2020年3月、ビジネス知見を有するアドバイザーと顧客とのマッチングサービス「ビザスク」を手掛ける株式会社ビザスクが東証マザーズに上場した。初値としては公開価格を約13%程下回る1,310円を付けやや低調なスタートとなったものの、その後はコロナ禍を感じさせない順調な伸びを見せ、予想PERは900倍を超えるという人気ぶりだ。

副業ニーズが高まり、かつコロナ禍によるオンラインの流れが市場環境を加速させた格好となり、同社にとってはまさに格好のタイミングでの上場だったとも言えるが、その道のりは決して簡単なものではなかった。

目次

  1. ビジネス分野の専門的ナレッジの提供シーンに特化したサービスとして登場した
    1. まだ副業がネガティブだった時代に立ち上げた先見性で勝負した
    2. 働き方改革や副業によって、個人が活躍する時代に乗ったサービスとなる
    3. 7期目にしてようやく黒字転換した最中での上場となった
  2. 副業市場の拡大の波に乗り、どこまで事業展開を図っていけるかに期待したい

ビジネス分野の専門的ナレッジの提供シーンに特化したサービスとして登場した

時代の潮流に乗って上場したビザスク。今後の副業市場への影響は?
(画像=MIND AND I/stock.adobe.com)

スポットコンサルサービス「ビザスク」は、専門分野や特定の領域についてビジネス知見を有する個人のアドバイザーと、業界ヒアリングを希望するクライアントとをマッチングするプラットフォームを提供している。

クライアントは個人から企業まで幅広く、コンサルティングファームの業界リサーチに用いられたり、投資ファンドや金融期間が投融資を検討する際の業界調査、さらに、事業法人が新規事業開発の際の情報収集に用いられるなど、プロの世界でも活用されるサービスとして一定の認知度を有するまでに成長している。

今となっては、特に前述した金融関連事業者にとっては頻繁に利用する著名サービスとして存在しているかもしれないが、実は同社の設立は2013年、まだ副業や個人間ビジネスがマイナーだった時代に立ち上がったものだった。

まだ副業がネガティブだった時代に立ち上げた先見性で勝負した

ビザスクは2013年、株式会社walkntalkとして設立。同年12月に「ビザスク」のβ版をローンチして以降、経済産業省や大手メーカーから相次いでプロジェクトを受託するなど実績を積み重ねてきた。

ユーザー数も順調に増加を続け、現在では約9万人に迫る勢いだ。法人クライアントも400社を超え、取扱高は2020年2月期Q3で4.2億円と、国内では最大級のビジネスコンサルティングプラットフォームに至っている。

個人アドバイザーの利用シーンとしては、アドバイザリーサービスを専門とした個人事業主ももちろん存在しているが、特定業界に長く職に就いていたサラリーマンや、専門分野の知見に長けた研究者などが、副業として知見を提供しているということも多い。

今でこそ副業や兼業の認識がようやく浸透し、企業も従業員の副業を認めるようになってきたものの、ビザスク設立当時の2013年はまだそうした意識は業界全体では低かったと言えよう。そうした中でスポットコンサルサービスを立ち上げた同社の先見性には目を見張るものがある。

働き方改革や副業によって、個人が活躍する時代に乗ったサービスとなる

現在では、個人が特定のスキルや知見を活かして、本業以外の分野で稼ぐことのできる、そうしたプラットフォームを提供する企業が相次いで登場している。

上場企業が運営する「クラウドワークス」や「ランサーズ」など、フリーランスの仕事探しをあらゆる分野でサポートするwebサービスの他、より副業や兼業ニーズに即し、ビジネス関連にとどまらない個人の”得意なことや趣味”を軸にマッチングを行う「ココナラ」など、個人が活躍できる機会は圧倒的に増えている。

ビザスクは、より専門的で深い業界知見を必要とするビジネスシーンに特化した領域でマッチングを提供している点でこれらの事業と差別化を図っていること以上に、現代の副業トレンドの到来や働き方改革の推進、さらに個人が活躍する時代への遷移など、働き方や仕事のやり方の捉まえる大きな波に乗ることが出来た構図で、ある意味で、サービスに時代が追い付いてきた絶好の機会と言えるかもしれない。

7期目にしてようやく黒字転換した最中での上場となった

ここで、ビザスクの上場までの苦難の道のりを見て見よう。同社のマネタイズモデルは、個人や中小企業のクライアントが自らプラットフォーム上でアドバイザーを選定しスポットコンサルを実施し、マッチングフィーを得る「ビザスクlite」と、大手クライアントに対して専任の担当者を付け、アドバイザーの選定からインタビューのアレンジまでをフルサポートで実施しクライアントから利用料を得る「ビザスク」の2パターンを用意しており、後者が売上の約8割を占めている。

同社は設立当時よりサービス開発強化や人員体制の拡充に投資すべく、著名VCや金融機関からの資金調達を行ってきた。プラットフォームの取扱高 (アドバイザーへの謝礼を含む流通総額) を約4.8億円まで拡大させた2018年2月期においても、経常損失約5,800万円を計上するなど、黒字転換には時間のかかってきたビジネスだ。

本質的には、クライアントからわずかな手数料を取りながら、サービス開発費や人件費が固定費として重くのしかかる構造のため、初期投資期間は利益の出しにくいモデルだと言えよう。同社が黒字転換したのは、2019年2月期、取扱高が10億円を乗せた所だった。この時点で、ユーザー約7.2万人、法人口座にして329口座を獲得している。

同社の勝利シナリオはこうだ。まずは自社システム開発への注力とデータベースの情報深化に積極的に投資し、精度の高いマッチングを図るためのデータ基盤とナレッジ蓄積に積極的に投資資金を注入した。

同時に、「研究開発費の多い会社からリーチする」などの手法でwebマーケティングを工夫し、動画広告やオウンドメディアによる発信を強化した結果、ネットワーク効果も相まって集客できるアドバイザーの質が高まる。すると、より質の高いアドバイザーを求めて、クライアントとしてプロフェッショナルファームや金融機関などへの利用が浸透する。

こうした好循環を生み出したことで、他社プラットフォームには相容れない、高度な専門性を持つスポットコンサルサービスへと成長することができたのだ。

副業市場の拡大の波に乗り、どこまで事業展開を図っていけるかに期待したい

コロナ禍も相まって、リモートワークの促進や働き方改革の流れが浸透する中、個人の働き方として副業ニーズがますます高まっている。既にクラウドワークスやランサーズといった上場企業が、個人が企業を介さず直接業務案件を受注することのできるプラットフォームとして台頭する他、最近では「ココナラ」の上場も囁かれている。

ビジネスシーンに特化し、専門性とアドバイザーの質を武器に、ビザスクは今後、どこに差別化を見出していくのか。新たなビジネス戦略に期待したい。

文・森 琢麻(経営戦略コンサルタント)