あらゆる分野でIT化が進む現代において、DXは必須の経営戦略になりつつある。DX化の波に乗り遅れると、現代社会で企業が生き残ることは容易ではない。特にデジタル技術に疎い経営者は、これを機に日本の現状や課題などを理解しておくことが重要だ。

目次

  1. 現代ビジネスに必須!デジタルトランスフォーメーション(DX)の定義
    1. 経済産業省も推進するデジタルトランスフォーメーション(DX)の広義と狭義
    2. デジタライゼーションやIT化との違い
  2. デジタルトランスフォーメーション(DX)を導入する3つのメリット
    1. 1.業務効率や生産性が向上する
    2. 2.ニーズの変化に対応しやすくなる
    3. 3.事業継続計画(BCP)を充実させられる
    4. デジタルトランスフォーメーション(DX)の業種別メリット一例
  3. デジタルトランスフォーメーション(DX)の導入手順
    1. 手順1.経営戦略やビジョンの作成
    2. 手順2.経営トップのコミットメント
    3. 手順3.DX導入に向けた体制整備
    4. 手順4.現状の分析
    5. 手順5.既存ビジネスへの導入
    6. 手順6.新規ビジネスへの転換
  4. デジタルトランスフォーメーション(DX)の実情と4つの課題
    1. 課題1.ITリテラシーの欠如
    2. 課題2.IT教育の遅れ
    3. 課題3.ベンダー企業への依存
    4. 課題4.既存システムの老朽化
  5. 3つの成功事例から学ぶDX化のポイント
    1. 【事例1】既存サービスを活用したAIの電話予約サービス/Google LLC
    2. 【事例2】従来のビジネスモデルからの脱却/トヨタ自動車株式会社
    3. 【事例3】従来の製品に後付けできるデジタル機器の開発/株式会社 木幡計器製作所
  6. デジタルトランスフォーメーション(DX)は今後のビジネスに必須の経営戦略

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現代ビジネスに必須!デジタルトランスフォーメーション(DX)の定義

現代ビジネスに必須なデジタルトランスフォーメーション(DX)とは?
(画像=PIXTA)

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、簡単に言えばデジタル技術をさまざまな産業やビジネスにとり入れることだ。あらゆる分野でIT化が進んだ現代において、いまやデジタル技術はビジネスに欠かせない存在になりつつある。

例えばAIを使って顧客の意見を分析したり、膨大な顧客データを活かして経営戦略を立てたりなど、すでにデジタル技術はIT業界以外でも広く活用されている。その効果は確実に現れており、業界によっては「DX化(※デジタルトランスフォーメーションを進めること)」に取り組んだ企業が続々と成長を遂げるほどだ。

つまり、将来的にはどのような業界にもDX化が必須となり、デジタルに疎い企業は生き残れなくなる可能性がある。そのため、現時点ではデジタル技術の導入が難しい企業であっても、今のうちにDXに関する知識をつけておきたい。

経済産業省も推進するデジタルトランスフォーメーション(DX)の広義と狭義

DXはもともと、スウェーデンの大学教授であるエリック・ストルターマン氏が2004年に提唱した概念だ。このときに同氏が提唱した「デジタル技術の浸透によって、人々のあらゆる生活面に良い変化が生じること」という考え方が、DXの広義として認識されている。

ただし、国内のビジネスシーンにおけるDXは、上記とはやや意味合いが異なるため注意しておきたい。例えば、経済産業省が2019年に公表したガイドラインでは、DXを以下のように定義している。

○経済産業省による「DX」の定義
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

つまり、狭義のDXは「企業がデジタル技術を活用して、競争上の優位性を確立すること」を意味する。本記事でも「狭義のDX」として解説を進めていくため、この点を理解した上で読み進めてほしい。

デジタライゼーションやIT化との違い

DXの意味を正しく理解するには、ほかの用語との違いも押さえておく必要がある。特に「デジタライゼーション」と「IT化」の2つは、DXと混同しやすいので要注意だ。

デジタライゼーションとは、単にデジタルツールをビジネスに導入する行為を指す。一方で、DXはビジネスモデルの変革を伴うデジタル技術の活用を意味する。つまり、ビジネスモデルを変化させる革新的なデジタライゼーションが、DXに該当すると言い換えられるだろう。

また、IT化とDXの違いは、「手段」と「目的」のどちらに該当するかだ。IT化はあくまでDXの手段であり、企業にとって最終的なゴール(目的)ではない。一方で、DXは将来的に多くの企業が目指すべき姿なので「目的」に該当する。

これらの用語の使い分けを間違えると、周りからの理解を得にくくなる恐れがあるため、各用語の意味は正しく理解しておこう。

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デジタルトランスフォーメーション(DX)を導入する3つのメリット

DX化によって発生するメリットを理解しておかないと、DXを導入すべきかどうかを的確に判断することは難しい。そこでここでは、企業がDXを導入する主なメリットを紹介する。

