Phrasee  AIでデジタル・マーケティングを最適化
  11. 今後の英国AI業界は果たしてどうなる?
大西洋平
大西洋平
経済ジャーナリスト。出版社勤務を経て独立し、ビジネス誌や金融経済誌、一般週刊誌などに経済・金融・企業経営などの分野を中心とした記事を寄稿。これまでにトップインタビューを行った上場企業数は1000社以上に上る。また、著名なエコノミストや経営コンサルタント、弁護士、会計士、金融市場のアナリストやストラテジストなどの取材も多数手掛ける。

1. JamieAi  AIによる機械学習で優秀なIT人材を発掘

AIを活用したSTEM(科学・技術・工学・数学)分野の人材採用プラットフォームを開発・運営するスタートアップ。

AIの洞察力によって雇用のミスマッチを発生しにくくしているのが特徴で、英国発のモバイルバンクであるMonzo(旧Mondo)や格安航空券比較サイトのスカイスキャナー、日本のクックパッドなど、幅広い法人・団体が活用している。

2. Kwiziq 「AI外国語講師」から効率よく言語を学ぶ

2012年に設立されたスタートアップ。レッスンを通して個々の習得レベルを分析・評価して苦手な領域の克服を図る「AI外国語講師」というサービスを提供している。

リアルの語学学校でマンツーマン指導を受けるような感覚で、外国語を効率よく学ぶことが可能。

3. Verv  AIが賢い節電を助言して電気代を2割節約

AIによって家庭内の節電をサポートする「スマートホーム・エネルギー・アシスタント」を開発。スマートフォンなどで電力使用量と料金を分析し、節電法をアドバイスする。

分析の精密度に定評があり、初回の利用で使用料金を平均20%節約可能だ。電化製品の故障や欠陥も察知し、無駄な電力の消耗だけではなく、事故防止にも貢献する。

4. Cleo  自分だけのAIファイナンシャル・アドバイザー

2015年設立のスタートアップで、AIによるファイナンシャル・アドバイス・プラットフォームを運営。AIがFacebookメッセンジャーなどを通じ、友達が語りかけるような感覚で、お金の管理についてアドバイスしてくれる。

セキュリティレベルも銀行と同水準で、AIによる深層学習技術によって日々の支出・収入を詳しく分析し、家計の改善に結びつける。

5. IntelligentX  AIがビールを作る時代が到来?

Facebookメッセンジャーのチャットボットを通じて飲んだビールの感想を伝えると、それを次の製造レシピに反映させるというユニークなサービスを提供しているスタートアップ。

製造側にとっては消費者の生の声を直接聞ける貴重な機会となり、次なる大ヒット商品の開発に結びつけられる。

6. Onfido  機械学習による顔認証で雇用者の身元確認

ID認証を手掛けるスタートアップで、マイクロソフトやセールスフォースも出資している。

雇用者の犯罪履歴や運転履歴、素性などの自動調査サービスとともに、文書や顔認証による照会にも注力。顔認証ではAIによる機械学習で検証し、より信頼性の高い身元確認を実現。Uber EatsやZipcarなど、世界中の大手企業が採用している。

7. Tractable 事故や災害の損害査定をAIの深層学習で自動化

事故や災害による損害の査定をAIによるディープラーニング(深層学習)でサポートするスタートアップ。ビッグデータのタグ付け作業を会話型学習技術で簡潔化し、独自のアルゴリズムが膨大なサンプルを処理している。

事故車の写真から補償レベルを判定する「AI写真推定システム」は、米国の大手保険会社が熱い期待を寄せる。東京海上日動とも提携。

8. Digital Genius  AIと人間の連携による高付加価値カスタマーサービス

人間とAIを絶妙に連携させたカスタマーサービスを提供している。

チャットボットの多くは質問とずれた対応になりがちだが、メタデータを整理・ラベルづけし、精度の高い回答を導き出せるのが強みだ。精度90%以下の回答しか見つからなかった場合には、人間のサービススタッフが対応する。

KLMオランダ航空やユニリーバなど、グローバル企業を顧客としている。

9. Echobox  世界初のAIオンライン・メディア

世界初のAIオンラインメディアを標榜するスタートアップ。SNSでのコンテンツの共有に最適なタイミングと効果的な拡散先を判定し、最大限の反響を追求できる「Echo AI」を開発した。

また、ニュースの速報性をアルゴリズムで判断する「速報検索エンジン」も開発。BBCやブルームバーグ・テクノロジーなど、大手メディアが採用している。

10. Phrasee  AIでデジタル・マーケティングを最適化

統計結果に基づいて最適な広告を作成するAIデジタル・マーケティング・ツールを手掛けるスタートアップ。

広告のクリック数や広告メールの開封数をもとに、人間が思いつく単語やフレーズよりも効果的で、消費者の購買・利用意欲をそそる言葉をAIが選定する。

今後の英国AI業界は果たしてどうなる?

英国はソフトランディングによるブレグジット(英国EU離脱)という問題と直面しており、さらに新型コロナウイルスの感染者数に関しても深刻な状況にある。こうして国難に見舞われている中でも、ミクロの視点で見ればさまざまなAI関連サービスが生まれ、世界的に高い評価を受けている。今後もその動向を注視したいところだ。

文・大西洋平(ジャーナリスト)