企業における「組織図」は、指揮・命令系統や部門・部署・プロジェクトの構造を示す役割を担っている。組織形態が社員間で共有できていなければ、業務に混乱を起こしてしまうこともありうる。組織図の基本の3形態を理解した上で今あるものを見直すべきだろう。

目次

  1. 組織図の重要性とは?指揮・命令系統の混乱を無くす
  2. 組織図の作成は「緊急度は低いが重要度は高いタスク」
  3. 組織図は3種類:事業部制組織図・機能別組織図・マトリックス組織図
    1. 「事業部制組織図」の概要・作り方とメリット・デメリット
    2. 「機能別組織図」の概要・作り方とメリット・デメリット
    3. 「マトリックス組織図」の概要・作り方とメリット・デメリット
  4. 組織図を完成させるための3ステップとは?作成の順序に注意
    1. 1. 企業の組織体系を正しく把握する
    2. 2. 組織図のラフ・デザインを作成する
    3. 3. 社内向けと社外向けの組織図を作成する
  5. ほかにもある組織図:「チーム制組織図」や「社内カンパニー制組織図」
    1. チーム制組織図
    2. 社内カンパニー制組織図
  6. 企業経営において無くてはならない組織図

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組織図の重要性とは?指揮・命令系統の混乱を無くす

指揮・命令系統が一目瞭然。「組織図」の作り方を3形態で解説
(画像=Song_about_summer/stock.adobe.com)

社員が数人の企業であれば、組織図が無かったとしても混乱が生じることは少ない。指揮・命令系統が非常にシンプルだからだ。しかし、ある程度の社員数を抱える企業や部門・部署が複数ある企業では指揮・命令系統が複雑になるため、組織図の策定は必須だ。また、すでに組織図がある場合でも完成度が低ければ意味をなさないので見直す必要があるだろう。

たとえ経営者の頭の中では組織図が出来上がっているとしても、それを「見える化」しなければ社員全体で組織図が共有されない。見える化しないままだと経営者と管理職、管理職と従業員などの間で指揮・命令系統に混乱が生じやすくなる。

組織図は経営者の方針を反映するものであり、部署や人員がどう配置されているかを見れば、従業員は経営者や上司の考え方が理解しやすくなる。こうした観点からも組織図は経営者にとって必要なことと言えるだろう。

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組織図の作成は「緊急度は低いが重要度は高いタスク」

このような理由から組織図が重要であることは明白だと言えるが、それでも組織図を作成していない企業があるのは組織図の作成を「緊急度が低いタスク」と経営者が認識してしまっているからだ。

スティーブン・R・コヴィー博士の著書として有名な『7つの習慣』では「緊急度と重要度のマトリクス」が説明されており、企業の将来を考えれば「緊急度は低いが重要度は高いタスク」は非常に重要であるにもかかわらず、後回しになってしまいがちな項目といえるだろう。確かに組織図の作成は経営者が抱えている目の前の仕事と比べると、緊急度は低く感じるかもしれない。しかし、この「緊急度と重要度のマトリクス」における指摘からもわかるように、組織図の作成を後回しにすると企業の将来にマイナスの影響が出てしまう。

組織図は3種類:事業部制組織図・機能別組織図・マトリックス組織図

組織図は基本的に大きく3種類に分類されることを理解しよう。具体的には「事業部制組織図」「機能別組織図」「マトリックス組織図」である。

どの組織図を採用するかは経営する企業がどのような体系で組織化されているかによる。組織体系が複数の事業部で構成されている場合は「事業部制組織図」、単一の事業部で構成されている場合は「機能別組織図」、事業部制・機能別の両方を取り入れた方が適切な場合は「マトリックス組織図」といった具合だ。

事業部制組織であるのに「機能別組織図」を作成したり、機能別組織であるのに「マトリックス組織図」を作成したりということは原則適さない。どの組織図を採用するかは、あくまで現在の組織体系によって決まってくると理解しておいてほしい。

「事業部制組織図」の概要・作り方とメリット・デメリット

「事業部制組織」とは簡単に言えば、複数の事業部を抱えている組織のことを指す。事業部制組織図では経営者・社長を頂点に据え、その下層に各事業部を同列に並べる。そして各事業部のさらに下層に事業部内の各部署を並べる。

実際に事例を挙げて考えてみよう。たとえば、ある自動車部品メーカーが「ブレーキ事業部」「ハンドル事業部」「センサー事業部」を抱えており、それぞれの事業部内に「開発部」「製造部」「営業部」の各部署があるとする。

こうしたケースで事業部制組織図を作成すると、以下のようになる。

指揮・命令系統が一目瞭然。「組織図」の作り方を3形態で解説
(画像=組織図1)

事業部制組織図のメリットとしては、企業内の各事業部と各部署を俯瞰して把握しやすい点がある。一方デメリットとしては、事業部に属さない経理部や人事部などの間接部門を表現しにくい点がある。

こうしたデメリットを解決するためには、事業部制組織図に間接部門も記載してしまえばいい。組織図はやや複雑化するものの、従業員が会社全体の構造を理解しやすくなる。

「機能別組織図」の概要・作り方とメリット・デメリット

先ほど説明した「事業部制組織図」は複数の事業部がある企業にマッチした組織図であるのに対し、「機能別組織図」は単一の事業を展開している企業に合った組織図だ。

指揮・命令系統が一目瞭然。「組織図」の作り方を3形態で解説
(画像=組織図2)

