消費税の納税義務の判定だけでなく、税金の計算にも大きく関わっているのが課税売上高だ。課税売上や課税仕入について、それぞれあたるもの・あたらないもの、仕入控除税額の計算方法や課税売上割合などの用語や計算方法を解説していく。

目次

  1. 課税売上とは消費税を受け取る取引のこと
    1. 課税取引とは
    2. 課税売上になるもの・ならないもの
  2. 課税仕入れとは消費税を支払う取引のこと
  3. 課税期間に行われる仕入税額控除
    1. 仕入控除税額の計算方法
  4. 課税売上割合とは
    1. 課税売上割合が必要な理由
    2. 課税売上割合の計算方法
  5. 売上と課税の仕組みを理解したい
中村 太郎
中村 太郎(なかむら・たろう)
中村太郎税理士事務所所長・税理士。1974年生まれ。和歌山大学経済学部卒業。税理士、行政書士、経営支援アドバイザー、経営革新等支援機関。税理士として300社を超える企業の経営支援に携わった経験を持つ。税務のみならず、節税コンサルティングや融資・補助金などの資金調達も得意としている。中小企業の独立・起業相談や、税務・財務・経理・融資・補助金等についての堅実・迅速なサポートに定評がある。

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課税売上とは消費税を受け取る取引のこと

税金を計算する上で理解すべき課税売上高とは?
(画像=thithawat/stock.adobe.com)

消費税の「課税売上」とは、会社や個人事業主が行った取引のうち、消費税を受け取る取引のことである。消費税を受け取る取引のことを「課税取引」というが「課税売上」とは、その中で自身が消費税を受け取るものを指し、会計処理で「売上」とされるものよりも範囲が広い。課税売上は、消費税の申告に必要となる「課税売上割合」を求めるときに必要となるほか、消費税の納税義務を判定するときや簡易課税の適用判定をするときにも必要となる、消費税の計算を行う上で要となる金額である。

課税取引とは

具体的には、次の4つの要件を満たす取引である。(消費税法第4条)
・国内取引であること
・事業として行う取引であること
・対価を得て行う取引であること
・資産の譲渡や貸付、役務の提供であること
消費税の取引には、基本的に対称性がある。消費税の課税事業者同士で取引を行ったとき、売り手側が課税売上となる取引であれば、買い手側では課税仕入れになる。

課税売上になるもの・ならないもの

<課税売上になるもの>
・課税資産にあたる商品の売上
・建物や機械、備品などの売却収入
・広告収入
・売電収入(生活用の余剰電力の売却は除く)
など
課税売上げになるものを把握するときは、「売上」や「雑収入」等の中から、課税売上げにならないものを把握してそれを除いたほうがよい。非課税取引にあたる商品を扱う事業では、同じ商品の売上であっても、課税売上げになるものとならないものが出てくる場合がある。

<課税売上げにならないもの>
課税売上げにならないものは、下記の2つ。
・消費税の課税取引にあたらない「不課税」となるもの
・消費税の課税取引にあたるが「非課税」となるもの
この2つは、消費税の申告に必要な「課税売上割合」の計算を行う上で、必ず区別しなければならない。

【非課税となる主なもの】
・土地の売却収入
・有価証券(株式、国債、社員の持分など)の売却収入
・貸付金の利息
・住宅の賃貸収入(1ヶ月未満のものを除く)
・社会保険診療報酬
・介護保険法による介護サービスの提供
・教科用図書の販売

【不課税となる主なもの】
・補助金や助成金
・保険金や共済金
・損害賠償金
・寄附金、祝金、見舞金等
・配当金や出資分配金

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課税仕入れとは消費税を支払う取引のこと

課税仕入れとは、会社や個人事業主が行った取引のうち、消費税を支払う取引のことであり、会計処理で「仕入」とされるものよりも範囲が広い。課税仕入れを正しく計上することによって、消費税の申告に必要となる「仕入控除税額」を正しく計算することができる。

<課税仕入れになるもの>
・水道光熱費
・旅費交通費
・文房具など消耗品の購入費
・事務所や店舗の家賃
・機械や備品の購入費
・保税地域から引き取る外国貨物
など

<課税仕入にならないもの>
「課税仕入にならないもの」についても、非課税と不課税になるものがあるが、実務上、区別が求められる場面はない。

【非課税となる主なもの】
・土地の購入
・有価証券等(株式、国債など)の購入
・預貯金の利子
・保険料の支払い
・郵便切手、印紙、証紙の購入(販売場所によって課税仕入になることがある)
・商品券、プリペイドカードの購入
・行政窓口に支払う各手数料(登記、登録、特許、免許、許可、検査等の手数料)
・住宅の借入(1ヶ月未満のものを除く)

【不課税となる主なもの】
・税金の支払い
・給与や賞与の支払い
・損害賠償金
・寄附金、祝金、見舞金等
・配当金や出資分配金

課税期間に行われる仕入税額控除

消費税の納税額は、課税期間ごとに課税売上によって受け取った消費税から仕入控除税額を差し引いて計算される。仕入控除税額とは、消費税の納税額を計算するときの控除額で、課税仕入によって支払った消費税から計算される。仕入控除税額を差し引いた後の税額がマイナスになれば、還付を受けることができる。課税期間とは、基本的に会計期間と同じ1年間(個人事業主は1月1日~12月31日)である。

仕入控除税額の計算方法

端数処理を考慮しなければ、基本的には、課税仕入や保税地域から貨物を引き取ったときに支払った消費税額となる。ただし、課税売上高が5億円を超える課税期間か、「課税売上割合」が95%未満となる課税期間にあたる場合、支払った消費税額の全額を控除することができなくなる。なお、簡易課税制度を選択しているときの仕入控除税額は、課税売上にみなし仕入れ率をかけて計算するので、上記とは全く別となる。

