税制改正大綱を理解すると、国内の税制に合わせた経営計画を立てやすくなる。業種によっては多大な影響があるため、税制改正の内容はいち早く確認しておきたい。近年の傾向や2021年度のテーマと併せて、主な改正点を押さえていこう。

目次

  1. 経営者(法人)が押さえたい2021年度税制改正大綱のポイント
    1. 2020年度の税制改正の振り返り
  2. 中小企業の法人課税に関する改正のポイントを詳しく解説
    1. 1.所得拡大促進税制の見直し
    2. 2.中小企業経営強化税制の延長
    3. 3.中小企業の経営資源の集約化に資する税制の創設
    4. 4.経営改善設備取得の優遇措置廃止
  3. 減税対象が「デジタル・グリーン関連投資」に移りつつある
  4. 経営者個人に係る税制改正のポイントまとめ
  5. 近年の傾向を意識し、時代に合った経営計画を

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経営者(法人)が押さえたい2021年度税制改正大綱のポイント

【2021年版】税制改正大綱の基礎知識。経営者が理解すべきポイント
(画像=camera papa/stock.adobe.com/)

2020年12月10日、自由民主党・公明党は「2021年度(令和3年度)の税制改正大綱」を公表した。税制改正大綱とは、主に与党が取りまとめる税制改正案のことであり、毎年12月頃になると翌年の大綱が公表される。

税制改正大綱の中には法人課税や関税、国際課税など、企業にとって重要な改正案も含まれる。特に法人課税の改正案は多くの企業に影響を及ぼすため、改正される前に大綱をチェックしておくことが大切だ。税制改正に向けていち早く動き出せば、理想的な経営体制を築きやすくなるだろう。

2021年度の税制改正大綱では、どのような改正案が公表されたのだろうか。経営者が特に押さえておきたいものを中心に、2021年度税制改正大綱のポイントをまとめた。

・2021年度税制改正大綱のポイント(法人向け)

対象分野 予測される改正点
法人課税 ・企業の産業競争力強化に関わる措置
・繰越欠損金の控除上限の特例創設
・所得拡大促進税制の見直し
・株式対価M&Aの促進を目的とした措置
・国際金融都市に向けた税制上の措置
・その他、中小企業向けの支援創設
関税 ・暫定税率の適用期限の延長措置
・ポリ塩化ビニル製品など、個別品目の関税率の見直し
納税環境整備 ・税務関係書類における押印義務の見直し
・電子帳簿等保存制度の見直し
・地方税共通納税システムの対象税目の拡大措置
その他 ・退職所得課税の適正化
・コロナ禍を踏まえた賃上げや税制の見直し
・金密輸への対応を目的とした、消費税の仕入税額控除制度の見直し

税制改正大綱を確認する際は、特に「法人課税」の改正点を細かくチェックしておきたい。2021年度の税制改正大綱では、カーボンニュートラルやデジタルトランスフォーメーション(DX)の促進など、産業構造や各企業の競争力に変化をもたらす可能性のある改正案がいくつか公表された。

また、新型コロナウイルスの影響で、さまざまな減税措置が予定されていることも押さえておきたい。

2020年度の税制改正の振り返り

税制改正は数年分の改正点をチェックしておくと、政府が重視しているポイントや今後の方針などを見極めやすくなる。2020年度の税制改正では、主にどのような点が変更されたのだろうか。

・2020年度の主な改正点(法人向け)

主な改正点 概要
・オープンイノベーション促進税制の創設 ベンチャー企業に投資した法人が、税制面で優遇される制度。
・法人に係る消費税の申告期限の特例の創設 修正申告の手間を抑えるため、消費税の申告期限が1ヵ月延長された。
・5G投資促進税制 5Gサービスに関わる投資を行った企業に対して、税制措置が適用される制度。
・損金算入制度の期間延長 交際費等の損金不算入制度や、少額減価償却資産の特例などが延長された。
・グループ通算制度への移行を目的とした施策 グループ企業に関して、親会社と子会社がそれぞれ申告・納税を行う「グループ通算制度」への移行が進められた。

2020年度の税制改正では、イノベーションの推進や中小企業支援などが積極的に行われた。また、グループ企業が一体となって申告・納税を行っていた従来の連結納税制度から、「グループ通算制度」への移行が進められた点も押さえておきたい。

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中小企業の法人課税に関する改正のポイントを詳しく解説

ここからは、2021年度税制改正大綱の中でも、中小企業との関連性が強いポイントについて解説する。先ほどは「中小企業向けの支援創設」としてまとめて紹介したが、細かく見るとさまざまな改正が加えられる見込みなので、中小企業経営者は内容をしっかり押さえてほしい。

1.所得拡大促進税制の見直し

所得拡大促進税制とは、給与などの支給額が前年度よりも増えた場合に、その増加額の一部を法人税から控除できる制度のことだ。2020年度までは支給額の増加判定要件が1.5%だったが、2021年度からは「雇用者給与等支給額の前年比」を基準とすることが予定されている。