1.業務効率や生産性が向上する

AIやIoTによってDX化を進めると、これまで手作業で行っていたものをデジタル化できるため、さまざまな業務を効率化できる。また、「デジタルレイバー(テクノロジーによる仮想労働者)」を増やす形でDXを導入すれば、生産性も一気にアップするはずだ。

デジタル技術の導入にはコストが発生するものの、業務効率・生産性が飛躍的にアップすれば導入コストは十分に回収できる。

2.ニーズの変化に対応しやすくなる

消費者のニーズの変化にスムーズに対応しやすくなる点も、DXを導入する大きなメリットだ。例えば、消費者の声を収集するアプリを開発したり、膨大なデータから消費行動をこまめに分析したりすれば、常にその時代のニーズを把握しながら商品・サービスの開発に取り組める。

また、すでに一般市場にもAIやIoT、5Gなどの最新技術が浸透しつつあるため、将来的には多くの業種でDX化が求められるだろう。

3.事業継続計画(BCP)を充実させられる

事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)を充実させられる点は、意外と見落としやすいDX化のメリットだ。BCPとは、災害などの緊急事態が発生した場合に企業が実行する計画のことである。

2020年初頭から流行している新型コロナウイルスをはじめ、企業でBCPが必要になるタイミングは確実に訪れる。そのときに万全な計画があれば、倒産のリスクを抑えつつライバル企業に差をつけられるため、BCPを充実させられるメリットは思った以上に大きい。

デジタルトランスフォーメーション(DX)の業種別メリット一例

DXを導入するメリットは、実は業種によっても変わってくる。DXが各業界にどのような変革をもたらしているのか、業種別のメリットの一例を紹介しよう。

・DXの業種別のメリット

業種 メリットの一例
製造業 ・仮想労働者の増加による労働力不足の解消
・作業自動化による安全性の向上
・オペレーションの最適化
小売業 ・データを活用した新規顧客の取り込み
・販売ロスの削減
・回転率の向上
アパレル業 ・EC化によるコスト削減
・ニーズに合った商品の提供
・企画や生産、物流の効率化
医療 ・オンライン診察による医師の負担軽減
・最適な医療サービスの提供
・患者の診療情報の共有

DX化によって仮想労働者を増やせる業界では、すでにDXが「労働力不足の解消法」として注目されている。また、これまで人の手で進めていた危険な作業を自動化すれば、従業員の安全性を高めながら業務全体を効率化できる。

また、小売業やアパレル業ではネット販売システムを導入することで、コストや販売ロスを削減する企業も多く見られるようになった。さらに、インターネット上のシステムをうまく利用すれば、顧客の声をデータとしてスムーズに収集することも可能となる。

デジタルトランスフォーメーション(DX)の導入手順

DXの導入には時間やコストがかかるため、導入に向けて動き出す前にはきちんと計画を立てる必要がある。時間やコストの無駄を抑えつつメリットを最大化するには、どのような手順で導入を進めれば良いのだろうか。

企業ごとに導入手順は多少異なるが、ここでは経済産業省のガイドラインを基にDXの基本的な導入手順を紹介しよう。

手順1.経営戦略やビジョンの作成

どのような形でDXを導入し、最終的にどういった姿を目指すのかを考える。また、計画が途中停止しないように、考えた戦略やビジョンは社内で共有しておく。

手順2.経営トップのコミットメント

DX化の円滑な推進のために、上層部からコミットメントを得ておく。

手順3.DX導入に向けた体制整備

戦略やビジョンに基づいて、DX化を仮説検証できるような仕組みを整える。PDCAをスムーズに回すため、意思決定の仕組みも見直しておきたい。

手順4.現状の分析

DXの導入にあたって、必要なものや不要なものを分析する。現状のシステムに不足しているものがある場合は、生産性を高めるための改善策を考える。

手順5.既存ビジネスへの導入

まずはテスト段階として、既存ビジネスにDXを導入する。PDCAを繰り返しながらシステムを高度化・拡張し、業務全体の構造を変えていく。

手順6.新規ビジネスへの転換

既存ビジネスへの導入が成功したら、そのシステムを新規ビジネスに転換する。単にDX化を進めるだけではなく、組織構造を見直す必要性も生じてくる。

社内でDX化をスムーズに進めるには、綿密な計画を立てた上で仮説検証を繰り返すことが必要になる。つまり「PDCAをスムーズに回せるか?」がポイントになるので、新たなデジタル技術の考案・導入だけではなく、会社組織全体の仕組みを見直すことも忘れないように注意しよう。

デジタルトランスフォーメーション(DX)の実情と4つの課題

デジタル技術が急速に発達した現代では、斬新なビジネスモデルを展開する企業が増えてきている。その影響で、これまでにはない商品・サービスが次々と生まれており、従来のビジネスモデルでは太刀打ちできない業界も見られるようになった。

そんな時代の潮流の中で、生き残りをかけた戦略として注目され始めたものがまさにDXだ。例えば、IT市場ではIoTやAIをはじめとするデジタル市場が主流になりつつあるため、将来性のある市場を求めてDXを導入する企業が増えてきた。

