会社を経営する以上、危機的な状況に陥り立ち行かなくなってしまうことはどんな会社にもありうる。そこで会社の存続と再建を図るための民事再生法と会社更生法の違いを解説する。万が一のときに慌てないためにも確認しておこう。

目次

  1. 会社の存続を目的とする民事再生法とは
  2. 民事再生法と会社更生法はどう異なる?特徴を解説
    1. 民事再生法が持つ特徴
    2. 会社更生法が持つ特徴
  3. 経営権を維持できる民事再生法のメリットとデメリット
    1. 民事再生法のメリット
    2. 民事再生法のデメリット
  4. 民事再生にかかる費用は?ある程度まとまった額が必要
  5. 民事再生の具体的な流れを確認しよう
    1. 1.準備期間
    2. 2.再生手続開始の申し立て
    3. 3.裁判所による監督委員の選任
    4. 4.債権者へ説明会の実施
    5. 5.再生手続開始決定
    6. 6.債権調査の手続き
    7. 7.財産価額の評定
    8. 8.再生計画案の作成と提出
    9. 9.再生計画案の可決と認可
    10. 10.再生計画案の実行
  6. 民事再生で注意すべき点とは?
  7. 万が一の際は手遅れにならないうちに専門家に相談を

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会社の存続を目的とする民事再生法とは

民事再生法と会社更生法の違いは?会社の危機に対処する手段を解説
(画像=golubovy/stock.adobe.com)

倒産手続きと聞くと「会社を消滅・清算する手続き」をイメージする人が多いかもしれないが、手続きには「清算型」「再建型」の2種類がある。一般的にイメージされる破産・倒産は、会社の財産を全て清算し、債務とともに消滅させる「清算型」の倒産手続きだ。

一方で、会社存続を目的に再建を図る倒産手続きが「再建型」である。

「再建型」は、民事再生法に基づく「民事再生」と会社更生法に基づく「会社更生」の手続きの2種類に分けられる。そのため、民事再生法と会社更生法は「会社が倒産したときに債務の整理をしながら再建を目指すための法律」ということになる。

民事再生とは、2000年にスタートした「再建型」の倒産制度のこと。主に経済的に事業の継続が困難になった中小企業が、スムーズに再建できるように制定されたものである。債務者は事業を継続しながら再生計画に基づき返済を行い、残りの債務が免除される仕組みだ。民事再生の申し立ては、手形の不渡りや支払い不能といった破産原因が発生していなくても、再建が手遅れになる前に申し立てることが可能な制度である。

民事再生は、主に中小企業が利用することが多い。債権者も少ないことから債権者との話し合いや事業の再生計画の作成に時間がかからないため、裁判所の認可が下りるまでの期間は6ヵ月程度といわれている。また、法人だけでなく個人でも利用できる。例えば、返済できなくなった人が住宅ローン以外の債務の免除を受け、住宅を維持し個人の生活を守るの制度は「個人民事再生」と呼ばれている。

会社更生は、民事再生と同じく「再建型」の倒産制度であるが、債権者数が多く債権額も多額で比較的大規模な会社を想定して定められた制度だ。大企業で多数の利害関係者の調整が必要になり、民事再生に比べると手続きが複雑かつ厳格で、再建計画が裁判所に認可されるにも数年を要するといわれている。

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民事再生法と会社更生法はどう異なる?特徴を解説

民事再生法と会社更生法はどのように異なるのか。それぞれの特徴をみていこう。

民事再生法が持つ特徴

・株式会社以外の法人や個人も対象
株式会社に限定されず、学校法人や宗教法人、医療法人、中小企業や個人も対象になる。

・手続きが会社更生法に比べて簡易で迅速
利害関係者が少ないため、スピードを要する場合に適している。

・原則として経営陣は引き続き経営権を維持
原則的には、財産の処分や再生計画案の作成などは倒産した会社の経営者が行い、引き続き経営を行うことも可能になる。

・原則として債権者による担保権の行使を禁止できない
債権者は競売など担保権を行使できるため、債権者が債務者の作成した再生計画案に納得していることが条件となる。しかし一定の場合、事業継続に必要な財産が散逸し再建できなくなる恐れがある。そのため、担保競売手続の中止命令や担保権消滅許可制度などにより、担保権の実行を防ぐ手立ても講じられている。

