事業を大きく成長させるには、感覚や経験、センスに頼るのではなくロジカルな意思決定が重要だ。それを助ける思考ツールが「ディシジョンツリー」。情報を整理分析しながら選択肢を作り、それを論理的に比較検討して意思決定をすることが可能になる。

目次

  1. ビジネスには論理的な意思決定が不可欠
    1. ディシジョンツリーとは
    2. 分類木と回帰木
    3. 決定ノードと確率ノード
  2. 情報を整理分析して最適な意思決定を行うことができる
  3. ディシジョンツリーを活用するメリットとデメリット
    1. メリット
    2. デメリット
  4. 5ステップで作成できるディシジョンツリー
    1. 手順①:決定ノードを書き出す
    2. 手順②:選択肢の書き出し
    3. 手順③:結果ごとに確率と金額を書き出す
    4. 手順④:各結果の期待リターンを計算する
    5. 手順⑤:意思決定を実施する
  5. ディシジョンツリーを活用して合理的な意思決定を
鈴木 裕太
鈴木 裕太(すずき・ゆうた)
横浜国立大学在学中に中小企業診断士を取得(現在は休止中)。Webメディアの立ち上げ〜売却に携わり、SEO対策をはじめとしたWebマーケティングを幅広く経験。現在はビジネスの分野に特化したライター業と、他社のメディアサイトの立ち上げ支援を行っている。また、情報サイト”BizLabo”の運営も行っており、会社経営に役立つ知識・ノウハウを伝えることにも力を入れている(月間1.5万PV:2020年1月時点)。

>>会員登録して限定記事・イベントを確認する

ビジネスには論理的な意思決定が不可欠

ディシジョンツリーで情報を整理分析。ビジネスで最適な意思決定をする
(画像=tomertu/stock.adobe.com)

さまざまなビジネスシーンで求められる意思決定のスキル。思考のサポートをしてくれるツールであるディシジョンツリーを身につければ論理的な意思決定が可能になる。

ディシジョンツリーとは

ディシジョンツリー(decision tree)とは、想定される選択肢(シナリオ)とその結果を樹形図の形で表したうえで各結果の期待値を書き出したツールである。つまり「どの選択肢が最適であるか」を可視化する図表のこと。これによって論理的な意思決定をサポートする効果が期待できる。

分類木と回帰木

作成するディシジョンツリー(決定木)は、大きく「分類木」と「回帰木」の2種類に大別される。

・分類木 ある選択肢に対する結果を「A/B」という形で分類したい場合に用いるディシジョンツリー。例えば「新規事業を立ち上げる」という選択肢に対して「成功する」「失敗する」という2通りの結果を設定した場合、その図表は分類木となる。他にも分類木では「購入する/購入しない」「A地域に進出する/しない」といった形の選択肢も設定可能。

・回帰木 ある選択肢と結果を「連続する数値(実数値)」で表したい場合に用いるディシジョンツリーだ。例えば「商品価格が500円以上かどうか」という選択肢に対してYESの場合には「売上高が1億円」、NOの場合には「売上高が3億円」という形で実数値によって結果を表す場合は回帰木となる。簡単にいうと結果を単純に分類する際には分類木、ある行動に対する結果を数字で予測する際には回帰木を用いるわけだ。

決定ノードと確率ノード

ディシジョンツリーの分岐節に使用する2つのポイントがある。どんな意思決定を行うべきかを示す「決定ノード」。意思決定の結果によって明らかになるものを「確率ノード」としている。

・決定ノード 何かしらの意思決定を行う時点のことであり、ディシジョンツリー上では「□」の記号で表す。また決定ノードから枝分かれする実線は、その時点で行う意思決定のことであり意思決定者における選択肢を表す。例えば海外進出の可否を判断する場合、判断するタイミングが決定ノードと「進出する/しない」という選択肢が決定ノードから枝分かれする実線となる。

・確率ノード 意思決定によって得られる結果のことであり、ディシジョンツリー上では「○」の記号で表す。また確率ノードから枝分かれする実線は、その後生じ得る事象を表しており意思決定者がコントロールできない部分だ。例えば海外進出した結果、成功するかしないかは意思決定者が完全にコントロールできる部分ではない。

そのため海外進出を行った結果(成功する/しない)は、確率ノードから枝分かれする形で記入しなくてはならない。

>>会員登録して限定記事・イベントを確認する

情報を整理分析して最適な意思決定を行うことができる

下の図はディシジョンツリーでどんな新商品を開発するべきかを比較検討したもの。「売上高×その出来事が起きる確率の期待値」で最終的な意思決定を行うことができる。情報を俯瞰できるのが特徴となっている。

ディシジョンツリーで情報を整理分析。ビジネスで最適な意思決定をする
(画像=表)

ディシジョンツリーを活用するメリットとデメリット

ディシジョンツリーはあらゆる分野で活用されている。ビジネスに限定すると主に以下のようなシーンで使用されることが多いようだ。

・新規事業の立ち上げ ・M&Aの実施 ・設備投資 ・海外進出 ・新商品・サービスの開発

多くの情報を精査して意思決定を行うことの多い経営者なら思考ツールの一つとしてぜひ活用したい。しかし、ディシジョンツリーは、他のツールと同様にメリットとデメリットの両面がある。この章ではメリットとデメリットを紹介していく。

