最近急増している合同会社には、ほかの法人格にはない魅力がある。起業や経営の負担を抑えられる可能性があるので、合同会社はぜひ選択肢に含めたい会社形態だ。急増した背景や実情とともに、ほかの法人格との違いやメリット・デメリットを確認していこう。

目次

  1. 起業・経営の負担を抑えられる「合同会社」とは?
  2. 合同会社とほかの会社の違いとは?メリット・デメリットも紹介
    1. 合同会社のメリット・デメリット
    2. 合同会社と個人事業主の違い
  3. 合同会社は有名企業も採用している?増加した背景と実情
  4. 合同会社はどんな業種に向いている?
  5. 合同会社を設立する基本的な流れ!5つのステップを解説
    1. STEP1.設立項目を作成する
    2. STEP2.定款を作成する
    3. STEP3.登記書類を準備する
    4. STEP4.登記の申請手続きをする
    5. STEP5.設立届など、その他の手続きを済ませる
  6. 状況に合わせて最適な起業スタイルを

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起業・経営の負担を抑えられる「合同会社」とは?

加する合同会社のメリットとは?株式会社や個人事業主との違いを解説
(画像=PIXTA)

会社設立と聞くと「株式会社」をイメージするかもしれないが、株式会社はあくまで選択肢のひとつにすぎない。ほかにも会社の形態にはいくつか種類があり、なかでも「合同会社」は起業・経営の負担を抑えられる形態として多くの起業家から注目されている。

合同会社とは、2006年の会社法改正によって新たに登場した会社形態のこと。有限責任(負債などを抱えた場合でも、責任を負うのは出資した額まで)である点をはじめ、株式会社にはないメリットがいくつかあることから、最近では多くの法人や起業家から選ばれている。

株式会社との最大の違いは、出資者と経営者が同一である点だ。合同会社には出資者となる株主は存在せず、出資者全員が社員として経営に携わる。株式会社のように所有と経営が切り離されることはないので、合同会社は社員にとって自由度が高い形態と言えるだろう。

ただし、どのような会社形態にもデメリットは存在するため、メリットだけを見て安易に合同会社を選ぶべきではない。新たに会社を設立する方は、これを機に起業スタイルに関する知識をつけていこう。

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合同会社とほかの会社の違いとは?メリット・デメリットも紹介

合同会社のメリット・デメリットを理解するには、まずほかの会社形態との違いを押さえておく必要がある。以下に4つの会社形態の違いを簡単にまとめた。

・4つの会社形態の主な違い

合同会社 株式会社 合同会社 合資会社
出資者 社員 株主 社員 社員(2名)
出資者の責任 間接有限責任 間接有限責任 無限責任 1名は無限責任、1名は有限責任
代表者 代表社員 代表取締役 代表社員 代表社員
役員の任期 任期なし 取締役は原則として最長2年 任期なし 任期なし
決算公告 不要 必要 不要 不要
意思決定 社員総会 株主総会 社員総会 社員総会
定款の認証 不要 必要 不要 不要

上記の通り、合同会社と株式会社にはさまざまな違いがある。出資者や代表者に加えて意思決定機関も異なるので、会社組織としては全く別のものであることが分かるはずだ。

また、起業スタイルとしては合同会社や合資会社も選択肢になるが、これらの会社形態では出資者が無限責任を負う(全ての責任を負う)ことになるため、選ばれるケースが少ない。従って、起業前には「合同会社と株式会社の違い」を理解しておけば、大きな問題が生じることはないだろう。

合同会社のメリット・デメリット

では、株式会社と比べた場合に、合同会社にはどのようなメリット・デメリットがあるのだろうか。細かく見ればさまざまな点が挙げられるが、以下では起業家や経営者が特に押さえたいメリット・デメリットを紹介していく。

・合同会社のメリットとデメリット(株式会社と比べた場合)

