ユーザーの実名口コミで飲食店の情報を掲載するグルメプラットフォーム「Retty」を運営するRetty株式会社が、2020年10月30日付で東証マザーズに上場した。公開初値は1,611円、公開価格である1,180円を約37%上回った。

コロナウイルスによる外出制限や自粛ムードから一転し、「Go To Eatキャンペーン」により飲食店への客足がようやく戻り始めた中での上場だ。コロナウイルスのさらなる感染拡大の懸念などから、直近で株価は押し戻されているものの、その成長可能性は上場前から話題となっていた。

コロナ禍からの完全な回復とはまだまだ言い難い中、上場に踏み切った同社が今後業界に与える影響を追う。

目次

  1. 新たな市場ニーズを形成し成長してきたRetty
  2. ベンチャーキャピタルから多額の資金調達を受けて上場
  3. Retty成功の3つの秘訣とは?
    1. 1. 顧客ターゲティングを絞り、飲食店向けのサービスに注力
    2. 2. 実名口コミによる情報信頼性の担保
    3. 3. テクノロジードリブンな組織であることを発信
  4. コロナ禍を脱却する次のサービスをいかに打ち出すか

新たな市場ニーズを形成し成長してきたRetty

Retty、コロナ禍に大手競合がひしめく中での上場ストーリーに迫る
(画像=Daniel Rodriguez/stock.adobe.com)

Rettyが設立されたのは2010年だ。食へのこだわりがある層をメインターゲットとし、「食通」の個人に焦点を当て、好みに合う店を探すためのプラットフォームをコンセプトに掲げてきた。

グルメプラットフォームとしては、1996年開設の「ぐるなび」、2005年開設の「食べログ」が先行していた。ぐるなびに至っては、2011年には会員数が1,000万人規模に迫ろうとしており(実際突破したのは2012年12月末)、既に市場が形成されていた状況だ。

先行大手のひしめくレッドオーシャンの中、Rettyは個人が実名で口コミを公開し、個人の好みに合わせてグルメ情報を検索、共有できるプラットフォームとして開設。「実名制口コミ」を最大の特長とし、匿名口コミが当たり前となっていた市場に新たなニーズを見出したのだ。

ベンチャーキャピタルから多額の資金調達を受けて上場

Rettyの成長ストーリーは、同社の資金調達の歴史が物語っている。

2010年に資本金400万円で創業した後、サイバーエージェント・ベンチャーズからのシード出資を皮きりに、グリーベンチャーズ、伊藤忠テクノロジーベンチャーズなどの著名ベンチャーキャピタルから次々と資金調達を実施してきた。2016年のWiLやABCドリームベンチャーズなどからの資金調達で、累計調達額は25億円を超えた。

しかし、多額の資金調達を受けた以上、エグジットによる相当のリターンを求められることは必須である。今回のRetty上場では、売出株式461万8,600株に対し、新規発行株式は20万株とかなり少なく、ほぼベンチャーキャピタルが保有していた株式の利益確定売り出しによるものだ。

金額にすると、VCの保有株売り出しによる見込総額は約53億円なのに対し、新株発行により対象企業が調達する金額は約1.9億円。既存投資家からのエグジット圧力を受けたように見られても仕方のない格好だ。

Retty成功の3つの秘訣とは?

ここからは、食べログやぐるなびといった競合大手がひしめく中でもRettyが上場に至った成長の秘訣を探っていこう。

1. 顧客ターゲティングを絞り、飲食店向けのサービスに注力

Rettyの成長可能性に関する資料によれば、2020年8月末における有料会員店舗数は9,678店舗、その有料会員から得られるストック収益は全売上の57.8%を占めると、有料飲食店の顧客基盤が強い。

競合大手は飲食店情報の掲載に注視し、ユーザーの集客を第一にサービス設計してきた。それに対してRettyは飲食店を顧客とし、有料サービスの「ネット予約機能」をはじめとした利便性向上など、飲食店向けの付加価値提供を徹底してきたのである。

このビジネスモデルの設計と、それによる飲食店との信頼関係の構築こそが、Rettyの成長を支える強みとなっているのだ。

2. 実名口コミによる情報信頼性の担保

Rettyの大きな特長である「実名制口コミ」も斬新だった。匿名口コミの情報の信用度が疑われる中、自分と食の好みが似ている実名ユーザーを入口として情報検索できるという点は、ユーザーにとって信頼性が高い。

さらに、その個人をフォローしている他ユーザーをチェックしたり、作成した「行きたいお店リスト」をフォロワーに公開したりといったSNSの要素を取り入れている。こうすることで、単なる飲食店掲載サイトにとどまらないグルメコミュニティプラットフォームとしての立ち位置を確立したのだ。

こうした強いネットワークに支えられたユーザー基盤が、大きな競合優位性となっている。

3. テクノロジードリブンな組織であることを発信

上で紹介した顧客基盤やユーザーネットワークだけでなく、Rettyは開発当時からテクノロジーに積極的に投資し、ITスタートアップとしても成長を積み重ねてきた。

2015年には大学生エンジニアのためのキャンパスを開設したり、自社のテックブログを開設し開発チームの情報を公開するなど、テクノロジードリブンな企業であることを発信してきた。

こうした開発への投資は、独自のアルゴリズムによるレコメンド精度の向上など、現在のプロダクトにも着実に反映されている。

コロナ禍を脱却する次のサービスをいかに打ち出すか

こうした強みを持つRettyに対して、成長を期待するマーケットの反応は熱い。2020年11月12日現在、競合のカカクコムのPER (株価収益率) が約50倍なのに対し、Rettyは122倍と、市場から大きな期待が寄せられている。

しかし、同社の市場環境は好感できるものばかりではない。特に足元でのコロナウイルス感染者が再拡大している懸念と、政府の「Go To Eatキャンペーン」が終了した後の飲食店業界にどの程度の影響が出るのか見通しは立っていない。

コロナ禍の中で、競合グルメサイト各社は新たなサービスに次々と乗り出している。コロナウイルス感染対策を行っている店を明確に区別し利用者に安心感を与え、テイクアウトに対応した予約システムを開発するなど、ウィズコロナ時代に適応した飲食業界の再生に貢献している。

コロナウイルスという大きな問題を背景に業界全体がサービスの見直しをする中、優良な顧客基盤とテクノロジーを掛け合わせたRettyがどのような対策を打ち出していくのか、今後も注目したい。

文・森 琢麻(経営戦略コンサルタント)