また、近年に限って言えば、2020年初頭から流行している「新型コロナウイルス」による影響も大きい。在宅者が増えた影響で、顧客を実店舗に呼び込む従来のビジネスモデルは難しくなり、多くの企業がECサイトや動画配信サービスなどの在宅向けのビジネスを展開するようになった。そのほか医療業界においても、医者や患者の負担を軽減するオンライン診療や診療情報データの共有システムなどが導入されつつある。

このように、すでにDX化はさまざまな業界で進んでいるが、実はDXには以下のような課題も潜んでいる。これらの課題は「2025年の崖」と呼ばれており、経済産業省のレポートにおいても警鐘が鳴らされている。課題を抱えたまま無理にDX化を進めると、失敗するリスクがどうしても高まるため、DXの導入前にはやはり会社組織や体制をしっかりと見直さなくてはならない。

課題1.ITリテラシーの欠如

DXにはビジネスとITとの連携が必須で、どのようにビジネスをデジタル化していくのかがテーマとなっている。ITがビジネスに直結しているため、IT人材の確保が重要なのだが、多くの企業はIT人材の不足に悩まされている。また、経営者がデジタルに疎いことが影響し、思ったようにDX化を進められない企業も多い。

課題2.IT教育の遅れ

IT人材を獲得したとしても、多くの企業にはその人材を継続的に教育できるような環境が整っていない。デジタル技術が進歩するスピードは非常に速いため、学習機会をうまく提供する必要がある。

課題3.ベンダー企業への依存

DX化を進める上でベンダー企業は心強い存在だが、あまりにも依存しすぎると会社にノウハウが蓄積しない。小さなトラブルの度にベンダー企業を頼るようでは、時間もコストも無駄にしてしまう。

課題4.既存システムの老朽化

既存システムが老朽化すると、そのシステムを新たなビジネスモデルに活かすことが難しくなる。こういったシステムが肥大化し、DXを躊躇する企業も少なくない。

3つの成功事例から学ぶDX化のポイント

すでにDX化を成功させている企業は、どのような形でデジタル技術を導入しているのだろうか。失敗のリスクを少しでも抑えるために、実際の成功事例からDX化のポイントを学んでいこう。

【事例1】既存サービスを活用したAIの電話予約サービス/Google LLC

分かりやすいDX化の事例としては、アメリカのGoogleが提供する「Google Duplex(グーグル・デュプレックス)」が挙げられる。これは「Googleアシスタント」と連携してAIが電話予約をしてくれるサービスであり、すでに飲食店や食料品店、薬局などを対象店舗として海外で展開されている。

現時点では広く普及しているとは言えないが、この技術がほかの分野にも導入されれば、AIが秘書のような役割を幅広くこなすサービスが誕生するかもしれない。この事例のように既存サービスと新しいシステムをうまく組み合わせれば、どのような企業にも斬新な商品・サービスを生み出せるチャンスがある。

【事例2】従来のビジネスモデルからの脱却/トヨタ自動車株式会社

大手自動車メーカーのトヨタは、車を購入してもらう従来のビジネスモデルをDX化によって変えようとしている。具体的なサービスとしては、トヨタ製の新車に月額料金で乗れる「KINTO」が挙げられるだろう。

KINTOはインターネット上で簡単に申し込めるので、車を手に入れるために店頭へ出向く必要はない。任意保険がセットになっており、契約後の面倒な手続きが省かれている点もKINTOの大きな魅力だ。

現在の事業に行き詰まりを感じている経営者は、この事例のように「従来のビジネスモデルからの脱却」をテーマとしてDX化を検討してみよう。

【事例3】従来の製品に後付けできるデジタル機器の開発/株式会社 木幡計器製作所

DX化を進めている企業は、前述のような大企業だけではない。例えば、大阪府の中小企業である木幡計器製作所は、製品となる計器に計測結果をクラウドサーバーに送信するシステムを導入した。

さらに、同社は計器をチェックする作業員が不足している現状からヒントを得て、アナログ式計器を遠隔監視するための機器も開発している。このように、従来の製品に後付けするタイプのデジタル機器であれば、中小企業の資金力でも十分に開発できるはずだ。

また、自社の既存商品・サービスに関して、「現場でどう使われているか?」や「ユーザーが新たな悩みを抱えていないか?」などの点を突き詰めると、DX化のヒントが得られるかもしれない。

デジタルトランスフォーメーション(DX)は今後のビジネスに必須の経営戦略

新たな商品・サービスが次々に打ち出される現代において、もはやDXは必須の経営戦略になりつつある。DX化の波に乗り遅れると、ライバル企業にあっという間に差をつけられてしまう恐れがあるため、経営課題を抱える企業はできる限り早めに動き出すことをおすすめする。

ただし、DX化を成功させるには綿密な計画や分析が必要になるため、本記事で紹介した導入手順をしっかりと意識し、導入に向けて万全の準備を整えていこう。

文・片山雄平(フリーライター・株式会社YOSCA編集者)