会社更生法が持つ特徴

・対象が株式会社に限られる
株式会社に限定され、上場企業や大企業などが対象になる。

・手続きが厳格で、手続き完了までに時間がかかる
再建計画が裁判所に認可されるまでに時間がかかり、場合によっては数年かかることもある。

・会社の経営権は管財人に引き継がれる
裁判所が指名した管財人が経営権を握ることになり、管財人主導で経営することになる。経営責任を明確にして旧経営陣を退陣させることが前提となるため、旧経営陣は会社の経営から退くことになる。

・債権者は担保権の行使が制限される
担保権は再建手続きの中で処理されるため、債権者が競売手続きにかけるなど、手続き外で担保権を行使できない。

経営権を維持できる民事再生法のメリットとデメリット

では次に、民事再生のメリットとデメリットを考えてみよう。

民事再生法のメリット

1.経営権を維持できる

民事再生には、「現経営陣が退任しない」という点がメリットだ。しかし株主や債権者などの理解が得られないと、民事再生案が認められない可能性がある。そのため、利害関係者への説明はきちんと行い、説得力のある再生計画を作る必要がある。

2.大幅な債務免除が受けられる

再生計画が認められれば、大幅な債務免除が受けられる。再生計画が認可されるためには、債権者集会で50%以上が賛成、かつ総議決権の50%以上を満たすことが必要だ。債権者は、金融機関であることが多く、金融機関が納得できる再生計画を作ることができれば、再建できる可能性が現実味を帯びてくる。

3.短期間で再生可能

会社更生の手続きは厳格に行われるため、裁判所が再生計画を認可するのに年単位の期間を要することが多い。しかし民事再生に要する時間は半年程度ともいわれ、中小企業なら利害関係者が少ない分だけスピーディーに行われるため、短期間での再建が可能になる。

民事再生法のデメリット

1.再生計画が認められなければ計画は頓挫

現経営陣が経営権を維持することができるものの、債権者から納得が得られなければ経営陣が交代するケースもある。また、再建計画が認められないと破産手続きに移行する可能性が生じてくる。この場合も、現経営者が引き続き経営権を維持することは難しいだろう。

2..抵当権などの担保権は消えない

債務が大幅に圧縮されるといっても、債務に付随する担保権が消えるわけではない。金融機関に提供している抵当権などの担保権を実行されれば、会社や代表者の自宅などを失うことにもなりかねない。再生計画案が認められても、実行できなければ意味はないのだ。

3.会社としての信用面の悪化は避けられない

民事再生法は会社存続を目的に再建するための法律だが、官報や民間企業の倒産情報にも掲載されるため、民事再生企業であることは知られてしまう。会社としての信用面が悪化することは、どうしても避けられないといえる。

4.民事再生をするには資金も必要

民事再生をするためには資金が必要になる。弁護士に手続きを進めてもらうのが一般的であり、裁判所に申し立てる際、予納金や収入印紙代なども必要だ。

民事再生にかかる費用は?ある程度まとまった額が必要

手続き費用として、裁判所に納付する予納金のほかに弁護士費用がかかる。民事再生は専門性が高いため、弁護士などの専門家の力なしに行うことは困難だ。そのため弁護士費用も高額となる傾向にある。また裁判所の予納金の金額は負債額に応じて決められており、最低200万円程度かかる。

参考までに、会社が東京地方裁判所に民事再生を申し立てる場合の費用は、以下の通りである。

  • 申立手数料(貼付印紙額):1万円
  • 予納金基準額(法人及び自然人共通)
負 債 総 額 予 納 金 額
5,000万円未満 200万円
5,000万 ~ 1億円未満 300万円
1億 ~ 5億円未満 400万円
5億 ~ 10億円未満 500万円
10億 ~ 50億円未満 600万円
50億 ~ 100億円未満 700万円
100億 ~ 250億円未満 900万円
250億 ~ 500億円未満 1,000万円
500億 ~1,000億円未満 1,200万円
1,000億円以上 1,300万円

