IoT・ビッグデータ・AI・ロボット技術――。技術革新によって、医療分野は大きな変革の時を迎えつつある。今回は最新技術と医療分野を掛け合わせた医療系ベンチャー企業を、厳選して14社紹介する。事業内容から医療分野の最新動向を知るとともに、今後の未来予測や投資判断に役立てたい。

木崎 涼
木崎 涼(きざき・りょう)
FP・簿記・M&Aシニアエキスパート。大手税理士法人で多数の資産家の財務コンサルティングを経験。多数の資格を持ちながら、執筆業を中心に幅広く活動している。

目次

  1. 医療系ベンチャー企業が急増している背景
  2. 注目の医療系ベンチャー1:診断・治療
    1. 株式会社PFDeNA(ピーエフディーエヌエー)
    2. 株式会社AIメディカルサービス
  3. 注目の医療系ベンチャー2:遠隔診療・見守り
    1. 株式会社メドレー
    2. インフィック株式会社
  4. 注目の医療系ベンチャー3:セルフケア
    1. ウンログ株式会社
    2. ベースフード株式会社
  5. 注目の医療系ベンチャー4:研究開発
    1. 株式会社ナノエッグ
    2. エネフォレスト株式会社
  6. 注目の医療系ベンチャー5:業務効率化
    1. TXP Medical(ティーエックスピーメディカル)株式会社
    2. METRICA株式会社(メトリカ)
  7. 注目の医療系ベンチャー6:情報
    1. リーズンホワイ株式会社
    2. M3(エムスリー)株式会社
  8. 注目の医療系ベンチャー7:医療格差の改善
    1. 株式会社miup(ミュープ)
    2. レキオ・パワー・テクノロジー株式会社
  9. 政府も医療系ベンチャーを後押し

医療系ベンチャー企業が急増している背景

Physician with medical instrument
(画像=Rido /Adobe Stock)

これまでは、身体に不調を感じてから医療機関を受診し、医師の診察を受け、治療することが一般的だった。しかし最近では、インターネットを通じて医療情報を調べたり、健康管理のために体調を記録したりと、患者行動も多様化しつつある。

また、診療に関しても、AIによる診断支援や、オンライン診療など、新しい形が表れ始めた。10年先、20年先の医療は、現代の医療とは想像もつかないあり方に変貌をとげているかもしれない。

AIやビッグデータの活用を始めとした「IT×医療」分野の台頭、全く新しい発想の医療技術の進歩によって、医療分野の市場規模は拡大すると予想されている。また働き方改革によって、医療現場は効率化・IT化を求められ、医療・介護の在り方はどんどん変わっていくだろう。

そんな激動の医療分野では、数多くのベンチャー企業がしのぎを削っている。今回は、そんなベンチャー企業の中でも特に注目したい企業を分野ごとに紹介する。

>>会員登録して限定記事・イベントを確認する

注目の医療系ベンチャー1:診断・治療

まずは診断や治療の場面で活躍を期待されている医療系ベンチャーを2社紹介する。どちらも注目度の高い企業だ。

株式会社PFDeNA(ピーエフディーエヌエー)

株式会社PFDeNAは、モバイルゲームの開発などを行うインターネット企業大手の株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)と、Iot分野でディープラーニング研究を行う株式会社Preferred Networks(プリファードネットワークス)の合弁企業だ。

深層学習技術を活用し、がんを早期発見するシステムを研究開発している。研究が進めば、少量の血液から14種類のがんを早期発見できるようになるため、がん検査にまつわる身体的負担やコスト面の負担が軽減される可能性が高い。事業化は2021年を目標としている。

株式会社AIメディカルサービス

株式会社AIメディカルサービスは、内視鏡AIに特化したベンチャー企業だ。数多くの大学や病院と共同研究を行い、専門医の診断を支援するシステムを開発している。主力商品は、AIを介した内視鏡画像解析ソフトウェアだ。同ソフトウェアでは過去に学習したデータから、画像解析による診断支援を行う。

イノベーションを推進するスタートアップ企業が選出される「EY Innovative Startup 2020」を受賞するなど、注目度の高いベンチャー企業だ。

注目の医療系ベンチャー2:遠隔診療・見守り

新型コロナウイルスをきっかけに注目を集めているオンライン診療。ここでは遠隔診療向けのアプリを開発する企業と、高齢者の見守りサービスを提供する企業を紹介する。

株式会社メドレー

株式会社メドレーは、「CLINICS(クリニクス)」というオンライン診療アプリを提供しているベンチャー企業だ。

オンライン診療とは、病院やクリニックではなく自宅で診療を受けることをいう。原則、初回は病院やクリニックに赴く必要がある。また、医師が適当だと判断した場合にしか、オンライン診療は受けられない。

