助成金は、国や自治体から事業者への支援金であり、企業活動には有用なものとなる。しかし、助成金として支給された金銭に対して、消費税分の返還義務が発生する場合もある。今回は、助成金の仕組みや消費税分の返還が必要となる要件、還付額の計算方法などについて解説する。

中村 太郎
中村 太郎(なかむら・たろう)
中村太郎税理士事務所所長・税理士。1974年生まれ。和歌山大学経済学部卒業。税理士、行政書士、経営支援アドバイザー、経営革新等支援機関。税理士として300社を超える企業の経営支援に携わった経験を持つ。税務のみならず、節税コンサルティングや融資・補助金などの資金調達も得意としている。中小企業の独立・起業相談や、税務・財務・経理・融資・補助金等についての堅実・迅速なサポートに定評がある。

目次

  1. 助成金とは?
    1. 助成金の仕組みと種類
    2. 助成金の会計処理の進め方
    3. 助成金に消費税はかかるのか?
  2. 助成金は消費税分の返還が必要になることがある?
    1. 消費税分の返還義務が発生する理由
    2. 助成金の消費税分返還が発生する事例
  3. 迷った時はプロに相談を 

助成金とは?

助成金
(画像=Charlie's/Adobe Stock)

助成金とは、国や地方公共団体などが、会社や個人事業主が一定の取り組みに使用した経費などを補てんするために、支給する金銭のことである。助成金は、融資と違って返還する必要はない。

助成金の対象となる経費は、助成金の種類で異なる。雇用を促進するための助成金であれば、人件費が主たる経費であるし、新しい製品の開発を応援するものであれば、設備の導入費、外部への委託費など幅広い経費が対象になる。

これら助成金の支払い対象となった経費は、法人税の計算上は損金に算入される。

助成金の仕組みと種類

助成金は、企業が一定の取り組みのために支出した経費の一部を、後払いで支給する仕組みだ。助成金を受け取るためには申請が必要となるが、申請から支給までのスケジュールや必要書類などは、助成金ごとによく確認する必要がある。

助成金の受給申請を行う前に、特に注意して確認しておくべきポイントは、「いつ」の取り組みが助成金の対象となるかである。

たとえば、厚労省の「雇用調整助成金」では、経営悪化などによって従業員の休業といった雇用調整を行った際に、助成金を受け取ることができる。この助成金は、原則、従業員が休業を始める前に休業計画届などの書類を提出し、雇用調整を実施した後に支給の申請を行う。

これに対し、東京都の「創業助成金」では、まず助成金の受給申請を行い、交付決定後の助成対象期間中に支出した経費が助成金の対象となる。申請より前に行った取り組みについては、助成金の支給対象にはならない。

利用したい助成金があれば、まずは資料を確認して、申請・支給の全体スケジュールを必ず把握しよう。

助成金の会計処理の進め方

助成金の会計処理を進める場合は、助成金の対象経費を支出したときの処理と、助成金を受け取ったときの処理に分けて考える必要がある。

  • 助成金の対象経費の会計処理

助成金の対象となる経費は、その助成事業のために使用された経費しか認められない。

例えば、助成金の対象経費の中に「出張旅費」があったとしても、助成事業のものとは無関係な出張であれば、経費として処理できないということだ。そのため助成金の会計処理は、助成事業以外の経費と区別して行うことが必要である。

また、助成事業と別の事業の二つを目的とした出張であれば、助成金の対象になる部分を合理的な方法で按分して計上しなければならない。

  • 助成金を受け取ったときの会計処理

助成金を受け取ったときの会計処理は、収入として計上する必要がある。損益計算書上の表示が「営業外収益」であるとすれば、使用する勘定科目は「雑収入」がよいだろう。

助成金の受け取りは頻繁にあるものではないため、独自の勘定科目を設定してもよい。なお、助成金を固定資産の購入に充当する場合は、圧縮記帳を行うこともできる。

助成金には法人税が課せられるが、助成金を受け取った事業年度にその全額を法人税の課税対象にしてしまうと、実際に使える額が減ってしまう。そうすると、固定資産の購入に支障をきたすことが考えられる。

これを避けるため、圧縮記帳によって助成金の額を圧縮し、課税の時期を翌期以降に繰り延べる処理が認められている。

助成金に消費税はかかるのか?

支給された助成金は、法人税の課税対象にはなるが、消費税の課税取引にはあたらない。したがって、助成金を受け取った際に行う会計処理において、消費税の課税区分は「不課税」となる。

例えば、助成率3分の2の助成金に対して、税込330万円の機械購入費を申請し、220万円の助成金が支給されたとする。この場合、220万円の全額が消費税の適用外となり、不課税取引として会計処理することになる。

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助成金は消費税分の返還が必要になることがある?

