経営者なら、株式市場への上場を一度は考えたことがあるだろう。東京証券取引所には、5つの市場がある。市場によって特徴や上場基準が異なるため、違いを知っておくことが重要だ。目指すべき市場を明確にし、東京証券取引所への上場準備をスタートしよう。

目次

  1. 東京証券取引所には5つの市場がある
    1. 市場1:世界的大企業が集まる東証第一部
    2. 市場2:大企業や中堅企業が参加する東証第二部
    3. 市場3:ベンチャー企業が集まるマザーズ
    4. 市場4:実績と成長性が必要なJASDAQ
    5. 企業5:プロ投資家向けのTOKYO PRO Market
  2. 上場するとどのようなメリット・デメリットがあるか
    1. 上場によるメリット
    2. 上場によるデメリット
  3. 各市場の上場基準を確認しよう
    1. 東証一部の上場基準
    2. 東証二部の上場基準
    3. マザーズの上場基準
    4. JASDAQスタンダードの上場基準
    5. TOKYO PRO Marketの上場基準
  4. 各市場の特徴と上場基準を知ることが東証上場への第一歩!

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東京証券取引所には5つの市場がある

経営者必見!東京証券取引所の5市場の株式上場基準を解説
(画像=moonrise/stock.adobe.com)

東京証券取引所は、国内最大の取引所だ。その市場は、「東証第一部」「東証第二部」「マザーズ」「JASDAQ(ジャスダック)」「TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)」の5つ。まずは各市場の特徴を、表1で確認してみよう。

表1.各株式市場の特徴

項目 東証第一部 東証第二部 マザーズ JASDAQ(※) TOKYO PRO Market
スタンダード グロース
上場企業数 2,186社 475社 346社 667社 37社 41社
株式時価総額 669兆9,331億3,400万円 5兆5,730億6,200万円 9兆1,934億8,600万円 10兆726億7,000万円 2,981億7,500万円 673億800万円
値動きの大きさ 小さめ 中程度 大きめ
上場の基準 厳しい 低い 厳しい 数値基準なし

※JASDAQは一定の規模と成長性が求められる「スタンダード」と、将来に向けた成長性が重視される「グロース」に分けられる。2021年2月現在、新規上場が行われているのはスタンダードのみ

市場1:世界的大企業が集まる東証第一部

東証第一部は、東京証券取引所最大の市場だ。上場企業数、株式時価総額ともに他の市場を圧倒しており、トヨタやファーストリテイリング(ユニクロ)、任天堂など世界有数の大企業が多く上場している。国内外の個人および機関投資家の資金が流入しており、流動性が高く値動きが安定している銘柄が多い。

市場2:大企業や中堅企業が参加する東証第二部

東証第二部は大企業から中堅企業まで幅広く上場している市場で、東証第一部と合わせて「本則市場」と呼ばれる。日本KFCホールディングスやはごろもフーズ、ヨネックスなど、日ごろ目にする企業も多い。機関投資家よりも個人投資家による取引が多く、流動性が低い銘柄もあることに注意したい。

市場3:ベンチャー企業が集まるマザーズ

マザーズは上場基準が低く、メルカリやマネーフォワードなどベンチャー企業が多く集まる。上場企業数は346社に留まるが、株式時価総額は9兆円を超えており東証第二部よりも大きい。新興市場のため株価の動きが大きく、投資においてはハイリスク・ハイリターンの市場といえる。

市場4:実績と成長性が必要なJASDAQ

現在も新規上場を受け付けているJASDAQスタンダードは、実績と成長性を兼ね備えた企業が上場する市場。「信頼性」「革新性」「地域・国際性」といったコンセプトのもと、一定の会社規模と事業継続年数、成長性をクリアした企業が上場している。例えば、セリアや出前館、GMOフィナンシャルホールディングスなどだ。

企業5:プロ投資家向けのTOKYO PRO Market

TOKYO PRO Marketは、プロ投資家による取引が行われる市場。国内外のプロ投資家への新たな投資機会の提供と、日本金融市場の活性・国際化を目的として2009年に開設された。TOKYO PRO Marketで投資できるのは、プロ投資家に限られる。

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上場するとどのようなメリット・デメリットがあるか

上場すると、知名度が上がるといったメリットがある一方、コストがかかるなどのデメリットもある。メリットとデメリットを正しく把握した上で、上場手続きを進めることが肝心だ。

上場によるメリット

上場によって得られる主なメリットは、以下の4つだ。

・メリット1:信用力の向上
東京証券取引所に上場するには、上場基準をクリアしなければならない。上場している会社は、それだけで社会的な信用力が高いと考えられる。

・メリット2:採用活動や営業活動の活性化
営業や採用活動では、顧客や求職者から選ばれる企業でなければならない。上場により信用力や知名度が向上することで、採用活動や営業活動を円滑に進められるようになるだろう。

・メリット3:資金調達力の向上
上場によって信用力が上がることで、金融機関からの融資を受けやすくなることもメリットだ。また、新株予約権や社債の発行による資金調達も可能になる。

・メリット4:経営・管理体制の強化
上場では、経営体制や管理体制の健全性も問われる。上場基準をクリアすることで、自社の経営・管理体制の整備および強化を図れるだろう。

