資本に対してどれだけ効率よく利益を得ているかを判断する指標となるのが、自己資本利益率だ。経営者や投資家にとって経営分析の際に用いる指標の中で最も重要な経営分析指標の一つだ。そんな自己資本利益率(ROE)の計算式や判断する上での目安を解説していく。

目次

  1. 経営効率を表す指標「自己資本利益率(ROE)」とは
    1. 自己資本利益率からは何が分かる?
    2. ROA(総資産利益率)との違い
  2. 「自己資本利益率(ROE)」を算出するための計算式
    1. 自己資本利益率の計算事例
    2. 自己資本利益率を改善するために課題を明らかにする
  3. 自己資本利益率(ROE)の良し悪しを判断する目安を理解する
    1. 伊藤レポートにおける最低水準
    2. 日本企業における自己資本利益率の平均
    3. どのくらいのROEが理想なのか
  4. 自己資本利益率を高めるための5つのメソッド
    1. 1:無駄なコストを削減する
    2. 2:積極的な投資を行う
    3. 3:業績が好調な企業を買収する
    4. 4:株主への配当を増やす
    5. 自社株買いを行う
  5. 自社の収益性をチェックし最適な改善策を実践しよう
鈴木 裕太
鈴木 裕太(すずき・ゆうた)
横浜国立大学在学中に中小企業診断士を取得(現在は休止中)。Webメディアの立ち上げ〜売却に携わり、SEO対策をはじめとしたWebマーケティングを幅広く経験。現在はビジネスの分野に特化したライター業と、他社のメディアサイトの立ち上げ支援を行っている。また、情報サイト”BizLabo”の運営も行っており、会社経営に役立つ知識・ノウハウを伝えることにも力を入れている(月間1.5万PV:2020年1月時点)。

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経営効率を表す指標「自己資本利益率(ROE)」とは

自己資本利益率(ROE)とは?経営分析における重要指標を解説
(画像=Tierney/stock.adobe.com)

自己資本利益率とは、自己資本に占める当期純利益の割合のことだ。英語では「Return On Equity」となるため、ROEと呼ばれる。そして、自己資本利益率の単位には「%」が用いられている。例えばROEが20%ならば自己資本の20%に相当する金額の当期純利益を稼いだことを意味している。自社の経営分析だけではなく、投資を行う際にも参考となる指標だ。

自己資本利益率からは何が分かる?

企業の経営者と投資家によって自己資本利益率から得られる示唆は異なる。企業経営者の場合、自己資本利益率から「返済不要の資本を使ってどのくらい稼げているか」を分析することが可能だ。自己資本利益率が高いほど自己資本を使った稼ぐ力が高い。一方で投資家は、自己資本利益率から「出資した資金を使ってどのくらい稼げる会社であるか」を分析できる。

自己資本利益率が高いほど収益性が高く、投資対象としての価値が高い。つまり自己資本利益率は、会社が持つ収益性を表しているわけだ。ROEが低い場合には、収益性が低いことが考えられるため、改善が必要となるだろう。

ROA(総資産利益率)との違い

自己資本利益率と近い概念に「ROA(総資産利益率)」と呼ばれるものがあり、収益性を表す点ではどちらも同じだ。しかし分母に用いる項目に違いがある。総資産利益率では、文字通り分母に自己資本ではなく「総資産」、具体的には自己資本ではなく「総資産(新株予約権や少数株主持分、借入金などの負債もすべて合計した金額)」を用いる。

負債も含めて計算するため、借り入れを積極的に行う会社にとっては、ROEよりも的確に収益性を判断することが可能だ。一方で投資家にとっては、自分たちが出資した金額に対する利益率である「自己資本利益率」のほうが投資判断を行ううえでは有用な指標となる。

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「自己資本利益率(ROE)」を算出するための計算式

自己資本利益率(ROE)は、当期純利益を自己資本で割ることで算出可能だ。自己資本は、貸借対照表に記載されている純資産から「新株予約権」と「少数株主持分」を差し引いた金額である。以上より自己資本利益率(ROE)を計算式で表すと以下の通りとなる。

・自己資本利益率(ROE)={当期純利益÷(純資産-新株予約権-少数株主持分)}×100

自己資本利益率の計算事例

例えば自己資本が1,200万円、当期純利益が450万円の場合、自己資本利益率は以下のように計算できる。

・自己資本利益率(ROE)=(450万円÷1,200万円)×100=37.5%

ただし実務では、期中平均の自己資本を用いるので注意が必要だ。期中平均の自己資本は、期首と期末の自己資本について平均値を計算することで求められる。

・期中平均の自己資本=(期首の自己資本+期末の自己資本)÷2

例えば期首の自己資本が1,000万円、期末の自己資本が1,400万円の場合、期中平均の自己資本は1,200万円となる。

自己資本利益率を改善するために課題を明らかにする

自己資本利益率を改善する際には、どこに課題があるかを明らかにするために計算式を分解することがある。自己資本利益率の計算式は、以下のように分解することが可能だ。

・自己資本利益率(ROE)=(当期純利益÷売上高)×(売上高÷総資産)×(総資産÷自己資本)
・自己資本利益率(ROE)=売上高総利益率×総資産回転率×財務レバレッジ

なお財務レバレッジとは「負債(他人資本)をどのくらい効率的に活用しているか」を表す指標である。この指標が高すぎると負債の割合が大きく、利息や元本の支払いにより資金繰りが悪化するリスクが高まってくる。一方、低すぎると負債を使ってより大きな収益を獲得する余地があると判断できる。自己資本利益率を3つの要素に分解すれば3つある要因のうちどこに問題があるかが明確となるだろう。

