携帯料金は法人の支出の中で大きく、できればもっと安く抑えたいものだ。
今回は、「法人携帯」の効果的な選び方について解説する。法人携帯を上手く選ぶことで、通信コストが削減でき、それ以外にも様々なメリットがあるのでぜひ参考にしていただきたい。
法人携帯の導入で通信コストを下げられるのか

法人携帯とは携帯電話の契約者が個人ではなく、「株式会社○○○」などの法人名になっている携帯電話契約である。個人が自分の携帯を仕事用に使うのではなく、法人契約をした携帯を利用してもらう。
各自の携帯を仕事用に使うのは個人情報保護の観点や、電話代を負担させるという意味で不適当である。たとえ、給与と一緒に「携帯電話代」「通信代」を支給したとしても、電話をかければ相手にも電話番号が伝わるため社員は嫌がるだろう。士気にもかかわるので、個人の携帯を仕事用に使わせるのはおすすめでききない。
法人携帯の料金体系
まず法人契約の携帯電話の料金体系について簡単に触れる。法人契約の携帯電話は、以下のように計算される。
無用なオプションはつけず、割引が適用されるようにすることでコスト削減になる。この計算式を踏まえて、以下の記述を展開したい。
業務での携帯の使い方を把握しプランを決定すればコスト減
ご存じのとおり、現在の携帯電話は電話機能だけではない。インターネット、様々な機能のアプリ、時計、電卓、地図、など機能を挙げればきりがない。
法人携帯を選ぶ際は、業務での使い方を把握するのが大切である。電話の相手、使う時間帯、どこに電話をかけるのか、社内で一番電話を利用しているのは誰か、などを理解することで、法人契約する携帯電話プランを決める参考になる。
たとえば、同じ相手にかけているのか、テレアポのように多数の相手にかけているのか、社員同士の連絡がメインなのか、LINEなどのアプリが主なのか、それぞれで加入すべきプランは大きく変わる。この点は個人の携帯と同じで、インターネットを多く見る人はデータ通信量が多いプランを選択する。一方、電話を多くかける人は、特定の電話番号の割引や「カケホーダイ」などのプランを選択するだろう。
固定電話と携帯電話のキャリアを統一すればコスト減
社内で使用している固定電話と、法人携帯のキャリアを統一することで、セット割引が期待できる。通話の定額化、無料化などが可能になり、コスト削減が期待できる。まず、社内の固定電話のキャリアを調べることをおすすめしたい。
法人プランが充実している 利用状況にあわせて選べばコスト削減
携帯大手キャリア3社、NTTドコモ、au、ソフトバンクは、それぞれ法人向けのビジネスプランを用意している。利用状況に合わせて、キャリアやプランを選ぶことで通信費を削減できる場合もある。
法人向け携帯電話プランは、大きく分けると以下の2つがある。
電話料金が安く、仕事に電話を多く使用する法人向け 2.データ通信量が多く、アプリやタブレットを社外で多く使用する法人向け
たとえば、多くの顧客に他時間の電話やSMS(ショートメール)をかけることが多い場合、以下のようなプランを法人契約すれば、会社の通信費を抑えつつ積極的な電話営業が可能になるのだ。
・プランによっては固定電話や他社への通話(国内)が無料、ないし「1回あたり〇分まで無料」 ・データ通信量は基本料金に含まずオプション、従量課金制
もちろん逆に、ネット、アプリなどのデータ通信を多く使う場合は、以下のようなプランもある。携帯電話で何を重点的に使うのかで選び方が変わり、使い方に合わせた方が料金は大きく異なってくる。
・データ通信の上限が大きく(30Gやデータ無制限など)安い ・電話料金は高め、使用する後に電話料金がかかる
法人携帯の選び方ポイント
法人携帯を契約する際には、その選び方によって料金が大きく異なることがわかった。それを踏まえて、選び方のポイントについて確認しよう。
費用(プラン内容)を確認
プランの内容について確認する。
・基本料金 ・データ通信上限 ・電話代 ・定額使い放題か従量課金制か ・5G対応か従来の4Gか
これらの要素の組み合わせで料金が決まるため、自社の携帯用途をしっかり把握し、電話とデータ通信の利用割合などから最適なプランを選ぶのが大切だ。
用途に応じて端末を選ぶ
用途を確認してから端末(携帯機種)を選ぶとよい。最新機種ではなく多少前の端末でも十分だということもある。電話がメインではないのなら大きめのタブレット端末を選んだ方がいいケースもあるかもしれない。あるいは、仕事用の電話のみの使用でインターネットやアプリを使用しないのであれば、「ガラパゴス・ケータイ(以下、ガラケーという)」を選ぶのも一つの方法といえる。
電話料金が安くなるプラン(例:電話かけ放題)の場合、スマートフォン(以下、スマホという)の基本料金に比べるとガラケーの基本料金の方が500円程度安いものもある。ただし、年々ガラケー自体のシェアが減っているので、ガラケー向けのプランがどこまで存続するかは不透明である。
