ファームバンキングとは、文字通りFirm(企業)向けに提供される銀行や信用金庫などのサービスのこと。
経理部門における業務効率化の手段のひとつとして、普及が目覚ましいファームバンキングを紹介する。

目次

  1. 働き方改革で注目されるファームバンキング
    1. インターネットバンキングとの違い
  2. 業務改善にファームバンキングを活用する
  3. ファームバンキングの活用で得られる業務改善の3つのポイント
    1. 1:資金管理と運用がスムーズ
    2. 2:支払業務の効率化
    3. 3:回収業務の確実性が増す
  4. ファームバンキングのメリット
  5. ファームバンキングのデメリット
  6. ファームバンキングを導入する方法
    1. 銀行にファームバンキングを申し込む
    2. 通信設備の確認とソフトウェアの準備
    3. サービスの開始
  7. 経理部門の働き方改革を進めよう
    1. プロフィール

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働き方改革で注目されるファームバンキング

ファームバンキングの活用で経理部門の働き方改革を推進する
(画像=PIXTA)

働き方改革の中でなかなか改革が進まない経理部門。コロナ禍にあって、テレワークが推奨される中でスタッフが出社を見合わせている中、経理部門のスタッフは約8割が出社せざるを得ないという調査結果もある。

その大きな要因は、経理部門の紙文化。
調査によれば、出社する最大の理由は「決算対応」。次いでは「取引先への振込」や「請求書の作成および発送」に「入金確認」などがあげられる。これらは紙書類を必要とする業務であるとともに、銀行窓口に出向かなければならない業務も含まれている。

そこで注目なのが、経理部門における業務効率化の手段のひとつとして、普及が目覚ましいファームバンキング。

文字通りFirm(企業)向けに提供される銀行や信用金庫などのサービスのことで、銀行と企業を通信回線で結び、その回線を通じて金融機関の各種サービスを利用することができる。

ファームバンキングは「預金の残高照会」「入出金照会」「口座振込」「振替」などの基本的なサービスに加えて、複数銀行への「総合振込」や「給与振込」「個人住民税納付」「外国為替送金」などの機能を利用することができる。

経理担当者が金融機関に出向くことなく、会社に居ながら会計処理を行うことができるサービスで、会社内に銀行のATMと同じシステムを置いているイメージだと例えられることも多い。

インターネットバンキングとの違い

インターネットバンキングとファームバンキングの違いは、金融機関と企業とを結ぶ通信回線の違いにある。

インターネットバンキングでは既存のインターネット網を使ってデータのやり取りを行っている。このため、アプリケーションをインストールするだけで、専用のソフトウエアは必要ない。

一方、ファームバンキングは、専用の回線と専用のソフトウエアを使ってデータ通信を行っている。インターネットバンキングは、不正アクセスなど情報漏えいの心配があるがファームバンキングの場合は、導入端末をインターネットから切り離しておけば、情報漏えいなどの危険性は低く、セキュリティは高くなる。

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業務改善にファームバンキングを活用する

ファームバンキングの最大の特長は、金融機関との取引を社内で行うことができる点にある。大量の振込事務、緊急を要する振込事務が簡単な操作で行うことができて経理事務が大幅に軽減される。

また、オフィスに居ながらにして販売代金の入金確認や口座の残高確認などもすぐに行えるため、事務負担が低減され務処理のスピードアップが実現する。

さまざまな業務ソフトとの連動機能を備えたファームバンキング・システムもあり、給与計算ソフトなど、社内業務システムで作成したデータをそのまま銀行へ送信したり、銀行から受信したデータをそのまま社内業務システムへ取り込んだりと、経理業務の効率化が実現できる。

また、経理精算システムと連動させれば、取引先への支払依頼の伝票をファームバンキング・データとして出力することも可能。
振込口座の変更や同一口座の名寄せも画面上で指定することでデータ作成ができて、振込作業も容易となる。

銀行に赴く必要がないということは、経理担当者の労務軽減になるだけでなく、時間の短縮は企業全体のコスト低減に貢献することになる。下記あげたものは特に大きなメリットといえる。

ファームバンキングの活用で得られる業務改善の3つのポイント

1:資金管理と運用がスムーズ

会社の預金残高・入出金明細などの口座情報をオフィスでリアルタイムに入手できて資金管理を合理化することができる。また、支社・営業所との資金移動や資金管理が本社で一括して行えるので、資金管理・運用がスムーズに効率的に行える。 また、他行の口座情報を照会することもでき、資金の即時移動も可能となっている。

2:支払業務の効率化

給与振込や月末の送金など、時には数千件もの振込を1日で行う場合もある。これを手作業で行っていると、手続き間違いなどのミスが生じてしまう危険性がある。

ファームバンキングでは、特定の様式のcsvファイルなどを用いて、振込先情報などを一括して読み込み、数千件の送金依頼を1回の作業で済ませることができる。支払業務が効率化されるだけでなく、確実性も担保できることになる。

