目次

  1. コインチェックの再建とビットコインの行方
  2. 上昇を続ける株価の今後は?
  3. 金融緩和の副作用 日本にとって最もリスクが高いのは?
  4. 日本の貨幣価値の推移は?
  5. 日本の経済を踏まえて個人または企業がとる対策は?
  6. あらゆる変化や金利の上昇などを敏感にキャッチ

コインチェックの再建とビットコインの行方

【特集#02】「マネックス証券成長の舞台裏と世界経済の今後を占う」
(画像=松本 大 氏)

司会 それでは次のご質問です。 多くの方が気になっていることの一つだと思いますが、先ほどのグループ紹介にもありましたコインチェックについてです。2018年に資金流出があったコインチェックを再建されました。その後のガバナンスなどの部分について、どのような取り組みをされていますか。

松本 一時期、マネックスグループの中からかなりたくさんの人間を送りこんで、コンプライアンスや内部管理、内部統制を強くしました。いろいろな面で人材も提供し、私もかなり深く関わって、一緒に改善していった、という感じでした。マネックスという金融機関が関わることで、ガバナンスやセキュリティ、内部統制を全部よくする。今はもう、かなり自立しています。

司会 なるほど。コインチェックと言えば、やはりビットコインです。現在、非常に高値ですが、仮想通貨、暗号資産の市場動向や今後の成長性についてもお聞かせください。

松本 いろいろな見方がありますが、一つはコロナなどの問題があって、各国の中央銀行が大量のお金を刷っています。政府も財政出動をしていて、ざっくり言って、この1年間で第二次大戦後の数十年間に刷ったのと同じくらいのお金を世界で刷っているわけですよ。ものすごい量のお金があふれています。キャベツだって作りすぎれば安くなるように、お金も刷ればやっぱり価値は下がると思います。

一方で、株式や不動産、あるいはビットコインのように供給量が限られている資産は、値段が動きやすい。お金の価値が下がるので、結果としてこのような株、不動産、ビットコインの値段が上がる。物価というか、食品などのデイリーグッズの値段は、上がったら困るので社会を守るためにお金を刷って、そのおかげでTPI(消費者物価指数)は上がりませんが、株、不動産、ビットコインのような資産の値段は上がる。そのような限定的な資産インフレが起きている状況です。

バブルというよりも、当たり前のように今のようなことが起きています。もちろん調整はあります。たとえば、ビットコインも600万円が500万円に値段が下がることもある。暴落だと言う人がいますが、それは1週間前のレベルに戻っただけです。全体では上がっていることにかわりはないのです。

もう一つはCBDC、中央銀行デジタル通貨というものがあります。中国は来年の北京オリンピック向けにデジタル人民元を開発しています。もう北京でも使えるようになっています。そのようにして着々と進み、日銀もデジタルJPYを今作っています。

このようなデジタル通貨が出てくると当然、暗号資産は互換性が高いので、流動性が高くなり、価格が上がる可能性が高いと思います。いろいろな意見はあるし、いろいろな見方はありますけど、おおむねビットコインのような供給量の限られている形の暗号資産は、価格変動はあるけれど、長い目で見ると上がっていくと考えるのが妥当かなと思っています。

上昇を続ける株価の今後は?

司会 ありがとうございました。 引き続きテーマ2に移ります。

松本さんが、今後の世界経済、日本経済を占うということで、いくつかおうかがいします。

まず一つ目のご質問です。今、世界的な金融緩和で株価の上昇が止まらないのですが、 どのあたりまで上昇するとお考えですか?なんらかの形で、松本さんがお考えになっていることがあれば、お聞かせください。

松本 先ほどお話しした背景があり、金融緩和でお金がどんどんマーケットに投入されているのが理由のため、それが止まるとか下がるときとは、金融緩和が止まるときです。今、大量のお金が世の中に出ています。それはコロナに関係して、社会に痛みが走ったので、それを癒すためにお金を配ったわけです。

実際に、ファイザーやモデルナのワクチンはとてもよく効くようなので、新型コロナという病気の出口は、案外早く見えてくると思います。では、それですぐに一回配ったお金を吸い取る、つまり増税をするかというと、社会の中で痛みが部分的に残るので、さすがにそれはないと思います。コロナの出口が見えるということはコロナの金融緩和が終わるということで、株価とか不動産には調整が入るでしょう。でも、すぐに増税するとブーイングも起こるので、いったん供給したお金を引きあげることはずいぶん先になると思います。だから、株価の調整はあっても、バブルが弾けることは、私はないと思っています。

かつて日本でバブルが弾けたとき、日本の銀行はどんどん不動産融資をしていました。そこで、橋本龍太郎内閣が総量規制というのをやって、急にブレーキを踏んだので、本当にお金が詰まっちゃって、一気にバブルが弾けたのです。先ほど言ったような理由で、今そのようなことは起こらないと思うので、調整はあるけれども、バブル崩壊はない。そう考えると、株も不動産もビットコインのようなものも、いろいろブレはあるだろうけれども、まだまだしばらく上がっていく方向でしょう。

金融緩和の副作用 日本にとって最もリスクが高いのは?

