新型コロナウイルスは、世界経済にも大きな影響を与えている。もちろん、ベンチャーキャピタルおよびスタートアップの環境にも変化を与えたことは間違いない。

では、新型コロナウイルスで、ベンチャーキャピタルおよびスタートアップを取り巻く環境はどのように変わったのだろうか。ベンチャーキャピタルが行なった投資の具体的な紹介も含め、ベンチャーキャピタルおよびスタートアップを取り巻く環境の変化について解説する。

目次

  1. コロナウイルスでも、スタートアップへの資金環境は充実?
  2. 日本でもスタートアップへの資金流入は続く
  3. 今後さらにスタートアップに多くの資金が流れ込む?
  4. 新型コロナウイルスはスタートアップ、ベンチャーキャピタルを淘汰していく

コロナウイルスでも、スタートアップへの資金環境は充実?

新型コロナウイルスでスタートアップ投資はどう変わったか?
(画像=oneinchpunch /stock.adobe.com)

コロナウイルスは、多くの産業に影響を与えた。もちろん、スタートアップを取り巻く環境も大きく変わったといえるだろう。実体経済は一時期大きく落ち込み、2020年の成長率はマイナスに終わる見込みだ。

しかも、まだ完全な回復基調にあるわけではなく、2021年の回復も緩やかになる見込みだ。さらに、2021年2月以降、新型コロナウイルスの新規感染者は世界的に減少傾向にあったが、各国で変異ウイルスの拡大が見られ、ワクチン供給後も予断を許さない状況が続いている。

そうした中、スタートアップおよびベンチャーキャピタルについては、実体経済とは少し状況が異なるようだ。世界のベンチャー投資の金額を見てみると、2020年第1四半期は525億ドル、2020年第2四半期は543億ドルと、2019年に比べると若干の減少傾向にある。

しかしながら、もう少し詳しく中身を見てみると、状況はやや異なるようだ。例えば、世界最大手のベンチャーキャピタルであるセコイア・キャピタルは、2020年上半期に105件、71億ドルもの投資を行っている。同社は2019年下半期に101件、63億ドルの投資を行っており、2020年上期にはさらに投資額を増やしたことになる。

実際、Waymoの30億ドルを筆頭に、2020年上半期で10億ドル以上の金額を調達した企業も5社あるなど、大型調達も行われている。このように、スタートアップへの調達は一見落ち込んでいるように見えるものの、そこまでは落ち込んでいないというのが実情のようだ。

日本でもスタートアップへの資金流入は続く

日本においても、2020年上半期のスタートアップ投資は688社、1969億円と、2020年上半期の1,675億円を上回っている。Inagoraホールディングスを含む3社が50億円以上を調達するなど、大型の資金調達も行われている状況だ。

しかし、気になる点もある。日本の場合、4月までは前年を上回るペースであったものの、5月の投資額が4月の半分以下になるなど、5月に入り急速に失速が目立っている点だ。

日本の最大手のベンチャーキャピタルであるジャフコを見てみても、4月~9月で日本への投資額は前年の80%程度にとどまっているなど、第2、第3四半期で見た場合、減少傾向にある。ファンドの設立額も減少しているなど、世界に比べると日本のスタートアップは少し資金流入が弱まっている状況かもしれない。

今後さらにスタートアップに多くの資金が流れ込む?

では今後、スタートアップをめぐる環境は、コロナを受けてどのように変わっていくだろうか。もしかすると、スタートアップ・ベンチャーキャピタル的には、新型コロナウイルスが追い風になるかもしれない。

なぜなら、世界的に金余りの減少が起きているからだ。FRBが2023年までゼロ金利を継続させることを表明するなど、世界中でコロナの経済に対する悪影響を危惧しており、それに対し財政出動を含む様々な対策が取られている。そのため、実体経済が回復していないにもかかわらず株価が高騰するなど、「金余り」の状況が続いているのだ。

金余りが続くと、余った金は投資先を求めて動くことになる。そのため、上場企業だけでなくスタートアップにもお金が入りやすくなることが予想される。調達して会社を大きくしたいスタートアップにとっては、追い風が続くといえるだろう。

もちろん、楽観すべき話だけではない。実体経済が回復しきっていない状況は、企業活動にも影響を及ぼすということを忘れてはならない。

実際、3月には、上記で紹介したセコイア・キャピタルが、スタートアップに向けて、「2020年のブラックスワン」というタイトルで、新型コロナウイルスの中でもビジネスの健全性を確保するようアドバイスをしている。

前回の金融危機の際に操業したAirbnbやUberは、ユニコーン企業に成長し、ベンチャーキャピタルも大きな恩恵を受けた。しかしその影で、多くの企業が倒産したことも忘れてはならない。

ベンチャーキャピタルとしても、こういった状況では、生き残る企業を見極める力が必要となるだろう。

新型コロナウイルスはスタートアップ、ベンチャーキャピタルを淘汰していく

新型コロナウイルスで実体経済が落ち込む中、世界でも日本でもスタートアップへの資金流入は続いている。今後、景気が回復してくれば金余りもあり、スタートアップにとっては大きな追い風となるだろう。

しかし一方で、実体経済の弱さはスタートアップが事業をしていく上では逆風だと言える。コロナ禍で生き残れるかどうか、また、生き残る企業を見極めることができるかどうかが、今後のスタートアップやベンチャーキャピタルの分かれ目となるのではないだろうか。

文・BUSINESS OWNER LOUNGE編集部