2020年12月にドコモは新しい料金プラン「ahamo(アハモ)」を発表した。政府の意向を受ける形となったこのプランはドコモ復活への道しるべとなるのだろうか。現在、携帯電話の事業者別契約数の純増数は3位に甘んじている。通信業界の巨人はこれからどうなるのか?

目次

  1. 日本の通信料金は世界に比べて割高なのか
  2. 月額料金2,980円のドコモの新料金プラン「アハモ」はシェア争いにどう影響する?
  3. 株式会社NTTドコモはNTTの完全子会社へ
  4. 今後の大手携帯キャリアのシェア争いはどうなる?

日本の通信料金は世界に比べて割高なのか

通信市場はどう変わる?業界3位に転落のドコモが「ahamo」で上げた復活の狼煙
(画像=yu_photo/stock.adobe.com)

「携帯電話料金は4割下げられる」、菅首相がこう発言したのは官房長官時代の2018年のこと。2020年9月の総裁選への出馬表明時にも目玉政策とするなど、携帯料金値下げへの強い意欲を示していた。首相に就任直後には、総務大臣が「一刻も早く結論を出したい」とするなど、値下げへの動きは一気に加速した。

確かに日本の携帯料金は割高というイメージがある。それでは、世界と比較してどうなのだろうか。下記は20GBの場合の「各国のシェア上位3携帯電話事業者の料金プラン月額平均値(基本料金+データ定額料金)」だ。

国名 韓国 アメリカ 日本 ドイツ イギリス フランス
金額 8,388円 7,684円 7,135円 5,801円 3,001円 2,322円

※2020年3月1日時点の公開情報 出典:ICT総研 『スマートフォン料金と通信品質の海外比較に関する調査』

このデータによれば、アメリカ・韓国よりは安いものの、欧州に比べればかなり割高な数字となっている。欧州の数字を考えれば下げる余地はあるとみていいだろう。

月額料金2,980円のドコモの新料金プラン「アハモ」はシェア争いにどう影響する?

2020年12月3日、ドコモは他社に先駆けて、新料金プランの「ahamo(アハモ)」を発表した。20GBで2,980円という格安携帯並みの料金プランだ。大幅値下げによる減収も大きいとされるが、ユーザーの獲得は業界トップに返り咲く切り札であり、結果的には大きな利益をもたらすだろう。

価格以外の特徴としては申し込みからサポートまですべてオンラインという点が目を引く。一定の年齢層にはハードルが高いものの若年層の取り込みには有効といえるだろう。また当初なかったファミリー割引も追加されている。発表からわずか1ヵ月で55万人が事前申し込みをした。

ソフトバンクは「ワイモバイル」、KDDI(au)は「UQモバイル」というように低価格帯のサブブランドを持っているが、ドコモはサブブランドを持っていない。価格には価格で対抗するという攻めの姿勢をこれまで行ってこなかった。しかし、当然競争に参加せずして勝つことはできない。シェア数こそ1位を確保しているものの、2020年第一四半期、第二四半期の事業者別契約数を見れば、純増数は大きく水をあけられた形で3位に甘んじている。

第1四半期(2020年6月) 第2四半期(2020年9月) 純増数
NTTドコモ 80,614,800 80,986,600 371,800
au 59,242,900 59,934,700 691,800
ソフトバンクモバイル 43,663,900 44,307,400 643,500

出典:一般社団法人電気通信事業者協会 『事業者別契約数』

そうした中、起死回生の策ともいえるのが今回の値下げだ。ただ、追随したソフトバンクもやはり20GBで2,980円のプランを発表、またauは20GBで2,480円と三社の中で最安値のプランを発表した。ただし、auの料金プランは2社とは異なり無料通話は含まれていない。

ドコモの上位復活への切り札といわれるアハモだったが期せずして大手三社ほぼ横並びの展開となった。

株式会社NTTドコモはNTTの完全子会社へ

NTTグループの歴史を紐解けば1952年に設立された日本電信電話公社に遡る。戦後復興のさなかだった。そして大きな転換期となった1985年、通信の自由化を背景に民営化、NTTとなる。NTTドコモが誕生したのは1991年のこと。以降、圧倒的なシェアを誇り、通信業界を常にリードするはずの存在だったドコモではあるが、先に伝えた通り凋落の兆候は否めなかった。

2020年9月、NTTはドコモを完全子会社化とすることを発表。その一つの理由がドコモの立て直しだ。ただ、背景としては巨大NTT復活の意向が働いているようだ。かつて主流とされていた音声通話によるコミュニケーションは減少しデータ通信が主流となった現代。ライフデザインの融合も進められている。こうした中、勝ちに行くには総合的な1位を目指す必要があるのだ。

また、これを受けて電気通信事業を営む28社は賛同する37社を代表して総務大臣に意見申出書を提出している。「NTTドコモの完全民営化の趣旨に反する」「NTTの人的・物的・財務的な力が強化され市場の支配力が強まる」というものだ。

ドコモの完全子会社化によりNTTの支配力が強まれば当然、競争事業者が排除され、結果として競争から生まれる利用者の利益も損なわれることは予測がつくだろう。

今後の大手携帯キャリアのシェア争いはどうなる?

勝者になるためには差別化が必要だ。そして、その差別化のヒントとなるのがユーザーの利益を考えること。携帯電話会社の場合、やはり料金の値下げが大きい。勝ちに行くために値下げの先陣を切ったドコモ、そしてそれを追った2社。

熾烈な価格競争のように思えるが、背後で動くNTTグループの連携強化は市場競争を妨げる要因となりかねない。そもそも、NTTは現在も政府が筆頭株主である。自由な企業活動が難しいことがKDDIやソフトバンクに後れを取る要因ともなっていた。市場競争の公正化は保たれるのだろうか。シェア争いの今後を注視したい。

文・BUSINESS OWNER LOUNGE編集部