しかし、要件を満たせば自宅にいながらにして診療を受けられるため、時間を有効活用できる。保険診療に関しては、通院の場合と同じく保険が適用されるため安心だ。これからの時代、オンライン診療の需要はますます高まることが予想される。

この他にも、メドレーは765名の医師の協力のもと、「MEDLEY(メドレー)」という情報発信サイトを運営している。今後も要注目のベンチャー企業といえるだろう。

インフィック株式会社

インフィック株式会社は、高齢者見守りシステム「LASHIC(ラシク)」を提供している。カメラではなくセンサー式でプライバシーにも配慮されており、異変が起きたときはすぐにスマホに通知が届く仕組みになっている。月額980円からというリーズナブルな価格設定も、人気を集めている理由だ。

以前と比べ、若い世代が親世代とは同居しない選択をしたり、親世代が同居を拒否したりするケースも増えてきている。そんな中で、高齢の親の一人暮らしが心配だと思う人は多いだろう。インフィックはまさに、時代が求めるニーズを満たすサービスを提供しているといえる。

>>会員登録して限定記事・イベントを確認する

注目の医療系ベンチャー3:セルフケア

忙しい毎日の中でも、自分自身で体調や栄養の管理をしたいといニーズは年々高まっている。独自のアプリで健康管理をしたり、主食だけで栄養を摂取できたり。ユニークな取り組みをするベンチャー企業を2社紹介する。

ウンログ株式会社

ウンログ株式会社は、「毎日の快便をサポートする」というユニークなコンセプトをかかげたアプリ「ウンログ」を提供している。既に50万ダウンロードを突破している。

ウンログでは、アプリの記録画面で「形・色・大きさ・におい・お腹の張り」を選択する。するとスコアが算出され、適切なアドバイスが表示されるという仕組みだ。アドバイスをもとに、美容や健康に活かすことができる。

今後、健康ニーズの高まり、セルフケアブームの到来とともに、さらなる拡大が期待されるだろう。

ベースフード株式会社

ベースフード株式会社が開発した「BASE FOOD®︎(ベースフード)」は、「主食だけで健康になれないか?」という発想で生まれた、1日に必要な栄養素を摂取できる食べ物だ。

ベースフードには、26種のビタミン&ミネラル、たんぱく質、食物繊維など身体に必要な栄養素が含まれている。現在は「BASE PASTA(ベースパスタ)」と「BASE BREAD(ベースブレッド)」の2種類がある。糖質が控えめなのもうれしいポイントだ。

仕事が忙しくて料理をする時間がない人は多いだろう。いずれはベースフードが主食となる時代が来るかもしれない。

注目の医療系ベンチャー4:研究開発

研究開発に力を入れて、独自の技術を持った医療ベンチャー企業も見逃せない。ここでは皮膚科学と感染対策に力を入れる2社を紹介する。

株式会社ナノエッグ

皮膚科学に特化した注目のベンチャー企業が株式会社ナノエッグだ。アトピー性皮膚炎のメカニズムを研究し、治療効果やQOLを高める研究開発を行っている。

強みは「ナノエッグ®︎」と呼ばれている名のカプセル技術だ。ナノエッグなら、薬剤をすばやく皮膚に浸透させられる。

独自の技術を持ったナノエッグは、今後もしっかりチェックしておきたいベンチャー企業だ。敏感肌ケア専用のスキンケア用品「メディコル」も、今後需要の高まりが予想される。

エネフォレスト株式会社

エネフォレスト株式会社は、感染対策事業を行うベンチャー企業だ。空気感染対策として、「UVGI方式」という紫外線による空気殺菌装置を開発し、販売している。

主力商品は、空気環境対策殺菌装置「エアロシールド®︎」だ。特殊構造によって、天井近くに紫外線が照射されるため、人間の生活空間に与える影響が少ないのも注目ポイントだ。電気代など、ランニングコストを抑える工夫もなされている。

注目の医療系ベンチャー5:業務効率化

次は医療業界の業務効率化に力を入れているベンチャー企業を2社紹介する。医療業界の働き方改革に影響を及ぼす企業になるだろう。

TXP Medical(ティーエックスピーメディカル)株式会社

TXP Medical株式会社は、次世代型医療体制の構築を目標にかかげ、医療現場の業務効率化を叶える商品・サービスを提供しているベンチャー企業だ。

救急外来で必要な機能が搭載された「NEXT Stage ER(ネクストステージイーアール)」が主力商品だ。音声入力・カルテテキストの自動構造化・問診アプリ・医療画像連携・紹介状自動作成などができ、業務の効率化を期待できる。

