SDGsビジネスは巨大な市場でありアイデア次第では中小企業も狙えるだろう。SDGsビジネスはグローバルに展開しておりすでに多くの企業が成功している。今回はSDGsビジネスで成功している企業にみられる7つのポイントとSDGsビジネスで頭角を現している日本の中小企業を紹介する。
目次
SDGsの取り組みが世界中で求められている

SDGsは、国連が提案する持続可能な世界の実現に向けた17のゴールのことだ。SDGsの取り組みは世界中の人々が望む未来に向けてのものであり世界中で求められるものである。
SDGs関連ビジネスは巨大な新規市場
SDGsは、世界中が求める未来のゴールであるとともに巨大なニーズがありビジネスにおける新規市場である。
SDGsの各目標の市場規模は70兆~800兆
SDGsは以下の17の目標がある。
SDGsの17の目標 |
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1 | 貧困をなくそう |
2 | 飢餓をゼロに |
3 | すべての人に健康と福祉を |
4 | 質の高い教育をみんなに |
5 | ジェンダー平等を実現しよう |
6 | 安全な水とトイレを世界中に |
7 | エネルギーをみんなにそしてクリーンに |
8 | 働きがいも経済成長も |
9 | 産業と技術革新の基盤を作ろう |
10 | 人や国の不平等をなくそう |
11 | 住み続けられるまちづくりを |
12 | つくる責任つかう責任 |
13 | 気候変動に具体的な対策を |
14 | 海の豊かさを守ろう |
15 | 陸の豊かさを守ろう |
16 | 平和と公正をすべての人に |
17 | パートナーシップで目標を達成しよう |
出典:外務省
SDGsの目標は、規模の大きさにはバラつきがあるが、小さい規模でも70兆、最大で800兆にも及ぶ市場規模があると考えられている。
SDGsビジネスで成功するための7つのポイント
世界ではすでに多くの企業がSDGsビジネスを成功させている。SDGsビジネスの成功ポイントを分析すると以下の7つが見えてきた。
1長期的に戦略を立てる
SDGsビジネスで成功するには、10年単位の長期的な視点で戦略を立てる必要がある。多くの成功したSDGsビジネスは、短期的な視点でビジネスを計画せず中長期的な視点でビジネスを考えていた。近年、事業計画を立てるときには、早期に結果が見える3~5年の視点を重要視するのがメインの流れだ。しかしSDGsビジネスは、今までにない新しいアイデアで新規市場に参入することも少なくない。
多くの企業が長期的な視点で継続的に事業を継続することで成功を手にしている。
2経営者のリーダーシップ
SDGsビジネスで成功するには、経営者のリーダーシップも重要だ。SDGsビジネスは、地球規模で考えなければならないグローバルなテーマでありそのテーマに企業全体で取り組んでいくというビジョンを組織全体に浸透させる必要がある。経営者は、SDGsビジネスの取り組みについて社内外に向けて明確なメッセージを発信かつ社員全員に浸透するような仕組みを構築して伝え続けなければならない。
3市場の選定
自社がSDGsのどの分野のビジネスにチャレンジするかを検討する際には、市場環境の分析を行い将来的にビジネスが成長していく市場を選定することが成功のポイントだ。一方でSDGsビジネスは新しいアイデアや市場に飛び込む事業であることも多く市場環境の分析が十分にできるデータがそろわないこともあるだろう。ここで重要になってくるのが経営者の洞察力や判断力である。
4カスタマーファースト
SDGsビジネスは、さまざまな自然環境にかかわる事業が多い。例えば農業や水産漁業の分野に関する事業などだ。ここで重要になるのが、現地のニーズだ。さまざまな土地で顧客は問題を抱えている。SDGsビジネスで成功した企業は、現地のニーズを的確につかむカスタマーファーストの精神で事業に取り組んでいる。
現地の顧客とともにそれぞれの土地の問題点と課題を考え自社のサービスや商品を制作し改良を重ねることで成功を手にしているのだ。
5ネットワーク
ネットワークもSDGsビジネスには不可欠だ。特に海外で事業をスタートするために必要な信用度を得るために現地企業とパートナリングなどを行う企業が多い。現地企業は、現地で相互に事業を拡大するパートナーになる。企業だけでなくグローバルに事業を展開する場合は、現地の政府とのネットワークも信用度を得るために必要だ。
6資金の確保
SDGsビジネスでは、小規模の事業に留まる企業もあるがビジネスを成功させ継続していくためには、内部保留の蓄積による資金か外部からの資金調達が必要になる。成功したSDGsビジネス企業の多くが資金の確保に政府機関だけでなくSDGsビジネスに理解を示す民間のファンドから出資を受けているのだ。
7人材確保
事業の成功には人材の確保が重要である。特にSDGsビジネスでは途上国の市場に進出するケースも多い。途上国の人材確保には、他社との差別化ができる給与制度、教育制度の充実、福利厚生を考える必要がある。
SDGsビジネスは大企業ばかりでなくアイデア次第で中小企業が狙える
SDGsビジネスは大企業だけが狙える市場ではない。多くの中小企業がSDGsビジネスにチャレンジできる可能性を秘めているのだ。
日本ではSDGsをビジネスチャンスと捉えていない傾向がある
グローバルな視点で考えると日本企業はSDGsを社会貢献として捉えている傾向が顕著である。そのため積極的にビジネスチャンスとして捉えていないのだ。
日本企業の商品やサービスがSDGsビジネスにつながる可能性がある
