まいたけを中心に、エリンギやぶなしめじなど、きのこを製造する「株式会社雪国まいたけ」が2020年9月17日、東証一部への上場を果たした。2013年に発覚した不適切会計に端を発し、創業家と経営陣の対立を経て上場廃止となって以降、約5年ぶりの再上場となる。

初値は公開価格 (2,200円) を下回る2,100円。その後も株価は値下がり傾向で、2020年11月19日現在で株価は1,700円台にまで低迷しており、今後の業績に市場の注目が集まっている。

PE(プライベート・エクイティ)ファンドが経営立て直しを図り、成功に導いた再上場事例として見ることができる一方で、その裏では創業者と経営陣の激しい対立など、創業者である大平喜信氏の執念が見え隠れする生々しい裏側が垣間見える。

今回は、再上場に至るまでのストーリーとその裏側に迫っていこう。

目次

  1. 経営問題による上場廃止後の経営再建
  2. ベインキャピタルの傘下で驚異的な業績回復
  3. 元創業者の大平氏は同業種で再度起業
  4. PEファンドの手から離れた現経営陣の経営手腕に期待

経営問題による上場廃止後の経営再建

PEファンドによる経営再建に成功した雪国まいたけ。再上場ストーリーとその裏側
(画像=sasazawa/stock.adobe.com)

「雪国まいたけ」は1983年、当時35歳だった大平喜信氏により創業された。きのこの栽培技術を武器に業績を順調に拡大し、1994年には新潟証券取引所に上場。2000年には新潟証券取引所と東京証券取引所の合併に伴い東京証券取引所市場第二部に上場を果たした。

ところが2013年、不適切会計が発覚し、当時ワンマン経営を貫き役員との対立が深まっていた大平氏が代表取締役を辞任すると、創業家と経営陣の対立が一層激化する。経営陣は創業家の一掃を狙い、PEファンドであるベインキャピタルによるTOB (株式公開買い付け) を仕掛けた。

当時67%以上の株式を創業家が保有しており、一般的にはTOBが成立することは不可能なように見えた。しかし、メインバンクであった第四銀行が株担保権を行使し、TOBに応じることとなった。

第四銀行は雪国まいたけの株式を担保に融資を実行していたが、当時融資返済が滞っていた同社の状況を見て、ベインキャピタルが水面下で銀行側と交渉したとされている。

創業家としては、ある意味でメインバンクに裏切られ、自分の会社を手放さざるを得なくなってしまったのだ。

ベインキャピタルの傘下で驚異的な業績回復

創業家と経営陣の間でいざこざがあったにせよ、ベインキャピタルが経営の主導権を握った後の雪国まいたけの経営再建には目を見張るものがある。

2015年にTOBを実施した当時、2015年3月期の雪国まいたけの売上高は279億円、当期純利益は約1億円の赤字、時価総額はおよそ90億円だった。その後バリューアップを実行し、2017年に米穀卸売事業などを手掛ける株式会社神明に持分の49%を売却。2020年3月期には、売上高507億円、当期純利益43億円と、圧倒的な業績回復を見せつけた。

今回の再上場時点での時価総額は約876億円であり、ベインキャピタルとしても大きなキャピタルゲインを得た点で、企業再生は大成功だったといえるだろう。

ベインキャピタルは米国に本社を構えるプライベート・エクイティ・ファンドであるが、日本国内においても強い存在感を発揮している。経営不振に陥っていた「すかいらーくグループ」の経営再建で再上場に成功させた事例や「大江戸温泉物語グループ」のエグジットの他、債務超過に陥っていた「東芝メモリ」の株式取得による経営立て直しのニュースは耳に新しい。

雪国まいたけの再建でも、トップダウン型のワンマン経営だった企業風土を改革し、組織とガバナンスを一新させた。さらに経営リソースの再分配による収益体質の強化、徹底したデータ経営によるマネジメント強化など、ベインキャピタルの手腕が十分に発揮されたと言えよう。

元創業者の大平氏は同業種で再度起業

雪国まいたけの再上場ストーリーは、実はこれだけでは終わらない。創業者の大平氏は、雪国まいたけを退いた直後、2015年6月に「株式会社大平きのこ研究所」を同じ新潟県で創業し、黒舞茸の栽培事業をスタートさせている。

当時の大平氏は67歳。もともと上場会社の社長だった人物が、創業会社を追い出された直後に全くの同業種で起業するという事例はほとんどない。大平氏の起業に対する不屈の精神と、「きのこ事業」に対する執念には目を見張るものがある。

現在、大平きのこ研究所は息子の洋一さんに事業承継し、大平氏は海外における事業拡大に注力しているという。

PEファンドの手から離れた現経営陣の経営手腕に期待

業績不振や経営危機に陥った企業に対して、PEファンドの資本参加に入り、そのノウハウやリソースを活用して経営再建に乗り出すという事例は少なくない。経営危機が創業者と現経営陣との対立に端を発するという事例もこれまで何度も目にしてきた。

しかし、一度現場を退いた創業社長が不屈の精神で再度起業を果たし、自身が創業した会社と真っ向から勝負に挑むという事例は、まさに大平氏の信念たるものである。再上場を果たした雪国まいたけの現経営陣にとっては、育て上げてきた技術力や経営体制を以てしても、大西氏からの挑戦状は脅威となっているだろう。

雪国まいたけは今後、神明ホールディングスの傘下で持続的な成長を狙うこととなる。PEファンドの手を離れ、元創業者に挑戦状を突き付けられた同社は今後、どのような経営手腕を発揮していくのか。今後のきのこ市場から目が離せない。

文・森 琢麻(経営戦略コンサルタント)