どの企業にとっても倒産というのは得るいつ起こるかわからない。取引先にそれが起きた場合は財務上で貸倒損失の手続きを行い、不良債権とならないように損失額を処理しなければならない。経営者として有事にどう備えるべきかを解説。

目次

  1. 貸倒損失を行い帳簿を健全に
  2. 貸倒損失は規定に従って正確に計上する
    1. 貸倒損失における3つの要件
    2. 法律上の貸倒れ(金銭債券が切り捨てられた場合)
    3. 事実上の貸倒れ(金銭債券の全額が回収不能となった場合)
    4. 形式上の貸倒れ(一定期間取引停止後弁済がない場合等)
  3. 貸倒損失が起こった場合の帳簿上の計上方法
    1. ケース:1取引先が倒産した場合
    2. ケース:2売掛金がある場合
  4. 貸倒れを回避するにはどのような対策をするべきか
    1. 信用調査会社を利用する
    2. 支払日や振込日の期日管理を徹底する
    3. 債権管理のためのシステム構築する
    4. 取引先の情報収集を怠らない
    5. 期日を過ぎた場合は速やかに取引先へ連絡する
    6. 内容証明を送付する
  5. 経営者としてリスク管理を怠らないようにする
    1. プロフィール

>>会員登録して限定記事・イベントを確認する

貸倒損失を行い帳簿を健全に

貸倒損失に貸倒れとは? 経営に必要な債権管理の基礎知識
(画像=PIXTA)

企業間の取引では売掛金や貸付金などが随時発生し、決められた回収サイトで清算が行われる。しかし取引先の業績が悪化し、回収の遅延や延滞が起こり場合によっては回収不可能に陥ることもある。この状態を「貸倒れ」と呼ぶ。

刻々と変化するビジネス環境において、倒産は自社も含めてどの企業にも起こりうる。特に新型コロナウィルスの影響が深刻化する中、かなりの企業が経営危機に陥る可能性があり貸倒れの多発が危惧される。
こうしたケースでは、回収不能になった取引をそのままにしておくと、不良債権として帳簿に残り、企業の業績判断ではマイナスの材料になってしまう。そこで財務上は、費用または損失として帳簿に計上する。これが貸倒損失と呼ばれる会計処理である。

>>会員登録して限定記事・イベントを確認する

貸倒損失は規定に従って正確に計上する

回収不能な取引が発生すると、企業経営にとっては非常にマイナス。回収の見込みがまったく立たなくなった場合は、なるべく早く会計処理で損金計上したい。しかし、貸倒損失には厳格な規定があり、企業側の都合でいつでも計上できるものではない。

まずは、計上するための要件を満たす必要があり、計上するタイミングも決められている。タイミングを逃すと貸倒損失が認められないケースもあるので、規定に従って正確に計上することが重要である。

貸倒損失における3つの要件

貸倒損失の対象になるのは、売掛債券(売掛金・未収請負金など)と貸付金などだが、それらを損金として計上すると、税務上債権者である企業が納めるべき税金が少なくなる。

貸倒損失処理を行う場合は、厳密に債務者の資産状況などを調査した上で以下に挙げる3つの要件に該当しなければならない。

1:法律上の貸倒れ 2:事実上の貸倒れ 3:形式上の貸倒れ

それぞれ、条件が詳細に規定されているのでの要件について詳しく解説しよう。

法律上の貸倒れ(金銭債券が切り捨てられた場合)

会社更生法、会社法、民事再生法、金融機関等の更生手続の特例等の法律によって切り捨てられた金額は、貸倒損失としてその事業年度の損金に算入できる。つまり、法律上で債券が消滅している場合である。

他にも債権者集会による協議や金融機関のあっせんによる協議で切り捨てられた金額、または債務者の債務超過期間が長期間に及び、その債務者に対して書面で債務免除額を明示した場合などにも、貸倒損失としてその事業年度の損金に算入できる。

事実上の貸倒れ(金銭債券の全額が回収不能となった場合)

事実上金銭債務の回収が難しくなった際、債務者の資産と支払い能力を確認して、回収を試みた上で全額回収不能と判断された場合は貸倒損失として事業年度の損金に算入できる。

ただし、債務者の財務状況に関する書類を税務署に提出して、完全に全額回収不能であることを証明する必要がある。また債務者の担保物がある場合は、それを処分してから貸倒損失処理を行う必要がある。

形式上の貸倒れ(一定期間取引停止後弁済がない場合等)

取引先の財務状況が継続的に悪化したために取引を停止。一定期間(通常は1年間以上)経過した場合は、売掛債券から備忘価額を控除した額を貸倒損失として、その事業年度の損金に算入できる。

備忘価額とは帳簿上に売掛債券の記録を残すための項目で通常は1円である。備忘価額を残さずに会計処理を行うと、貸倒損失として損金計上できなくなるので注意が必要だ。また、この要件は継続的な取引先が対象であり、不動産取引のように一時的なものは適用外となる。

貸倒損失が起こった場合の帳簿上の計上方法

基本的に売掛債権に対する貸倒損失は、損益計算書の「販売費及び一般管理費」として仕訳を行う。それ以外の貸付金などは「営業外費用」として仕訳し、臨時的かつ多額な貸倒損失は「特別損失」として仕訳する。

では具体的に帳簿上ではどのように扱えばよいのか。2つのケースでの仕訳方法を見てみよう。

ケース:1取引先が倒産した場合

取引先が倒産して売掛債券などが回収不可能になった場合、債権者集会での決定などにより決められた額を貸倒損失として計上する。

例えば売掛債券100万円のうち、債権者集会で80%の切り捨てが決まったとすると、「借方」には「貸倒損失」として80万円を仕訳し、「貸方」には「売掛金」として80万円を仕訳することになる。
また、貸倒引当金を計上している場合は、当該金額との差額を貸倒損失として計上する。

