東証には、大企業が上場する東証第一部・東証第二部以外に、マザーズやJASDAQといった中・小型化株を扱う市場がある。各市場の特徴や投資するメリット・デメリットに、経営者として理解しておきたい上場基準などを解説する。

目次

  1. 「マザーズ」は東京証券取引所に属する市場の1つ
    1. 東京証券取引所に属する株式市場の上場企業数および株式時価総額
  2. ベンチャー企業が集まる「マザーズ」の特徴とは
    1. マザーズの新規上場基準
    2. 投資するメリット:成長性がある企業が上場
    3. 投資するデメリット:ハイリスク・ハイリターン
  3. 中・小型株が上場する「JASDAQ」との違い
    1. JASDAQ(スタンダード)の上場基準
  4. 国内外の大企業が名を連ねる「東証第一部」「東証第二部」
    1. 東証第一部の上場基準
    2. 投資するメリット:流動性が高く安定的な成長が見込める
    3. 投資するデメリット:ハイリターンを狙いにくい
  5. 新興企業への投資ならまずは「マザーズ」が有力な選択肢となる

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「マザーズ」は東京証券取引所に属する市場の1つ

成長企業が集う「マザーズ」。東証一部・東証二部・JASDAQとの違いは?
(画像=beeboys/stock.adobe.com)

「マザーズ」は、東京証券取引所に属する株式市場の1つである。マザーズ以外で東京証券取引所に属する株式市場は、「東証第一部」「東証第二部」「JASDAQ(ジャスダック)」「TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)」の4つ。2020年の各市場における上場企業数および株式時価総額は、以下のとおりとなっている。

東京証券取引所に属する株式市場の上場企業数および株式時価総額

株式市場名 上場企業数 株式時価総額
東証第一部 2,186社 669兆9,331億3,400万円
東証第二部 475社 5兆5,730億6,200万円
マザーズ 346社 9兆1,934億8,600万円
JASDAQ スタンダード 667社 10兆726億7,000万円
グロース 37社 2,981億7,500万円
TOKYO PRO Market 41社 673億800万円

東証第一部は上場企業数が2,000を超える、東京証券取引所で最大の市場である。東証第二部、マザーズ、JASDAQの上場企業数には、それほど大きな差はない。株式時価総額についても、東証第一部が抜きん出ている。一方、東証第二部の株式時価総額はマザーズやJASDAQよりも低い。

各市場には、どのような特徴や違いがあるのだろうか。ここからは、投資するメリットやデメリットから経営者として理解しておきたい上場基準などを解説していく。なお、TOKYO PRO Marketは「プロ向け市場制度」に基づいて創設された市場であり、一般投資家の取引は受け付けていないため、他の市場とは性質が異なる。そのため、本記事では割愛する。

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ベンチャー企業が集まる「マザーズ」の特徴とは

「マザーズ」は、ベンチャー企業が多く集まる市場だ。2021年2月26日時点では、メルカリやウェルスナビなどが名を連ねている。ベンチャー企業が多いのは、新規上場基準が比較的にハードルが低いからだと言えるだろう。マザーズの新規上場基準は以下の表のとおり。

マザーズの新規上場基準

項目 詳細
株主数 150人以上
(上場時までに500単位以上の公募を行う)
流通株式 ・流通株式数:1,000単位以上
・流通株式時価総額:5億円以上
・流通株式数(比率):上場株券等の25%以上
時価総額 規定なし
事業継続年数 新規上場申請日から起算し、1年以上前から取締役会を設置して継続的に事業活動を行っている
上場会社監査事務所による監査 ・「新規上場申請のための有価証券報告書」に記載
・添付される財務諸表等について、上場会社監査事務所の監査等を受ける

マザーズの上場基準は後述する他の株式市場と比べて低く、規模が小さい企業や創業からの年数が少ないベンチャー企業でも上場しやすいのが特徴だ。マザーズは、広く資金を調達したい、もしくは信用力を上げたいと考えているベンチャー企業にとって、魅力的な市場といえるだろう。

投資するメリット:成長性がある企業が上場

マザーズに投資するメリットは、成長性がある企業に出資できることだ。マザーズへの上場では、企業がどのくらいの成長性を持っているかが重視される。実際に、マザーズに上場した企業の多くは、その後は東証第一部へのステップアップを果たしてきた。市場替えが行われると、株価が大きく上昇することも多い。このようにマザーズは、投資した企業が成長を遂げることで、出資した資金が数倍に跳ね上がることが期待できる市場だと言えるだろう。

また、新しい考え方や魅力的な新技術を持つ会社をいち早く見つけて応援できるのも、マザーズでの投資の魅力だ。

投資するデメリット:ハイリスク・ハイリターン

マザーズに投資する際のデメリットは、ハイリスク・ハイリターンであることだ。大きくステップアップする企業がある一方で、事業計画がうまく実行されないなどの理由から株価が大きく下がることもある。損失を抑えつつリターンを狙うためには、投資後も値動きや企業の動向を注視する必要があるだろう。値動きを把握し利益を確定していくことが、ベンチャー企業への投資を成功させるポイントだ。

また、ベンチャー企業は株式の発行部数が少なかったり、株式の多くをオーナーが保有していたりするため、流動性が低いことがよくある。流動性が低い銘柄は、投資家の望むタイミングで売買ができなくなる可能性があるため、売買高が多い銘柄を選んで投資することも重要だ。