合同会社のメリット 合同会社のデメリット
・設立費用が安い(最低で約6万円)
・出資者の責任が有限である
・決算の公告義務がない
・代表社員の任期がない
・意思決定をスムーズに下せる
・社会的な信用性や認知度が低い
・どの取引所でも上場できない
・社内対立のリスクが大きい

合同会社は定款の認証が不要なため、登録免許税や印紙税だけで会社を設立できる。一方で、株式会社の設立時には約20万円の費用がかかるので、設立費用をとにかく抑えたい場合は合同会社がおすすめだ。

また、代表社員に任期がなく、会社の意思決定に株主総会を必要としない点も合同会社の大きなメリットである。基本的には出資者が経営方針を決められるため、合同会社は経営の自由度が高い。

ただし、その反面で資金調達や規模拡大が難しくなる点は、強く意識しておくべきデメリットだ。特に全ての社員が業務執行権をもつ影響で、社内対立のリスクが高まる点は事前に覚悟しておかなくてはならない。

社員同士で意見の食い違いが起きると、業務に支障を来すどころか経営が立ち行かなくなる恐れもあるので、各出資者の考え方や目的は起業前に理解しておく必要がある。

合同会社と個人事業主の違い

最適な起業スタイルを選ぶには、合同会社と個人事業主の違いも理解しておくことが必要だ。では、具体的にどのような違いがあるのか、特に押さえておきたいポイントを確認していこう。

・合同会社と個人事業主の違い

合同会社 個人事業主
法人格 あり なし
社会的な信用性 個人事業主よりは高い 低い
社会保険料 2分の1は法人負担になる 個人が全額負担
退職金の積立 一部が法人の経費になる 個人が全額負担
設立時の手続き 株式会社よりは簡易的 設立手続き自体が不要

上記のほか、合同会社と個人事業主とでは課せられる税金も異なる。例えば、合同会社の税金は法人税や法人住民税が中心となるが、個人事業主にはこれらの税金が発生しない代わりに所得税や住民税が課せられる。所得金額からそれぞれの税額を計算したときに、個人事業主の方が高くなるようであれば法人を設立することが望ましい。

また、年商が1,000万円を超えたときも、会社設立を検討したいタイミングだと言える。年商が1,000万円を超えると、個人事業主であっても翌々年に消費税を課せられるが、会社を設立した初年度に限っては免税事業者として扱われるためだ(※資本金などの条件あり)。

現時点で個人事業主の方は、これらの点を踏まえて会社設立のタイミングを慎重に見極めよう。

合同会社は有名企業も採用している?増加した背景と実情

合同会社を採用しているのは、規模の小さな個人事業主や起業家だけではない。外資系のApple Japanやアマゾンジャパンなど、最近では大手の関連企業が合同会社として設立するケースも増えてきた。

その影響で合同会社の信用性は徐々に高まりつつあり、今では事業規模にかかわらず多くの法人が合同会社を採用している。では、近年になって合同会社がどれくらい増えているのか、東京商工リサーチが公表したデータからチェックしていこう。

・合同会社の新設法人年間推移

時期 会社数
2015年 2万1,698社
2016年 2万3,340社
2017年 2万6,814社
2018年 2万8,849社
2019年 3万424社

(※2019年「合同会社」の新設法人調査/東京商工リサーチ)

合同会社の数は右肩上がりの状態が続いており、2019年には新設法人の23.2%が合同会社を採用している。このように合同会社の数が増え続けている要因としては、ほかの会社形態に比べて設立の手間・コストを抑えられる点が大きい。

また、なかには迅速に意思決定ができる点を生かして、投資不動産ごとに合同会社を設立するようなケースも見受けられる。合同会社を設立し、事業が成長してから株式会社に変更することも可能なので、将来的には合同会社の自由度を生かしつつ上場を目指すような起業家・経営者も増えてくるだろう。

合同会社はどんな業種に向いている?