使用場所に合わせた端末を選ぶ
使用場所に合わせて端末を選ぶのも大切である。たとえば工事現場や工場で使用する際は、落としたり傷ついたりする可能性がある。そのような場合にも問題ない耐久性の高い端末を選ぶのがよいだろう。
また、5Gエリアではないところで、5G対応の機種を選んでも恩恵を受けることができない。機能が使えるかどうかの確認も必要である。
サポート体制や補償内容を確認
いざという時のサポート体制や補償内容も確認しておきたい。急に使用できなくなってしまう、職務中の事故により破損してしまうことなどは、十分に起こりえるからだ。「携帯電話の労災」が受けやすい機種、キャリア、プランを選ぶことも大切である。
法人で携帯を導入するメリットは通信コストの削減だけじゃない
法人契約のメリットは、通信コスト、通信費を削減することにとどまらず、多くの効果を期待できる。
従業員同士の連携がとりやすい 内線感覚で使える
同じ法人契約をした携帯電話同士ならば無料や格安で使えるプランがある。これなら内線感覚で使うことができ、社内の内線のように取り次ぎが必要なくスムーズにコミュニケーションがとれる。
社外でも社内システムにアクセスできて業務を効率化
スマホは小さなパソコンである。スマホにビジネスアプリをインストールすることで社内システムにアクセスしやすくなる。したがって、テレワークや外出先でも効率的に業務を進めることができる。
便利なビジネスアプリなどを社外でも使える
営業先、外出先で便利なビジネスアプリを利用し、商談等につなげることができる。最新のビジネス情報や株式チャートなども携帯端末から顧客に見せることもでき、自身の情報アップデートにも使える。もちろん、地図や電車、バスの乗り換えなども端末で簡単にわかる。
使用状況を把握でき管理を効率化できる
使用状況を把握でき、私的利用を防ぐことができる。また、位置情報から社員の出先を確認することもできる。管理することについては賛否両論の意見があると思うが、業務の共有はしやすくなるだろう。
経理業務を簡素化できる
購入データを抽出できるので、効率的な経理処理が可能になる。モバイル交通系マネーや、会社の口座と連動した電子マネーにより、外部での決済を行うことで、「立て替え→領収証の提出→清算」という過程を省略でき、経理業務の簡素化につながる。
プライベートの携帯と区別することでセキュリティ面でのリスクを減らす
社員個人の携帯では、情報漏洩やプライベートな画像の誤送信などが起きかねない。リスクヘッジの意味でも、法人契約の携帯を社員に持たせることにはメリットがある。
法人で携帯を導入するときの注意点
携帯の法人契約にはメリットが多いことがわかったが、導入にあたって注意する点についても確認していく。
法人携帯の利用のルールを定める
法人携帯は会社の持ち物であるので、その使用について社内でルールを定めることが必要だ。会社の所有物を社員が私的に使うことについて、一定の規制をすることはコンプライアンス上も不可欠となる。
たとえば以下のような利用ルールを定めているところが多い。
・使用目的の限定(社内、取引先などへの連絡等) ・業務不可欠なアプリ(カメラ等)のみを使用する ・私的利用の禁止 ・アプリのインストール、アンインストールは管理者が行う ・紛失防止対策、紛失時の責任所在の明確化(パスワードの設定、責任は管理者か、上司か、本人か) ・故障時の届け出の流れ
いろいろ定めると、逆に守られないこともあり得るので、シンプルに誰もが守れるルールにすることがポイントである。
各携帯のセキュリティ管理を会社で行う(保守代行業者に依頼するのも一案)
セキュリティ管理を社員個人に任せるのは負担が重い。定期的なウィルス駆除ソフトのインストールや情報のバックアップなどは会社で行うのがよいだろう。法人携帯の保守管理に特化した専門業者に依頼するのも一つの方法である。
法人携帯は今後ますます重要なアイテムに
テレワーク、リモートワークが一般化し、PCではなくタブレット端末で業務を行うことも増えるだろうその中で携帯端末も単なる電話やメールの手段以上の役割を担うことが予想される。
法人契約の携帯端末を社員に渡すことでネットワークを構築しやすくなり業務が効率化する。法人契約には携帯端末の使い方によって様々なお得なプランがあるので、最適なものを選ぶとよいだろう。また携帯の法人契約をする中で、自社の業務についても把握、見直しをするよい機会になるはずだ。
文・野口和義(野口コンサルタント事務所代表)
プロフィール

野口 和義 (のぐち かずよし)
野口コンサルタント事務所代表。1983年生まれ。茨城大学情報工学科卒業。中小企業診断士、行政書士、経営革新等支援機関。 最大手ファーストフードチェーンでのマネジメント経験を活かし、組織改革・人事制度・事業計画策定を中心に中小企業の支援に奔走している。 持ち前のホスピタリティの高さから、顧客対応などの面でもお客様から高い評価を得ている。