助成金の支給額には消費税は課されないが、助成金を使用する対象に消費税分にあたる金銭が含まれている場合、返還が必要になることがある。

消費税分の返還義務が発生する理由

助成金の支給分については消費税の不課税取引となるため、そこに消費税は含まれていない。

しかし、先ほどの例はどうだろうか。助成金の対象経費を税込み330万円で申請し、220万円の助成金が支給された場合、220万円のうち10%分の20万円は、明らかに消費税に該当する部分である。これでは国や地方公共団体などから、20万円分の消費税の還付を受けたことと同義になってしまう。

このように、消費税分を含む助成金を受け取った場合は、先の事例ならば、消費税分にあたる20万円を返還する必要があるのだ。

  • 返還するのは「控除対象仕入税額」に算入した額

さてここまで読むと、「最初から消費税を差し引いた分を、助成金として申請すればいいのでは?」と思わないだろうか。

それができれば一番よいのだが、できない事業者がいる。まずは、消費税の基本的な仕組みからおさらいしよう。

消費税は、課税事業者が売上価格に消費税を転嫁させ、最終的に消費者が税金を負担する「間接税」の仕組みを採っている。課税事業者は、基本的に顧客から受け取った消費税から、事業のために支払った消費税を控除した額を納税する。

例えば、次のような会社があったとする。

  • 課税売上高 税込2,200万円(うち消費税200万円)
  • 課税仕入れ 税込880万円(うち消費税80万円)

この会社の場合、売上と一緒に受け取った消費税200万円から、事業のために支払った消費税80万円を控除した、差額の120万円を納税する。この80万円のことを「仕入控除税額」という。

返還が必要となるのは、助成金に含まれる「仕入控除税額」である。しかし、課税事業者の中には、80万円全額を仕入控除税額にできない事業者が存在する。

仕入控除税額の計算方法が、その事業者の「課税売上割合」と「課税売上高」によって次のように変わるからだ。

【仕入控除税額の計算方法】


課税売上割合と課税売上高
計算方法
課税売上割合95%以上
かつ
課税売上高5億円以下
・全額控除できる
課税売上割合95%未満
または
課税売上高5億円超
・全額控除できない
・個別対応方式か一括比例配分方式で計算する

「課税売上割合」とは、課税期間中の売上高のうち、課税売上が占める割合のことである。 課税売上が占める割合が高ければ、その事業が支出した経費は、おおむね課税売上を生みだすための支出であると考えられるため、経費にかかった消費税の全額を仕入控除税額とすることができる。

しかし、この割合が95%未満になると、支出した経費には非課税売上のために支出したものもそれなりに含まれているため、経費にかかった消費税すべてを仕入控除税額とすることは適切ではない。

また、課税売上が5億円を超えるような大規模な売上がある場合は、たとえ99%が課税売上で非課税売上が1%だとしても、その非課税売上のために支払った消費税は決して安くない。そのため、全額を仕入控除税額にすることはできないのだ。

まとめると、以下のいずれかに該当する場合、支払った消費税の一部しか仕入控除税額に計上することができなくなる。

  • 課税売上割合95%未満
  • 課税売上高5億円超

仕入控除税額の計算方法は、個別対応方式と一括比例配分方式のどちらかを選択することになるが、いずれも計算のために「課税売上割合」が必要になる。

  • 課税売上割合は、事業年度の途中ではわからない

ここからが大事だが、課税期間の途中で助成金の対象経費を支出して申請する場合、その時点では課税売上割合は確定していない。つまり、助成金の対象経費のうち、消費税分の返還の対象になる仕入控除税額が計算できないということだ。

そのため、いったん消費税額も含めた金額で助成金を申請し、消費税の確定申告を行った後に、申告した仕入控除税額の中で助成金に相当する部分を国や地方公共団体に返還することになる。

ただ、助成金の中には、全額控除となることが明らかである場合は、あらかじめ消費税分を減額して申請することを公募要領などで規定しているものもある。これができれば、消費税分を返還することはない。

ただし返還額が0円であっても、報告だけは求められる場合もあるので、助成金の要領に記載されているルールなどで確認する必要がある。

助成金の消費税分返還が発生する事例

助成金の消費税分の返還が必要になるのは、そもそも申請した助成金の対象となる経費が、課税取引である場合に限られる。

例えば、事務所の賃貸料や設備の導入費といった経費が消費税の課税取引となる。不課税取引となる給与や印紙代などから、消費税分の返還は生じない。また、返還の対象となるのは、一般課税による課税事業者である。免税事業者や簡易課税事業者は、返還の対象とならない。

  • 消費税分の返還の計算例

それでは、消費税分の返還額の計算方法を確認しよう。

【例:株式会社A社の課税期間中の取引】

  • 課税売上高 1億円
  • 課税売上割合 70%(一括比例配分方式)
  • 支給された助成金 110万円
  • 税率10%(消費税7.8%+地方消費税2.2%)の取引のみと仮定

<計算式>

  • 消費税 7万8,000円(110万円×7.8/110)・・・A
  • 地方消費税 2万2,000円(7万8,000円×2.2/7.8)・・・B
  • 助成金に含まれる仕入控除税額 (A+B)×70%=7万円

よって、A社が受給した助成金の消費税分の返還額は、7万円となる。

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迷った時はプロに相談を 

助成金の基本や消費税分の返還義務について説明してきたが、この記事のポイントは以下の通りである。

  • 助成金の会計処理は、収入計上することと他の経費と区分することに注意
  • 助成金には、法人税が課税されるが、消費税は不課税となる
  • 助成金に、消費税にあたる金銭が含まれていれば、仕入税額税額に相当する額を返還する

助成金を申請するときは、消費税分の返還手続きについて公募要領などで一度確認してみよう。もし返還額の計算方法に迷ったときは、返還先の機関や税理士に相談いただきたい。

文・中村太郎