メリット

ディシジョンツリーを活用するメリットは、大きく分けると以下の3つだ。

・合理的な意思決定ができる 上述した通り合理的な意思決定が可能となる点はメリットの一つだ。ディシジョンツリーでは、取り得る選択肢や予測される事態などをもとに「どの選択肢を選んだらどのような効果をどのくらいの確率で得られるか」を明確にすることが可能である。意思決定の結果を数字で把握できるため、感覚で判断する場合よりも合理的な意思決定が可能となるわけだ。

・リスクを軽減できる より良い選択肢や危惧すべき事態を見落とすリスクを軽減できる点もメリットだ。頭の中で意思決定を行う場合、優れた選択肢や危惧すべき事態を見落としたまま判断を下す結果となるリスクがある。一方でディシジョンツリーの作成の過程では、取り得る選択肢や想定される事態をすべて書き出していくため、選択肢やリスクを洗い出す際に抜けや漏れが生じにくくなる。

・一貫性のある意思決定を行える 経営戦略や理念、ビジョンと一貫性がある意思決定を行える点もメリットなる。ビジネスにおいては、しばしば目先の利益にとらわれて戦略や理念・ビジョンとかけ離れた意思決定を行う事態も少なくない。しかしディシジョンツリーを作れば遂行する施策の候補を可視化できるため、戦略や理念、ビジョンとの一貫性がある施策を選びやすくなる。

デメリット

一見便利なディシジョンツリーだが活用にあたっては注意すべきデメリットもある。例えば設定する確率の精度に意思決定の質が左右される点はデメリットだ。ディシジョンツリーでは、各結果の期待値を比較することで最終的な意思決定を行う。例えば新規事業の立ち上げがテーマならば成功または失敗する確率を設定し、それをもとに期待値(≒各ケースで得られる利益×確率)を算出する。

ところが新規事業が成功または失敗する確率を正確に見積もるのは不可能だ。設定した確率が見当違いだと意思決定の結果も合理的ではなくなってしまう。つまりディシジョンツリーは、確率を極力正確に見積もることができなければ、質の高い意思決定を行ううえで役立たないわけだ。新規事業や海外進出など不確実性が高いテーマでディシジョンツリーを用いる際には、合理的な理由や客観的なデータを使って確率を設定し極力質の高い意思決定となるように注力するのが理想である。

5ステップで作成できるディシジョンツリー

手順①:決定ノードを書き出す

はじめに樹形図の根っことなる決定ノードを書き出す。決定ノードは、ディシジョンツリーを使って意思決定したい内容とする。例えば海外進出をすべきかを判断したい場合は、決定ノードの上に「海外進出の可否」などの文言を書いておくと良いだろう。なおディシジョンツリーは左から右に向かって書いていくのが一般的であるため、決定ノードは左端に記載しておこう。

手順②:選択肢の書き出し

決定ノードを書いたら次に取り得る選択肢を書き出していく。前述した通り選択肢は決定ノードからつなげる形で記入する。海外進出を例に挙げると「海外進出を行う」「海外進出を行わない(国内で事業を続ける)」という2つの選択肢を書き出せるだろう。またある選択肢を行った結果が複数ある場合には、確率ノードを使ってさらに分岐させる必要がある。

例えば海外進出を行う場合「大成功する」「成功する」「失敗する」「大失敗する」など複数の事態が想定できるだろう。そのため想定される事態の数だけ確率ノードから実線を枝分かれさせる。なお意思決定をより合理的に行うために選択肢の側には必要となるコストも記載しておくのがベストだ。

手順③:結果ごとに確率と金額を書き出す

すべての選択肢と生じ得る事態を書き出したら結果ごとに発生する確率と想定されるリターン(金額)を書き出していく。なお確率を設定する際には、同じノードから枝分かれしている出来事同士で確率の合計値が100%ぴったりとならなくてはいけない。例えば一つの確率ノードから「海外進出が成功する」「成功しない」という2つの結果を枝分かれさせた場合、それぞれが発生する確率は合わせて100%となるように設定する必要がある。

手順④:各結果の期待リターンを計算する

次に各結果の期待リターン(期待値)を計算する。先述したように期待値は評価金額と確率をかけることで計算していく。例えば海外進出が成功する確率が10%で成功した場合に得られる利益が5億円の場合、期待リターンは5億円×10%=5,000万円となる。

手順⑤:意思決定を実施する

最後に各結果の期待リターンを比較することで「どの選択肢を選ぶか」を決定する。ディシジョンツリーを使う場合は、最も期待されるリターンが大きい選択肢を選択すべきだ。例えば海外進出を行う場合の期待値が5,000万円、行わない場合の期待値が1,000万円の場合、期待値が大きいほうの選択肢(海外進出を行うという選択肢)を選ぶべきだと結論づける。

ただし期待値が大きくても予算を大幅に上回る多額の初期費用がかかる選択肢を選ぶと企業にとってはハイリスクとなりかねない。そのため実務上は、選択肢の側に書き出した必要コストも考慮したうえで意思決定するのが好ましいだろう。

ディシジョンツリーを活用して合理的な意思決定を

ディシジョンツリーを活用すれば発生確率を踏まえたリターンを比較することにより合理的な観点から意思決定を行うことが可能だ。また選択肢を樹形図の形式で書き出すことで危惧すべき事態を見落とすリスクを軽減する効果も期待できる。海外進出やM&A、新規事業の立ち上げなどあらゆる場面で活用できるツールなので事業の成長を目指す経営者は、ぜひディシジョンツリーを積極的に活用してほしい。

ただし設定する確率の正確さによってディシジョンツリーの精度は変わってくるため、楽観的な考えや自身の感覚に頼って確率を設定することだけは避けるように心がけよう。

文・鈴木 裕太(中小企業診断士)