数ある時計ブランドの中でも、ロレックスはなぜ資産価値を維持し続けられるのだろうか。ロレックスのポテンシャルに迫るとともに近年、時計業界を揺るがしている「ETA2020年問題」を考察することで、時計の資産価値とは何かを検証する。

目次

  1. ロレックスの時計としてのポテンシャル
  2. ロレックスの信頼性を裏付ける「3大機構」
    1. 防水機構
    2. 自動巻き機構
    3. デイトジャスト機構
  3. 腕時計業界の勢力図が変わる可能性もあるETA2020年問題
    1. ETA2020年問題とは時計のムーブメント供給の問題のこと
  4. ロレックスが高い資産価値を誇る理由はオリジナル・ムーブメントにある

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ロレックスの時計としてのポテンシャル

天井知らずのロレックスの資産価値。時計業界が震撼するETA2020年問題との関連性は?
(画像=malajscy/stock.adobe.com)

時計ブランドとしてその名を知らぬ者はいない「ロレックス」。1926年に世界で初めて完全防水の腕時計を開発し、過酷な環境下でも安心して使用できる時計をつくり続け、その名声は衰えを知らない。繊細なパーツひとつひとつが緻密な設計で組み立てられる機械式時計の中でも、高い機能性がもたらす信頼感がブランド力となり、時計業界や時計愛好家の間では「ロレックスの価値は下がらない」ということが半ば常識となっている。

実は、ロレックスは有名時計ブランドの中でとりわけ高価というわけではない。世界三大時計メーカーと言われる「パテック・フィリップ」「オーデマ・ピゲ」「ヴァシュロン・コンスタンタン」や、価格面では別格ともいわれる「リシャール・ミル」などと比較すると、機能性と比較してもリリース価格はリーズナブルと言っていいだろう。

では、ロレックスはどんなポテンシャルを備えた時計なのか、代表的な機能を解説する。

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ロレックスの信頼性を裏付ける「3大機構」

前述した通り、高い機能性を兼ね備えているロレックス。特に下記で紹介する「3大機構」と言われる技術はロレックスのブランド力を確固たるものにしている。

防水機構

1926年、ロレックスは世界初の完全密閉ケース腕時計「オイスター」を開発した。翌年、イギリス人女性がこの時計を付けたままドーバー海峡を泳いで横断し、泳ぎ切った後、時計がまだ動いていたことが非常な驚きをもって世界に伝わる。

「完全防水」の時計をつくるという発想と、実際にやり遂げた技術力の高さにより、ロレックスは絶大な信頼を得た。

自動巻き機構

自動巻き機構の歴史は古く1777年、懐中時計の時代からあったのだ。注目すべきなのは、ロレックスが開発した自動巻き機構は、世界で初めて「全回転式ローター」方式を用いたことである。

完全防水を実現するには、リューズをねじ込んで閉めることが必要になる。だが、閉め忘れるユーザーが多数おり、これを防止するため、リューズを使わなくてもゼンマイを巻けるようにと全回転式ローターによる自動巻き機構が開発されたのだ。これは、ムーブメントの中央に固定された半月型の錘(おもり)を回転させてゼンマイを巻き上げるしくみで、常に腕に装着することで半永久的に時計が動き続けるというものである。ロレックスは1931年、これを「パーペチュアル(永遠)」と名付ける。以降、腕時計の世界では、この方式が自動巻き機構のスタンダードとなった。

デイトジャスト機構

午前0時ごろ瞬間的に「カチッ」と日付が切り替わるデイトジャスト機構は、当時としては画期的であった。今でこそ当たり前になったが、ロレックスの持つ3大機構のうちでは、1945年のこの発明が最も新しいものだ。デイトジャストの発明によって、ロレックスは実用腕時計として完成形になったと言われている。この機構を装備したモデルには、「デイトジャスト」という名前がそのまま使用されている。

デイトジャストでは、秒針がセンター軸になっており、時・分・秒の三針が同軸上に設置される。これによって、日付表示窓の位置を3時付近に設けることができるようになったのである。

このようなロレックスの持つ機能性と実用性は、卓越した信頼性を担保し、厳しい環境に挑む冒険家やスポーツ選手などに愛用されることで、ますますその評価を高めることとなったのだ。

腕時計業界の勢力図が変わる可能性もあるETA2020年問題

「ETA2020年問題」は時計業界の人でないと、その問題の大きさはわからないかもしれない。ETA社は、スイスにある1856年設立の歴史ある「エボーシュ」(時計のムーブメントを含む半製品)メーカーだ。同社は、かの有名な「オメガ」や「ブレゲ」、「ロンジン」「スウォッチ」などを傘下に収める時計業界最大のコングロマリット「スウォッチグループ」の一員である。

ETA社は、多くの時計メーカーにムーブメントを提供してきた。その代表格が、IWC、タグ・ホイヤー、ブライトリング、フランクミュラーなどである。大量生産され、高性能で価格の安定している同社のムーブメントは、1990年代になると約80%以上のメーカーに供給されるに至った。

ETA2020年問題とは時計のムーブメント供給の問題のこと

そのような状況の中、スウォッチグループは2002年に「2006年限りでエボーシュのスウォッチグループ以外への供給を終了する」と発表。これに反発する時計メーカーが多発し、スイス連邦競争委員会(COMCO)が仲裁に入る騒動に発展したのである。紆余曲折を経て、2020年まではこれまで通り供給することで落ち着いたのだが、この騒動は世界の時計業界の在り方に一石を投じることとなった。

スウォッチグループの言い分はこうだ。
「スイスの時計メーカーは自社開発を放棄し、ETAのムーブメントを搭載し、商品を高額で販売する現況がスイスの時計工芸を堕落させているのだ」

中身の心臓部だけ買ってきて外側だけをつくり、あとはブランドイメージだけで高額販売するというスタイルがはびこってきたことに対し、伝統あるスイスの時計産業がその価値をおとしめられることのないよう警告を発する。そのために、必要な措置をとったものと言える。

ETA社製ムーブメントの供給を受けられなくなったメーカーは、これからそれぞれの道を歩むことになる。自社の努力なしに、ブランドイメージだけで時計のビジネスができる時代は、終わりつつあるのかもしれない。

ロレックスが高い資産価値を誇る理由はオリジナル・ムーブメントにある

時計をムーブメントから自社で一貫して製造することを、マニュファクチュールという。多くのブランドがムーブメントの提供を受けて時計を製造する一方、ロレックスは高い技術力を要するマニュファクチュールを採用し続けている。この製造業態を採用しているブランドは稀少であり、近年では特に機械式時計の価値とされている。ブランドステータスや外装ではなくムーブメントの信頼性がブランド力になっているのだ。

ロレックスに多くの人気が集まり、高い資産価値を誇っているのは、必然とも言える確かな理由と裏付けが存在するからだ。