固定資産の会計処理で現れる「減価償却累計額」と「減価償却」は、全く別の勘定科目。これらの違いを理解しておかないと、決算の度に大きな手間となる。会計作業や決算の負担を減らすために、自信のない経営者はしっかりと会計の基礎を学んでいこう。

目次

  1. 固定資産の計上に用いられる「減価償却累計額」。減価償却との3つの違い
    1. 1.計上される項目
    2. 2.計上される財務諸表
    3. 3.計上する金額
    4. 減価償却と減価償却累計額の計上額
    5. 減価償却と減価償却累計額の主な違い
  2. 減価償却の仕訳方法によって、減価償却累計額のルールは変わる
    1. 直接法における減価償却累計額のルール
    2. 間接法における減価償却累計額のルール
  3. 減価償却累計額の処理方法を解説
    1. 【手順1】購入した資産について、減価償却費を計算する
    2. 減価償却費の計算方法による違い
    3. 【手順2】計算した減価償却費をもとに帳簿を作成する
    4. 【手順3】作成した帳簿をもとに、財務諸表を作成する
  4. 減価償却累計額の仕訳例
    1. 【手順1】減価償却費の計算
    2. 【手順2】帳簿の作成
    3. 【手順3】財務諸表の作成
    4. 2020年分の貸借対照表(※一例)
  5. 減価償却資産と減価償却は全く別のもの!経営者や経理担当者は正しい理解を

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固定資産の計上に用いられる「減価償却累計額」。減価償却との3つの違い

5分でわかる減価償却累計額と減価償却の違い!仕訳ルールを徹底解説
(画像=PIXTA)

購入した固定資産を会計処理する際には、「減価償却累計額」と「減価償却」の2つの勘定科目が用いられる。これらの勘定科目を混同せずに使い分けるには、それぞれの特徴や違いを正しく理解しておくことが必要だ。

減価償却累計額とは、毎月計上した減価償却費の合計額を処理する勘定科目のこと。一方で、減価償却は毎期の減価償却費を処理するために用いられる勘定科目である。

では、これらの勘定科目にはどのような違いがあるのか、以下で分かりやすく解説する。経営者として会計の基礎をしっかりと学んでおきたい。

1.計上される項目

勘定科目としての減価償却は、「費用」の項目に計上される。一方で、減価償却累計額は「資産」の勘定科目であり、固定資産の取得時から計上している減価償却費の合計額を記載する。

ただし、減価償却累計額は資産のマイナス要素にあたるので、プラスの値であっても会社の資産からは差し引くことになる。この点は非常にややこしいため、減価償却累計額と減価償却については仕組みからきちんと理解しておくことが重要だ。

2.計上される財務諸表

費用として扱われる減価償却は、「損益計算書」に計上される。一方で、資産にあたる減価償却累計額は、「貸借対照表」と呼ばれる財務諸表に計上される。

ちなみに、減価償却累計額は資産のマイナス要素なので、貸借対照表上では分かりやすいように金額の頭に「△」がつけられることが多い。

3.計上する金額

前述の通り、減価償却累計額の勘定科目にはこれまでの減価償却の合計額を計上する。一方で、減価償却の勘定科目に計上する金額は、当期1年分の減価償却費のみである。

この説明だけでは少し分かりづらいため、毎期の減価償却費を10万円と仮定して各勘定科目の計上金額を見てみよう。

減価償却と減価償却累計額の計上額

当期の計上額 2期目の計上額 3期目の計上額
・減価償却 10万円 10万円 10万円
・減価償却累計額 10万円 20万円 30万円

つまり、減価償却累計額を計上する際には、前期までの合計額を事前にチェックする必要があるので覚えておきたい。

減価償却と減価償却累計額の主な違い

主な違い 減価償却 減価償却累計額
・計上される項目 費用 資産
・計上される財務諸表 損益計算書 貸借対照表
・計上する金額 当期1年分の減価償却費のみ これまでの減価償却費の合計額

減価償却と減価償却累計額の違いとしては、上記の3つを押さえておけば問題ない。名称は似ているが、勘定科目としては全く異なる性質をもっているため、混同しないように正しく理解しておこう。

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減価償却の仕訳方法によって、減価償却累計額のルールは変わる

減価償却の仕訳方法には、「直接法」と「間接法」の2種類がある。どちらを選ぶかは各法人の判断に委ねられているが、減価償却の仕訳方法によって減価償却累計額のルールは異なるため注意が必要だ。

では、具体的にどのようにルールが変わってくるのか詳しく解説をしていこう。ちなみに、どちらの仕訳方法を選んでも納税額に影響が生じることはない。

直接法における減価償却累計額のルール

直接法は、毎年計上する減価償却費を固定資産の取得価額から直接差し引く仕訳方法であり、具体的には以下のような形で仕訳をする。

借方 貸方
減価償却費 ○○円 固定資産 ○○円

上記の通り、直接法では減価償却累計額の勘定科目は使用しない。しかし、このままでは貸借対照表上に固定資産の残高のみが記載されるため、財務諸表から固定資産の取得価額を把握できないことになる。

そこで、直接法では貸借対照表に減価償却累計額を注釈として記載し、「固定資産の帳簿価額+減価償却累計額」の計算式で取得価額を導き出すケースが一般的だ。注釈として記載するルールは忘れやすいので、直接法を採用する場合はしっかりと意識しておこう。

間接法における減価償却累計額のルール

一方で間接法は、貸方に減価償却累計額を計上する仕訳方法だ。間接的に固定資産の帳簿価額を表示できることから「間接法」と呼ばれており、具体的には以下のような形で仕訳をする。