SDGsにおける17の目標の解決策としてすでに日本の中小企業が提案している商品やサービスが当てはまるケースは多くある。例えば日本は天災・災害が多い国のため、災害・防災関連商品を製作している企業は数多くあるだろう、他にも教育関連のeラーニング、下水道や水質管理、漁業・農業関連製品など多くのSDGs関連の商品やサービスが存在するのである。
SDGsビジネスで注目の中小企業
SDGsをビジネス視点で捉えてアイデアとテクノロジーを駆使した個性的なスタートアップベンチャー企業が日本でも出現している。ここでは、現在も進化し続けグローバルに拡大するSDGsビジネスで注目の中小企業を2社紹介しよう。
ドローン・ジャパン株式会社
ドローン・ジャパン株式会社は、農業をテーマとしたSDGsビジネスのベンチャー企業だ。ドローン・ジャパン株式会社では、社名にもあるドローンを活用したビジネスを提案している。
・農業をテーマとしたSDGsビジネス
世界では人口が拡大する一方で地球環境の変化や異常気象などによって農業が可能な耕作面積が激減している。世界規模で食糧危機が迫っているのだ。ドローン・ジャパン株式会社の農業をテーマとしたSDGsビジネスは、SDGsの「飢餓をゼロに」「陸の豊かさも守ろう」に該当する。ドローン・ジャパン株式会社が注目したのは日本の農業だ。
日本はグローバル視点で考えると決して広大な土地を持っているわけではない。地形が悪い土地や悪条件の環境でも作物を育てられるように工夫を重ね、それぞれの土地に合わせた作物を作ってきた。限られた資源の中で継承された日本の農業の精神を最新のドローンとクラウドを活用して世界に提案しているのである。
・ドローン×IoTを活用した農業
ドローン・ジャパン株式会社が提案する「ドローン×IoT」を活用した農業とは、対象の農地にドローンを自動航行で飛ばしデータを取得させクラウドがデータを保護管理しAIが分析解析を行う。分析解析では、前回ドローンが飛んだときと今回の変化、農地ごとのばらつきや作物の育成状況の変化を分かりやすく図示する。
さらにデータはクラウド上に保管管理されているので時系列での比較分析が可能だ。農業に従事するクライアントは、農地特有の課題や目標を持っている。ドローン・ジャパン株式会社が提案する「ドローン×IoT」を活用した農業では、課題や目標に最適なフォーマットで比較分析データをレポートできるプランを提案。
ドローン・ジャパン株式会社の提案は、農業生産者、農協・自治体・農政のみならず農業ICT事業者や食品加工・流通事業者にも活用されている。
ウミトロン株式会社
ウミトロン株式会社は、水産漁業をテーマとしたSDGsビジネスのベンチャー企業だ。現代の漁業の大きなテーマの一つに水産養殖がある。安定した水産物の供給には水産養殖が欠かせない。ウミトロン株式会社は、今後も成長が期待できる水産養殖に最新のテクノロジーを提案する企業である。
・水産養殖にテクノロジーを活用する視点
ウミトロン株式会社は、SDGsのゴールの一つである「飢餓をゼロに」や「海の豊かさを守ろう」などに該当する取り組みをビジネスチャンスとして捉えている。具体的には、人間の経験とスキルで継続してきた水産漁業にテクノロジーをプラスして将来に向けて新たな可能性を広げている。
・ウミトロン株式会社の水産養殖へのテクノロジー提案
ウミトロン株式会社の提案する「UMITRON CELL®」はスマートフォンとクラウドのテクノロジーを活用して生け簀(いけす)での餌やりを遠隔操作で可能とする。このシステムにより現場での作業は軽減され人の経験や勘に頼っていた餌やりの加減やタイミングが合理化された。さらにデータが蓄積されることでさらなる改善と見える化が実現できる。
・SDGsビジネスでグローバル市場を獲得
SDGsの「飢餓をゼロに」や「海の豊かさを守ろう」にあるように世界中で食料と環境は大きなテーマである。ウミトロン株式会社のビジネスは、日本だけではなくグローバルなテーマなのだ。ウミトロン株式会社は、日本とシンガポールに拠点を設け世界市場に向けて提案を拡大している。
・SDGs水産養殖ビジネスの将来性
ウミトロン株式会社のビジネスは、SDGs水産漁業ビジネスの将来性を考える際に参考になるだろう。人間に必要不可欠な栄養素の代表といえばタンパク質だ。世界的な健康志向を背景にアジアエリアを中心としたタンパク質の需要が高まっている。世界の人口は2019年時点で約77億人だが、2050年約97億人、2100年には約109億まで拡大すると予想されているため将来的にたんぱく質の供給が不足することが予測される。
世界人口の拡大は、陸上の家畜では補えないのが現実だ。そこで注目されたのが海産物である。しかし海産物の乱獲は海洋資源を急激に減少させ海の豊かさを損なう要因となりかねない。SDGsの視点から将来に向けての解決策として選択されているのが水産養殖なのである。水産養殖は、海洋資源を守りながら海産物によるタンパク質の安定的な供給を実現するのだ。
地球の約70%が海であり活用の余地は残っており水産養殖が可能なエリアはまだまだ存在する。水産養殖にテクノロジーを活用するウミトロン株式会社のビジネスはグローバルな価値があるといえるだろう。
SDGsビジネスはグローバル市場に挑戦できる
中小企業経営者は、SDGsは「社会貢献ではなくビジネスである」という視点を持つべきであろう。企業がビジネス視点で考えることでより具体的な社会貢献にもつながるのだ。SDGsビジネスの魅力はグローバルに展開できること。すでに多くの日本の中小企業がSDGsビジネスをスタートしている。SDGsビジネス市場は巨大なため大企業だけでなく中小企業もチャレンジしていく価値があるだろう。
文・Business Owner Lounge編集部