企業のトップが名刺に記す肩書きと言えば、かつては代表取締役社長が大半を占めた。ところが近年はCEOという名称が台頭し、経営者はそちらを選ぶことが多くなっている。この肩書きは代表取締役社長と比較して、職責や役割にどんな違いがあるのかを解説する。

目次

  1. CEOとは米国企業に端を発する組織の司令塔役
  2. CEOを補佐するCOO、CFO、CTO。それぞれの役割は明確に異なる
    1. ナンバー2としてCEOをサポートするCOO
    2. 財務や経理のプロフェッショナルであるCFO
    3. CTOは技術面の最高責任者で、CIOは社内のDX推進を指揮
    4. リスク管理や投資判断の最高責任を追う役職を設けるケースも!
  3. 取締役の執行役員の兼任は立法と行政が分離していない状態とも言える
  4. 「代表取締役社長兼CEO」は何を意味する? 
  5. 今後は日本国内でもCEOの肩書きのほうが一般的になる可能性も
大西洋平
大西洋平
経済ジャーナリスト。出版社勤務を経て独立し、ビジネス誌や金融経済誌、一般週刊誌などに経済・金融・企業経営などの分野を中心とした記事を寄稿。これまでにトップインタビューを行った上場企業数は1000社以上に上る。また、著名なエコノミストや経営コンサルタント、弁護士、会計士、金融市場のアナリストやストラテジストなどの取材も多数手掛ける。

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CEOとは米国企業に端を発する組織の司令塔役

代表取締役社長とCEOはどう違う?チーフオフィサー制度の役割を解説
(画像= Андрей Яланский/stock.adobe.com)

企業のトップを意味する肩書きと言えば、多くの人たちがすぐに思い浮かべるのが社長であろう。だが、社長よりも会長のほうが強力な権限を有している企業も存在しており、一概には「社長=企業のトップ」とは決めつけられない。

その点、代表取締役は会社法という法律によって定められた役職で、その名の通り代表権を有し、株主総会・取締役会などの決議に沿って会社の業務執行を行うことを担っている。言い換えれば、企業の経営に関して法律的にも重い責任を負っているわけだ。

ただし、必ずしも組織内において1名のみがその職務に就くとは規定されていない。こうしたことから、代表取締役社長とともに代表取締役会長も存在しているという企業もある。

会社法上は両名ともその組織のトップではあるものの、実際にはどちらのほうが強い権限を握っているのかは個々に異なってくるのだ。外部の人間からすれば、誰がその企業における真の司令塔なのかを見極めづらいケースもある。

これに対し、日本企業の間でも広まりつつあるのがCEOという肩書きだ。こちらは代表取締役と違って法律上の定めがないものの、職責上においてはその企業の実質的なトップであるとグローバルにも認知されている。

CEOは「Chief Executive Officer」の略称で、日本語に訳せば「最高経営責任者」となる。米国企業における取締役会の指揮下で業務の遂行を統括する役職者のことを指していたが、近年は同国以外の組織でもこの肩書きが広く普及している。なお、同じく英語圏である英国では同様の役割を担うポジションのことを「Managing Director」(MD)や「Chief Executive」(CE)と呼んでいるが、国際的にはCEOのほうが認知度は高いだろう。

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CEOを補佐するCOO、CFO、CTO。それぞれの役割は明確に異なる

CEOを頂点としている企業では、チーフオフィサー制度と呼ばれる組織体制が敷かれているのも特徴である。CEOを補佐するCOO、CFO、CTOなどの役職が設けられており、それぞれが専門とする領域のチーフオフィサー(最高責任者)を務めているのだ。

日本において古くから馴染みのある経営組織においても、専務や常務といった社長の片腕的なポジションが設けられている。チーフオフィサー制度はそれらと比べて、各々の役割分担がより明確であると言えそうだ。次では、それぞれの役職の特徴や職責について説明しよう。

ナンバー2としてCEOをサポートするCOO

「Chief Operating Officer」の略で「最高執行責任者」がその日本語訳となる。経営全般を見渡すCEOに対し、COOは日々の業務にフォーカスを当てて、その執行責任を負う。

従来型の日本企業では、日常業務を統括する常務と全体的な遂行に目を配る専務が社長を補佐するというトロイカ体制が主流だった。それらに比べてチーフオフィサー制度におけるCOOは組織内におけるナンバー2という立場が明確で、 CEOの強力なサポート役という色彩が濃いと言えよう。

財務や経理のプロフェッショナルであるCFO

「Chief Financial Officer」の略で、その日本語訳は「最高財務責任者」。その企業の財務や経理における最高責任者で、特にスタートアップにおいてはベンチャーキャピタルなどからの資金調達や、株式の新規公開準備といった重要な役割を担うことになる。

CTOは技術面の最高責任者で、CIOは社内のDX推進を指揮

正式名称は「Chief Technical Officer」もしくは「Chief Technology Officer」で、日本語では「最高技術責任者」となる。製造業やITサービス関連においてはその企業の競争力に直結するテクノロジー面を統括する。

一方、テレワーク環境の整備をはじめとするDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が求められている今は、CIO(Chief Information Officer=最高情報責任者)というポジションを設ける企業も増えている。こちらは、業務の省力化や生産性向上などに結びつくICT活用における最高責任者だ。

リスク管理や投資判断の最高責任を追う役職を設けるケースも!

