会社の経理や税務に関しても着実に電子化が進んでいる。「電子帳簿保存法」も数回にわたる改正で適用要件が緩和傾向であり、導入企業も増えるとみられる。今回は電子帳簿保存法について、企業経営する上での必要性やメリットを理解しよう。

目次

  1. ビジネスのペーパーレス化に必須な電子帳簿保存法とは?
    1. 電子データとしての保存方法は3通り
    2. 保存対象となる帳票
    3. 電子帳簿保存法適用のための申請方法
  2. 電子帳簿保存法のメリット・デメリット
  3. これまでの電子帳簿保存法改正事項のまとめ
  4. 承認制度が廃止など用件緩和 2021年の改正ポイント
  5. 大幅な要件緩和により進むペーパーレス化

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ビジネスのペーパーレス化に必須な電子帳簿保存法とは?

ビジネスを効率化する電子帳簿保存法を解説。2021年の改正ポイントは?
(画像=Route16/stock.adobe.com/)

「電子帳簿保存法がどのような法律なのか」を改めて確認しておこう。電子帳簿保存法は、一言でいうと「紙で保存していた国税関係帳簿および国税関係書類を電子データによる保存に代えることを認める」という法律だ。

貸借対照表・損益計算書・総勘定元帳・仕訳帳・現金出納帳などといった国税関係の帳簿書類は、それぞれの帳簿書類ごとに7年間という長期の保存期間が決められている。

そのため多大な保管場所や印刷コストが必要となり、帳簿書類の閲覧が必要となれば探す時間も必要だった。

しかし現代では、コンピュータを使用した帳簿書類の作成および電子媒体による保存は、会計処理の分野も含め急速に普及してきている。かねてから経済界をはじめとする関係各界では、帳簿書類の電子データによる保存の容認に対し強く要望が寄せられていた。

高度情報化・ペーパーレス化進展の流れを受け、1998年に成立したのが電子帳簿保存法だ。デジタル時代において、電子帳簿保存法について理解することは経営の上でも必須スキルとなるだろう。

電子データとしての保存方法は3通り

電子帳簿保存法は、これまで数回におよび改正されてきた。2021年1月時点では、以下の3通りの方法で電子データとしての保存が可能だ。

・1.電磁的記録による保存
各種書類をPCで作成し、プリントアウトせずにサーバやハードディスク、コンパクトディスク、DVD、磁気テープなどの記録媒体上に保存する方法。

・2.COMによる保存
各種書類をPCで作成しCOM(電子計算機出力マイクロフィルム)によって保存する方法。

・3.スキャナによる保存
取引相手等から受け取った見積書や契約申込書、請求書、領収書など、紙の書類をスキャンしてデータに変換して保存する方法。

保存対象となる帳票

電子帳簿保存法の対象となる帳簿類は、大きく分けて「帳簿」「決算関係書類」「契約書」などの取引関係書類に分類される。それぞれの分類ごとの帳簿・書類は以下の通り。

分類 帳簿 決算関連書類 取引関係書類
書類の種類 ・仕訳帳
・現金出納帳
・売掛金元帳
・買掛金元帳
・固定資産台帳
・売上帳
・仕入帳
など
・貸借対照表
・損益計算書
・棚卸表
など
・契約書
・領収書
・見積書
・発注書
・納品書
など

電子帳簿保存法適用のための申請方法

電子帳簿保存法の適用を受けるには、所轄の税務署に申請をして税務署長の事前承認を受けなければならない。申請は帳簿類の電子データ保存を開始する(したい)日の3ヵ月前までに行うこととされている。ただし帳簿類は課税期間の開始日に合わせて申請することが必要とされ、原則課税期間の途中からの適用は受けられない。

例えば、決算日が3月31日なら新しい事業年度は4月1日開始となる。この場合の申請期限は、前年の12月31日。必要な書類は「国税関係帳簿の電磁的記録による保存等の承認申請書」と添付書類(使用する会計システムの概要を示す書類など)だ。承認申請書には、電子化したい帳簿・書類の種類を記載する。

先に紹介した帳簿・書類の全てを電子化する必要はなく、自社で決定したもののみで良い。しかし、申請する帳簿・書類ごとに必要な添付書類が決められているため、確認が必要だ。また電子データの保存方法によっても承認申請書の様式が異なることには注意しよう。いずれの申請書も国税庁のサイトからダウンロードできる。

参照:国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等の承認申請
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/10.htm

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電子帳簿保存法のメリット・デメリット

冒頭でも述べたが、電子帳簿保存法は「膨大な国税関係書類を電子データで保存できる」という法律だ。適用を受けるには煩雑な事前申請手続きが必要であり、承認を受けるには厳格な電子化要件を満たす必要がある。

導入にあたっては、要件整備に費用もかかるなどのデメリットもあるが、逆に考えるとコストはかかっても社内での電子データによる書類管理を適正化できる点はというメリットになるだろう。

一方で、システムがダウンしたりデータが消失したりすると、甚大な損害を受ける可能性や信頼損失につながる。これらの大きなデメリットは理解しておかなければならない。

新型コロナウイルスの感染拡大により、テレワーク環境の構築や帳簿書類のペーパーレス化は企業にとって喫緊の課題となっている。これまで紙で保存していた帳簿書類を早急にデータ化しなければならない企業も多いのではないだろうか。事務処理規定の策定や適切な入力を確保するための業務フローの策定なども必要だ。

いつどんな事情が起きるかわからなくなってきた昨今、何があっても業務を滞らせることなくスムーズに運営していける企業であることは、従業員や取引先から選ばれるための条件となるだろう。