上場によるデメリット

上場の際は、以下の3つのデメリットに注意したい。

・デメリット1:コストがかかる
上場時および上場後には、主に表2に記載したコストが必要になる。

表2.上場時および上場後に必要な主なコスト

コストの種類 東証第一部 東証第二部 JASDAQ
(スタンダード)
マザーズ TOKYO PRO Market
上場審査料 400万円 200万円 なし
新規上場料 1,500万円 1,200万円 600万円 100万円 300万円
TDnet 利用料 12万円 8万5,000円 12万円
年間上場料 上場時価総額により96万~456万円 上場時価総額により72万~432万円 上場時価総額により100万円もしくは120万円 上場時価総額により48万~408万円

例えば、東証第一部に上場すると2,000万円以上の費用がかかる。ベンチャー企業向けのマザーズでも、時価総額により360万~720万円の資金が必要だ。上場を目指すなら、その費用もしっかり準備する必要がある。

・デメリット2:経営に対し株主の意見が反映されるようになる
上場すると、経営に関する重要事項は株主総会で決定される。そのため、経営陣の意向に加え、株主の意見を取り入れた経営判断が求められるようになる。

・デメリット3:買収される可能性がある
市場に上場した株式は、誰でも自由に売買できる。そのため、買収される可能性が生じることを覚えておこう。

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東証マザーズとジャスダックの違いは?新興株式市場の上場基準を解説

各市場の上場基準を確認しよう

各市場では、上場するための基準が設けられている。上場を目指すなら、各市場の特徴だけでなく上場基準もあらかじめ確認し、計画的に準備したい。

東証一部の上場基準

東証第一部の上場基準は、表3のとおりだ。

表3.東証第一部の上場基準

項目 詳細
株主数 800人以上
流通株式 ・流通株式数:2万単位以上
・流通株式時価総額:100億円以上
・流通株式数(比率):上場株券等の35%以上
時価総額 250億円以上
事業継続年数 新規上場申請日から起算し、3年以上前から取締役会を設置して継続的に事業活動を行っている
上場会社監査事務所による監査 最近2年間の財務諸表等について、上場会社監査事務所の監査等を受けている

東京証券取引所で最大の東証第一部は、上場基準が最も厳しい市場だ。求められる流通株式数は2万単位以上、流通株式時価総額100億円以上、加えて250億円以上の時価総額などが必要で、大規模企業が上場を目指す市場となっている。また、3年以上の継続的な事業活動も必要だ。

東証第一部は上場のハードルが高いため、マザーズやJASDAQで実績を積んだ企業が、市場替えによって上がってくるケースも少なくない。厳しい基準が設けられている分、上場により得られる信用力・知名度・資金調達力の向上といったメリットは、他の市場に比べて格段に大きい。

東証二部の上場基準

東証第二部の上場基準は、表4のとおりだ。

表4.東証第二部の上場基準

項目 詳細
株主数 400人以上
流通株式 ・流通株式数:2,000単位以上
・流通株式時価総額:10億円以上
・流通株式数(比率):上場株券等の25%以上
時価総額 規定なし
事業継続年数 新規上場申請日から起算し、3年以上前から取締役会を設置して継続的に事業活動を行っている
上場会社監査事務所による監査 最近2年間の財務諸表等について、上場会社監査事務所の監査等を受けている

東証第二部の上場基準は、東証第一部ほど厳しくない。時価総額の規定がないため、中堅企業でも上場を狙える市場だ。本則市場である東証第二部に上場すれば、企業の知名度や信用力は高くなる。十分な実績があり、さらなる事業の拡大を目指すなら、東証第二部への上場を検討しよう。

マザーズの上場基準

マザーズの上場基準は、表5のとおりだ。

表5.マザーズの株式上場基準

項目 詳細
株主数 150人以上
(上場時までに500単位以上の公募を行う)
流通株式 ・流通株式数:1,000単位以上
・流通株式時価総額:5億円以上
・流通株式数(比率):上場株券等の25%以上
時価総額 規定なし
事業継続年数 新規上場申請日から起算し、1年以上前から取締役会を設置して継続的に事業活動を行っている
上場会社監査事務所による監査 ・「新規上場申請のための有価証券報告書」に記載
・添付される財務諸表等について、上場会社監査事務所の監査等を受ける

新興市場であるマザーズは、東証第一部・第二部に比べて上場基準が低い。規模が小さい企業や、起業して間もないベンチャー企業でも上場しやすい市場といえる。

JASDAQスタンダードの上場基準

JASDAQスタンダードの上場基準は、表4で紹介した東証第二部の上場基準と同様で、成長性と一定の実績が求められる。ベンチャー企業のみが上場するマザーズと比べて、歴史がある企業も多く上場しているのがJASDAQスタンダードの特徴だ。

TOKYO PRO Marketの上場基準

TOKYO PRO Marketの上場基準は、表6のとおりである。

表6.TOKYO PRO Marketの株式上場基準

項目 詳細
上場基準 数値基準なし
上場までの監査期間 直近1年
内部統制報告書 任意
四半期開示 任意

TOKYO PRO Marketは、上場のための数値的基準がない。また、上場申請から承認まで10営業日で完了するなど、上場しやすい市場となっている。

前述のとおり、TOKYO PRO Marketではプロ投資家しか取引ができない。そのため流動性が低く、市場で思ったような資金調達ができない可能性があることに注意してほしい。

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東京証券取引所には、本則市場である東証第一部・第二部のほか、新興市場のマザーズ・JASDAQ、プロ投資家向けのTOKYO PRO Marketがある。上場基準や上場にかかるコストは、市場によって異なる。上場することのメリット・デメリットや各市場の特徴をよく確認し、自社に合う市場への上場を目指そう。 文・N.ヤマモト