課税売上割合とは

課税売上割合とは、課税期間中の総売上高のうち、課税売上高にあたる対価の額が占める割合のことをさす。言い換えると、その会社が1年間でどのくらい消費税の対象となる売上をしたかというものだ。課税売上割合や課税売上高の金額によって、仕入控除税額を計算する方法は下記のとおりに変わる。

要件 計算方法
課税売上高が5億円以下
かつ
課税売上割合が95%以上
全額控除
課税売上高が5億円超
または
課税売上割合が95%未満
個別対応方式
または
一括比例配分方式

<全額控除>
課税仕入等から計算した消費税の合計額(支払った消費税の合計額)のすべてを控除できる。

<個別対応方式>
課税仕入れを、次の3区分に分けた上で、下記の計算式から算定する。
ア 課税売上げにのみ要する課税仕入れに係るもの
イ 非課税売上げにのみ要する課税仕入れに係るもの
ウ 課税売上げと非課税売上げに共通して要する課税仕入れに係るもの

【計算式】
仕入控除税額 = ア + (ウ×課税売上割合)

ア~ウの区分は、仕入れた物やサービスなどが、その事業のどのような売上に貢献するものかによって変わる。
例として不動産賃貸業を営む課税事業者が建物を仕入れるケースで考えてみよう。前提として、建物を店舗や事務所として貸したときの賃貸収入は課税売上となり、住宅として貸したときの賃貸収入は非課税売上となる。 【例:テナント専用ビルを購入したとき】
アに区分する。
【例:住宅専用アパートを購入したとき】
イに区分する
【例:店舗兼住宅として貸し付ける戸建て物件を購入したとき】
ウに区分する。

不動産賃貸では、仕入れた不動産を相手がどのように使うかわからないのでは? という疑問も生じるが、賃貸契約の内容から居住用であることが明らかであれば非課税売上とされ、契約からよくわからないときは、令和2年4月以降は状況から個別判断することとなっている。
なお、計算式からわかるとおり、イに区分された課税仕入は、仕入控除税額にまったく反映されない。

<一括比例配分方式>
【計算式】
仕入控除税額=課税仕入れに係る消費税額×課税売上割合

個別対応方式の区分に関係なく、一律に課税売上割合をかけて計算する方法である。個別対応方式と一括比例配分方式はどちらを選択しても構わないが、個別対応方式を選択するためには、課税仕入を前述のア~ウの3つに区分していることが必須となる。
日常的な経理や消費税の申告のことを考えると手間が少ないのは一括比例配分方式のように思えるが、会計ソフトを導入し、区分に慣れてくればそれほど時間的な差は生じない。そのため、どちらがより多くの仕入控除税額を計上できるかで考えたほうがよいだろう。
一般的にイ(非課税売上げのみ)が多い事業では、一括比例配分方式のほうが仕入控除税額を多く計上しやすい。ただし、一括比例配分方式を選択すると2年間の継続適用が必要となる。

課税売上割合が必要な理由

消費税の課税方法は、次の消費者に課税を転嫁するというものである。たとえば、林業を営むA社が、建設業を営むB社に木材を1,100万円(うち消費税100万円)で販売したとする。A社に課税仕入がないと仮定した場合、A社は受け取った100万円を税務署に納税する。
続いてB社が、その木材を使って建てた家を、不動産販売業を営むC社に1,650万円(うち消費税150万円)で販売したとする。この場合、B社は、支払った消費税100万円と預かった消費税150万円の差額50万円を税務署に納税する。
続いてC社がお客さんに、家を2,420万円(うち消費税220万円)で販売したとする。C社は、差額70万円を税務署に納税。そして家を買ったお客さんが220万円の税金を負担する。この場合、消費者が負担した220万円と納税義務者(A社、B社、C社)が納税した金額の合計は同じとなる。

A社:100万円
B社:50万円
C社:70万円
つまり、A社→B社→C社→消費者の順に消費税の負担を次の人に転嫁するのが消費税のしくみである。
しかし、これに非課税の課税売上げが混ざると、この転嫁のしくみが崩れる。なぜなら、非課税売上を生み出すにも課税仕入が当然に必要になるからだ。たとえば、C社がお客さんに土地を販売する場合、お客さんは消費税を負担しないしC社も消費税を預からない。
しかし土地を販売するためのコストにも、実際にはさまざまな課税仕入れが含まれている。これらをすべて仕入控除税額にできるとした場合、C社の消費税の納税額が減ってしまい、消費税の転嫁が正しく行われなくなる。
このことから、非課税売上など消費税がかからない売上が一定以上ある事業者については、全額控除とはせずに、個別対応方式や一括比例配分方式によって仕入控除税額を計算するのである。
なお、課税売上割合のほか、課税売上高が5億円を超える場合も、全額控除ができなくなる。これは、単に売上高が大きければ、仮に課税売上割合が99%であっても、転嫁されない消費税が巨額となる点を考慮したものと考えられる。

課税売上割合の計算方法

計算式は、以下のとおりである。
課税売上割合=課税売上高(税抜き)/課税売上高(税抜き)+非課税売上高

なお、輸出による免税売上高がある場合は、分母と分子にそれぞれ加算する。

売上と課税の仕組みを理解したい

課税売上や課税仕入について、あたるもの・あたらないもの、仕入控除税額の計算方法や課税売上割合などの用語や計算方法を解説してきた。仕入控除税額の計算方法は、毎期判定しなければならないため、注意が必要である。

文・中村太郎(税理士・税理士法人所長)