機能別組織図でも社長・経営者を頂点に配置し、その下層に各部署を並べる。この際、売上に直接貢献する「直接部門」と直接部門の活動を支える「間接部門」を同列に並べることが特徴だ。

たとえば、先ほど例に挙げた自動車部品メーカーが「ブレーキ事業」だけを手掛けているとする。その場合は「開発部」「製造部」「営業部」の直接部門に加え、「経理部」「総務部」「人事部」「法務部」などの間接部門を以下のように配置する。

機能別組織図のメリットとしては、直接部門と間接部門の両方を1つの組織図で網羅的に表現できることがある。一方デメリットとしては、将来的に事業部を増やした際に組織図のデザインを大きく変える必要があることだ。

将来ほかの事業を展開しようと考えているのであれば、こうしたデザイン変更の手間を削減するためにある工夫をしておけばいい。その工夫とはいま現在は単一の事業しか展開していなかったとしても、最初から事業部制組織図のようなデザインにしておくことだ。

「マトリックス組織図」の概要・作り方とメリット・デメリット

マトリックス組織とは、一般的に事業部・部署・エリアなど複数の要素を組み合わせ、一人の従業員に対して複数の上司が管理する組織体系を指す。これまで説明した2種類の組織図と同様、経営する企業体系がマトリックス組織の場合は、原則として「マトリックス組織図」を作成する。

マトリックス組織図のデザイン方法は複数あるが、社長・経営者を頂点とし、その下層に各事業部と各部署を表のようなデザインで表現する手法が一般的だ。これまでと同様に自動車部品メーカーの例で考えてみよう。

たとえば、「ブレーキ部門」「ハンドル部門」「センサー部門」それぞれが直接部門である「製造部」「営業部」、間接部門である「総務部」「経理部」を抱えているとする。その場合は以下のようなデザインとなる。

指揮・命令系統が一目瞭然。「組織図」の作り方を3形態で解説
(画像=組織図3)

マトリックス組織図のメリットは、細分化された企業組織を漏れなく表現できることにある。一方デメリットは、指揮・命令系統が複雑に見えてわかりづらいことなどが挙げられる。

以上、3種類の組織図について解説してきたが、一覧にまとめると以下のようになる。

組織体系 作るべき組織図 メリット デメリット
事業部制組織 事業部制組織図 企業内の各事業部と各部署を俯瞰して把握しやすい 経理部や人事部などの間接部門を表現しにくい
機能別組織 機能別組織図 直接部門と間接部門を網羅的に表現できる 将来的に事業部を増やした場合に組織図のデザインを大きく変える必要がある
マトリックス組織 マトリックス組織図 細分化された企業組織を漏れなく表現できる 指揮・命令系統が複雑に見える

組織図を完成させるための3ステップとは?作成の順序に注意

各組織図をできるだけスムーズに作成する際には、次の3ステップを踏むことになる。この3ステップの順序が前後するとデザインを修正する手間が増え、作成を終えるまでに多くの時間を要してしまうこともある。

1. 企業の組織体系を正しく把握する

まずは経営者が自社の組織体系を正確に把握することが求められる。どのような事業部があるのか、各事業部にはどのような部署が配置されているのか、どのような間接部門が配置されているのかなどデザインの作成に取り掛かる前に整理しておこう。

2. 組織図のラフ・デザインを作成する

組織体系を正確に把握したあとは、組織図のデザインのラフ案(下書き)を作成する。ラフ案を作るのは、本格的にデザインを作成する前に誤りがないか社内確認するためだ。各事業部の責任者などを集め、組織図の最終チェックを行う。

3. 社内向けと社外向けの組織図を作成する

ラフ案の最終確認を終えたら、社内向けの組織図と社外向けの組織図のデザインに取りかかる。社内向けと社外向けを同じデザインにしてもよいが、社内向けの組織図では各事業部の責任者の氏名を付記するなど工夫すれば、人事異動の度に組織図を微修正する手間はかかるものの、より実務的に役立つ組織図となる。

ほかにもある組織図:「チーム制組織図」や「社内カンパニー制組織図」

「事業部制組織図」「機能別組織図」「マトリックス組織図」について解説してきたが、チーム制組織の場合は「チーム制組織図」、社内カンパニー制の組織を表現するためには「社内カンパニー制組織図」を作る必要がある。以下簡単に説明しよう。

チーム制組織図

チーム制組織は、ベンチャー企業やスタートアップ企業などで多くみられる組織体系で、事業部を設けずにプロジェクトごとにチームを編成する形となる。

「チーム制組織図」では社長・経営者の直下に各プロジェクトを配置し、プロジェクトごとのチームのメンバー数が少ない場合は、リーダーと各メンバーの氏名まで記載することもある。

社内カンパニー制組織図

社内カンパニー制は各事業部を1つの「カンパニー」とみなし、各カンパニーに独立性や多くの権限を持たせる組織体系のことを指す。日本でも1990年代から社内カンパニー制を導入する企業が増えてきた。

「社内カンパニー制組織図」は、事業部制組織図における各事業部を各カンパニーに置き換えたようなデザインとなるのが一般的だ。

企業経営において無くてはならない組織図

組織図は企業にとって無くてはならないものだ。目の前にある業務に日々追われている経営者も少なくないと思うが「緊急度は低いが重要度は高いタスク」である組織図の作成が後回しにならないよう、十分に留意したい。

そして、実際に組織図をデザインする際には他社の組織図も参考にしたいところだ。企業によっては、より見やすいデザインになるよう細かな工夫が施されているケースもある。また、組織図は組織再編などによって都度作り変える必要があることも留意しておこう。

文・岡本一道