つまり、特定の従業員への支給額が前年度よりも増えれば、増加額に関わらず適用を受けられるようになったため、中小企業にとってはメリットが大きい改正と言える。ただし所得拡大促進税制では、他にも一定の要件が定められているので注意したい。

2.中小企業経営強化税制の延長

中小企業経営強化税制とは、経営力の向上に役立つ設備を購入した場合に、その購入金額を即時償却もしくは税額控除できる制度のことだ。税制改正前は2021年3月31日が期限となっていたが、2021年度税制改正によってこの期限が2年間延長されることが決まっている。

また、対象となる設備も一部追加されているため、経営力に関する設備を購入する予定がある企業は、制度の詳細をチェックしておきたい。

3.中小企業の経営資源の集約化に資する税制の創設

中小企業等経営強化法の改正によって、M&Aを実施する中小企業へのサポートが充実した点も中小企業経営者が押さえておきたいポイントだ。制度名は確定していないが(2021年2月現在)、新たな制度が創設されると事前に積み立てた中小企業事業再編投資損失準備金の一部を損金算入できるようになる。

ただしこの制度の適用を受けるには、指定された時期に「経営力向上計画」の認定を受ける必要がある。他にも細々とした要件がいくつか設けられる予定なので、M&Aを検討している経営者は制度の概要をチェックしておこう。

4.経営改善設備取得の優遇措置廃止

商業やサービス業の設備投資を支援する「経営改善設備取得の優遇措置」は、2021年3月31日をもって廃止されることが決定している。新たな形で優遇措置が設けられる可能性はあるものの、これまでと同じ優遇措置は受けられなくなるので、経営改善設備を購入する予定がある経営者は注意しておきたい。

減税対象が「デジタル・グリーン関連投資」に移りつつある

企業の産業競争力強化に関わる措置の一環として、減税対象がデジタル・グリーン関連投資に移りつつあることも押さえておきたい。「デジタル」と「グリーン」は近年のメガトレンドとして認識されており、これらに関連する投資は今後ますます重要視される可能性がある。

では、2021年度の税制改正ではどのような制度が追加されるのだろうか。デジタル・グリーン関連投資に係る改正点を簡単に紹介しよう。

・デジタル・グリーン関連投資に係る新制度

制度の名称 概要
・DX投資促進税制 特定のデジタル要件や企業変革要件を満たす設備投資を行った場合に、投資額の一部が税額控除もしくは特別償却される制度。2023年3月31日まで適用される予定。
・カーボンニュートラル促進税制 脱炭素化を加速させる設備投資を行った場合に、投資額の一部が税額控除もしくは特別償却される制度。2024年3月31日まで適用される予定。

上記の他、試験研究費の税額控除を受けられる「研究開発税制」も控除割合が変更されている。現行制度では投資額の6~14%が控除対象だったが、中小企業の控除割合は12~17%に変更される予定だ。

デジタル・グリーン関連投資に係る控除制度は、今後も拡充される可能性がある。そのため、余剰資金の投資先を検討している経営者は、デジタル分野やグリーン分野への投資を積極的に検討したい。

経営者個人に係る税制改正のポイントまとめ

ここまで法人との関連性が強い改正点を紹介したが、2021年度税制改正大綱では経営者個人に係る内容も公表されている。日常生活に変化が生じると、資金調達やスケジューリングなどに影響を及ぼす可能性があるので、個人に係る改正点もしっかりチェックしておこう。

具体的にどのような改正が予定されているのか、特に重要なポイントを簡単に紹介しよう。

・経営者個人に係る2021年度税制改正大綱のポイント

対象分野 概要
個人所得課税 ・住宅ローン控除の特例を2022年末まで延長し、かつ面積要件も緩和される
・セルフメディケーション税制の手続きを簡易化し、適用期限も5年延長される
・ベビーシッターや認可外保育施設の利用料金が非課税となる
資産課税 ・住宅取得時の資金に係る、贈与税の非課税措置が拡充される
・一部の贈与税の非課税措置に関して、適用期限が2年間延長される
・土地に係る固定資産税が前年度より増加した場合に、その税額が2021年度に限って前年据え置きとなる
その他 ・エコカーなどを購入した場合に適用される「グリーン化特例」が、2年間延長される
・自動車購入時の「環境性能割」の臨時的軽減が、2021年3月末まで延長される

近年は、個人に係る税制も「グリーン化」テーマになっていることがわかる。また近年の傾向として、マイホームの購入や子育てを積極的に支援していることも覚えておきたい。

個人に係る税制改正も、直近数年分の改正点をチェックしておくと、政府や自治体の動向をつかみやすくなる。近年の傾向を把握しておくと、資金調達だけではなくライフプランの設計にも役立つので、税制の主な改正点は毎年しっかり確認しておこう。

近年の傾向を意識し、時代に合った経営計画を

2021年度の税制改正大綱は、デジタル化やクリーン化がメインテーマになりそうだ。また、新型コロナウイルスによる影響で、さまざまな措置の一時的な延長・拡充が予定されている。

この流れはしばらく続く可能性があるので、中長期的な経営計画を立てる企業は、上記のテーマや近年の傾向を強く意識しておきたい。

文・片山雄平(フリーライター・株式会社YOSCA編集者)