ケース:2売掛金がある場合

「形式上の貸倒れ」に当たるケースで、継続的な取引先との間に売掛金が残っている場合は、備忘価額の1円を控除した額を貸倒損失として計上する。

例えば売掛金が50万円あったとすると、「借方」には「貸倒損失」として499,999円を仕訳し、「貸方」には「売掛金」として同じく499,999円を仕訳することになる。

貸倒れを回避するにはどのような対策をするべきか

取引先の業績不振は他人ごとではない。貸倒れが複数生じれば、最悪の場合共倒れになる可能性もあるからだ。しかも売掛金には時効があるため、回収が滞ったままにしておくと消滅してしまう可能性もある。
そこで普段から取引先の財務状況を把握し、貸倒れを未然に防ぐための準備をしておく必要がある。ここでは貸倒れを回避する方法について具体的に解説しよう。

信用調査会社を利用する

取引先企業の財務状況などの情報は、大手の信用調査会社が持つデータを利用することができる。貸借対照表や損益計算書などのほか、独自に分析したデータを提供している調査会社もあり活用できるだろう。

ただし、対象となる企業は全国の主要企業に限られるため、比較的小規模の企業に対しては、直接信用調査会社に調査を依頼することになる。一般的には新たな取引先に対する信用調査が多いものの、継続して取引する相手企業に対しても、定期的に信用調査を利用することは可能である。

支払日や振込日の期日管理を徹底する

仕事上の取引にはお互いの信頼関係が何よりも重要だが、どんな相手であっても無条件に信頼することにはリスクが伴う。取引先とのトラブルを回避するためには、経理処理を適切に行い、常に対外的な取引の流れを把握しておくことが重要である。

売掛金に関しては回収の期日、つまり支払日や振込日を定期的に管理しておく必要がある。月々の支払いを確認しておけば、もしも遅延があったとしても、問い合わせなどですぐに対応できる。少なくとも数ヵ月にわたる滞納の末に貸倒れに発展するような事態は回避できるはずだ。

債権管理のためのシステム構築する

取引先に支払いを求めることが債権管理の基本であり、そのサイクルが滞りなく繰り返されていれば、貸倒れの危険は少ないといえるだろう。しかし、取引先が増えると、債権管理を経理担当者が手作業で行うことに限界が生じる。

こうした場合には定期的な債券管理ができるように、会計処理と連動したシステムを構築するという方法がある。システム化により取引先からの支払いを管理し、遅延が生じた時には督促を促す仕組みができれば、貸倒れのリスクを減らすことが可能になる。

統合基幹業務システムなど、ざまざまな方法ががあるので活用しない手はないだろう。

取引先の情報収集を怠らない

貸倒れ回避で最も重要なことは、日ごろから取引先をよく知っておくことかもしれない。そのためには取引先の規模に合わせて、いくつかの方法を組み合わせながら情報を集めなければならない。

企業の基本的な情報は、法務局で商業登記簿を取得することで手に入る。ある程度の規模を超えた企業の場合なら、決算書などを含めた財務状況を一般に開示していることもある。また現在ではホームページから有益な情報を入手することも可能だ。

間接的な情報収集が難しい場合には、直接取引先に決算書や勘定明細を提出してもらってもよい。信用取引の一環なので、決して失礼には当たらないだろう。こうした方法でも情報が入手できない時には、前述した信用調査会社を利用してもよい。

効果的な情報収集の一つとして定期的に取引先を訪問することが挙げられる。自身の目で相手先の様子を確かめることは、何よりも信頼性の高い生きた情報になるからだ。

期日を過ぎた場合は速やかに取引先へ連絡する

支払期日を過ぎた取引が発生したら、すぐに取引先に照会することが重要だ。これはお互いの信頼関係を継続するためにも重要なこと。速やかな対応をとることで、支払いの延滞を防ぐことができ、貸倒れに発展することも回避できる。

繰り返し期日の超過があるようなら、取引そのものを見直すことも重要だ。

内容証明を送付する

内容証明(内容証明郵便)とは、送付した書類の内容と日付、送り主と送り先を日本郵便が証明してくれる制度である。もしも取引先からの支払いが滞った場合には、請求書や督促状などを内容証明郵便として送っておけば、いざという時に証拠としての効力を発揮する。

経営者としてリスク管理を怠らないようにする

貸倒損失とはやむを得ない場合の最終的な手段であり、財務上では企業にとって大きなダメージとなる危険性がある。特に景気が後退する局面では、貸倒れのリスクも高まるため、それに対する備えをしておく必要があるだろう。

貸倒れを回避するために有効なのは、取引先の財務状況を常に把握しておくことである。お互いの信頼関係を常に保っておくことも必要だが、いざという時のために、相手先に対する情報収集を怠らないことも、自社の経営を守るために重要だ。

プロフィール

貸倒損失に貸倒れとは? 経営に必要な債権管理の基礎知識
(画像=金城 寛人)

金城 寛人 (きんじょう ひろと)

株式会社エルニコ執行役員・中小企業診断士。1985年生まれ。沖縄県出身。青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科卒業後、前職の外資系メーカーに入社。事業開発部に従事し、アジア圏の新規事業プロジェクトに参画し、同社にてMVP(Super Hero’s)を受賞。現在は、経営コンサルティング事業を推進し、新規事業、組織の仕組みづくり、販路開拓、施策活用、経営相談窓口など毎月約70社以上の中小企業の経営支援を行う。