「〇〇と聞いて最初に思い浮かぶブランド名は?」。そんな問いを消費者にした際に、回答者が一番初めに想起するブランドをトップ・オブ・マインド(第一想起)と呼ぶ。ブランド認知の深度を測る指標として重要なトップ・オブ・マインドを解説する。

目次

  1. 消費者が最初に想起するブランドが「トップ・オブ・マインド」
    1. 「トップ・オブ・マインド」と「ブランド認知率」の違い
  2. トップ・オブ・マインドはどのような手法で調査されているのか
    1. 「純粋想起」と「助成想起」の違いとリサーチの際の注意点
  3. トップ・オブ・マインド分析でわかるブランド4分類
    1. マイノリティ
    2. ニッチ
    3. レガシー
    4. リーダー
    5. トップ・オブ・マインドが業績に与える影響
  4. トップ・オブ・マインドをマーケティングにどう活かすか
    1. ブランド認知率とともに重要なのがブランドイメージ
    2. 競合他社とのポジショニングの変化を知る
  5. トップ・オブ・マインドを向上させる方法
    1. トップ・オブ・マインドの向上には広告戦略が必須
  6. トップ・オブ・マインドをマーケティング力アップにつなげ、さらなる業績の向上を

>>会員登録して限定記事・イベントを確認する

消費者が最初に想起するブランドが「トップ・オブ・マインド」

ブランドのトップ・オブ・マインド(第一想起)を獲得するための方法
(画像=Jo Panuwat D/stock.adobe.com)

トップ・オブ・マインドとはどのような概念を指すのか、まずは基本的な意味を知る必要がある。トップ・オブ・マインドは日本語で「第一想起」と訳すことができる。例えば「有名なフリマアプリと聞いて最初に思い浮かぶブランドは?」と質問されれば、「メルカリ」と答える人が多いだろう。これがトップ・オブ・マインドである。該当する企業は圧倒的なシェアを誇っている場合が多く、シェアと連動していることが多いと考えてよいだろう。

「トップ・オブ・マインド」と「ブランド認知率」の違い

第一想起と聞くと「ブランド認知率」と同じような意味に感じるかもしれないが、両者には大きな違いがある。一例を挙げれば、日本に住んでいる社会人でトヨタ自動車を知らない人はまずいないだろう。認知率はほぼ100%である。しかし、自動車というカテゴリーで考えれば日産自動車も認知率は互角に近いと思われる。トヨタ自動車を知っていて日産自動車を知らないということは考えにくいからだ。

認知率はその企業名を知っている人の割合を示す。これに対して最初に思い浮かぶ自動車メーカーというトップ・オブ・マインドについての質問では、かなりの割合でトヨタ自動車が勝っているはずである。つまり、ビジネスにおけるブランディングではトップ・オブ・マインドの数値を上げることが重要なのだ。

>>会員登録して限定記事・イベントを確認する

トップ・オブ・マインドはどのような手法で調査されているのか

トップ・オブ・マインドの調査方法としてはアンケートが一般的だが、どのような方法があるのだろうか。最近Webでアンケート調査を見る機会が多くなったと思うことはないだろうか。以前は通販サイトが中心だったが、いまでは携帯電話会社やチケットサイト、SNS系などWebアンケートは多岐にわたっている。回答するとポイントが付与されることがあるため、利用する人も多いだろう。質問のなかには私たちが意識しなくてもトップ・オブ・マインドの調査に該当するものがある。同じ業界の企業名が羅列されている質問なら、トップ・オブ・マインド調査の可能性が高いだろう。

Webアンケート以外では、おもに商品名のトップ・オブ・マインド調査を目的とするグループインタビューという方法がある。こちらは特定の場所に集まる必要があることから、交通費を含んだ謝礼が支給されるのでアルバイトのつもりで参加する人もいるようだ。

「純粋想起」と「助成想起」の違いとリサーチの際の注意点

アンケート調査を行う際は「純粋想起」と「助成想起」の2つのアプローチの仕方がある。純粋想起とは選択肢の提示がなくても想い起せることをいう。製品名を提示して想い起すブランド名をすべて答えてもらう形だ。一方の助成想起とは選択肢があれば想い起こせることをいう。調査対象者に製品のブランド名を提示し、そのなかで知っているブランド名を答えてもらう。ブランド再認とも呼ぶ。

自社でトップ・オブ・マインドのアンケート調査を行う際は、順番を間違えないようにしなければならない。上記2つのアプローチの仕方では先に純粋想起の質問をすることが必須である。先に助成想起の質問をしてしまうと、ブランド名のヒントを与えられた形で純粋想起するブランド名を答えてもらうことになり、意味をなさなくなる。

トップ・オブ・マインド分析でわかるブランド4分類

具体的にトップ・オブ・マインドの分析方法を見てみよう。トップ・オブ・マインドのアンケート調査を行ったあと、回答を数値化して下のような分布図に落とし込んでいく。

ブランドのトップ・オブ・マインド(第一想起)を獲得するための方法
(画像=map)

助成想起率を縦軸、純粋想起率を横軸とし、低い順にマイノリティ、ニッチ、レガシー、リーダーに分類する。その結果、調査したブランドが市場でどの位置にあるかを知ることができるのだ。ブランド4分類は以下のような意味を持つ。

