コロナ禍で多くの企業が苦戦を強いられている中、過去最高の業績予想を発表した任天堂。「巣ごもり消費に伴う拡大」という追い風はあるものの、その強さは独特のビジネスメソッドにある。その秘訣を任天堂の創業からの軌跡とともに解説する。

目次

  1. 売上高1兆6,000億円突破。絶好調な任天堂の業績推移
  2. 任天堂のビジネスにおける3つの柱
    1. ゲーム専用機ビジネス
    2. モバイルビジネス
    3. IP(知的財産)展開ビジネス
  3. 世界の「Nintendo」に成長するまでの軌跡
  4. 任天堂ならではビジネスメソッドを解説
    1. ファン(ユーザー層)を幅広く確保
    2. マーケティングミックス(4P)
  5. 持続的な成長を続ける任天堂ビジネス

売上高1兆6,000億円突破。絶好調な任天堂の業績推移

過去最高の売上高を記録!「任天堂」独自のビジネスメソッドとは
(画像=Tom Eversley/stock.adobe.com)

2021年2月1日、第3四半期として過去最高となる決算発表をした任天堂。2021年3月期第3四半期決算(2020年4~12月期)は、売上高が1兆4,044億円(前年同期比37.3%増)、本業のもうけを示す営業利益は5,211億円(同98.2%増)、純利益が3,766億円(同91.8%増)と好調だ。2020年11月に上方修正したばかりだが、2021年2月1日に2021年3月期の連結業績予想を再び上方修正。

売上高は、2,000億円上積みして1兆6,000億円、営業利益は5,600億円、経常利益5,500億円とそれぞれに1,100億円の上積みとなった。また純利益は1,000億円伸ばした4,000億円と大幅な増収増益を見込んでいる。実現すると2009年3月期以来、12年ぶりの最高益更新だ。コロナ禍による巣ごもり需要の高まりの追い風を受けた家庭用ゲーム機「Nintendo Switch」の貢献が大きい。

人気ゲームソフト「あつまれ どうぶつの森」など、販売を伸ばしている任天堂だが勢いは新型コロナの影響だけではなさそうだ。決算発表資料をもとに任天堂の近年の業績推移をまとめたのが以下のグラフだ。

過去最高の売上高を記録!「任天堂」独自のビジネスメソッドとは
(画像=筆者作成)

出典:任天堂会社ホームページ/株主・投資家向け情報/決算ハイライト~連結ベース/連結損益計算書をもとに筆者作成

2017~2018年にかけて売上が大幅に伸びておりその後も売上・利益ともに順調に伸びているのがわかるだろう。

任天堂のビジネスにおける3つの柱

任天堂がビジネスの基本戦略として取り組んでいるのが「ゲーム専用機ビジネス」「モバイルビジネス」「IP展開ビジネス」の3つの柱だ。

ゲーム専用機ビジネス

ハード・ソフト一体型のゲーム専用機ビジネスは任天堂の中核である。「Nintendo Switch」をはじめ、これまでにも「Wii」「DS」「ゲームボーイ」など次々ヒット商品を出している。

モバイルビジネス

モバイルビジネスは「Mario Kart Tour」「どうぶつの森 ポケットキャンプ」などスマートデバイス向けに配信されるゲーム事業を指している。スマートデバイスの圧倒的な普及台数を背景に現在運営中のタイトルでのサービスを継続・発展させつつ、新規タイトルを続々投入。また、英語はもちろん他国言語でのサービス拡大を続け、国内だけでなく世界的なユーザー獲得へと乗り出している。

IP(知的財産)展開ビジネス

キャラクター商品やテーマパークなどのライセンスビジネス、映像コンテンツのビジネスなどIP展開のビジネスにも積極的に取り組んでいる。これは、任天堂のキャラクターや世界観を日常的な生活空間の中で目にする機会を増やし幅広い層に任天堂を身近な存在として感じてもらうこと、任天堂と結びつく消費者の裾野を広げることが狙いだ。

世界の「Nintendo」に成長するまでの軌跡

ゲーム業界最大手としてゲームやキャラクターなどで世界中のファンをとりこにしている任天堂。しかし実は任天堂の歴史は、山内房治郎氏が1889年(明治22年)に京都で「花札」を製造開始したことに始まる。京都で「花札」製造を続けていた任天堂は創業から13年経った1902年(明治35年)に日本初のトランプ製造に着手。

