売上債権は資金の流入をもたらす会社の資産の一つ。財務的にも会社の資金繰りにも大きな影響を及ぼす。この売上債権を回収するためには、法的な問題も含めて売上債権の概要を理解しておくが重要。経営者として売上債権の基礎知識を身につけておきたい。

目次

  1. 取引で用いられる「売上債権」を理解する
    1. 売掛金
    2. 受取手形
  2. 売上債権が増えてしまう要因は?
  3. 売上債権はどのように仕訳処理するのか
    1. 売掛金の仕訳例
    2. 受取手形の仕訳例
  4. 2020年4月に民法が改正!売上債権には消滅時効がある
  5. 売上債権をどのように管理するべきか
    1. 取引先の信用調査を行う
    2. 売上債権回転率を確認する
    3. 売上債権の回収ルールを明確にする
    4. 会計ソフトを活用する
  6. 債権回収をおこなうための基本ステップ
    1. 1:取引先へ連絡
    2. 2:督促状や内容証明の送付
    3. 3:訴訟を起こす
    4. 4:強制執行
  7. 売上債権の管理は企業の重要事項
    1. プロフィール

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取引で用いられる「売上債権」を理解する

売上債権の基礎知識。用語解説から円滑な回収方法まで総ざらい!
(画像=PIXTA)

売上債権とは、取引先との取引で生じた営業上の債権のことである。商品販売やサービスの提供などの取引が発生するごとに現金の受け渡しを行おうとすると、常に現金を保有していなければならない。請求書や領収書など取引ごとに発行することになれば業務上の効率もよくない。

そこで業務効率を軽減するためにも、商品やサービスの納品時に現金を受け取るのではなく、後日まとめて請求書を発行し期日に入金してもらう掛け取引が一般的に行われている。財務的にこの掛け取引により発生するのが売上債権であり、以下のように売掛金と受取手形の2種類ある。

売掛金

売掛金とは、商品やサービスの売買の際に、掛け取引によって生じた未回収の代金を指す。通常、企業間の取引で現金取引が行われることはほとんどなく、販売時点では一時的に代金未回収の状態が発生する。この未回収の代金を売掛金という。

一般的には、商品やサービスの納品時には納品書や受領書をやり取りしたうえで、商品・サービスの提供から1〜2ヵ月後に代金が入金される。これは、企業間の信用を担保とした取引であり、信用取引とも呼ばれている。

受取手形

商品やサービスの売買にあたって、決済手段として振り出された証券を受取手形という。受取手形には、約束手形と為替手形があるが、約束手形は当事者が2人いる場合に用いられ、為替手形は当事者が3人いる場合に用いられる。多くの場合、約束手形が利用されている。

同じ売上債権であっても、受取手形は売掛金と比較して法的効力が強いことが特長。また、売掛金とは異なり受取手形は手形割引によって期日前に資金化することができる。さらに、裏書譲渡によって第三者への支払いに活用できることから、財務的にも重要な役割を担っている。

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売上債権が増えてしまう要因は?

売上の増加に伴い、売上債権も増えるのが一般的。売上債権は企業が立て替えている金額であり、この金額分の現金が企業には不足していることになる。つまり売上増加により、売上債権が増えたとしても現金が手元になければ資金繰りが悪化してしまう場合もある。売上が急激に増加している企業は、資金繰り悪化も急激に起こりやすくなるので注意する必要がある。

売上債権増加には、主に3つの要因が考えられる。「現金取引の割合が減少」「債権回収の遅延」「手形サイトが長くなる」などが上げられる。

売上債権はどのように仕訳処理するのか

売上債権を仕訳処理する場合に用いる勘定科目は、売掛金と受取手形に分類される。売上債権の中には、取引先会社の倒産などで回収できなくなり「貸倒れ」という状態になってしまう場合もある。このような事態に備えて、簿記では売上債権に対して「貸倒引当金」を計上しておく必要がある。

売掛金の仕訳例

売掛金は、掛け取引により発生した未回収の売上代金を仕訳処理する場合に用いる資産の勘定科目で、口約束で突然発生したツケ払いも売掛金として処理される。

例えば10万円の商品を掛け取引で販売した場合、下記のように仕訳する。

借方 貸方
売掛金 100,000円 売上 100,000円

また、代金回収後は、下記のように仕訳することになる。

借方 貸方
現金 100,000円 売掛金 100,000円

受取手形の仕訳例

商品やサービスの売買など通常営業取引の決済のために受け取った約束手形・為替手形は受取手形として処理する。

例えば10万円の商品を販売し、代金を手形で受け取った場合は、下記のように記帳する。

借方 貸方
受取手形 100,000円 売上 100,000円

代金を回収した後は、下記のように記帳する。

借方 貸方
現金 100,000円 受取手形 100,000円

2020年4月に民法が改正!売上債権には消滅時効がある

売掛金は債権の一種であり、債権には消滅時効がある。そのまま放っておくと支払ってもらう権利が消滅してしまうので、注意が必要だ。

2020年4月に、民法が改正されたことに伴い、2020年4月以降に発生した売掛金の時効期間は、「売掛金の支払期限から数えて原則5年」となった。また、2020年3月以前に発生した売掛金については「売掛金の支払期限から数えて2年」となっている。2020年3月以前の売掛金については民法改正前の法律が適用されるためだ。

例えば、2020年10月に商品を納入して、顧客の支払いサイトが末締めの翌月末日払いとなっている場合は、売掛金の支払期限は2020年11月末日となる。そこから数えて5年後の2025年11月末日には時効期限が経過してしまう。時効の期間を正確に把握して、適切に取り扱うことが重要となる。