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東証マザーズとは?その特徴や上場の準備について解説

中・小型株が上場する「JASDAQ」との違い

「JASDAQ」は、マザーズと同様に中・小規模企業が多く上場する株式市場だ。「信頼性」「革新性」「地域・国際性」というコンセプトを掲げており、成長性のある企業が多い。JASDAQは、上場基準により以下の2つの区分を設けている。

・スタンダード:一定の規模と成長性が求められる
・グロース:特色ある技術やビジネスモデルを重視。将来に向けた成長性が問われる

スタンダードに上場できるのは、一定の規模と継続性を持つ企業だ。一方グロースは、今後の成長性が見込まれるなら実績がない企業でも上場できる。

・JASDAQにおける上場基準は?
ここで、JASDAQの上場基準を確認しておこう。なお、2021年2月時点ではグロースへの新規上場等を停止しているため、ここではスタンダードの上場基準のみを紹介する。

JASDAQ(スタンダード)の上場基準

項目 詳細
株主数 400人以上
流通株式 ・流通株式数:2,000単位以上
・流通株式時価総額:10億円以上
・流通株式数(比率):上場株券等の25%以上
時価総額 規定なし
事業継続年数 新規上場申請日から起算し、3年以上前から取締役会を設置して継続的に事業活動を行っている
上場会社監査事務所による監査 最近2年間の財務諸表等について、上場会社監査事務所の監査等を受けている

JASDAQの上場基準は東証第二部のものと同様であり、一定の会社規模や継続性が必要だ。マザーズよりも上場基準が厳しく、成長性と実績の両方を必要とする。

・JASDAQに投資するメリットとデメリット
JASDAQに投資するメリットは、実績と成長性を併せ持つ企業に投資できること。2021年2月時点でJASDAQに上場している企業には、日本マクドナルドホールディングスやワークマン、セリアなどがある。比較的、リスクを抑えつつもハイリターンを狙える銘柄が揃っている市場といえる。初めて新興企業に投資するなら、JASDAQから始めるのもよいだろう。

デメリットは、東証第一部・二部に比べると値動きの幅が大きいこと。そのため、大きなリターンを期待できるが、その分リスクも大きいことを覚えておきたい。

国内外の大企業が名を連ねる「東証第一部」「東証第二部」

東証第一部・東証第二部は、東京証券取引所の中でも大企業や中堅企業が名を連ねる市場だ。外国の投資家や機関投資家の資金も集まるため、世界規模の株式市場といえる。東証第一部・東証第二部に上場するには、その他の市場と比べて厳しい基準をクリアしなければならない。

東証第一部の上場基準を確認してみよう。なお、東証第二部の上場基準は紹介したJASDAQのものと同様のため、ここでは省略する。

東証第一部の上場基準

項目 詳細
株主数 800人以上
流通株式 ・流通株式数:2万単位以上
・流通株式時価総額:100億円以上
・流通株式数(比率):上場株券等の35%以上
時価総額 250億円以上
事業継続年数 新規上場申請日から起算し、3年以上前から取締役会を設置して継続的に事業活動を行っている
上場会社監査事務所による監査 最近2年間の財務諸表等について、上場会社監査事務所の監査等を受けている

東証第一部は、東京証券取引所の中で唯一時価総額の基準が設けられている市場だ。時価総額は、時価(その時点の株価)に発行済株式数をかけて計算する。企業が持つ現在の資産だけでなく、成長性や成長力が総合的に反映されるため、企業の規模を図る指標として用いられる。時価総額が高い企業は倒産や買収の可能性が比較的低いこともあり、将来に向けて安定的な成長を見込めるだろう。

その他、東証一部上場では求められる流通株式数や株式時価総額、流通株式比率も高く、安定的で継続的な業績が期待できる企業を対象とした市場といえる。

投資するメリット:流動性が高く安定的な成長が見込める

東証第一部・第二部のメリットは、安定的な成長が見込める大企業に投資できることだ。東証第一部にはトヨタやソニー、セブン&アイ・ホールディングス、第二部にはブルボンや日本KFCホールディングスなど、誰もが一度は耳にしたことがある企業が上場している。日頃目にする企業も多いため、情報を得やすいのも魅力だ。また流動性が高いため、売買がしやすいというメリットもある。

投資するデメリット:ハイリターンを狙いにくい

東証第一部・第二部に投資するデメリットは、ハイリターンを狙いにくいことだ。東証第一部・第二部は、マザーズやJASDAQに比べて値動きの幅が小さため、短期間でのハイリターンを狙いにくい。東証第一部・第二部への投資で利益を得るなら、長期保有による継続的な株価の値上がりに加え、インカムゲインである配当金および株主優待による積み上げも狙いたい。

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新興企業への投資ならまずは「マザーズ」が有力な選択肢となる

東京証券取引所には、大企業や中堅企業が属する東証第一部・第二部のほか、ベンチャー企業が多く上場するJASDAQ・マザーズがある。今回はマザーズを中心に紹介したが、その特徴は上場基準が他と比較するとハードルが低く、成長性の高い企業が多く上場していることだ。マザーズから東証第一部にステップアップする企業も多いため、場合によっては株価が数倍に跳ね上がることもある。ベンチャー企業をターゲットとした投資をする。または、経営者として株式上場を目指すなら、その選択肢としてマザーズをまずは検討してみてはいかがだろうか。

文・N.ヤマモト