1953年(昭和28年)にはまた日本初となるプラスチック製トランプの製造に成功、量産を開始した。1959年 (昭和34年)にはディズニーキャラクターを使用したトランプを発売したことは、現在IPビジネスを展開・拡大させていることに通じる。これは子ども用の玩具の製作への足掛かりとなり、ディズニーのトランプは、その年60万箱という記録的な売り上げとなった。

家庭用ゲーム機を発売開始したのは1977年 (昭和52年)のこと。「テレビゲーム15」「テレビゲーム6」というテレビゲーム機であったが、3年後の1980年 (昭和55年)には携帯型ゲーム機「ゲーム&ウオッチ」を発売。米国ニューヨーク州に現地法人Nintendo of America Inc.を設立し、海外展開も始まった。2021年2月現在「スーパーマリオブラザーズ35周年」としてさまざまなイベントや商品を展開中だ。

1985年 (昭和60年)にはファミコン用ゲームソフト「スーパーマリオブラザーズ」を発売。この爆発的ヒットにより、長期にわたるファンを獲得している。その他にも独創的なゲームをリリースしており、オンリーワンの世界観を創り上げてきているのは周知の通り。世界中でファンは増加し続けている。

任天堂ならではビジネスメソッドを解説

世界中にファンを持つ任天堂。どのようにして現在のブランドを築き上げたのか、そのビジネスメソッドを解説する。

ファン(ユーザー層)を幅広く確保

任天堂のビジネスメソッドで最も特徴的なのは、競合他社同士で競い合うことよりも新しいゲームファンを増やすことに重きを置いている点だ。その象徴として挙げられるのが幅広い年代層で楽しめる「DS」や「Switch」などだろう。例えばDSやSwitchでは、語学や資格試験などの勉強ができるソフトを提供して、これまではゲームにそれほど縁がなかった中高年からも注目を集めて、結果として新たなファンを獲得することに成功した。 従来であれば、子どもがゲームに夢中になることを多くの親は嫌がるほどだったが、親が子どもにDSをすすめるという、逆転現象がおこった家庭もあり、教育や学習の分野をゲーム市場に取り込むことに成功したことは、任天堂らしさを体現したケースと言えるだろう。

マーケティングミックス(4P)

もう一つは「マーケティングミックス」をうまく販売活動に活かしていること。マーケティングミックスとはマーケティングにおける実行戦略のこと。マーケティングにおける構成要素となる以下の頭文字をとって「4P」とも呼ばれる。

・Product:製品 ・Price:価格 ・Place:流通 ・Promotion:広告

例えば製品(Product)面ではSwitchやDSのように携帯性、拡張性、起動の快適性、振動などのリアルな触覚を楽しめることはもちろん、昔から人気のある任天堂オリジナルソフトを中心としたキラーコンテンツを提供して、ソフト面でも強みを発揮。発売後にも商品価値が落ちないさまざまな工夫がされている。

買いやすい価格設定(Price)、在庫が増えて割引されることのないよう一定の品薄状態を続けて定価販売で流通させる出荷台数の管理(Place)も巧みだ。また広告(Promotion)面では、SNSや「ゲーム実況」と呼ばれる動画配信に対応、また今後発売予定のタイトルを事前に公表するなど話題を集め、継続してセールスの勢いを維持している。

持続的な成長を続ける任天堂ビジネス

創業以来、「娯楽」を提供し続けてきた任天堂。世界中にファンを増やし業績を拡大させ続ける強さの秘訣は、製品の質や魅力だけではなくビジネスメソッドにあると言えるだろう。だれでも楽しめる「任天堂独自の遊び」を可能にするハード・ソフトの提供、より多くの人たちがゲームに興味を持つきっかけ作り、持続的に成長させる任天堂IPなど、一人ひとりのユーザーと長期的な関係を築いている。

提供するモノやサービスは違っても一人ひとりの顧客と長期的な関係を築くビジネス展開は多くの企業経営者が見習いたい手法ではないだろうか。

文・BUSINESS OWNER LOUNGE編集部