中国の新興企業の勢いが止まらない。AI(人工知能)、モビリティ、フィンテック……。さまざまな事業領域でユニコーン(時価総額が10億ドル以上の非上場企業)が誕生している。この記事では、2020年に新たにユニコーンの仲間入りを果たした中国企業を紹介する。
CB Insightsのユニコーン企業データを分析

民間調査会社の米CB Insightsは定期的に世界のユニコーン企業リストを更新している。今回は2020年10月に更新されたデータを使い、2020年1~10月に新たにユニコーンとなった中国企業を紹介する。
なおCB Insightsのデータによれば、2020年10月時点でユニコーンは世界で495社あり、そのうち中国企業はアメリカ企業に次いで多く118社に上る。
2020年に新たにユニコーンとなった中国企業5社
中国企業118社のうち、2020年に新たにユニコーンとなった中国企業は次の5社だ。各会社の事業や特徴をみていこう。
Waterdrop(時価総額28億8,000万ドル):オンライン共済保険サービスなど展開
Waterdrop(水滴)は、中国のオンライン共済保険スタートアップとして知られている。保険にAI技術を活用する仕組みの構築に取り組むなど、その先進的な取り組みに注目が集まっている。
Waterdropの事業としてはオンライン共済保険のほか、治療費をクラウドファンディングで集めることが可能なサービス「水滴筹(shuidichou)」などもある。
これまでに大型の資金調達を成功させながら事業を拡大し、2021年の早い時期にアメリカにおいてIPO(新規株式公開)を目指していることも報じられている。
Dingdong Maicai(時価総額20億ドル):新鮮野菜のフードデリバリーサービス
2020年にユニコーンとなった中国企業の中で、Waterdropに次ぐ時価総額となっているのがDingdong Maicai(叮咚買菜)だ。新鮮な野菜などのフードデリバリーサービスを手掛けるスタートアップ企業で、ライバル企業よりも成長速度が速いと評価されることも多い。
過去の野菜の販売実績傾向などをビッグデータ化し、そのデータを分析することで、将来的にどの時期にどのような野菜の需要が高まるかなどを分析し、効率のよい販売戦略の策定に取り組んでいる。また、需要予測によって食品ロスを減らすことにも貢献している。
ASR Microelectronics(時価総額16億ドル):ワイヤレス・コミュニケーション技術に強み
ASR Microelectronics(翱捷科技股份有限公司)は2015年4月に設立された技術系企業で、ワイヤレス・コミュニケーションのコア技術に強みを持っている。上海の張江高新技術産業開発区に本社を置き、アメリカ国内にも拠点を有していることで知られる。
ワイヤレス・コミュニケーション技術は、次世代通信規格「5G」や「IoT」(モノのインターネット)、そして通信を伴うAI技術などでも活用され、同社の存在感は今後ますます高まっていくことが考えられる。
技術の研究開発に多額の資金を投じているASR Microelectronicsに注目だ。
Biren Technology(時価総額10億9,000万ドル):汎用型AIチップの設計を手掛ける新興企業
2019年に設立されたばかりのBiren Technology(壁仞科技)も時価総額が10億ドルを突破し、ユニコーンの仲間入りを果たした。手掛けているのは汎用型AIチップの設計だ。
同社は、AIチップやクラウドコンピューティングの分野に詳しい多くのエンジニアを抱えていることで知られる。
Keep(時価総額10億ドル):2億人以上のユーザーを有するフィットネスアプリ
すでに中国で2億人以上のユーザーを獲得しているフィットネスアプリといえば「Keep」だ。このKeepも2020年にユニコーンの仲間入りを果たしている。2014年に設立された後、アプリを通じてオンラインでトレーニングプログラムを展開するなどしてきた。
中国国内のフィットネスアプリはKeep以外にもあるが、ユーザー数ではKeepが最大規模とされている。ユーザー数が1億人を超えたのは2017年、それから3年を待たずにユーザー数が2億人を超えたことは、Keepの人気ぶりを如実に表しているといえるだろう。
オフラインでもフィットネスイベントの開催などを行っており、「フィットネスといえばKeep」という印象が中国国内で定着しつつあるようだ。
世界的なベンチャーキャピタルも中国ユニコーンに注目
中国ユニコーンの存在感の高さは中国国内にとどまるものではない。世界的なベンチャーキャピタル(VC)も今回紹介したような新興企業に高い関心を寄せており、各社が大型の資金調達を今後どんどん成功させていくとみられている。
2021年はどんな中国ユニコーンが登場するのだろうか。目が離せない状況が続きそうだ。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)