司会 その続きのご質問ですが、強力な金融緩和を続けている状況にあって、副作用的な部分も出てくるんじゃないか。世の中としては、そのようにお話をされる方もいると思います。その副作用について、松本さんはどのようにお考えでしょうか。

松本 やっぱり金利ですよね。金利が上がるリスクがあります。実際に、アメリカでモーゲージなどはずいぶん金利が上がりはじめていて、イールドカーブが立つと思います。あと、株価と不動産とビットコインの値段が上がっていても、普通の人は困らないので、国は放っておきますが、万が一、物価にもインフレが波及したら、日常品の値段が上がると放っておけないので、いろんなことを始めるわけですよね。そのようなことで、金利が上がるというリスクはあります。

ただ問題は、日本で金利が上がるか、ということです。アメリカで金利が上がることはあると思いますが、日本は、本当に金利が上がるものなら上がってみてくれよというくらいの状況なので、日本では簡単に副作用は出ないと思います。

怖いのは、ただでさえ借金だらけだった国が、もう一回借金して、結局それ全部、将来の世代が背負っていくわけですよね。それに対し、若い世代の人の暴動というか、クーデーターが起こったり、日本から出ていっちゃおうという動きが起きたりすると、それは最大のリスク、一番よくないリスクです。

日本の貨幣価値の推移は?

司会 そうですね。若い人がいなくなってしまうと、日本の経済どうなる、って話ですよね。今ちょうどお話の中で金融緩和、日本の部分にも触れていただきましたが、日本政府がどんどん追加政策をして日本円の価値が下がっていくと先ほど松本さんもお話しされました。日本の貨幣の価値が、今後どのように推移していくか、についてもお話しいただけますか。

松本 日本もお金を刷っているけど、アメリカもすごい量のお金を刷っているわけですよ。だから作られ過ぎのキャベツと、もう一個作られ過ぎたキャベツの交換レートの話をしているような感じです。どっちも安くなるから、交換レートはあまり変わらないと思います。ただ、アメリカはモーゲージなどから見えるように、長期金利が上がりはじめています。本来為替は、長期金利は関係なく、短期金利の比較で見ますが、アメリカの長期金利が上がってくると、やっぱりドル高円安の方向に振られやすくなるでしょう。だけど申し上げたように、根っこの部分では両方がお金を刷り過ぎているから、そんな簡単に一気に円安になるとは考えにくい。だから実は為替は安定的で、緩やかにドル高円安になると、私は思っています。

日本の経済を踏まえて個人または企業がとる対策は?

司会 今後の展望を、日本通貨についてお話しいただきましたが、企業経営者としては、どのようなことに対策しておくべきか。それから個人としては、どのような備えをしておくとよいのかということについて企業として、個人として、この2点からお話しください。

松本 やはり資産インフレが起きやすい状況だと思います。今の日本の経済、本当はよくないのではないか、経済の実力から比して株価は行き過ぎじゃないかとか、いろいろおっしゃる人はいます。でも思い起こすと、日経平均が4万円近いときからバブル崩壊で日経平均が一時期の4分の1になった過程でも、日本のGDPってほとんど変わりませんでした。だから長い目で見ると、経済と株価は関係があると思いますが、今の例で日経平均が4分の1になってもGDPが変らなかったと考えると、少なくとも5年、10年の単位でずれることはあるんですよね。

あるいは日本の企業はいま、利益の半分くらいは海外で儲けているので、日本経済は関係ないですよね。そのように考えると、日本経済と日本の株価をくっつける考え方は、あんまり正しくないと私は思っています。

仮にもう1万歩くらい譲って、GDPと東証上場企業時価総額に相関があるとしても、それが1対1である理由はありません。たまたま、過去数十年見ると1対1に近い状況で行ったり来たりしていただけだった。これだけお金が刷られた時代においては、GDPに対して1.2倍とか1.5倍でも別にいいと思います。

PERがなんで15倍なのかとか、10倍なのかって、別に科学的な理由はないのです。そのように考えると、常識が変わるってことはある。だから、株、不動産、ビットコインも資産インフレが起きやすいというのは念頭に入れるべきでしょう。

個人であれば、それらの値段の動く資産、株式、不動産、ビットコインのようなものをある程度持っておいたほうがいいと思います。ボラティリティ(価格変動)はありますけどね。企業経営する観点からも、そのような資産のコストが上がっていく可能性が高いということは、投資戦略とかいろいろ考えるなかで、事業投資をいつするかとか、いろんな観点で考える必要があるでしょう。

あらゆる変化や金利の上昇などを敏感にキャッチ

松本 それから、ワークフロムホームとか、働き方の変化も激しく、思っている以上に、日本のなかのいろいろな経済活動の在り方が、急速に変わっているわけですよね。個人は経済活動を変える主体だから、好きなように変えればいいんですけど、企業経営の観点からすると、国民のみなさんの活動パターンが全く変わっていく可能性があるので、ここはアンテナを張っていないといけないとは思います。

あとは金利が上がるとか、イールドカーブが立ってくる可能性は日本でも一応ありますよ、ということですね。それに関係するビジネスをされている方は、それほど多くないとは思いますが、たとえば住宅ローンを組むなら、そろそろ固定を考えたほうがいいんじゃないかとか、いずれ日本でも金利が上がる可能性があるということは、企業の方も個人の方も念頭に置いたほうがいいかもしれません。