従業員を雇うのであれば、住民税の仕組みは正しく理解しておく必要がある。今回は住民税のなかでも迷いやすい、普通徴収と特別徴収の違いをまとめた。納付方法による違いを理解し、会社や従業員の状況に合わせて正しい手続きができるように準備しておこう。

目次

  1. 住民税はどんな税金?経営者が理解しておきたいポイント
  2. 住民税の普通徴収とは?
    1. 住民税の特別徴収とは?
  3. 普通徴収と特別徴収のメリット・デメリット一覧
    1. 住民税の納付方法によるメリット・デメリットの違い
  4. 公的年金の特別徴収とは?
    1. 一般的な特別徴収と公的年金の特別徴収の違い
  5. こんなときはどう対応すべき?住民税の徴収方法にまつわる一問一答
    1. 1.普通徴収が認められる条件とは?
    2. 普通徴収が認められるケースの一例
    3. 2.従業員から「普通徴収で支払いたい」と希望された場合は?
    4. 3.中途入社した従業員にはどう対応する?
    5. 4.従業員が退職した場合の対応は?
    6. 従業員が退職した後の納付方法
    7. 5.納付の手間を削減したい場合は?
  6. 必要な手続きをきちんと理解し、スムーズな対応を

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住民税はどんな税金?経営者が理解しておきたいポイント

経営者が迷わされる住民税のポイント!普通徴収と特別徴収の違いは?
(画像=PIXTA)

住民税は身近な税金だが、その細かい仕組みについては意外と知られていないことが多い。そこでまずは、経営者が押さえたい住民税の基本的なポイントから解説する。

住民税は地方税の一種であり、主に行政サービスに必要な経費をまかなう目的で徴収されている。厳密には「都道府県民税」と「市町村民税(※区民税を含む)」の2つを指すが、これらの税金は同時期にまとめて徴収されるため、一般的に住民税と言えば「都道府県民税+市町村民税」を意味するケースが多い。

また、税額が一定である均等割と、前年の所得に対して課せられる所得割の2つの要素で構成されている点も押さえておきたい基礎知識だ。均等割の額は自治体によって異なるが、おおよそ5,000~6,000円の範囲で設定されている。つまり、仮に前年の所得がなかったとしても、原則として均等割分の住民税は発生するため注意したい(※非課税の要件に該当する場合など、一部例外あり)。

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住民税の普通徴収とは?

住民税には「普通徴収」と「特別徴収」の2つの納付方法があり、従業員がどちらで納付するのかによって法人の費用な手続きは変わってくる。そのため、従業員を1人でも雇う経営者は、住民税の納付方法による違いを正しく理解しておくことが必要だ。まずは、主に給与所得者以外が対象になる「普通徴収」の概要を解説していこう。

普通徴収とは、市区町村から毎年6月に送付される納付書を用いて、納税者自らが住民税を納付する方法だ。祝休日の関係で支払期限が多少前後することもあるが、基本的には「6月・8月・10月・翌年1月」の4回に分けて住民税を納付する。

ちなみに、市区町村から届く通知には一括納付用の書類も同封されているため、その納付書を使えば1年分をまとめて納付できる。

住民税の特別徴収とは?

一方で、サラリーマンやアルバイトなどの給与所得者は、「特別徴収」によって住民税を納付する。特別徴収とは、毎月の給与からの天引きによって住民税を納付する方法のことだ。

特別徴収では、従業員(納税義務者)の代わりに事業主が徴収した住民税を納めることになる。所得税の源泉徴収と似た制度と捉えれば、イメージをつかみやすくなるだろう。

給与所得者は、原則として特別徴収によって住民税を納付することが義務づけられているため、従業員を雇っている企業は必ず特別徴収に応じなければならない。ただし、一定の要件(※詳しくは後述)を満たす場合は、給与所得者であっても特別徴収から普通徴収に切り替えることが認められる。

ちなみに、複数の勤務先をもつ従業員については、本業となる(=給与が多い)事業所が特別徴収をすることになる。したがって、ダブルワークをしている従業員が自社に存在する場合は、念のため住民税の徴収状況を尋ねておくことが望ましい。

普通徴収と特別徴収のメリット・デメリット一覧

普通徴収と特別徴収の違いは、それぞれのメリット・デメリットに着目すると分かりやすい。では、納税者から見た場合にどのようなメリット・デメリットがあるのか、以下で簡単に確認していこう。

住民税の納付方法によるメリット・デメリットの違い

主なメリット 主なデメリット
普通徴収 ・現金のほか、電子マネーやATMなど複数の支払方法がある
・クレジットカード払いをすれば、ポイントを貯められる(※一部の自治体のみ)
・納税者自身で納付をする必要がある
・滞納リスクがある
・税負担が大きく感じる
特別徴収 ・勤務先が代わりに納付してくれる
・滞納リスクがない
・支払方法を選べない

普通徴収では現金払いのほか、一部の自治体では電子マネーや口座振替、クレジットカードによる納付も認められている。ただし、年12回に分けて納付する特別徴収とは違い、普通徴収では年4回に分けて納付するため、総額は変わらないものの税負担を実感しやすくなる。

一方で、支払方法を選べない特別徴収はやや損な納付方法に見えるかもしれないが、滞納リスクがない点は納税者にとって大きなメリットだ。勤務先が代わりに住民税を納付してくれるため、人によっては税負担を感じにくくなる点もメリットになり得る。

ちなみに事業者の立場で考えると、事務負担の少ない普通徴収のほうが望ましい方法と言える。ただし、住民税の納付方法は事業者側が選ぶものではないため、経営者は常に特別徴収の用意を整えておく必要がある。

公的年金の特別徴収とは?