借方 貸方
減価償却費 ○○円 減価償却累計額 ○○円

このとき、間接法における固定資産の帳簿価額は、「固定資産の取得価額-減価償却累計額」の計算式によって導き出せる。

減価償却累計額の処理方法を解説

減価償却累計額は仕組みがやや複雑なため、処理方法で迷ってしまう経営者や経理担当者は多い。そこで次からは、固定資産を購入してから減価償却累計額を処理するまでの流れをまとめた。

ここまでのおさらいの意味も含めて、処理するまでの手順を最初から確認していこう。

【手順1】購入した資産について、減価償却費を計算する

固定資産を購入したら、まずは減価償却費を計算する必要がある。減価償却費の計算方法は大きく「定額法」と「定率法」の2つに分けられており、固定資産の種類によって適用できる計算方法が決められている。

減価償却費の計算方法による違い

・定額法 購入した固定資産に関して、毎年一定の額を償却する方法。主に、建築物や無形固定資産の減価償却費を計算する際に用いられる。
・定率法 毎年同じ割合(※償却率と呼ばれる)で、減価償却費を計上する方法。定額法の対象に含まれない資産は、原則として定率法が適用される決まりになっている。

なお、各資産の償却率については、固定資産の耐用年数に応じて数値が決められている。

いずれの計算方法においても、減価償却費を計算する際には「固定資産の取得価額」や「法定耐用年数」を確認しなければならない。法定耐用年数や償却率は国税庁の資料などで確認できるが、時期によって数値が異なる可能性があるため、常に最新の資料をチェックしよう。

【手順2】計算した減価償却費をもとに帳簿を作成する

減価償却費を計算したら、次はその金額をもとに帳簿を作成していく。前述の通り、仕訳方法によって借方・貸方に記載する内容は変わってくるため、その点に注意しながら作業を進めていこう。

なお、帳簿を作成するタイミングは自由だが、減価償却費は償却が終わるまで毎年発生する。そのため、経営者や経理担当者は忘れずに計上することを心がけよう。

【手順3】作成した帳簿をもとに、財務諸表を作成する

1年分の帳簿を作成したら、あとはその内容をもとに財務諸表を作成すれば作業は完了だ。減価償却は費用として損益計算書に、減価償却累計額は資産として貸借対照表に記入していく。

なお、減価償却累計額はマイナスの資産にあたるため、分かりやすい財務諸表を作成したいのであれば、金額の頭に「△(またはマイナス符号)」をつけるようにしよう。

減価償却累計額の仕訳例

次は、モデルケースを用いながら減価償却累計額の仕訳方法を紹介していく。具体例を用いると理解がより深まるため、会計作業に不安を抱えている経営者や経理担当者は最後までチェックしていこう。

○モデルケース
2020年に研究開発用として、80万円の「ソフトウェア」を購入した。このソフトウェアは無形固定資産に該当するものであり、自社で製作したものではない。なお、ソフトウェアの購入後には、導入費として10万円のコストも発生している。

【手順1】減価償却費の計算

無形固定資産にあたるソフトウェアは、一般的に定額法によって償却される。また、研究開発用のソフトウェアの耐用年数は「3年」に設定されており、資産の取得価額には「事業用に供するために要した費用(導入費等)」も含まれる。

したがって、このソフトウェアの減価償却費は以下の式によって計算できる。

減価償却費=(80万円+10万円)÷3年
  =30万円

ここまでの過程により、購入したソフトウェアは毎年30万円ずつ、そして3年かけて償却することが分かった。

【手順2】帳簿の作成

次は、社内で採用している仕訳方法に応じて帳簿を作成していく。【手順1】の結果から、毎年の減価償却費は30万円であることが分かったため、2020年分の帳簿は以下のように作成する。

・直接法を採用している場合

借方 貸方
減価償却費 30万円 固定資産 30万円

・間接法を採用している場合

借方 貸方
減価償却費 30万円 減価償却累計額 30万円

なお、直接法では毎年同じ減価償却費を記載するが、間接法ではこれまでの減価償却費の合計額を記載する必要があるので要注意だ。つまり、2021年分の減価償却累計額は60万円(30万円×2年)、2022年分の減価償却累計額は90万円(30万円×3年)となる。

【手順3】財務諸表の作成

最後に、【手順2】で作成した帳簿の内容を参考にしながら、損益計算書または貸借対照表を作成する。損益計算書には単に減価償却費を書き込むだけだが、貸借対照表への記載時はやや間違えやすいため、以下で簡単な例を紹介しておこう。

2020年分の貸借対照表(※一例)

資産の部 負債の部
ソフトウェア 900,000 純資産
減価償却累計額 △300,000
合計 合計

ほかの部分は省略したが、上記を見れば減価償却累計額の記載箇所が分かるはずだ。貸借対照表には減価償却累計額だけではなく、購入した資産の取得価額も記載する必要がある。

また、固定資産の取得価額から減価償却累計額を差し引くと、固定資産の現在価値(上記例では60万円)が読み取れる点も合わせて覚えておきたい。

減価償却資産と減価償却は全く別のもの!経営者や経理担当者は正しい理解を

今回解説したように、「減価償却累計額」と「減価償却」は全く別の勘定科目だ。混同して覚えていると、帳簿の作成時や決算の際に数値がズレてしまうので、経営者や経理担当者はこれらの違いを正しく理解しておきたい。

また、減価償却の仕訳方法や計算方法によってルールが変わる点も、確実に押さえておく必要がある。減価償却資産の処理はやや複雑だが、ほとんどの企業で発生する会計処理であるため、これを機に細かい部分までしっかりと理解しておこう。

▽署名フォーマット 文・片山雄平(フリーライター・株式会社YOSCA編集者)