※この記載は、2020年4月の民法改正に基づくもので、今後、法律等が改正される場合もあり。

売上債権をどのように管理するべきか

売上債権を回収できない場合、会社に資金が流入せずに財務的に資金繰りが困難となってしまう危険性もある。万一、貸倒れとなってしまうと会社にとっては大きな損害となる。例えば、利益率が5%の会社では、100万円の貸倒れをカバーするためには、2,000万円の売上が必要となってしまう。

つまり売上債権の管理は売上を伸ばすことと同じくらい大切で、管理を徹底しなければならない。
そのための方法は以下の通り。

取引先の信用調査を行う

円滑な売上債権の回収のためには、取引先の信用調査を行って「与信管理」をしていくことも大事だ。取引期間が長い顧客であっても、必要以上の掛取引は貸倒れリスクを高めてしまうことから、可視化しておくことが重要だ。

取引先に対しては、取引規模に応じて継続的な情報収集を行う。安全な会社に対しては、売上債権残高の上限として許される信用枠を大きく取り、逆に危ない会社に対しては信用枠を小さくしていかなければならない。

信用調査にはいくつかの方法が考えられる。まず、営業担当者や審査部の社員が自ら動いて情報収集し評価する方法だ。取引先へのヒアリングや雑談、業界や地域の人から情報も貴重になるだろう。また、Webサイトや就職情報サイト、口コミサイトなどの調査も効果的だ。

売上債権回転率を確認する

売上の回収がスムーズに行っているかを判断する指標として「売上債権回転率」がある。比率が高いほど、売上から回収までの期間が短く資金繰りの面で良いとされる。

売上債権回転率は、以下の計算式で計算することができる。

・売上債権回転率=売上高/売上債権

なお、売上債権回転率は業種によって異なるので、同業他社と比較してみることが大事だ。

売上債権の回収ルールを明確にする

例えば、A社は月末締めの翌月末払い、B社は毎月20日締めで翌々月10日払いなど、取引先によって支払いのサイトが異なることが多い。そのため、取引先ごとに、回収のルールを定めておくことが重要。
回収ルールのリストを作成して入金予定表を作り、10日・20日・月末ごとにチェックする必要がある。

会計ソフトを活用する

業務改善にはツールの活用が必要不可欠。会計ソフトを活用することで3つのメリットを得ることができる。

1.債権を一括管理することができる

多くの企業では販売日や入金日に取引先が入り混じっており管理は大きな負担となる。会計ソフトの導入すれば、すべての売掛金や入金などを効率的に一括で管理できるようになる。

2.回収率を向上できる

会計ソフトは入金期日などを自動で通知してくれる。未入金や入金延滞の発生を把握することができ、確実に回収することができるようになる。

  1. 作業を自動化できる

会計ソフトを活用することによって、債権管理に関する多くの作業を自動化できる。手作業で起きるミスを削減することで担当者の負担を軽減させられる。

債権回収をおこなうための基本ステップ

未入金の売上債権を回収するためには、以下のような手順を踏んでいくことが望ましい。

1:取引先へ連絡

売掛金が入金予定日入金されなかったり、入金額が予定額と違ったりした場合には回収ルールにしたがい取引先の担当者に確認を行う。ほとんどの場合が単純ミスであることが多く、連絡・確認をすれば入金してもらえるケースが多い。

2:督促状や内容証明の送付

財務などの担当者が催促しても入金がない場合には、督促状や内容証明郵便を送付して支払いを促す必要がある。内容証明郵便とは郵便局が内容を証明してくれる郵便のこと。内容証明郵便には法的拘束力がないため送ったとしても全く反応がない可能性も考えられるが、法的手段に訴える前の最終勧告とされるケースが多い。

3:訴訟を起こす

督促状や内容証明郵便を送付しても、まだ入金がされない場合は弁護士に相談して簡易裁判所に調停手続きの申し立てを行う。その上で、この調停が成立しない場合は訴訟を起こすことになる。訴訟となった場合は、売上債権の消滅時効に注意が必要だ。未回収金額が60万円以下であれば、1日で結審する「少額訴訟制度」の利用を検討すると良い。

4:強制執行

売上債権を回収するための法的手段にもいくつかの種類がある。一つ目の「支払督促」は裁判所から債務者に対して、金銭などの支払いを命じる督促状を送ってもらえる制度で、正式な裁判手続をしなくても可能。

二つ目は「民事調停」。裁判官および調停委員が当事者を仲介し、双方の主張を調整して和解の成立を図る非公開の手続きをいう。最後は「強制執行」という手段。これは、判決などに基づいて、裁判所の執行官が行う強制的な手続きを指している。

売上債権の管理は企業の重要事項

今日のビジネスにおいては、小売業や飲食業を除いてほとんどが現金の受け渡しを伴わない信用取引となっている。ここで発生する売上債権は、会社の財務や資金繰りなどに大きく影響するため、しっかりと管理し回収していくことが肝要だ。

売上が増加するのに伴い、売上債権も増えていくので、成長している企業ほど売上債権の管理と回収が重要なテーマとなってくる。売上債権の基礎知識を理解して、万一の場合にも最善の対処ができるようにしたい。また、売上債権の円滑な回収は会社の成長エンジンともなる。

プロフィール

売上債権の基礎知識。用語解説から円滑な回収方法まで総ざらい!
(画像=金城 寛人)

金城 寛人 (きんじょう ひろと)

株式会社エルニコ執行役員・中小企業診断士。1985年生まれ。沖縄県出身。青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科卒業後、前職の外資系メーカーに入社。事業開発部に従事し、アジア圏の新規事業プロジェクトに参画し、同社にてMVP(Super Hero’s)を受賞。現在は、経営コンサルティング事業を推進し、新規事業、組織の仕組みづくり、販路開拓、施策活用、経営相談窓口など毎月約70社以上の中小企業の経営支援を行う。