※その他切手(郵券)が必要

民事再生の具体的な流れを確認しよう

民事再生の手続きを具体的な流れに沿ってみていくと、以下のような流れになる。

1.準備期間

民事再生は、支払不能や債務超過となる恐れがある場合でも申し立ては可能だが、事前に弁護士に相談・依頼し裁判所に提出する書類を準備する期間が必要になる。

2.再生手続開始の申し立て

主たる営業所の所在地を管轄する地方裁判所で申し立てを行う。再生手続開始の申し立ては、会社自身だけではなく債権者も行うことができる。

3.裁判所による監督委員の選任

申し立て後、裁判所から保全処分の決定が出されると、会社は借入金や仕入債務などの支払いを一時的に行ってはならないことになる。同時に裁判所は、一般的には民事再生などの手続き経験が豊富な弁護士を監督委員として選任。監督委員が選任された後、裁判所が指定した一定の行為(財産の処分など)は監督委員の同意が必要となる。

4.債権者へ説明会の実施

義務ではないが、債権者への説明会を実施するケースが多い。「不利益を受ける債権者への謝罪」「再生計画を認めてもらうための説明」「会社再建後の取引継続の依頼」など、説明会を行う意義は大きいといえる。

5.再生手続開始決定

裁判所が再生手続の要件を確認し、再生手続開始の決定を行う。これには、以下の要件がそろっている必要がある。

  • 支払不能や債務超過の恐れがあること
  • 予納金の納付
  • 再生手続が債権者の一般の利益に適合すること
  • 再生計画の作成・可決・認可の見込み
  • 申し立て内容の誠実さ など

6.債権調査の手続き

「債権届出期間」が定められ、債権者は原則この期間内に債権の金額・原因などを裁判所に届け出る必要がある。届け出がなされた債権の認否を債務者(会社)が行う。

債権者は、会社が認めない債権を裁判所に「査定の申し立て」をすることができる。裁判所は、その債権の存否・内容を決める裁判を行い異議がある場合には、異議の訴えを提起して争うことも可能だ。このような手続きを経て債権額が確定される。

7.財産価額の評定

原則会社自身が所有する財産の価額の評定を行い評定の結果は、裁判所や債権者集会へ報告が行われる。

8.再生計画案の作成と提出

債権調査と財産評定の結果を踏まえ、会社が再生計画案を作成。

9.再生計画案の可決と認可

債権者集会で債権者の「頭数で過半数、債権額で2分の1以上」の同意があれば、裁判所によって再生計画案が可決・認可の運びとなる。

10.再生計画案の実行

確定した再建計画案に沿って会社が各債権者に計画的に債務を弁済していく。

民事再生で注意すべき点とは?

経営陣は引き続き経営を行うことができるが、経営陣がそのまま残ったとしても裁判所により監督委員が選任されることケースが多い。経営陣が経営を継続することが不適当と判断されると、経営権が管財人に引き継がれる場合もあるので注意が必要だ。監督委員の同意を得ずに経営陣が勝手な行為をすれば、場合によっては再生手続が打ち切られ、裁判所が職権で破産宣告をすることもある。

また信用面の悪化により、金融機関の信頼を回復するまでは、融資を受けるのが困難になるケースが考えられるだろう。そのため、当面の運転資金は余裕を持って確保しておくことが必要になる。また税金や社会保険料などは、民事再生の手続きによって免除を受けられないことにも注意しなければならない。税金・社会保険料の滞納額を支払い、さらに債務免除後の債権も支払っていくことになる。

そのため、税金や社会保険料の滞納額が大きいと再建は困難になってしまう。再建するためにスポンサーからの出資が得られれば、再建できる可能性は高くなる。

万が一の際は手遅れにならないうちに専門家に相談を

民事再生は、全ての法人と個人が対象になり、再建が手遅れになる前に申し立てることが可能な制度だ。中小企業も対象となる制度であり、簡易な手続きで迅速に再建することが期待できる。また経営陣が退陣せずにそのまま経営を行うことができる点は大きなメリットだ。

経営状態が悪化し倒産の危険性を感じたら、手遅れにならないうちに民事再生に明るい弁護士など専門家に相談することをおすすめする。

経営者なら倒産の危機でもすぐに諦めず、債務整理をしながら再建を目指す民事再生の制度があることは知っておきたい。

文・加治直樹(1級FP技能士・社会保険労務士)