例えば財務レバレッジが低い場合には、もう少し積極的に負債を活用することでROEを高めることができる。

自己資本利益率(ROE)の良し悪しを判断する目安を理解する

自己資本利益率(ROE)の目安(目指すべき水準)に関しては「他社の平均」「伊藤レポート」などが参考となる。この章では、自己資本利益率(ROE)の目安となる「日本全体における平均」「伊藤レポートで示されている最低水準」について詳しく解説していく。

伊藤レポートにおける最低水準

「伊藤レポート」とは、一橋大学の教授である伊藤氏が座長となって作成した経済産業省の報告書のことだ。同レポートによるとグローバルな投資家から認められるには、最低でも8%を上回る自己資本利益率を達成する必要があると述べている。長期的に市場で生き残りたい場合は、伊藤レポートで示された8%を上回る自己資本利益率を目指すと良いだろう。

日本企業における自己資本利益率の平均

財務総合政策研究所が公表している「法人企業統計調査からみる日本企業の特徴」によると、2018年度における日本企業の自己資本利益率の平均は8.4%だった。8.4%ということは、自己資本が1,000万円の場合に当期純利益が84万円となる計算だ。資本金別に見ると以下のように事業規模によってROEの平均に差が出ていることが理解できるだろう(以下の業種は製造業)。

・1,000万円未満:10.6%
・1,000万円~1億円:5.4%
・1億円~10億円:6.0%
・10億円以上:9.7%

どのくらいのROEが理想なのか

日本企業の平均や伊藤レポートで示されている8%という自己資本利益率は、あくまで最低限達成すべき水準である。「収益性が高い」とみなされるには、大体10~20%の自己資本利益率を達成するのが理想だろう。

自己資本利益率を高めるための5つのメソッド

前述したように自己資本利益率が低い場合は収益性の改善を考えてみることが必要になりそうだ。自己資本利益率を高める際には、前述した負債の積極的な活用以外にもさまざまな方法を活用できる。そこでこの章では、自己資本利益率を高める方法を解説する。

1:無駄なコストを削減する

自己資本利益率を高めるうえで最も簡単なのは、無駄なコストを削減する方法だ。利益は「売上-費用」の計算式で求められ費用を削減すれば必然的に手元に残る利益は増加するため、自己資本利益率の向上につながる。ただしむやみにコストを削減すると、売上高も減ってしまうリスクがあるので注意すべきだろう。

例えば人件費を削減すると営業や製造などを担う人材が減ってしまうため、売上高も減少する恐れがある。売上高の減少を防ぐためにも、収益の獲得に直結しないコストの削減に注力することが重要だ。具体的には、売れる見込みがない在庫の保管コストや収益の獲得に貢献しない宣伝広告費などが削減の対象となるだろう。

2:積極的な投資を行う

新規事業や機械設備などに積極的に投資する施策も自己資本利益率を高めるうえで効果的だ。例えば新規事業を行ってコストよりも売上高の増加分が多ければ手元に残る利益が増えるため、自己資本利益率の向上につながる。また人力で行っていた作業を機械で行うようにすることで人件費などのコストを削減できる効果が見込めるだろう。

初期費用こそかかるものの長期的には売上高アップやコスト削減の効果を実現できる点でおすすめの施策である。

3:業績が好調な企業を買収する

自己資本利益率の改善には、業績が好調である企業を買収する施策も有効だ。例えば利益率が高い企業を吸収すれば自社の利益率を底上げすることができるだろう。また買収により事業規模が大きくなれば大量仕入や重複する機能の統合などにより事業でかかる費用を削減することも可能だ。ただしM&Aには、以下のようなデメリットがあることも忘れてはならない。

・多額の買収資金が必要となる
・想定していたシナジー効果を得られないリスクがあるなど

自己資本利益率を高めるだけであれば他の施策を優先的に検討するのが賢明である。

4:株主への配当を増やす

ROEの分母である自己資本を減らせば、売上高が減らない限り自己資本利益率は高くなるため、株主への配当を増やす(増配する)形で自己資本を減らす方法も有効だ。また増配には、自己資本利益率を高めるメリットだけでなく業績が良い旨や株主を重視している姿勢を対外的にアピールできるメリットもある。増配すれば将来性が高く株主を大切にしている企業とみなされ、より投資家から多くの出資を集められる可能性も期待できるだろう。

自社株買いを行う

増配と同じ理屈で自社株買いも自己資本利益率を高めるうえで有効な施策の一つだ。自社株買いとは、自社で発行した株式を買い戻す施策である。自社株買いを行えば、自己資本を減らすことができるため、増配と同様に自己資本利益率の向上につながるわけだ。また自社株買いによってROEが高くなることで投資家から見た投資対象としての価値も高まる。

その結果、自社株買いを行う前と比較してより多くの出資を集めやすくなる効果も期待できるだろう。ただし自社株買いには、安定性を表す指標である「自己資本比率」が低下するデメリットもある。自社株買いによって自己資本比率が適正水準(大体20%)を下回ると予想される場合は、別の施策で自己資本利益率の改善に努めるのが良いだろう。

自社の収益性をチェックし最適な改善策を実践しよう

自己資本利益率(ROE)は、自社の収益性を判断する材料となるのはもちろん投資家として投資対象を選定するうえでも役に立つ指標である。簡単に計算できるので経営者や投資家であれば積極的に活用すべきだろう。特に企業経営者の場合、自社のROEに問題があれば改善する必要がある。ROEを改善する方法はたくさんあるため、自社の状況に応じて最適な施策を実践するようにしよう。

文・鈴木 裕太(中小企業診断士)