医療現場は今、長時間労働が問題視されるとともに、業務効率化を迫られている。そんな中で、TXP Medicalは新たな医療現場のスタンダードの確立に貢献する可能性がある企業だ。今後の研究開発や、地域連携構想からは目が離せない。

METRICA株式会社(メトリカ)

METRICA株式会社は、医療現場で働く人の負担軽減を目的とし、商品・サービスの提供を行っている。自動翻訳機能付き電子介護記録アプリでは、記録した内容が正確に言語翻訳される。外国人介護スタッフを雇っている介護施設や、今後外国人スタッフを雇おうと考えている施設で重宝されるアプリだろう。

コロナウイルスの影響で東京オリンピックは延期されたが、日本を訪れる外国人観光客数は、年々増加傾向にある。また、少子高齢社会である日本において、外国人の働き手が医療・介護現場に携わる機会はますます増えていくだろう。

そんな中で、お互いのコミュニケーションのギャップを埋めるサービスは、需要が高まると予想されている。

注目の医療系ベンチャー6:情報

医療系の情報をまとめて発信するベンチャー企業も見逃せない。疾患にマッチした病院を探せるサイトや、医療従事者向けの情報サイトなど多様化している。

リーズンホワイ株式会社

リーズンホワイ株式会社は、疾患にマッチした病院を受診できる「your Hospital(ユアホスピタル)」というサービスを提供している。

約1,000万人の患者データから患者数・コスト力・技術力・サービス力の4つの面で病院を評価し、検索意図に沿った病院を提示してくれる。

「専門性の高い病院を受診したい」「口コミデータより客観性の高いデータに基づいて病院を選びたい」といったニーズは今後も高まっていくだろう。そんな中で、リーズンホワイのサービスはさらに拡大していくかもしれない。

M3(エムスリー)株式会社

M3株式会社は、日本最大級の医療従事者向けの情報を載せる会員制サイト「m3.com(エムスリードットコム)」を運営しているベンチャー企業だ。

「m3.com」では、医療に関する最新ニュースや海外の論文、各種データベースなどにアクセスできる。また、医師同士の意見交換ができることなど、医療の質を底上げする機能が充実している。

医師専門の転職サイト「エムスリーキャリア」や、医薬品情報を扱うサイト「MR君」など、医療にまつわる複数のメディアも運営している。韓国の医療従事者を対象した「MEDI:GATE(メディゲート)」には、韓国の医師の7割以上が集っているともいわれている。

注目の医療系ベンチャー7:医療格差の改善

最後に地域ごとの医療格差の改善に取り組むベンチャー企業を2社紹介する。中には途上国向けに医療機器の開発をする企業もある。

株式会社miup(ミュープ)

株式会社miupは「世界の隅々にまで医療を届ける」ことを目的とし、医療過疎地域を支援するサービスを提供するベンチャー企業だ。

貧困層向けの「AI検診・遠隔診断補助システム開発」やミドル層向けの「デリバリー式検診&遠隔診療」、大規模病院向けの「臨床検査センター運営・LISシステム開発」など、複数の事業を行っている。

また、実際にバングラデシュで検診クリニックを展開しており、実業をあわせもつ現場重視の姿勢を貫いている。

医療格差の解消に向け、miupが果たす役割は大きいだろう。

レキオ・パワー・テクノロジー株式会社

沖縄に本社を置き、日本の医療を世界に広げるソリューションを提供している要注目の企業が、レキオ・パワー・テクノロジー株式会社だ。

発展途上国や教育現場向けに開発された小型超音波エコーを主力製品としている。従来製品よりも安価な価格設定で、発展途上国の医療の充実に貢献できる可能性が高い。

政府も医療系ベンチャーを後押し

医療系ベンチャー企業にとってさらに追い風となるのが、政府の後押しだ。厚生労働省は、医療系ベンチャー企業の必要性や意義を認め、ベンチャー企業の支援体制を構築することをかかげている。

また、健康需要の高まりも医療系ベンチャー企業を育む土台となるだろう。令和の時代、経営者も投資家も、医療系ベンチャー企業には特に注目しておきたい。

文・木崎涼(ファイナンシャルプランナー、M&Aシニアエキスパート)