これまでの電子帳簿保存法改正事項のまとめ

1998年の制定以来、段階的に電子帳簿保存法が改正され、ビジネスに導入しやすくなっていることをご存じだろうか。施行当初は、企業自身がパソコンなどで作成した帳簿書類しか電子保存できずまた先に紹介したようなスキャナによる保存は認められていないなど現行とは異なる点がいくつもあった。そこでこれまでの電子帳簿保存法改正の経緯を簡単に紹介しよう。

1998年 電子帳簿保存法制定
2005年 特に重要な文書(帳簿、決算関係書類、3万円以上の契約書・領収書)以外の書類について、要件付でスキャナ保存が可能になる。
要件:
・解像度200dpi以上・カラー画像
・一定期間内にスキャンすること
・電子署名+タイムスタンプ+バージョン管理
・帳簿との相互関連性の確保
2015年 スキャナ保存要件が一部緩和。
・3万円未満の金額要件撤廃
・電子署名が不要になる
・一部書類につき「書類の大きさ情報」が不要・「グレースケール」による読み取りが可能
2016年 スキャナ保存要件がさらに緩和。
・スマホやデジカメなどによる写真読み取りが可能
・小規模企業者の事務処理要件の緩和

直近の改正は、2020年。2005年にスキャン保存が認められるようになった際、電子化した文書が原本であることを示すものとしてタイムスタンプを一定期間内に付すことが必要とされていた。2020年の改正では、「ユーザーがデータの改変を自由に行えないシステムを利用している場合」にはこのタイムスタンプが不要となった。

またクレジットカードやQRコード決済などのキャッシュレス決済では、電子取引明細(利用履歴データ)の保存も可能となったため、紙の領収書をスキャンする必要がなくなった。

承認制度が廃止など用件緩和 2021年の改正ポイント

直近の改正を含め、これまでの数度の改正で電子帳簿保存法は企業にとってより使いやすくなってきている。しかし、2020年3月時点で同法承認を受けているのは電子データ保存およびスキャナ保存を合わせても約27万4,000社という状況だ。国税庁の資料によると日本の法人数は300万社を越えている(2018年度)が、その数を考えると1割にも満たないことがわかる。

政府は電子化やペーパーレス化のさらなる促進を掲げており、2021年にも改正が行われる模様だ。2020年12月に閣議決定した、2021年度の税制改正大綱には「電子帳簿保存法」の規制緩和の内容が盛り込まれている。この中から主なポイントを紹介していく。最も大きな改正点は、電子帳簿保存・スキャナ保存ともに「承認制度の廃止」である。

現行制度では、電子データ保存を開始する(したい)日の3ヵ月前までに行うことが義務だ。しかしそれまでに「保存する帳簿書類の決定」「文書管理規定や電子化手順書等の用意」など、多大な作業と時間が要されてきた。そうした手間が導入へのハードルを高める要因となっていたが、承認制度が廃止されることで、企業が決断さえすればいつでも導入できるようになる。

2つ目の大きな改正点は、スキャナ保存の要件が大幅に緩和されることだ。まずタイムスタンプに関して2020年の改正で「ユーザーが自由にデータを改変できないシステム等を利用している場合」は不要となったが、原則としては必要である。現行制度では、3日以内に付与しなければならないのだ。

それが受領した領収書等の記録事項の入力期間と同じく、最長2ヵ月以内に改正される。また、スキャナ保存する書類について「訂正または削除を行った事実および内容を確認することができるシステム等で保存する場合」は、タイムスタンプの付与は不要。加えてスキャナ等で読み取る際の署名も不要となる。

3つ目の大きな改正が、適正事務処理要件の緩和だ。現行制度では、書類の受領者がスキャンしたものを経理担当者がスキャンと原本を照合、第三者が保存要件の検査を行う相互けん制の体制構築が必要とされている。また、年1回以上の定期的なチェックをしなければならず、再発防止策の構築も必要だ。

中小企業にとっては、面倒な仕事が増えるだけで業務の効率化に反するような要件が定められていたが、これらの要件が廃止されるのは喜ばしいことだろう。

一方で企業にとっては厳しい改正もある。保存された電子データに改ざんが認められた場合には、ペナルティとして重加算税に10%が加算される。

ここで紹介したのは主な改正ポイントだ。さまざまな要件が緩和されて、中小企業にとっても取り組みやすくなるのではないだろうか。2021年内に改正法が施行されれば、改正内容は2022年以降に保存する書類から適用される予定となっている。

これを機に電子データ保存の導入を検討し効率的なIT化を推進し、生産性の向上につなげてみてはいかがだろうか。

大幅な要件緩和により進むペーパーレス化

高度情報化とペーパーレス化の進行を背景に1998年「電子帳簿保存法」が制定された。複雑な要件が定められてはいるが、これまでの数回にわたる改正で適用要件は緩和されてきている。

2021年の改正では「事前承認制度の廃止」「スキャンデータへのタイムスタンプの要件緩和」「適正事務処理としての定期的なチェックの廃止」など、導入しない理由がないほどの大幅な要件緩和が予定されている。

コロナ禍でテレワーク環境の構築や帳簿書類のペーパーレス化が企業にとって喫緊の課題となっている昨今、電子データによる帳簿書類の保存や適正化はこれからの経営に欠かせない取り組みだろう。これまで導入に難色を示していた経営者は、今回の改正を機に導入を検討してみてはいかがだろうか。

文・續恵美子(日本FP協会認定CFP(R))