2021年3月期 第3四半期決算により、ソフトバンクグループの純利益が3兆円に達したことが判明した。しかし、孫正義会長は、「まだまだこんな数字で恥ずかしい」と話し、今も会社が発展途上であることをアピールした。3兆円という純利益を稼ぎ出したにもかかわらず、なぜ恥ずかしいと発言したのだろうか?その真意を推察する。

目次

  1. ソフトバンクが成長を遂げた軌跡
    1. 日本テレコムやボーダフォンの買収による通信事業への本格参入
    2. 近年は投資会社としての側面が鮮明に
  2. 「恥ずかしい」という発言の背景にある真意とは?
    1. SVF事業が発展途上
    2. アリババグループ株の保有株式価値が急落
    3. 上場株の投資ファンドが1,000億円強の赤字
  3. 孫正義会長の次なる野望。最重要テーマはAI革命か?

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ソフトバンクが成長を遂げた軌跡

ソフトバンク純利益3兆円到達。孫会長が「まだこの程度で恥ずかしい」と発言した真意
(画像=yu_photo/stock.adobe.com)

ソフトバンクが急成長を遂げるに至ったターニングポイントは「通信事業への本格参入」と「戦略的持株会社への移行」の2つに大別できると考えられる。ここでは、急成長するに至った軌跡を簡単におさらいしておこう。

日本テレコムやボーダフォンの買収による通信事業への本格参入

まず1つ目として挙げられるのは、事業の買収を最大限に活用した通信事業への本格参入だ。2004年にソフトバンクは、企業向けに専用ネットワークを提供する日本テレコムを買収した。これにより同社は、法人を対象とした固定通信事業への本格的な参入を果たしている。

また2006年には、当時国内3位の携帯電話事業者であったボーダフォンを買収。その結果ソフトバンクグループは、固定通信と移動体通信の両方を持ち、かつ連結売上高が2兆円を超える大手総合通信事業者としての地位を確立した。

時代を先読みした巧みな買収戦略が功を奏したことが、NTTドコモやKDDIと並ぶ国内最大手の通信事業者にまで成長した理由であると言える。

近年は投資会社としての側面が鮮明に

通信事業者としてのイメージが強いソフトバンクだが、近年は投資会社としての側面が鮮明になっている。ソフトバンクの代表である孫氏は、2018年の決算会見で「戦略的持株会社」への移行を加速する考えを表明した。同氏が意図する戦略的持株会社とは、あらゆるジャンルの企業群に投資し、持株会社として運営する会社のことである。[3]

その手段の一環として同社は、2017年から「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」という投資事業をスタートさせた。この事業では、テクノロジーの活用で各分野をリードする成長企業への投資が主な活動となっている。

2019年までは、ファンド事業の業績は芳しくない状況にあった。特に2019年度は、投資損益がマイナス7,290億円を記録するほどの厳しい状況に陥った。しかし、2020年度には金の卵(100億円以上の利益で売却、または上場を果たした企業)が11社に上るなど大きな成果を挙げ、2兆7,287億円の黒字となった。

ソフトバンク全体の純利益が3兆円であることを踏まえると、その大半は投資事業でカバーしていると言える。ソフトバンクは投資会社としての強みを確立したことで、さらなる成長を実現したわけだ。

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「恥ずかしい」という発言の背景にある真意とは?

日本で純利益が1兆円を超えた企業は、トヨタ自動車、三菱UFJフィナンシャル・グループ、ホンダなど日本の名だたる企業ばかり。ソフトバンクを含め、わずか数社しか存在しない。ソフトバンクの3兆円は驚異的な数字であるにもかかわらず、なぜ孫氏は「恥ずかしい」と発言したのだろうか?経営者として「さらに会社を大きくしたい」という野望を持っていることも理由の1つといえるが、背景にある具体的な真意をいくつか挙げてみよう。

SVF事業が発展途上

記者の質問に対して孫氏は、依然としてSVF事業は改善点だらけであると回答した。また、「今後も継続して着実に利益が出る仕組みを整えて、永続的に金の卵が生まれるようにしていく。それが経営であると考えている」とも言及している。SVF事業は、まだ完璧なビジネスではないという気持ちが表れたと推察できよう。

アリババグループ株の保有株式価値が急落

スマホ決済アプリを手掛ける関連会社「アントグループ」の上場延期に影響され、ソフトバンクが出資しているアリババグループの株価は大きく下落した。その影響で、ソフトバンクが保有する株式価値は、30.9兆円(2020年9月末)から26.9兆円(同年12月末)まで急落した。

上場株の投資ファンドが1,000億円強の赤字

投資事業で圧倒的な成果を出したソフトバンクだが、実は上場株の投資ファンド事業に限定すると1,000億円強の赤字を計上している。中長期的に行う投資事業であるとはいえ、多額の損失が出ている以上、同社の投資家から不満の声が出ることは避けられないだろう。

孫正義会長の次なる野望。最重要テーマはAI革命か?

一部のマイナス要素こそあらわになったものの、通信事業と投資事業の両輪を確立したソフトバンク。通信事業はもちろん、投資した事業間のシナジー効果も見込めるため、今後はさらなる業績の成長が期待できるだろう。

かつて孫正義会長は、会社を起業した際「1兆、2兆と数えてビジネスをやるようになる。豆腐屋の心意気だ」と語ったという。それを純利益で実現したわけだ。また「目標は明確に口に出したほうが自分を追い込める」とも語る。今後、AI革命に心血を注ぐ姿勢を鮮明に打ち出した孫正義会長。次なる野望へ向けて、これからも氏の動向から目が離せない。