3:回収業務の確実性が増す

売上代金などの確実な回収は経理部門にとって重要な業務。従来の方法では、経理担当者は入金の確認、入金伝票の作成と記帳、入金の消し込みなど一連の業務を間違いなく行わなければならなかったが、ファームバンキング・サービスでは、これらの回収業務を大きく効率化することができる。

ファームバンキングのメリット

企業では内部統制に関連して、銀行での送金機能や入出金履歴などのデータ管理を厳格化しておく必要がある。アクセスや取引を承認する責任者の責務も重大だ。

ファームバンキングでは、実際に操作できるパソコンや専用端末を制限しておくことができる。これらの端末を特定の社員しか入室できないように入退室管理された執務スペースに設置しておくことで、万全のセキュリティが確保される。

かつては電話回線を利用していたが、最近では、銀行取引用のセキュアな回線接続サービスが利用されている。こうしたサービスでは、利用開始時に独自の電子証明が発行され、この証明書がインストールされた端末だけでしか振込などの処理ができないようになっている。

このため、悪意ある第三者によってネット回線を介して外部のパソコンから勝手に振込が行われるという事態も防止できる。IT化は、経理業務の効率化に効果があると分かっていても、情報漏えいなどの事故が怖くて踏みきれないという企業も多い。そうした企業は、高いセキュリティが確保されているファームバンキングの導入を検討してみてもいいだろう。

また、ファームバンキングは銀行窓口での取扱と比べて振込手数料が割安になるというメリットもある。

ファームバンキングのデメリット

ファームバンキングのデメリットとしては、導入コストの高さがあげられる。

ファームバンキングを始めるには、専用端末やソフトウエアの購入費用や設定やテストのための人件費、さらに場合によっては通信環境の整備費用などのコストと手間が必要となってくる。

その他、月額手数料などの負担も増えてくるが、ファームバンキングは各金融機関が独自で行っているサービスであるため、契約の内容などによりかかる費用が異なってくるので確認が必要だ。

ファームバンキングを導入する方法

銀行にファームバンキングを申し込む

ファームバンキングを利用するためには、銀行との契約が必要となる。取引している銀行がファームバンキングのサービスを行っているかを確認することから始まる。

取引銀行がファームバンキング・サービスを行っている場合は、サービスの内容や料金についての説明を受けることができる。その内容を精査し、自社に適したサービスであるかを判断して導入を決断する。その後、銀行側の案内にしたがって申し込み手続きを進めていく。

通信設備の確認とソフトウェアの準備

場合によっては、会社で敷設しているネットワーク環境に加えて、ファームバンキングのためのネットワーク環境の整備も必要になる。銀行側に使用する通信設備について、事前に十分確認しておくことが大切だ。

新しいネットワーク設備の導入が必要になった場合には、コストと時間がかかることになるので早めに行動する必要がある。

また、ファームバンキングを行うパソコンや専用端末には、銀行独自のソフトウエアをインストールしなければならない。銀行のガイダンスにしたがって、インストールを行う必要がある。

設定には、セキュリティ上のいくつもの要件があることが多い。

サービスの開始

テスト送金に問題がなく、セキュリティ等の設定も確認できたら、ファームバンキング・サービスの利用を開始することができる。

上記は導入までの基本的な項目だが、それぞれのプロセスは慎重に行う必要がある。例えば、ソフトウエアをインストールして、設定が完了したらテストとして会社の専用端末から送金のテストのデータ伝送試験を行い、問題が無いかどうかを確認する。取り扱うものがお金ということもあり、導入時は多少手間はかかってしまうが、その分の業務効率の改善が見込めるはずだ。

経理部門の働き方改革を進めよう

ファームバンキングは、セキュリティも強固で、利便性も高い。なにより、手続きや取引のために銀行に出向く必要がなくなり、経理業務が大きく効率化される。また、ウィズコロナ時代に求められている非接触での業務遂行にも適している。

ファームバンキングと連動できる経理の業務ソフトも次々と登場しており、これをあわせて利用することで、社内の経理処理から銀行を経由した振込までの業務を一括してスピーディーに確実に行うことができる。

ファームバンキングによって、経理担当者の負担が軽減されるだけでなく、ミスの根絶や情報漏えいの防止など企業にとってのリスクも回避することができる。これからの経営力強化、経理業務の効率化には、ファームバンキングは不可欠のサービスといえる。

プロフィール

ファームバンキングの活用で経理部門の働き方改革を推進する
(画像=金城 寛人)

金城 寛人 (きんじょう ひろと)

株式会社エルニコ執行役員・中小企業診断士。1985年生まれ。沖縄県出身。青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科卒業後、前職の外資系メーカーに入社。事業開発部に従事し、アジア圏の新規事業プロジェクトに参画し、同社にてMVP(Super Hero’s)を受賞。現在は、経営コンサルティング事業を推進し、新規事業、組織の仕組みづくり、販路開拓、施策活用、経営相談窓口など毎月約70社以上の中小企業の経営支援を行う。