ここまで解説した内容を踏まえると、合同会社は信用性・知名度が求められにくい業種に適していると言える。例えば企業を相手にするBtoB型のビジネスでは、信用性・知名度がそのまま企業評価につながるケースが多いので、合同会社では不利になってしまう恐れがある。

従って、合同会社は一般ユーザー向けの商品・サービスを提供するビジネスに適しているとされるが、前述の通り合同会社の信用性・知名度は高まりつつある。その影響で、最近では情報サービス業や経営コンサルタント業など、法人営業をする企業も合同会社を採用することが多い。

つまり、前述のメリットを生かせば、業種に関わらず合同会社が最適な選択肢になる可能性があるため、起業スタイルを選ぶ際には業種だけで判断しないことが大切だ。

合同会社を設立する基本的な流れ!5つのステップを解説

合同会社の設立前には、手続きの流れを事前に確認しておきたい。そこで次からは、合同会社設立の基本的な流れをまとめた。

株式会社とは設立の流れが若干異なるため、その点を意識しながらチェックしていこう。

STEP1.設立項目を作成する

設立項目とは、定款や登記書類などに記載する項目のこと。合同会社の設立前には、主に以下の設立項目を作成しておかなくてはならない。

・合同会社の主な設立項目

商号(会社名) 最初もしくは最後に「合同会社」をつける必要がある。
事業目的 原則として、事業目的以外の事業に取り組むことはできないので要注意
本店所在地 会社(本店)の住所のこと
資本金額 資本金の総額や内訳を明確にしておく
社員構成 代表社員や業務執行社員が誰なのか、明確にしておく
事業年度 事業年度の開始月や、決算月を決めておく

上記のうち「事業目的」は後からの変更も可能だが、変更すると手間やコストが余計に発生するため、取り組む事業は設立前に明確にしておこう。

STEP2.定款を作成する

定款の認証は不要だが、合同会社であっても「定款の作成」は必要になる。このときに作成した定款に基づいて合同会社が設立されるため、社員の責任や損益の分配、退社に関する事項など、会社の根本規則はしっかりと記載しておきたい。

なお、合同会社に決算の公告義務はないが、定款に方法(官報公告や電子公告など)を記載しておけば公告も可能になる。

STEP3.登記書類を準備する

登記申請の際には、定款に加えて印鑑証明書や設立登記申請書などの登記書類が必要になる。中でも資本金の払込証明書はすぐに用意できるものではないため、早めに準備に取りかかることが重要だ。

設立時に求められる登記書類はケースによって異なるので、事前に書類に関する情報をチェックした上で過不足なくそろえておこう。

STEP4.登記の申請手続きをする

申請の準備が整ったら、いよいよ法務局に登記書類を提出する。法務局は全国に存在するが、合同会社の申請手続きは「本店所在地を管轄する法務局」で行う必要がある。

なお、登記書類を提出した日が合同会社の設立日となるため、設立日にこだわりがある場合はこの点も意識して準備を進めたい。

STEP5.設立届など、その他の手続きを済ませる

STEP4までで合同会社の設立は完了だが、実際に経営を始めるには各種手続きを済ませる必要がある。例えば、青色申告によって確定申告をする場合は「青色申告承認申請」を3ヵ月以内に、従業員を雇う場合は「労務保険に関する届出」を従業員の入社翌日から10日以内に提出しなければならない。

また、どのような経営スタイルであっても、合同会社の設立から2ヵ月以内に「設立届」を税務署に提出する必要があるため要注意だ。設立後の手続きもケースによって異なるので、事前にしっかりと情報収集をしておこう。

状況に合わせて最適な起業スタイルを

合同会社にはさまざまなメリットがあることから、最近では株式会社から合同会社に変更する事業主も増えてきている。すでに株式会社を設立している場合であっても、状況次第では合同会社のほうが大きなメリットを得られるので、会社形態は状況に合わせて柔軟に選んでいきたい。

ただし、合同会社にも注意すべきデメリットが潜んでいるため、それぞれの起業スタイルの特徴はしっかりと見比べておこう。

文・片山雄平(フリーライター・株式会社YOSCA編集者)