公的年金にも特別徴収と呼ばれる制度はあるが、これは本記事で解説してきた一般的な特別徴収とは別の制度だ。公的年金の特別徴収とは、日本年金機構などの年金保険者が「年金所得に係る住民税」を年金からの天引きによって支払う納付方法である。

では、一般的な特別徴収と具体的にどのような点が異なるのか、以下で簡単に紹介しておこう。

一般的な特別徴収と公的年金の特別徴収の違い

主な違い 一般的な特別徴収 公的年金の特別徴収
・対象者 サラリーマンやアルバイトなどの給与所得者 65歳以上の年金保険者
・徴収の対象 給与所得 年金所得
・徴収される税金の内訳 所得全体に対する住民税 年金所得に係る住民税
・徴収時期 毎月(年12回) 4月・6月・8月・10月・12月・翌年2月(年6回)

公的年金の特別徴収は各自治体が実施するので、企業の経営者が手続きをする必要はない。ただし、65歳以上の従業員を雇っている場合は、公的年金の特別徴収とは別に一般的な特別徴収も行う必要がある。

こんなときはどう対応すべき?住民税の徴収方法にまつわる一問一答

住民税の徴収方法に関しては、ほかにも理解しておきたい知識がいくつかある。そこで住民税の徴収方法にまつわるよくある疑問をまとめた。 いずれも経営者が理解しておきたい内容なので、特に従業員を雇う場合はしっかりとチェックしていこう。

1.普通徴収が認められる条件とは?

前述でも触れたが、給与所得者であっても特別な事情がある場合は、普通徴収によって住民税を納付することが認められている。では、具体的にどのようなケースが該当するのか、以下で一例を紹介しよう。

普通徴収が認められるケースの一例

会社側の事情 ・従業員数が2名以下である
・家事使用人のみ(常時2名以下)に給与を支払っている
従業員側の事情 ・ほかの勤務先で特別徴収されている
・2ヶ月に1回など、給与が毎月支払われていない
・該当年の5月末までに退職する予定がある
・該当年の給与が少なく、必要な税額を特別徴収できない

会社の規模が小さかったり、従業員側に特別徴収できない事情があったりする場合は、普通徴収による納付が認められる。ただし、特別徴収から普通徴収へと切り替えるには、該当年の1月31日までに「普通徴収の切替理由書」と「給与支払報告書」を自治体に提出する必要がある。

ちなみに、前年に給与支払報告書を提出していれば、普通徴収の切替理由書は各自治体から送られてくる。もし手元にない場合は、各自治体の公式ホームページなどから入手できるため、必要が生じたら余裕をもって書類を準備しておこう。

2.従業員から「普通徴収で支払いたい」と希望された場合は?

住民税の納付方法は、事業者や従業員が自由に選べるものではない。給与所得者の場合は原則として特別徴収によって納付する必要があり、普通徴収が認められるケースはあくまで特別な事情がある場合に限る。

つまり、従業員から普通徴収を希望されたとしても、特別な事情がない限りは事業者側で対応をする必要はない。ちなみに、従業員が普通徴収を希望する理由としては、毎月の税負担を調整する目的のほか、本業となる勤務先に副収入があることを隠す目的などが考えられる。

3.中途入社した従業員にはどう対応する?

中途入社した従業員については、特別徴収の対象を自社に切り替える必要がある。その際には、「特別徴収切替届出書」と呼ばれる書類を自治体に提出する必要があるので、従業員から申し出があったら早めに手続きに取りかかろう。

ちなみに、特別徴収切替届出書は各自治体の公式ホームページからダウンロードできるため、インターネット環境さえあればすぐにでも入手できる。

4.従業員が退職した場合の対応は?

転職や定年などにより従業員が退職をした場合は、自治体に「給与支払報告書・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を提出する必要がある。なお、退職後の納付方法については、状況に応じて以下の3つから選ぶことになる。

従業員が退職した後の納付方法

・特別徴収の継続 転職先の企業で、引き続き特別徴収を行う。
・一括徴収 未徴収の住民税額を、給与または退職金から一括で徴収する。
・普通徴収 未徴収の税額分に関して、特別徴収から普通徴収に切り替える。

退職後の納付方法によって書類の記入方法が変わってくるので、各自治体が公開している記入例などを参考にしながら、慎重に提出書類の準備を進めよう。

5.納付の手間を削減したい場合は?

従業員が常時10名未満の事業所に関しては、納付回数が年2回になる「納期の特例」の利用が認められている。ただし、この制度を利用するには、適用を受ける月の20日頃までに「特別徴収税額の納期の特例に関する承認申請書」を自治体へ提出することが必要だ。

なお、この制度はあくまで特例なので、上記の条件に該当しない事業者や、現時点で住民税の滞納がある事業者などは利用できない。ちなみに納期の特例が適用されると、6月~11月分の住民税は12月10日までに、12月~5月分の住民税は翌年6月10日までに納付することになる。

必要な手続きをきちんと理解し、スムーズな対応を

個人事業主を除けば、住民税の納付方法は原則として特別徴収になる。そのため、基本的には特別徴収の仕組みを理解しておけば問題ないが、従業員に特別な事情がある場合は普通徴収への切り替えを求められる可能性があるので注意しておきたい。

また、中途入社者や退職者が出た場合には、別途切り替えなどの手続きを進めることが必要だ。手続きの内容によって提出書類や記入方法は変わってくるため、最後のQ&Aで紹介した内容もきちんと理解しておこう。

▽署名フォーマット 文・片山雄平(フリーライター・株式会社YOSCA編集者)