マイノリティ

認知度が一番低いブランドとなる。まだほとんどシェアを獲得できておらず、ブランド名の浸透が不十分と考えられる。マインドシェアにも乗ってこない段階といえる。(純粋想起率・助成想起率がともに低い)

ニッチ

有名ではないが、知る人ぞ知るブランドという位置づけになる。コアなファンを獲得しているブランドと考えることもできるが、ブランド認知率としてのマインドシェアは低い。(純粋想起率は高いが助成想起率は低い)

レガシー

レガシー(遺産)という名のとおり、「いにしえのブランド」と呼ばれるグループ。すぐに名前は出てこないがブランド名を聞くと想起できるタイプのブランドを指すだ。(助成想起率は高いが純粋想起率は低い)

リーダー

いわゆる勝ち組に相当するブランドで市場認知度が最上位と評価できる。すでに市場で強固なシェアを獲得しており、今後は水準を落とすことなく顧客の支持を得られるかが課題となる。トップブランドほど立ち位置を維持するのが難しいともいえる。(純粋想起率・助成想起率がともに高い)

トップ・オブ・マインドが業績に与える影響

ここで疑問に思う人もいるだろう。「トップ・オブ・マインドってそんなに業績に影響するものなの?」という点だ。身近な例で考えるとわかりやすい。たとえば、外出先で昼食をとらなければならなくなったとき「ハンバーガーが食べたい」「牛丼が食べたい」と思えば、最初に思い浮かぶチェーン店の看板を探さないだろうか。その人にとってはそのチェーン店が第一想起の対象になっているのだ。かくしてその人は当該チェーンの店に入り、売り上げにつながる。その積み重ねが業績という形になるとすれば、やはりトップ・オブ・マインドの向上は重要な戦略といえるだろう。

トップ・オブ・マインドをマーケティングにどう活かすか

トップ・オブ・マインドをマーケティングにどう活かすかは企業にとって非常に大事だ。第1には認知度の向上を目指すが、顧客に持たれているイメージの向上も重要な課題になる。さらに自社より競合他社が第一想起で上位にいるなら、ポジショニングを逆転するための戦略も必要だ。

ブランド認知率とともに重要なのがブランドイメージ

トップ・オブ・マインド(第一想起)と認知率は密接に関係している。顧客からの認知率が低いままで第一想起されることはあり得ないだろう。そこで自社ブランドが顧客にどの程度認知されているかまず知る必要がある。

認知率が重要といっても単に自社ブランドの認知率が高いだけでは不十分だ。顧客に持たれているイメージが大事な要素になる。いくら認知率が高くても企業イメージがブラック企業の代表と認識されていて、販売している商品が使い勝手の悪い商品として想起されるようではマイナスである。良いイメージとして想起してもらうには、イメージ戦略と優良な商品の開発にさらなる企業努力が必要になる。

競合他社とのポジショニングの変化を知る

もう1点分析する必要があるのは競合他社とのポジショニングの変化である。第一想起されるには競合他社との位置関係を知ることが大事だ。もし、首位にいる競合他社とのポイント差が前回調査より縮まったなら、自社の戦略が功を奏していることになり、逆に差が広がったなら戦略に問題点があることになる。ポジショニングを知ることにより、自社の課題が明確になるのだ。

トップ・オブ・マインドを向上させる方法

トップ・オブ・マインドを向上させるためのヒントになるのが「ザイアンス効果」という理論だ。接触頻度が多いほど好感度が上がる「ザイアンス効果」はトップ・オブ・マインド向上のヒントになるだろう。アメリカの心理学者ザイアンスが提唱した理論で、何度も繰り返し接触することにより好感度や評価が高まる効果をいう。音楽で何度も同じ曲を聴くことによりいつの間にか好きになるのも1つの事例である。

トップ・オブ・マインドの向上には広告戦略が必須

上述した例から、トップ・オブ・マインドを向上させるには顧客に繰り返し自社ブランドと接触してもらう必要がある。したがって広告戦略がきわめて重要になるのだ。メーカーが巨額の費用をかけてテレビCMを流すのもトップ・オブ・マインドの向上を目的に行っているのだろう。ただし、テレビCMはかかる費用も膨大なのである程度規模の大きな企業に限られる。イベントやWeb広告など様々な方法を検討する必要があるだろう。また昨今のSNSを活用した広報活動も同様の広告戦略だ。多方面から接触機会を増やすための施策を検討すべきだろう。

トップ・オブ・マインドをマーケティング力アップにつなげ、さらなる業績の向上を

物事には「絶対評価」と「相対評価」がある。絶対評価は企業の努力だけで向上させることができる。マーケティングでいえば認知率がこれに相当する。認知率が30%に低迷している企業が積極的な広告戦略を行って80%に向上させることは可能だ。競合他社の動向には左右されない。

しかし、相対評価は自社が努力しても上位の競合他社がそれ以上に努力していれば、トップ・オブ・マインドで逆転するのは容易ではない。第一想起は多くの企業やブランドから選ばれる相対評価だからだ。とはいえ、すでに述べたようにトップ・オブ・マインドと認知率は密接な関係がある。まずはアンケート調査を実施し、自社ブランドが図解で示したマイノリティ、ニッチ、レガシー、リーダーのどこに属するか知る必要がある。

トップ・オブ・マインドをマーケティング力アップにつなげ、業界での位置を少しでも向上させることができるように調査・分析を行ってみてはいかがだろうか。

文・丸山優太郎