ここまで紹介してきたポストと比べればまだマイナーな存在だが、さらに特定の役目を任されるオフィサー職務を設ける企業も出てきている。たとえば、情報漏洩などといった不祥事に迅速かつ適切に対応するうえでの最高責任者がCRO(Chief Risk Officer=最高危機管理責任者)で、その企業が行う投資行動を統括するのがCIO(Chief Investment Officer=最高投資責任者)だ。

前述した社内におけるICT活用の最高責任者も同じ略称で、双方を採用している企業では混乱も生じかねない。しかし、それでも各々の最高責任者がどのような職責を担っているのかを明らかにすることが重要な意味を有しているようだ。

取締役の執行役員の兼任は立法と行政が分離していない状態とも言える

会社法によって定められた役員には、取締役とともに監査役や会計参与がある。他にも執行役員と呼ばれるポストが設けられている企業も多いが、あくまで法定の役職ではなく、法律上は従業員に該当する。

とはいえ、執行役員が本来の職務をまっとうできれば、健全な組織運営に結びつくことが期待される。なぜなら、取締役は社内における重要事項を決定することに専念することができて、その方針に沿った業務遂行の指揮は執行役員に委ねられるからだ。

そもそも日本国内における執行役員という役職は、1997年にソニーが導入したことで初めて登場したと言われている。多くの日本企業においては、取締役の労力がもっぱら業務遂行のほうに充てられ、最も重要な意思決定に重きを置くことが難しくなっていたことが背景にある。

チーフオフィサー制度と同じように米国企業のコーポレートガバナンス手法を手本に執行役員というポジションを新設し、取締役の負担を軽減しようとしたわけだ。執行役員が業務遂行を担うことで、現場レベルにおける意思決定のスピードも速まるというメリットも期待できる。

こうしたことから、ソニーに追随して多くの大手企業が同制度を導入したが、取締役が執行役員を兼務しているケースも見受けられる。先述した導入の経緯からすれば、兼務はまさに本末転倒とも言えるだろう。立法府と行政府は分離したほうが健全であるし、上手く機能するはずだという思想で導入しながら、有名無実とかしているわけだ。

少々ややこしいが、実は会社法でも定められている執行役という役職も存在する。「指名委員会等設置会社」に該当する企業のみが配置できる役員職で、同組織において取締役は業務執行に一切関わらず、執行役がその職務を担う。

ただ、「指名委員会等設置会社」には指名委員会・監査委員会・報酬委員会の設置も義務づけられている。相応の大企業でなければ、なかなかこの組織形態に移行するのは現実的に困難だろう。

改めて、新旧を交えた企業の経営陣に定められている主要な役職名とその意味について、下記の一覧表にまとめておこう。

代表取締役社長とCEOはどう違う?チーフオフィサー制度の役割を解説
(画像=image)

「代表取締役社長兼CEO」は何を意味する? 

近年、よく見かけるようになった日本企業トップの肩書きに、代表取締役社長兼CEOというものがある。こちらは、いったいどのような経緯で生まれたものなのだろうか?

日本では「社長=最高責任者」と理解されやすいが、英語に訳すると「President」で、必ずしも代表権のある会社組織の長を意味しない。その立場を意味するのがCEOで、「President」という役職名を用いるケースは少なくなっている。

もともと副社長を意味していた「Vice president」に至っては、副部長のようなもっと下位の役職者の肩書きにも使用されている。また、代表取締役という言葉を英語に直訳すると「Representative Director」となるが、こちらは米欧でほとんど用いられていない。

ビジネスにおいてグローバルな交流を図るうえでは、代表取締役社長という立場を英訳して名乗るよりも、すんなりと通じるCEOと表現したほうが円滑に進むのである。そこで、日本国内では理解されやすい代表取締役社長と、今日の米欧では一般的となっているCEOというポジションを兼任する形式を用いて、内外にその立場を表明しているというのが実情だ。

すでに海外展開を進めている企業はもちろん、これから進出を計画している企業や、日本に拠点を構える外資系企業とのアライアンスを検討している企業などの間でもCEOを兼任する肩書きが増えているようだ。 代表取締社長兼CEOという肩書きを通じ、「その会社において最大の権限と責務を有している立場だ」と内外にアピールしているわけである。

海外の取引先や協業のパートナー以外にも、進出先の官公庁や金融機関、グローバルな出資者(外国人投資家)などに対しても、CEOと名乗れば理解されやすい。無論、代表取締役社長兼CEOは日本企業特有の肩書きであり、海外でその英訳表現が用いられているケースはまず考えられない。

なお、余談ではあるが、米国企業の間ではCEOは会長(Chairman)が務め、社長のポジションに就く人物はCOOに就くケースが少なくない。かつてのアップルでも、スティーブ・ジョブズが会長兼CEOで現CEOのティム・クックがCOOという体制を敷いていた。

今後は日本国内でもCEOの肩書きのほうが一般的になる可能性も

コロナ禍が人的交流の大きな障害となってきたものの、今後もグローバル化が進み、ビジネスにおいても国境を越えた取引がさらに活発になっていくことだろう。その一方で世代交代も進み、代表取締役社長という肩書きでなければピンとこないというケースも次第に減っていくはずだ。

そうなると、グローバルにもすんなりと理解されやすいCEOという肩書きのほうが日本国内でも一般化してくる可能性が高い。そういった社会情勢の変化に応じて、会社法をはじめとする法律における定義も見直される可能性もあるだろう。

文・大西洋平(ジャーナリスト)